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魔女狩りの日
再戦1
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「フェスター……聞こえる?」
テンは彼の額と自分の額を合わせながら聞いた。
あれだけ暴れていたフェスターの動きは止まり、目は虚になっている。
「負けちゃダメだよ、カーラさんを独りぼっちにさせる気?」
「いや……そんなことできねぇ」
「じゃあもう少しがんばろう?私も手伝うからさ、あなたの夢を叶えよう」
「そう……だな。カーラが待ってる……」
光のないフェスターの瞳が、徐々に力を帯びてきた。
そしてはっきりと意識を取り戻した彼は、我に返りテンを見つめる。
「なんだ……どうなってんだこれは」
フェスターは自分が壊した町をまじまじと見回す。
記憶が飛んで、自分が何をしていたのかわからないのだ。
「覚えてないの?」
「ああ……ってうわっ!なんだお前それ!?」
テンの体から生えている黒い手を見てフェスターはのけぞる。
「あいつになんかされたのか!?」
「違うよ、私もよくわかんないけど……味方みたい、私を助けてくれたんだ」
「そ、そうなのか?」
フェスターは黒い手に触ろうとした。
手たちは彼と握手をする。
「意味がわからん……なんだろうな……まさか禁薬の効果か?」
「私も知りたいことがたくさんあるけど、全部終わってからゆっくり話そうよ。今は……」
テンは空高くに浮かぶ魔女を指さした。
フェスターの表情も険しくなる。
「ああ、あいつを殺さなくちゃ何も終わらねぇ」
「終わらせよう……私たちで」
「行くぞ、テン」
フェスターはテンを抱えて家屋の屋根まで跳んだ。
そして浮遊魔法を発動し、ぐんぐんと空に昇る。
1秒ごとに彼らはエレノアとの距離を詰める。
エレノアは不愉快そうな表情で、手のひらに炎を召喚する。
彼女は思い切り火球をフェスターたちに向かって投げつける。
フェスターは強化薬の恩恵を受けた魔力を駆使し、家屋全体に大きなシールドを張った。
炎はフェスターに届かぬまま、シールドの上で燃え尽きる。
「ありゃりゃ……残念」
ついにフェスターとテンを乗せた家屋はエレノアのすぐ近くまで到達する。
エレノアは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「てめぇだけは殺してやるぞ、エレノア」
「正気に戻っちゃったんだ。仲間をみんな殺して泣いてる君をよしよししてあげようと思ったのに」
「あなたは私たちが倒す!」
エレノアは目を細めてテンの体にまわりにある黒い手を観察する。
長い時を生きてきた彼女ですら、見たことのない異形の力だ。
「面白いね君。後で色々調べさせてね」
「聞いたかテン。お前を実験したいんだとよ」
「ごめんだね、もう実験は飽き飽きだよ」
「ふっ、帰ったら俺が実験するぞ?」
「あの魔女よりはマシ」
2人は小さく笑いあった。
エレノアの瞼がピクピク動く。
テンは彼の額と自分の額を合わせながら聞いた。
あれだけ暴れていたフェスターの動きは止まり、目は虚になっている。
「負けちゃダメだよ、カーラさんを独りぼっちにさせる気?」
「いや……そんなことできねぇ」
「じゃあもう少しがんばろう?私も手伝うからさ、あなたの夢を叶えよう」
「そう……だな。カーラが待ってる……」
光のないフェスターの瞳が、徐々に力を帯びてきた。
そしてはっきりと意識を取り戻した彼は、我に返りテンを見つめる。
「なんだ……どうなってんだこれは」
フェスターは自分が壊した町をまじまじと見回す。
記憶が飛んで、自分が何をしていたのかわからないのだ。
「覚えてないの?」
「ああ……ってうわっ!なんだお前それ!?」
テンの体から生えている黒い手を見てフェスターはのけぞる。
「あいつになんかされたのか!?」
「違うよ、私もよくわかんないけど……味方みたい、私を助けてくれたんだ」
「そ、そうなのか?」
フェスターは黒い手に触ろうとした。
手たちは彼と握手をする。
「意味がわからん……なんだろうな……まさか禁薬の効果か?」
「私も知りたいことがたくさんあるけど、全部終わってからゆっくり話そうよ。今は……」
テンは空高くに浮かぶ魔女を指さした。
フェスターの表情も険しくなる。
「ああ、あいつを殺さなくちゃ何も終わらねぇ」
「終わらせよう……私たちで」
「行くぞ、テン」
フェスターはテンを抱えて家屋の屋根まで跳んだ。
そして浮遊魔法を発動し、ぐんぐんと空に昇る。
1秒ごとに彼らはエレノアとの距離を詰める。
エレノアは不愉快そうな表情で、手のひらに炎を召喚する。
彼女は思い切り火球をフェスターたちに向かって投げつける。
フェスターは強化薬の恩恵を受けた魔力を駆使し、家屋全体に大きなシールドを張った。
炎はフェスターに届かぬまま、シールドの上で燃え尽きる。
「ありゃりゃ……残念」
ついにフェスターとテンを乗せた家屋はエレノアのすぐ近くまで到達する。
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「てめぇだけは殺してやるぞ、エレノア」
「正気に戻っちゃったんだ。仲間をみんな殺して泣いてる君をよしよししてあげようと思ったのに」
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「聞いたかテン。お前を実験したいんだとよ」
「ごめんだね、もう実験は飽き飽きだよ」
「ふっ、帰ったら俺が実験するぞ?」
「あの魔女よりはマシ」
2人は小さく笑いあった。
エレノアの瞼がピクピク動く。
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