10 / 27
第二幕:化身との契約
2-4:絶望の情交※
しおりを挟む
その夜。仕事も捗り、夕食のときもシュトリカやディーンと共に、無事過ごせた。
だが、暗雲が空を満たし、雷の音を鳴らしはじめた頃合いだろうか。雷鳴だけが轟く館の自室で、エンファニオは一人、激しい動悸に襲われていた。
それは、呪いが出てくる前兆だということを、自身だけがよく理解している。
「やめろ……」
雷が光るたび、鼓動が激しくなる。寝台に横たわり、汗を掻きながら必死に胸を押さえた。そんな抵抗を嘲笑うかのように鼓動は増し、全身から力が抜けていく。
なぜ、こんな大事なときに表に出ようとする――忌々しさをこめて歯噛みするも、こめかみまでが痛みはじめた。ぼやける視界で、思わずシュトリカの部屋に続く扉を見る。
(シュトリカを抱きたいのだろう、お前は)
花枯らしの歌を求めた瞬間、頭の中に声が響いた。己と似た、それでいて全く違う声音に肩が跳ね上がる。呪いの化身、アーベの声を聞いたのは、これがはじめてだ。
「違う……」
(違うだと? 温室で、獣のようにシュトリカの唇を貪ったくせに、よく言う)
「あれ、は……花の、せいだ」
(笑わせてくれる。お前はシュトリカの、あの柔らかな体にしゃぶりつきたい。自分を突き入れ、溜まりに溜まった欲を放ちたくてたまらない、ただのけだものだ)
せせら笑いと共に、シュトリカの淫靡な姿が浮かび上がる。アーベに抱かれ、甘い声音を上げて絶頂に達する姿。谺する嬌声。震える胸、その頂きの尖りまでがくっきりと。体中の血管が沸騰しそうになり、頭を抱えて唇を噛んだ。だが、声は止まない。
(温室で表に出てやってもよかったが、花枯らしの歌はさすがに堪えた。今夜もまた、お前にシュトリカの淫らな姿を見せてやろう。今宵はじっくり抱いてやるつもりだからな)
「やめてくれ……やめ、ろ」
(さあ、宴の時間だ、我が半身。その体を、俺によこせ)
飛び出した絶叫が落ちた雷にかき消された瞬間、抵抗していた意識は無情にも、泥に飲みこまれるように暗闇へ落ちていった。
静寂が再び部屋を支配する。灯るのは角灯ではなく、頬に浮き上がる彼岸花の紋様だ。
「……くく」
エンファニオの意識は離脱し、ただ空中から見ることしかできない。欲情した己の瞳や大仰に舌なめずりする、醜悪な様を。
アーベは動く。まっすぐ、迷いもなくシュトリカの部屋へと滑りこむ。意志が効かない体に引っ張られるように、自身の意識もまた。
シュトリカは、自らの大きい寝室の片隅で眠りについていた。アーベが訪れたことを察してだろう。鳥籠に入り、大人しくしていたペクが羽根を動かし、小さく鳴いた。それでもシュトリカは起きない。無防備にその体を横たえたままだ。
逃げてくれ、と願う祈りも届かない。アーベは微笑み、寝間着を寝台の側で脱いだ。そのまま、眠るシュトリカの上に覆い被さる。
シーツを剥がすと、薄い寝間着に包まれたシュトリカの肌が露わとなった。肩から胸にかけ、大きく露出した白い寝間着は、暗闇の中でも眩しく光るように感じる。
昨夜の乱暴な様子とは違い、アーベは優しい手つきで前開きの寝間着を解いていく。ふるりと飛び出る胸、股を隠す金色の和毛が薄い暗がりの中、暴かれてしまう。
目覚めぬシュトリカの体を堪能するように、アーベはその細い太股から腹にかけ、するすると指でなぞった。何度も、何度も、執拗に。全身を手のひらと指で蹂躙していく。シュトリカは夕食のとき、葡萄酒を飲んでいる。そう簡単に起きることはないかもしれない。
「ん……」
身動ぎするシュトリカは、まだ目覚めない。それどころか、違和感を覚えたのか片足を立て、和毛で隠されていた花弁を開け放つ始末だ。夜気に当たったためか、それとも愛撫で感じているのだろうか――薄い乳輪の先はぷくりと膨らみ、触られるのを待っている。
やめろ、と叫ぶ己をあざ笑い、アーベは形のよい乳房の頂きを、くすぐるように爪弾く。
「あぅ……んっ」
シュトリカの口から、微かに甘い吐息が漏れた。アーベが舌先で、再び乳首をつつく。唾液に塗れる頂きはほんのりと赤く染まり、熟れた果実みたいだ。
そのまま、そう――己がそうしたかったように、乳輪ごと口に含んで尖りを軽く噛むと、はじめてシュトリカが重たげに瞼を持ち上げた。
