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第2章 恋のキューピッド大作戦 〜 Shape of Our Heart 〜
イヴの欠片2
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《イヴの欠片》とそのパートナーは、先祖返り並みのパワーと驚異的な回復能力を持ち合わせている。また、自身の身体と引き換えに他者を癒やしたり、常識では考えられない力を発揮する。
《少数派の最大派閥》、ユグド&レジスタンス。
《言霊》、セイ&リーシャ・バーデンベルグ。
《岩乗構造》、リズ。《代替生成》、リラ。二人合わせて《小さな王国》。
《翼(仮)》、グレイジー&クリストファー・レイネット。
「これが《イヴの欠片》と各パートナーの能力名だ」
「……これ、アスカが命名したんですか?」
ふふんと唇の端を吊り上げてアスカは得意げに笑い、一方でクリスくんは苦々しげに眉根を寄せる。
「そうだが、それがどうした?」
「……いえ、なんでもありません」
クリスくんの返答は尻すぼみになって消えてしまった。
無理もない。こんな厨ニ病全開の能力名をつけられては、恥ずかしくて外も歩けないだろう。うかうかしていたらアスカは勝手に翼の能力名を付けてしまうだろうし、早急に自身で命名しておくのが良いだろう。
と、そんなことを俺は思っていたのだが、実はそうでもないようだ。
「……くそう、予想以上に良いネーミングだ。僕も真面目に考えないと……」
アスカに聞こえない程度の声量で、彼はぼそりと呟いていた。どうやら対抗意識を燃やしていたらしい。
(……クリスくん、厨ニ病って知ってる?)
「? 知りません。 新しい病気ですか?」
知らないようだった。この世界に厨ニ病は存在しないらしい。そういえばクリスくん、以前にヤンキーの格好でポーズ決めまくってたな。きっと、腕に包帯巻いたりするのが好きなんだろうな。
(んーん。なんでもないよ)
「なんです? 急に優しげな声色になって……。何か企んでたりしないですよね」
そんなことしないよ。予想以上に子供らしい一面を見せてくれたクリスくんを微笑ましく思っているだけだよ。君の中で俺はどういう風にプロファイルされているんだ、まったくもう。
セドリックさんの墓参りを終えた俺達はアスカの部屋に来ていた。自室への戻り際、ちょうど医師のガンマさんとアスカの部屋の前で遭遇したので、そのまま診察をすることになったのだ。クリスくんたちはレジスタンスに来てから(昨日を除いて)毎日欠かすこと無く診察を受けている。《イヴの欠片》とそのパートナーについては未解明なことが多く、日々観察を続けているのだそうだ。
「《言霊》ってことは、セイとリーシャは《声》か《音楽》に関する能力ですかね。あ、もしかして《歌姫》って、能力ありきですか?」
「んー? んー。まあ、半々だな。」
クリスくんは上裸になりガンマさんの診察を受けつつ、ベッドにあぐらをかくアスカと会話している。
「あいつは地声がいいからな。仕事のときは能力なし。地声しか使ってないって言われても、まあ、信じられないことはない」
(ということは、《声》に関する能力ってのは当たりってことか)
まーなーとアスカは肯定する。
へー、どんな能力なんだろう。気になる。
「そうだな。まあ《声》でできることは基本何だってできると思っていいな。あいつの能力はおっもしれーぞ? 見てみての、いや、聞いてみての、いやいや、見て聞いてみてのお楽しみだ」
しっしっしと悪戯っ子のような笑みを浮かべ、アスカは言う。
「はい、後ろ周ってー」
ガンマさんの掛け声とともに、くるりとクリスくんの座る回転椅子が反転する。
ガンマさんは、今年で御年70歳となるお爺さん。ふさふさの白髪をピシリと整え、銀縁メガネの似合う矍鑠とした御方である。言葉遣いも丁寧だし、前の世界のディエス爺とは同じ爺にしても雲泥の差である。
「アスカ達の《少数派の最大派閥》はいいとして、リズリラの能力はちょっとやばそうな名前してますね……。どういう能力なんですか?」
触診するガンマさんを気に留めず、クリスくんが尋ねる。
ふむ、二人の能力は《岩乗構造》と《代替生成》。二人合わせて《小さな王国》か……。ん?
