鉄血のブルートアイゼン+

どるき

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魔王の娘とスポーツ大会

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 朋子らが通う梅園高校では、毎年六月に実施しているレクリエーションがある。
 いわゆるクラス別のスポーツ大会で、今年の種目はバトミントンに決まっていた。

「チーム分けをするから、とりあえず男女でペアになって!」

 一学年六クラスあり、各クラスが選んだ代表三組でのトーナメントで競う。
 しかもペアは男女で組むことになっており、大会を明後日に控えたこの日は体育の授業を使って代表を決めようという事になっていた。
 クラス委員の女子、高天原が牽引してペアを作っていき当然のように朋子は勇とペアを組んだ。
 組み合わせが決まったところで早速クラス内で練習試合を行うことになった。
 試合ルールは十五ポイントの一セット戦で、朋子と勇の相手は谷川だった。

「今日は負けないぜ」

 谷川は自信満々に勇を威圧する。その様子に彼とペアを組んでいる中島も委縮しているほどだった。
 朋子はそんな谷川の態度に少しムッとした表情を浮かべて「乱暴な人は嫌い」と言わんばかりに彼を睨む。

「(あんなジッと見つめてくるなんて、もしかして俺の魅力に見惚れているのか?)」

 谷川はにらみつけられつつも都合がいい妄想に浸っていた。

「先行は私が行きます」

 谷川のパートナー、中島のサーブから試合が開始された。
 対角線上に待ち構える朋子に緩いサーブが打ち込まれ朋子はそれを難なく返す。
 谷川はラリーをすることなどお構いなしと言った様子で山なりに返されたシャトルを力一杯打ち付けた。

「よし!」

 筋肉任せの速いショットが打ち込まれて先制のポイントが敵にとられた。
 この後も同じような展開が続いて朋子らがポイントを取れたのはミスショットによる一点のみ、五対一と開幕早々に不利な状況に追い込まれた。
 あまりの速さに素人の二人には対応できないのだ。

「速すぎるわ」
「でも谷川君も素人だ。つけいる隙はある」

 谷川のバトミントン技術は朋子らと同じ素人レベルなのは目に見えてわかっているが、流石にラグビー部の一年生エースと言うべきなのかその打ち込みは鋭い。

「ふんっ!」

 谷川はサーブも鋭いがコートの端から打たれるので失速してさすがにサービスエースとまではいかない。勇はサーブを高い山なりで返して中島のリターンを誘う。
 谷川を超えて中島が返したリターンは狙い通りの優しい返球である。朋子はそれに思い切り打ち込んだ。

「あだぁ!」

 普段は押さえている身体能力を開放してのスマッシュは筋肉自慢の谷川にも負けていない。女の力と侮った谷川の顔面をシャトルが撃ち貫く。

「大丈夫?」
「いつつ……油断したぜ」

 痛みは瞬間的なものですぐに引いたが谷川の眉間は赤く腫れていた。

「コツを掴んだみたい」

 この一発で波に乗った朋子は次々とスマッシュを決めていき、最終的には十五対八で朋子と勇の勝利にて決着がついた。
 互いに素人のため高度なテクニックの応酬がないのだが、そうなると萎縮して力を発揮しきれなかった中島が足手まといとなった谷川らに勝ち目は無い。
 男の体力を過信した谷川は中島とコミュニケーションを取って連携せず一人相撲を取っていたのだからダブルスで勝てる道理がなかった。
 その後授業時間が終わるまで試合は繰り返され、下校前のホームルームの時間に出場選手について話し合う事になった。
 ここでもやはりクラス委員の高天原が指揮を執る。

「───今日の結果を踏まえて選手を選びます。先ずは私と斎藤君、石神君と神代さんは確定でいいと思うけれど、いいかしら?」

 試合の結果を踏まえて二組は滞りなく決まる。
 残る一枠だが、ここで高天原は悩んでいることを打ち明けた。

「あとは最後の一組なんだけど……スコアは山田君と加藤さんのペアの方が良かったのだけれど、谷川君個人の力量も捨てがたいのよ。どうするべきかみんなの意見をお願いします」

 谷川らのペアと加藤らのペアは授業中の勝敗では同じ四勝二敗なのだが、得失点を計算すると加藤らの方が順位が上のため高天原は判断に困っていた。
 スコアでは劣るとは言え谷川の身体能力は捨てがたいし、なにより谷川らの敗因が主に中島が萎縮してウィークポイントとなっていたことが原因である。
 クラス委員としてはイジメまがいになるため言いにくいが、中島以外の女子と谷川が組めば大きな戦力になると思っていた。
 高天原はクラス委員でもあるがその前にバトミントン部の部員なのでことバトミントンに関してはクラス一である。
 その判断力が谷川を外すべきではないと知らせているので悩む。
 かといって斎藤も外せないし朋子らのペアを崩すのも申し訳ないため自ずとその標的は加藤とペアを組んでいる山田に向かってしまう。