「う、んっ……?」
「夢でも見ていたのか、シュトリカ。寝ているところを抱いてやろうと思ったのだが」
「あ……アーベ、様っ……?」
「ほう、すぐに俺だとわかったか。あいつの真似事をしてもよかったかもな」
「どうして、また……あなたが、ぁ……っ」
酷薄に笑うアーベは音を立て、じゅうっと乳房を吸う。裸にされていることを理解したシュトリカは足掻くように動くも、長躯で押し潰されては叶わない。今すぐ体を引き剥がしたい気持ちに駆られるエンファニオだが、意識のままではそれすらできないのが悔しい。
「どうして、どうして……っ」
「俺はあいつ自身だ。それを認めない限り、俺はアーベのまま、お前を抱く」
「いや、ぁ……」
片手で乳房を揉み、もう一方の胸を舌と唇で嬲りながら、アーベは瞳を暗く輝かせる。
「お前が俺を拒むというなら、そうだな……面白い話をしていたろう、確か。議会が開かれると。そのときにも俺が表に出てやろうか? 臣下の前で、洗いざらいぶちまけてやる」
その言葉にエンファニオは愕然とする。それは、シュトリカも同じだったようだ。目を見開き、全身を震わせた。上げていた顔をうつむかせ、その表情が空中からでは見えなくなる。
「だめ……です。それは、だめです……」
「ならば、俺に体を許せ。俺の言う通りにその身を俺に捧げろ。娼婦のように俺を誘い、欲をその胎に出させろ。そうすれば、表向きは優しい陛下でいることを許してやる」
そんな約束をしてはいけない――意識だけで、叫ぶ。これ以上、君が傷付く必要はないと。それは悪魔の誘いだ。呪いの化身の言うことなんて、信じてはならないと。
しかし、意識だけになったエンファニオの声は届くことはない。
「……わかり、ました」
重たい沈黙を破り、シュトリカが面を上げた。どこか、そう、諦めたかのような顔で。だが、その翡翠の瞳に強い光があるのを見た。
「わ、わたしを……好きにして、いいです。でも、だから……お願いです、陛下の邪魔だけは、し、しないで下さい。お願いします……」
「……お前は本当に、あのお優しい陛下とやらを慕っているようだ。忌々しいが」
意識のまま、体から力が抜けるというのも変だが、脱力した。シュトリカ、と呟く。どうして君は、そこまでして私を守ろうとするんだ――無力さばかりが去来する。
アーベが裸身ごと寝台に横になり、自由になったシュトリカへ陰険な笑い声を上げる。
「いいだろう。だが、好きにするとは言ったが、同時に誘え、とも言ったはずだ。さあ、シュトリカ、やってみせろ。抱いて下さい、そう言え。最も淫らに請うんだ」
シュトリカの体は震えていた。抱きしめて震えを止めてあげたい。今すぐにこの悪夢から彼女を逃がしてあげたい――そう思うのに、反面、ほぼ裸体となったシュトリカの体から目が離せなかった。
「……抱いて、下さい」
「何をどうしてほしい。どこに何を入れて、どうされたいのか、自分の体を使ってやれ」
シュトリカが、再びうつむく。尻をついて座る。肩にかかっている寝間着を自ら落とし、完全な裸体となって、震えながらその股を開いていった。雷光が轟く。その光の下、初々しい桃色の媚肉、そして雌芯が明るみに出る。
小さな可憐な指で、自らの秘部を広げ、潤んだ瞳でシュトリカはささやく。
「こ、ここ、に。アーベ様、を下さい……中に、入れて……出して……」
「何をぶちまけてほしいんだ? いやらしいシュトリカ」
「……こ、子種、を……アーベ様の、子種を、お腹に、たくさん……」
「いい子だな、シュトリカ。お前の言う通り子種を注いでやろう。だが、その前に」
アーベの手が乱暴に伸び、シュトリカの体を寝台へと押し倒した。
「足は閉じるな。自分で持って開いたままにしていろ。わかったな?」
「は……い……」
シュトリカは言われるまま、両手で自らの太股を押さえた。まるで、空中にいるエンファニオへ見せつけるように。己の目では見たことのない秘路が暴かれて、思わず息を呑む。
「今夜はじっくり、お前の体を開いていってやる。ただの女になれるように」
「ん、んっ」
シュトリカの首筋に、アーベが唇を落とし、吸っては赤痣を残す。舌で筋を舐めながら、両胸の蕾を引っ張るようにしていくと、強烈な愛撫にだろう、シュトリカの瞳が蕩けていくのが見えた。