(そういえば、なんでリズとリラは能力が二つあるんだろ。それぞれが《イヴの欠片》だから一つずつ能力があるのは分かるんだけど、二人合わせて《小さな王国》っていうのは……?)
「ああ、最後のやつは別段《能力》ってわけじゃないんだけどな。なんていうか、その組み合わせがヤバくてな。クリス、補修手伝ったんならリラの《代替生成》は想像がつくだろ? リラは簡単な物体なら生成・加工して自在に変形できる。床の穴埋めや天上の補修用の素材を容易く用意できるってわけだ」
ふーん。物体の加工・生成か。ちょっとした職業系スキルみたいな能力だな。
「リズの《岩乗構造》は、ちょいと特殊でな。物体の硬度や建築物の強度が目に見えて分かるらしい」
と、そう言ったきりアスカは口を閉じる。え、それで説明は終わりなんだろうか。
「……レイジーのガードを突き抜けたパンチ。アレもそれですかね?」
「だろうな。地下施設もトンネルも、《岩乗構造》が無ければ無理だったな。正直、あれはヤバイ」
剣呑な顔つきになる二人。え、そんなにヤバイ能力なんだろうか。
「ヤバイもヤバイですね。というか、その能力単品ならまだ良かったんですが、リラの《代替生成》とのコンボがヤバイです。……なるほど、それで《小さな王国》ですか。言い得て妙ですね」
「だろ?」
俺を放置して分かり合う二人。ちょいちょい君たち。若い二人で分かり合わないで。説明を求む。
「えーと、そうですね。悪霊さんにも分かりやすく説明しますと……」
とそこでクリスくんは言葉を切る。もったいぶっているわけではなく、ガンマさんの診察が終わったのだ。お礼を言って、クリスくんは服を着始める。
(分かりやすく説明すると……?)
続きが気になるので答えを促してみた。クリスくんは上着を着つつ、ちらとこちらに目を向ける。
「……容易に国家転覆できる能力です」
何でも無さそうな口調と表情から、とんでもねえ答えが返ってきた。
《少数派の最大派閥》、ユグド&レジスタンス。
《言霊》、セイ&リーシャ・バーデンベルグ。
《岩乗構造》、リズ。《代替生成》、リラ。二人合わせて《小さな王国》。
《翼(仮)》、グレイジー&クリストファー・レイネット。
「これが《イヴの欠片》と各パートナーの能力名だ」
「……これ、アスカが命名したんですか?」
ふふんと唇の端を吊り上げてアスカは得意げに笑い、一方でクリスくんは苦々しげに眉根を寄せる。
「そうだが、それがどうした?」
「……いえ、なんでもありません」
クリスくんの返答は尻すぼみになって消えてしまった。
無理もない。こんな厨ニ病全開の能力名をつけられては、恥ずかしくて外も歩けないだろう。うかうかしていたらアスカは勝手に翼の能力名を付けてしまうだろうし、早急に自身で命名しておくのが良いだろう。
と、そんなことを俺は思っていたのだが、実はそうでもないようだ。
「……くそう、予想以上に良いネーミングだ。僕も真面目に考えないと……」
アスカに聞こえない程度の声量で、彼はぼそりと呟いていた。どうやら対抗意識を燃やしていたらしい。
(……クリスくん、厨ニ病って知ってる?)