「だったらあたし達が辞退して谷川君達を出せばいいよ。山田君もいいよね?」
「別にいいぜ。そこまで必死になって出るつもりもないし」
「あの……だったらちょっと言いにくいのだけど、加藤さんと谷川君でペアを組んでもらえないかしら」
「なんで?」
「私の立場だといいにくいのですが……中島さんはバトミントンが苦手のようだから……」
「どうせ出るならそうしてくれると俺も助かるわ」
「……ごめんなさい」

 辞退した加藤に対して出した高天原の提案に谷川も同意する。彼もいい加減にペアを選んだせいで勇に負けたと思っている節があり、その態度がますます中島を萎縮させていた。
 そんな中でやり玉にされた中島は辛くて逃げたくなるのも当然だった。
 一言「ごめんなさい」と言うと教室から駆けだしてしまった。

「待ってよ!」

 心配した朋子も彼女を追って教室を出た。
 自分のせいで彼女を泣かしたと神妙になる高天原、後を追って駆けだした勇、悪びれずに速くホームルームを切り上げようぜと態度で自己の考えを示す谷川と反応は分かれた。

「追いついた」

 中島は特にスポーツに明け暮れるなど体を鍛えてきたわけではない。魔族としての力で高い身体能力を発揮できる朋子から逃げ切れる道理など無かった。

「放っておいてよ! 私はあなたみたいに取り柄なんてなにもないんだし!」
「何を言っているのよ、このちちおばけ!」
「え?」

 朋子の手を振り払おうとした中島は思わぬ切り返しに驚いて朋子の顔を見た。
 張り詰めた表情は冗談で言っているようには見えない。

「だってそうでしょう? 中島さんのはクラス一大きいんだし、みんな注目していていつも気になってたんだから」
「なに……それ」

 朋子の言うことは言葉通りの意味である。
 この中島裕美という女子の胸囲は朋子達一年三組の中で一番大きい。
 本人は地味で目立たない大人しい子だと自嘲しているが高校生など大半は目に見えて判る乳の大きさに釘付けである。
 日頃から加藤も「中島ちゃんが居なければもっと私はモテてた」などと言うほどに彼女の乳は大きい。
 谷川が彼女をペアに選んだ一番の理由もその乳のデカさに吊られたからと言うほどで、勇を含めてこの日体育の時間に対戦した相手の男子はコートの中で必死に動く際の揺れを視姦していた程なのだ。朋子が嫉妬してしまうのも無理はない。

「別に大会に出てとも出ないでとも言わないけれど、あなたに取り柄がないなんて訳ないよ。だから戻ろう、どちらにしても堂々と答えればいいよ」
「そうかも……メソメソしてごめんなさい」
「またそうやって。行こう、中島さん」

 朋子の説得で中島も戻ってきて、はっきり彼女の口から「加藤さんに代わって欲しい」と答えが出た。
 週末金曜日に行われる大会の準備はこうして整った。

 一段落したその日の帰り道、朋子は勇を寄り道に誘った。
 行き先は駅前にあるカラオケボックスだが朋子の目的は歌ではない。

「カラオケなんていつ以来だろう」
「勇はあまりやらないの?」
「あまり歌とかは得意じゃないしね」
「実を言うと私も似たようなものよ」

 二人はドリンクバーからジュースを酌んで個室に入る。サイドメニューを頼まない限りこれでこの部屋は二人だけのプライベートルームになる。
 扉を閉めて勇が座ると早々に朋子は勇の隣に寄り添って彼の股を撫でる。場所を気にして勇は抵抗しようとしたが朋子はその手をテレキネシスで拘束して払う。

「ちょっと! こんなところでいきなり?」
「これはお仕置きなんだから抵抗はダメよ。なんでお仕置きされるかよく考えてよ」
「そんなこと言われても……この前のえっちが不完全燃焼だったから?」

 お仕置きと言われても勇は心当たりがないので先日の日曜日の事を答えた。
 だが朋子にとってはそれはついでである。

「それもあるけれど別件よ。ヒントは今日の体育」

 勇は体育と言われても一緒にバトミントンをしたことくらいしか頭に浮かばない。
 あれこれと答えるが的外れとカンの鈍い勇の様子に朋子は辛抱できずに次々とヒントを出す。
 ヒントを出しつつも正解を導けない勇へのお仕置きは激しくなり、面妖な手つきで勇のジュニアは硬直していた。身動きが取れないままムズムズと刺激されても発散までは出来ない生殺しの感触に勇も悶え苦しむ。

「次のヒントは今日のホームルーム……ここまで来たらわかるわよね?」
「ええと……もしかしてスポーツ大会の代表になりたくなかったとか?」
「違うわよ」

 バトラー仕込みの指技は男を操る妙技である。今までは披露する機会が初えっちのときしか無かったとはいえ一目見てキヨが「おぼこではない」と見抜くほどのそれは神業である。勇の男根は今にも発射しそうにそびえ立ちズボンのデリケートゾーンでテントを築く。