「ふあ……ン、んぁ……」
「胸はどうしてほしい。爪で弾かれたいか? また舌でねぶられたいか。言え」
「あ、ああ……口、口で……して、下さい……」
「好き者だな。だが、そうでなくては意味がない。お前をただの女にするのはこの俺だ」
アーベが舌先で胸の蕾を嬲るたび、ひくひくとシュトリカの体が蠢く。アーベの指は下へ、下へと焦らすように下がっていき、ついには――
「ああっ……!」
ツンと飛び出た花芽に触れた途端、シュトリカは身をよじる。親指と人差し指、それで捏ねるように花芯を弄くられたシュトリカは、頤を反らして瞳を見開いた。
「だめ、それ、だめですっ……! いや……ぁあ、ああっ。そこぉっ……」
「蜜を溢れさせてるくせに、よく言う。お前のここ、小さく可愛らしいが膨らんできたぞ」
「だめ、なのぉ……! 潰さ、ないでぇ……ひ、ぃっ」
懇願を無視するアーベの手は巧みに動いた。秘芽を潰しながら中指を媚肉に差し入れ、蜜に塗れた淫筒を掻き回す。雷光で丸見えの秘部は、確かに愛液に濡れていた。
「いやっ……わたし、わたしっ、また……来るのっ……」
「達しろ。好きなだけ快楽の海に溺れるがいい、シュトリカ」
「あ、ああ、あぁぁあーっ!」
全身を震わせ、胸を揺らしてシュトリカは絶頂の悲鳴を上げた。それでも言いつけを守っているのだろう。太股に指が食いこむくらいに強い力を使い、股を広げたままだ。そのせいで、宙にいる己にも淫猥な恥部はよく見えた。
「ほう……足は閉じなかったようだな。いい子だ。褒美をやる」
達した余韻に浸るシュトリカは、荒い呼気をするばかりで返事もしない。
アーベが一瞬、こちらを目だけで見た。見透かされている――そう思った。シュトリカにしたい全てを理解していると言わんがばかりに、アーベは口元だけをつり上げる。
そして、ついにその唇を乳房から離し、シュトリカの股間へと近づけていった。
「ああ……蜜だ。お前の甘い香りが、する。達したばかりで濃密な、女の香りだ」
「ふぁああっ!」
アーベは雌芯を鼻で擦り上げ、秘路から溢れる愛蜜を掬うように舌を使い、全体を啜る。甘い悲鳴を上げるシュトリカは、また登りつめたのだろう。四肢をおののかせ、背筋を反らした。それでもアーベは責め苦をやめない。幾度となく絶頂に達しているというのに。
「も、だめ……ぇ……許し、て……」
息も絶え絶えなシュトリカの言葉も、意味をなさない。アーベは蜜壺に入れる指を増やし、隘路を掻き分けながら、今度は内部を開いていく。陸に打ち上げられた魚みたいに体を跳ねさせ、何度も訪れる絶頂という波に、シュトリカの顔は完全に蕩けていた。
「……もうそろそろいいだろう。シュトリカ、足を開いてこちらに向け、尻を高く上げろ」
シュトリカの弛緩しきった体を見てだろうか、アーベはシュトリカを抱き、横向けに倒した。ようやく一息つけたシュトリカは、健気にも命じられるまま気怠そうに動く。
小ぶりな尻が高く上げられ、唾液と愛液が混ざった雫が、太股を汚しているのを見た。目が、逸らせない。辛そうにしているシュトリカに、何もできない己を悔やみながらも。
アーベが笑みを浮かべ、赤黒い怒張を秘裂に当てた。そして一気に、腰を突き出す。
「あ、ああぁ――!」
濡れきった媚肉は、易々と巨悪な男根を受け入れた。甘い悲鳴が響く。アーベは倒れそうになるシュトリカの両腕を引っ張り、後ろに反らしながらも腰を動かすのをやめない。
「入れただけで達したか。だが、まだだ。いくらでもお前を犯してやる。約束だからな」
「あ、あっ、ん、んぅっ……ひぁあっ」
「いいぞシュトリカ。絡みついて離れない最上の肉だ。一突きで持っていかれそうになる」
肉同士がぶつかる打擲音と二人の荒い呼気、鼻にかかった嬌声。軋む寝台の音をかき消し、部屋に響くのは紛れもない情交の証しだ。何度も全身を震わせ、愛液を撒き散らして達するシュトリカに、容赦せずアーベは肉の塊を突き入れ、淫肉の収斂を堪能している。
「善い、と言え。よがり狂った様をもっと見せろ。俺の名を呼んでいくらでも達せ」
「アーベ様、アーベさま、ぁ……っ。いいの……いい、わた、しっ。壊れるぅっ……」
己の名を呼ばず、狂ったように呪いの化身、その名を叫ぶシュトリカの体を、顔を、エンファニオは空中で見守ることしかできない。蕩けきった彼女の面に、頭を掻きむしりたい気持ちになる。