「? 知りません。 新しい病気ですか?」
知らないようだった。この世界に厨ニ病は存在しないらしい。そういえばクリスくん、以前にヤンキーの格好でポーズ決めまくってたな。きっと、腕に包帯巻いたりするのが好きなんだろうな。
(んーん。なんでもないよ)
「なんです? 急に優しげな声色になって……。何か企んでたりしないですよね」
そんなことしないよ。予想以上に子供らしい一面を見せてくれたクリスくんを微笑ましく思っているだけだよ。君の中で俺はどういう風にプロファイルされているんだ、まったくもう。
セドリックさんの墓参りを終えた俺達はアスカの部屋に来ていた。自室への戻り際、ちょうど医師のガンマさんとアスカの部屋の前で遭遇したので、そのまま診察をすることになったのだ。クリスくんたちはレジスタンスに来てから(昨日を除いて)毎日欠かすこと無く診察を受けている。《イヴの欠片》とそのパートナーについては未解明なことが多く、日々観察を続けているのだそうだ。
「《言霊》ってことは、セイとリーシャは《声》か《音楽》に関する能力ですかね。あ、もしかして《歌姫》って、能力ありきですか?」
「んー? んー。まあ、半々だな。」
クリスくんは上裸になりガンマさんの診察を受けつつ、ベッドにあぐらをかくアスカと会話している。
「あいつは地声がいいからな。仕事のときは能力なし。地声しか使ってないって言われても、まあ、信じられないことはない」
(ということは、《声》に関する能力ってのは当たりってことか)
まーなーとアスカは肯定する。
へー、どんな能力なんだろう。気になる。
「そうだな。まあ《声》でできることは基本何だってできると思っていいな。あいつの能力はおっもしれーぞ? 見てみての、いや、聞いてみての、いやいや、見て聞いてみてのお楽しみだ」
しっしっしと悪戯っ子のような笑みを浮かべ、アスカは言う。
「はい、後ろ周ってー」
ガンマさんの掛け声とともに、くるりとクリスくんの座る回転椅子が反転する。
ガンマさんは、今年で御年70歳となるお爺さん。ふさふさの白髪をピシリと整え、銀縁メガネの似合う矍鑠とした御方である。言葉遣いも丁寧だし、前の世界のディエス爺とは同じ爺にしても雲泥の差である。
「アスカ達の《少数派の最大派閥》はいいとして、リズリラの能力はちょっとやばそうな名前してますね……。どういう能力なんですか?」
触診するガンマさんを気に留めず、クリスくんが尋ねる。
ふむ、二人の能力は《岩乗構造》と《代替生成》。二人合わせて《小さな王国》か……。ん?
(そういえば、なんでリズとリラは能力が二つあるんだろ。それぞれが《イヴの欠片》だから一つずつ能力があるのは分かるんだけど、二人合わせて《小さな王国》っていうのは……?)
「ああ、最後のやつは別段《能力》ってわけじゃないんだけどな。なんていうか、その組み合わせがヤバくてな。クリス、補修手伝ったんならリラの《代替生成》は想像がつくだろ? リラは簡単な物体なら生成・加工して自在に変形できる。床の穴埋めや天上の補修用の素材を容易く用意できるってわけだ」
ふーん。物体の加工・生成か。ちょっとした職業系スキルみたいな能力だな。
「リズの《岩乗構造》は、ちょいと特殊でな。物体の硬度や建築物の強度が目に見えて分かるらしい」
と、そう言ったきりアスカは口を閉じる。え、それで説明は終わりなんだろうか。
「……レイジーのガードを突き抜けたパンチ。アレもそれですかね?」
「だろうな。地下施設もトンネルも、《岩乗構造》が無ければ無理だったな。正直、あれはヤバイ」
剣呑な顔つきになる二人。え、そんなにヤバイ能力なんだろうか。
「ヤバイもヤバイですね。というか、その能力単品ならまだ良かったんですが、リラの《代替生成》とのコンボがヤバイです。……なるほど、それで《小さな王国》ですか。言い得て妙ですね」
「だろ?」
俺を放置して分かり合う二人。ちょいちょい君たち。若い二人で分かり合わないで。説明を求む。
「えーと、そうですね。悪霊さんにも分かりやすく説明しますと……」
とそこでクリスくんは言葉を切る。もったいぶっているわけではなく、ガンマさんの診察が終わったのだ。お礼を言って、クリスくんは服を着始める。
(分かりやすく説明すると……?)
続きが気になるので答えを促してみた。クリスくんは上着を着つつ、ちらとこちらに目を向ける。
「……容易に国家転覆できる能力です」
何でも無さそうな口調と表情から、とんでもねえ答えが返ってきた。
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