「これが最後のヒント……中島さんが関係しているわ。これでわからなかったらどうなっちゃうかなあ」

 朋子は冷たい目線で勇を見つめながら指を這わせる。
 勇にとってはその目線だけでゾクゾクして背中に快感が走るほどなので発射しそうになるのは当然だった。

「もしかして、体育の時間に中島さんのおっぱいを見たこと?」
「ようやくわかったのね」

 勇が正解にたどり着いたことで朋子は指を離す。
 刺激が途絶えて射精しそうになるほどの快感の波を一つ越えると自然と猛る勇のおちんちんは落ち着き始めた。

「でもあんな目立つものを見るなと言われても……それに僕にとっては朋子が一番だってこの前も言ったじゃないか」
「オンナノコってのは嫉妬深いのよ。独占欲が強くて自分の男が他の女をみてにやけるとすごくイライラするの!」
「そうなんだ……ごめん」
「まあ、勇もオトコノコなんだから多少は許してあげるけれど、あれから一度も勇の方から来てくれないんだから流石に堪忍袋の緒が切れるわよ。今日の所は私から誘っちゃったけれど、今度こそ勇の方から来てよ」
「そういわれてもなあ」

 朋子はこのまま個室で事に及ぶ気まんまんで勇を説教した。
 それに対して勇は煮え切らない態度を取る。
 朋子もその反応には少しムッとしてお説教を続けようかとしたのだが、そこに勇の携帯電話へとコールが届く。

「やあ勇君。どうにもキミが性的興奮を覚えた気配を察したのだが、まさかエリスと事に及ぼうなんて考えていませんよね?」
「し、していませんよ」
「ならいいのですが、くれぐれもあまり遅くならないようにしてくださいね」

 電話をかけてきたのはバトラーだった。バトラーは勇が興奮して朋子と事に及びたい気分になるとどういう仕組みなのかわからないが電話をかけてきて邪魔する。
 今の一回だけなら偶然で済ませられるが今週に入って既に三回目なのだからどうにも困ってしまう。
 放課後の帰り道を狙って朋子を誘ってえっちなことをしようと思うたびにこれなのだから勇が警戒しても当然である。

「今の電話、もしかしてバトラー?」
「うん。どうやっているのかわからないけれど、僕が朋子とえっちなことをしたいと考えるたびに電話してくるんだ。月曜からずっとこの様子だよ」
「ふぅん……でも勇の方からしたいって思ってくれていたんだ。それは嬉しいよ」
「そりゃあ僕だって朋子の彼氏だからね。えっちの一つくらいリード出来ないで彼氏として威厳がないから頑張らないと」
「威厳なんて肩肘張らなくていいのに。でもそういうところも好きよ」

 朋子はそう言って勇の唇を自然な動きで奪った。
 されるがままの受け身な自分をみっともないと思いつつも彼女には逆らえない。
 勇の中にはいつの間にかそんなルールが出来ていた。
 このまま犯されてしまいたいと勇は劣情を朋子にぶつける。絡み合うしたの粘膜は二人の胸を高鳴らせた。
 そんなドキドキと見つめ合う二人に無粋な振動音が割り込んできた。ヴヴヴと小刻みな振動はテーブルを揺らして音を立てる。

「何かしら」

 なっていたのはテーブルの上に置いていた朋子の携帯電話である。
 キスを中断して新着を確認するとそれはバトラーからのメールだった。

 続きをするなら押しかけますよ?
 エミーのA3号室ですよね

 バトラーのメールは要するにこれ以上のえっちはするなという警告だった。押しかけるとは当然、二人にえっちなことをさせたくないという意味に相違ない。

「なによもう」
「でもどうやって僕らの行動を?」
「知らないわ! 邪魔されてムシャクシャするし、なにか歌いましょうよ」

 朋子もこのまま続けたら本当にバトラーは邪魔するだろうなと思い、事に及ぶのをあきらめた。
 その後二人は二時間の貸し切り時間が終わるまで歌い続けた。歌う曲は何処かで聞いた曲を入れて歌っていたのだが、最後の一曲となったところでふと朋子は思い出す。

「そうだ、ガイライバーってあるかな?」

 先日イベントに参加したガイライバーのテーマソングを朋子は探した。
 流石に地元ローカルの強みなのだろうか、過去のシリーズ毎に曲は取り揃えてあり朋子はその中からベースとなる初代テーマを選ぶ。

「───突き進め~茨の道を~! ガイライバーァァァ!」

 うろ覚えながら熱唱した朋子は曲のテンポに乗って熱いシャウトを轟かせた。勇はそれをみながらいつもと違った一面にドキドキとしてしまう。
 ビブラートで震える喉、熱くなって額に浮かぶ汗、叫んだ時のいつもと違った朋子の声とどれも勇には新鮮だった。

『お客さん、そろそろお時間です』

 ガイライバーのテーマを歌い終わって一息ついたところで貸し切り時間は終わった。
 結局バトラーの邪魔でえっちなことは出来なかったが、あまり興味がなかったカラオケも二人で行けば楽しいというのは二人にとって大きな発見だった。
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