シュトリカ、ああ、シュトリカ。私だって君を――そう強く願い、アーベをただ憎んだ。
「あ、ああっ、アーベ様、来る、来るっ。わたし、また、あ、ひぁあ……」
「俺も、限界だ。さあ、お前の胎に子種を注ぐぞ。請え、出してくれ、と」
「だ、して……中、にっ。たくさん、下さい、一杯出してぇっ!」
「くぅ……っ」
腰の打ちつけが速まり、ぶるりと一つ尻を揺らすと、アーベはためらいもなく欲望の果てをシュトリカの中にぶちまけた。
「あ、ああんっ、ああ――っ!」
シュトリカが一際甘い悲鳴を上げた瞬間、雷鳴が轟き、絶頂の声を消し去った。アーベは、欲の残滓をこれでもかと吐き出すように、肉竿を縮むシュトリカの膣孔に擦りつけると、ようやくその胎内から屹立を抜く。
すっかり開いた蜜口からは、精液と愛液の混じった液体が零れ落ち、乱れきったシーツに染みを作った。男ならば誰でも興奮するであろう淫靡な光景はしかし、エンファニオにとっては絶望を呼び起こすだけの代物だ。
惚けるこちらを無視し、アーベは倒れ伏したシュトリカの体を元に戻す。今度は上乗りになり、未だ萎えることのない肉棒を隘路へと突き入れた。
「ひ、あああっ……!」
「今日は徹底的に抱いてやる。お前が気絶しても、その胎に子種を注ぐぞ、シュトリカ」
「んあ、あっ、ああ、あ……」
ぐちゅぐちゅと蜜肉を掻き回される都度、シュトリカの顔は再び蕩けていく。その瞳に灯るのは快楽の灯火で、虚ろいだ視線はこちらを見ることはない。二人の獣じみた性交は続く。己を無視したまま、いつしか暗雲が晴れても。
ときに舌を絡め合い、汗を混ぜ、体位を変えて抱きしめ合う二人の姿を見せつけられて、己の中に情欲がこみ上げてくるのがわかった。
私は彼女から離れた方がいい――そう思い、脱力したまま意識を手放す。眠りに落ちるように闇の中へ落下する最中、それでも浮かぶのはシュトリカの柔らかい微笑みだった。
だが、暗雲が空を満たし、雷の音を鳴らしはじめた頃合いだろうか。雷鳴だけが轟く館の自室で、エンファニオは一人、激しい動悸に襲われていた。
それは、呪いが出てくる前兆だということを、自身だけがよく理解している。
「やめろ……」
雷が光るたび、鼓動が激しくなる。寝台に横たわり、汗を掻きながら必死に胸を押さえた。そんな抵抗を嘲笑うかのように鼓動は増し、全身から力が抜けていく。
なぜ、こんな大事なときに表に出ようとする――忌々しさをこめて歯噛みするも、こめかみまでが痛みはじめた。ぼやける視界で、思わずシュトリカの部屋に続く扉を見る。
(シュトリカを抱きたいのだろう、お前は)
花枯らしの歌を求めた瞬間、頭の中に声が響いた。己と似た、それでいて全く違う声音に肩が跳ね上がる。呪いの化身、アーベの声を聞いたのは、これがはじめてだ。
「違う……」
(違うだと? 温室で、獣のようにシュトリカの唇を貪ったくせに、よく言う)
「あれ、は……花の、せいだ」
(笑わせてくれる。お前はシュトリカの、あの柔らかな体にしゃぶりつきたい。自分を突き入れ、溜まりに溜まった欲を放ちたくてたまらない、ただのけだものだ)
せせら笑いと共に、シュトリカの淫靡な姿が浮かび上がる。アーベに抱かれ、甘い声音を上げて絶頂に達する姿。谺する嬌声。震える胸、その頂きの尖りまでがくっきりと。体中の血管が沸騰しそうになり、頭を抱えて唇を噛んだ。だが、声は止まない。
(温室で表に出てやってもよかったが、花枯らしの歌はさすがに堪えた。今夜もまた、お前にシュトリカの淫らな姿を見せてやろう。今宵はじっくり抱いてやるつもりだからな)
「やめてくれ……やめ、ろ」
(さあ、宴の時間だ、我が半身。その体を、俺によこせ)
飛び出した絶叫が落ちた雷にかき消された瞬間、抵抗していた意識は無情にも、泥に飲みこまれるように暗闇へ落ちていった。
静寂が再び部屋を支配する。灯るのは角灯ではなく、頬に浮き上がる彼岸花の紋様だ。
「……くく」
エンファニオの意識は離脱し、ただ空中から見ることしかできない。欲情した己の瞳や大仰に舌なめずりする、醜悪な様を。
アーベは動く。まっすぐ、迷いもなくシュトリカの部屋へと滑りこむ。意志が効かない体に引っ張られるように、自身の意識もまた。
