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魔女狩りの日

襲来3

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「いてぇ!」
「なんでそんないらないこと言うの!?嫌われるよ!」
「お前らに好かれるために生きてねぇよ!あーあー椅子が壊れちまったじゃねぇか!」 
「そんなんだから友達ができないんだよ!」
「俺が友達欲しいなんてひと言でも言ったか!?」
「まぁまぁ、喧嘩はやめるんだ」

オスカーたちは2人の喧嘩の仲裁に入る。

「お前なんて拾うんじゃなかった!」
「なんだと!?」
「やめろって2人とも。まったくフェスターも大人気ないぞ」
「はんっ!こいつよりはガキじゃねぇ」

3人が窘めても、2人はやいのやいのと騒ぎ続ける。
子供のような何も生み出すものがない口喧嘩。
こんなことに全力を出せるテンとフェスターを見て、ミユたちは思わず笑みが漏れてしまった。

「テンちゃんもフェスターさんもそのへんで……」

ミユが言いかけると、背後で爆音が聞こえた。
即座に全員音が鳴ったほうを見る。
フェスターは眉間に皺を寄せ、魔法を使い自分の部屋の大剣を操作し、己の手に握らせた。
コトネも近くに置いていた刀を手に取り、腰を低くする。
ほかの3人も警戒し、戦闘の構えをとる。
爆音の正体は、館の壁が壊された音だった。
壁を壊し、1人の女が飛び込んできたのだ。
綺麗に着地などせず、女はだらしなく床に尻を置いている。
女は瓦礫を腕力だけでどかし、パンパンと肩の上の汚れを払う。

「君はなんだ?」

オスカーが問うと、女は首の骨を鳴らし、ゆったりと立ち上がった。
女の髪は真っ赤なサイドテールで、鼻のまわりには濃いそばかすがある。
シャツは赤を基調とし、黒のチェック柄が入っている。
ズボンは農夫が履くような青いズボンで、足元は茶色のブーツだ。
そして何より異様なのが女の体つきだった。
華奢とは無縁の筋肉質な体をしていて、そこらの男よりもはるかにマッシヴだ。
膨れ上がった筋肉を纏う肉体は、ある種の美しさすら感じさせる。
やや幼さを残す可愛らしい顔に、まったく体つきが似合っていない。
赤毛女はじっとフェスターを睨みつけ、口を開く。

「……屍人の王、フェスターだな?」
「ほう、間違いでノックしたわけじゃなさそうだな」

赤毛女はこの場にいる頭数を数えた。
そして腰のホルスターに差している片手斧を触る。
斧は鋭く研がれていて、不気味な光を放っていた。

「そいつを抜いたらお前を殺すぞ」
「……俺が受けた依頼はお前を依頼主のもとへ連れて行くことだ。大人しく一緒にこい……」

赤毛女は抑揚のない低い声で言った。
フェスターは剣を握る手を強め、女を睨みつける。

「誰に……依頼された?」
「教える必要はない」
「……エレノアか?」

赤毛女の表情はまったく変わらなかった。
氷のような冷たい瞳で彼だけを見つめている。

「……あいつに言っとけよ。俺は戻らないってな」

赤毛女は装備していた斧を抜いた。

「抜いたな。覚悟しろ」

フェスターは赤毛女の背後にある棚などの家具を、女に向かって飛ばした、
女は振り返り、斧をひと振りして家具を木っ端微塵に破壊した。
そしてすぐにフェスターに向かって突進する。
フェスターは食事をしていた大きなテーブルを前方に放つ。
赤毛女はタックル1発で机を破壊した。
あまりの突進力に狼狽えたフェスターはだったが、右手に持っていた大剣を投げつける。
魔法の力で加速した大剣を、女は左手で掴んだ。

「あ?」

フェスターは戦慄した。
大剣に魔力を込めて動かそうとしても、ピクリとも動かないのだ。
赤毛女はフェスターめがけて、片手で大剣を投げ返す。
魔法の力よりも彼女の怪力のほうが強い。
避けることができなかったフェスターの体に、自分の剣が突き刺さる。
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