シュトリカは、自らの大きい寝室の片隅で眠りについていた。アーベが訪れたことを察してだろう。鳥籠に入り、大人しくしていたペクが羽根を動かし、小さく鳴いた。それでもシュトリカは起きない。無防備にその体を横たえたままだ。
逃げてくれ、と願う祈りも届かない。アーベは微笑み、寝間着を寝台の側で脱いだ。そのまま、眠るシュトリカの上に覆い被さる。
シーツを剥がすと、薄い寝間着に包まれたシュトリカの肌が露わとなった。肩から胸にかけ、大きく露出した白い寝間着は、暗闇の中でも眩しく光るように感じる。
昨夜の乱暴な様子とは違い、アーベは優しい手つきで前開きの寝間着を解いていく。ふるりと飛び出る胸、股を隠す金色の和毛が薄い暗がりの中、暴かれてしまう。
目覚めぬシュトリカの体を堪能するように、アーベはその細い太股から腹にかけ、するすると指でなぞった。何度も、何度も、執拗に。全身を手のひらと指で蹂躙していく。シュトリカは夕食のとき、葡萄酒を飲んでいる。そう簡単に起きることはないかもしれない。
「ん……」
身動ぎするシュトリカは、まだ目覚めない。それどころか、違和感を覚えたのか片足を立て、和毛で隠されていた花弁を開け放つ始末だ。夜気に当たったためか、それとも愛撫で感じているのだろうか――薄い乳輪の先はぷくりと膨らみ、触られるのを待っている。
やめろ、と叫ぶ己をあざ笑い、アーベは形のよい乳房の頂きを、くすぐるように爪弾く。
「あぅ……んっ」
シュトリカの口から、微かに甘い吐息が漏れた。アーベが舌先で、再び乳首をつつく。唾液に塗れる頂きはほんのりと赤く染まり、熟れた果実みたいだ。
そのまま、そう――己がそうしたかったように、乳輪ごと口に含んで尖りを軽く噛むと、はじめてシュトリカが重たげに瞼を持ち上げた。
「う、んっ……?」
「夢でも見ていたのか、シュトリカ。寝ているところを抱いてやろうと思ったのだが」
「あ……アーベ、様っ……?」
「ほう、すぐに俺だとわかったか。あいつの真似事をしてもよかったかもな」
「どうして、また……あなたが、ぁ……っ」
酷薄に笑うアーベは音を立て、じゅうっと乳房を吸う。裸にされていることを理解したシュトリカは足掻くように動くも、長躯で押し潰されては叶わない。今すぐ体を引き剥がしたい気持ちに駆られるエンファニオだが、意識のままではそれすらできないのが悔しい。
「どうして、どうして……っ」
「俺はあいつ自身だ。それを認めない限り、俺はアーベのまま、お前を抱く」
「いや、ぁ……」
片手で乳房を揉み、もう一方の胸を舌と唇で嬲りながら、アーベは瞳を暗く輝かせる。
「お前が俺を拒むというなら、そうだな……面白い話をしていたろう、確か。議会が開かれると。そのときにも俺が表に出てやろうか? 臣下の前で、洗いざらいぶちまけてやる」
その言葉にエンファニオは愕然とする。それは、シュトリカも同じだったようだ。目を見開き、全身を震わせた。上げていた顔をうつむかせ、その表情が空中からでは見えなくなる。
「だめ……です。それは、だめです……」
「ならば、俺に体を許せ。俺の言う通りにその身を俺に捧げろ。娼婦のように俺を誘い、欲をその胎に出させろ。そうすれば、表向きは優しい陛下でいることを許してやる」
そんな約束をしてはいけない――意識だけで、叫ぶ。これ以上、君が傷付く必要はないと。それは悪魔の誘いだ。呪いの化身の言うことなんて、信じてはならないと。
しかし、意識だけになったエンファニオの声は届くことはない。
「……わかり、ました」
重たい沈黙を破り、シュトリカが面を上げた。どこか、そう、諦めたかのような顔で。だが、その翡翠の瞳に強い光があるのを見た。
「わ、わたしを……好きにして、いいです。でも、だから……お願いです、陛下の邪魔だけは、し、しないで下さい。お願いします……」
「……お前は本当に、あのお優しい陛下とやらを慕っているようだ。忌々しいが」
意識のまま、体から力が抜けるというのも変だが、脱力した。シュトリカ、と呟く。どうして君は、そこまでして私を守ろうとするんだ――無力さばかりが去来する。
アーベが裸身ごと寝台に横になり、自由になったシュトリカへ陰険な笑い声を上げる。
「いいだろう。だが、好きにするとは言ったが、同時に誘え、とも言ったはずだ。さあ、シュトリカ、やってみせろ。抱いて下さい、そう言え。最も淫らに請うんだ」
シュトリカの体は震えていた。抱きしめて震えを止めてあげたい。今すぐにこの悪夢から彼女を逃がしてあげたい――そう思うのに、反面、ほぼ裸体となったシュトリカの体から目が離せなかった。
「……抱いて、下さい」
「何をどうしてほしい。どこに何を入れて、どうされたいのか、自分の体を使ってやれ」
シュトリカが、再びうつむく。尻をついて座る。肩にかかっている寝間着を自ら落とし、完全な裸体となって、震えながらその股を開いていった。雷光が轟く。その光の下、初々しい桃色の媚肉、そして雌芯が明るみに出る。
小さな可憐な指で、自らの秘部を広げ、潤んだ瞳でシュトリカはささやく。
「こ、ここ、に。アーベ様、を下さい……中に、入れて……出して……」
「何をぶちまけてほしいんだ? いやらしいシュトリカ」
「……こ、子種、を……アーベ様の、子種を、お腹に、たくさん……」
「いい子だな、シュトリカ。お前の言う通り子種を注いでやろう。だが、その前に」
アーベの手が乱暴に伸び、シュトリカの体を寝台へと押し倒した。
「足は閉じるな。自分で持って開いたままにしていろ。わかったな?」
「は……い……」
シュトリカは言われるまま、両手で自らの太股を押さえた。まるで、空中にいるエンファニオへ見せつけるように。己の目では見たことのない秘路が暴かれて、思わず息を呑む。
「今夜はじっくり、お前の体を開いていってやる。ただの女になれるように」
「ん、んっ」
シュトリカの首筋に、アーベが唇を落とし、吸っては赤痣を残す。舌で筋を舐めながら、両胸の蕾を引っ張るようにしていくと、強烈な愛撫にだろう、シュトリカの瞳が蕩けていくのが見えた。
「ふあ……ン、んぁ……」
「胸はどうしてほしい。爪で弾かれたいか? また舌でねぶられたいか。言え」
「あ、ああ……口、口で……して、下さい……」
「好き者だな。だが、そうでなくては意味がない。お前をただの女にするのはこの俺だ」
アーベが舌先で胸の蕾を嬲るたび、ひくひくとシュトリカの体が蠢く。アーベの指は下へ、下へと焦らすように下がっていき、ついには――
「ああっ……!」
ツンと飛び出た花芽に触れた途端、シュトリカは身をよじる。親指と人差し指、それで捏ねるように花芯を弄くられたシュトリカは、頤を反らして瞳を見開いた。
「だめ、それ、だめですっ……! いや……ぁあ、ああっ。そこぉっ……」
「蜜を溢れさせてるくせに、よく言う。お前のここ、小さく可愛らしいが膨らんできたぞ」
「だめ、なのぉ……! 潰さ、ないでぇ……ひ、ぃっ」
懇願を無視するアーベの手は巧みに動いた。秘芽を潰しながら中指を媚肉に差し入れ、蜜に塗れた淫筒を掻き回す。雷光で丸見えの秘部は、確かに愛液に濡れていた。
「いやっ……わたし、わたしっ、また……来るのっ……」
「達しろ。好きなだけ快楽の海に溺れるがいい、シュトリカ」
「あ、ああ、あぁぁあーっ!」
全身を震わせ、胸を揺らしてシュトリカは絶頂の悲鳴を上げた。それでも言いつけを守っているのだろう。太股に指が食いこむくらいに強い力を使い、股を広げたままだ。そのせいで、宙にいる己にも淫猥な恥部はよく見えた。
「ほう……足は閉じなかったようだな。いい子だ。褒美をやる」
達した余韻に浸るシュトリカは、荒い呼気をするばかりで返事もしない。
アーベが一瞬、こちらを目だけで見た。見透かされている――そう思った。シュトリカにしたい全てを理解していると言わんがばかりに、アーベは口元だけをつり上げる。
そして、ついにその唇を乳房から離し、シュトリカの股間へと近づけていった。
「ああ……蜜だ。お前の甘い香りが、する。達したばかりで濃密な、女の香りだ」
「ふぁああっ!」
アーベは雌芯を鼻で擦り上げ、秘路から溢れる愛蜜を掬うように舌を使い、全体を啜る。甘い悲鳴を上げるシュトリカは、また登りつめたのだろう。四肢をおののかせ、背筋を反らした。それでもアーベは責め苦をやめない。幾度となく絶頂に達しているというのに。
「も、だめ……ぇ……許し、て……」
息も絶え絶えなシュトリカの言葉も、意味をなさない。アーベは蜜壺に入れる指を増やし、隘路を掻き分けながら、今度は内部を開いていく。陸に打ち上げられた魚みたいに体を跳ねさせ、何度も訪れる絶頂という波に、シュトリカの顔は完全に蕩けていた。
「……もうそろそろいいだろう。シュトリカ、足を開いてこちらに向け、尻を高く上げろ」
シュトリカの弛緩しきった体を見てだろうか、アーベはシュトリカを抱き、横向けに倒した。ようやく一息つけたシュトリカは、健気にも命じられるまま気怠そうに動く。
小ぶりな尻が高く上げられ、唾液と愛液が混ざった雫が、太股を汚しているのを見た。目が、逸らせない。辛そうにしているシュトリカに、何もできない己を悔やみながらも。
アーベが笑みを浮かべ、赤黒い怒張を秘裂に当てた。そして一気に、腰を突き出す。
「あ、ああぁ――!」
濡れきった媚肉は、易々と巨悪な男根を受け入れた。甘い悲鳴が響く。アーベは倒れそうになるシュトリカの両腕を引っ張り、後ろに反らしながらも腰を動かすのをやめない。
「入れただけで達したか。だが、まだだ。いくらでもお前を犯してやる。約束だからな」
「あ、あっ、ん、んぅっ……ひぁあっ」
「いいぞシュトリカ。絡みついて離れない最上の肉だ。一突きで持っていかれそうになる」
肉同士がぶつかる打擲音と二人の荒い呼気、鼻にかかった嬌声。軋む寝台の音をかき消し、部屋に響くのは紛れもない情交の証しだ。何度も全身を震わせ、愛液を撒き散らして達するシュトリカに、容赦せずアーベは肉の塊を突き入れ、淫肉の収斂を堪能している。
「善い、と言え。よがり狂った様をもっと見せろ。俺の名を呼んでいくらでも達せ」
「アーベ様、アーベさま、ぁ……っ。いいの……いい、わた、しっ。壊れるぅっ……」
己の名を呼ばず、狂ったように呪いの化身、その名を叫ぶシュトリカの体を、顔を、エンファニオは空中で見守ることしかできない。蕩けきった彼女の面に、頭を掻きむしりたい気持ちになる。
シュトリカ、ああ、シュトリカ。私だって君を――そう強く願い、アーベをただ憎んだ。
「あ、ああっ、アーベ様、来る、来るっ。わたし、また、あ、ひぁあ……」
「俺も、限界だ。さあ、お前の胎に子種を注ぐぞ。請え、出してくれ、と」
「だ、して……中、にっ。たくさん、下さい、一杯出してぇっ!」
「くぅ……っ」
腰の打ちつけが速まり、ぶるりと一つ尻を揺らすと、アーベはためらいもなく欲望の果てをシュトリカの中にぶちまけた。
「あ、ああんっ、ああ――っ!」
シュトリカが一際甘い悲鳴を上げた瞬間、雷鳴が轟き、絶頂の声を消し去った。アーベは、欲の残滓をこれでもかと吐き出すように、肉竿を縮むシュトリカの膣孔に擦りつけると、ようやくその胎内から屹立を抜く。
すっかり開いた蜜口からは、精液と愛液の混じった液体が零れ落ち、乱れきったシーツに染みを作った。男ならば誰でも興奮するであろう淫靡な光景はしかし、エンファニオにとっては絶望を呼び起こすだけの代物だ。
惚けるこちらを無視し、アーベは倒れ伏したシュトリカの体を元に戻す。今度は上乗りになり、未だ萎えることのない肉棒を隘路へと突き入れた。
「ひ、あああっ……!」
「今日は徹底的に抱いてやる。お前が気絶しても、その胎に子種を注ぐぞ、シュトリカ」
「んあ、あっ、ああ、あ……」
ぐちゅぐちゅと蜜肉を掻き回される都度、シュトリカの顔は再び蕩けていく。その瞳に灯るのは快楽の灯火で、虚ろいだ視線はこちらを見ることはない。二人の獣じみた性交は続く。己を無視したまま、いつしか暗雲が晴れても。
ときに舌を絡め合い、汗を混ぜ、体位を変えて抱きしめ合う二人の姿を見せつけられて、己の中に情欲がこみ上げてくるのがわかった。
私は彼女から離れた方がいい――そう思い、脱力したまま意識を手放す。眠りに落ちるように闇の中へ落下する最中、それでも浮かぶのはシュトリカの柔らかい微笑みだった。
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
【R18】カッコウは夜、羽ばたく 〜従姉と従弟の托卵秘事〜
船橋ひろみ
恋愛
【エロシーンには※印がついています】
お急ぎの方や濃厚なエロシーンが見たい方はタイトルに「※」がついている話をどうぞ。読者の皆様のお気に入りのお楽しみシーンを見つけてくださいね。
表紙、挿絵はAIイラストをベースに私が加工しています。著作権は私に帰属します。
【ストーリー】
見覚えのあるレインコート。鎌ヶ谷翔太の胸が高鳴る。
会社を半休で抜け出した平日午後。雨がそぼ降る駅で待ち合わせたのは、従姉の人妻、藤沢あかねだった。
手をつないで歩きだす二人には、翔太は恋人と、あかねは夫との、それぞれ愛の暮らしと違う『もう一つの愛の暮らし』がある。
親族同士の結ばれないが離れがたい、二人だけのひそやかな関係。そして、会うたびにさらけだす『むき出しの欲望』は、お互いをますます離れがたくする。
いつまで二人だけの関係を続けられるか、という不安と、従姉への抑えきれない愛情を抱えながら、翔太はあかねを抱き寄せる……
托卵人妻と従弟の青年の、抜け出すことができない愛の関係を描いた物語。
◆登場人物
・ 鎌ヶ谷翔太(26) パルサーソリューションズ勤務の営業マン
・ 藤沢あかね(29) 三和ケミカル勤務の経営企画員
・ 八幡栞 (28) パルサーソリューションズ勤務の業務管理部員。翔太の彼女
・ 藤沢茂 (34) シャインメディカル医療機器勤務の経理マン。あかねの夫。
【R18】愛欲の施設-Love Shelter-
皐月うしこ
恋愛
(完結)世界トップの玩具メーカーを経営する魅壷家。噂の絶えない美麗な人々に隠された切ない思いと真実は、狂愛となって、ひとりの少女を包んでいく。
【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】
うすい
恋愛
【ストーリー】
幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。
そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。
3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。
さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。
【登場人物】
・ななか
広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。
・かつや
不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。
・よしひこ
飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。
・しんじ
工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。
【注意】
※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。
そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。
フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。
※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。
※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。
女の子がいろいろされる話
ききょきょん
恋愛
女の子がいじめらたり、いじられたり色々される話です。
私の気分であげるので、性癖とか方向性はぐちゃぐちゃです、よろしくお願いします。
思いついたら載せてくゆるいやつです。。
エッチな下着屋さんで、〇〇を苛められちゃう女の子のお話
まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)
『色気がない』と浮気された女の子が、見返したくて大人っぽい下着を買いに来たら、売っているのはエッチな下着で。店員さんにいっぱい気持ち良くされちゃうお話です。
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる