39 / 196
善人だけの世界
巫女と守護人1
しおりを挟む
ミユの体調がよくなったので、2人は屋敷の外に出た。
デロリスにお願いされた通り、村を見て回ろうと思ったのだ。
明るい空の下、あてもなく歩いていると山菜をカゴに入れた村人たちと出会った。
「こんにちは」
「こんにちは!ミユさんとコトネさんですね。お話は聞きましたよ、体のほうはもう大丈夫なんですか?」
「おかげさまですっかりよくなりました」
「それはよかった!もし何かあったらすぐに言ってくださいね?この村にいる人間は全員、あなた方の力になりますから」
「ああ、僕からもお礼を言わせてもらう。この村がなかったらミユがどうなってたか……」
「お礼など、私たちは教えに従っているだけですから。気兼ねなくこの村に滞在してください、いつまでも好きなだけ……私たちは歓迎しますよ」
村人たちは穏やかな口調で心配し、迎え入れてくれた。
挨拶をして別れ、ミユとコトネはさらに進む。
そのときすれ違う人全てに優しい言葉をかけられた。
2人は照れながらも、伝染したように笑顔を浮かべて言葉を返す。
男も女も、子供も年寄りもみな礼儀正しく、言葉も表情も温かい。
誰1人彼女たちの存在を怪訝に思ったり、ぞんざいに扱ったりしなかった。
故郷にいた頃は、2人は他人の優しさというものをあまり感じたことがなかった。
しかしこの村の住人たちは無条件でよそ者のミユもコトネを受け入れる。
その事実が嬉しかった、心穏やかで優しい村人に2人は少しずつ惹かれていったのだ。
「甘い匂いだ」
「ん?そうだね」
この島に上陸していたときから疑問に思っていた甘い匂いの発生源を辿り、ミユはテクテクと歩く。
そして感嘆の声を出した。
野原一面に広がっているのは、黄金のように美しい黄色の花だ。
あまりの幻想的な景色に、ミユは思わずうっとりする。
「綺麗……」
「本当だね、なんの花だろう?」
コトネは花を1輪その手に取った。
そして花びらに鼻を近づけて嗅ぐ。
濃厚だが、気持ちが落ち着く甘い香り。
頬を緩めたコトネは、指でくるくると花を回転させた。
「本当にいい香りだ。でもなんの花かはわからないな」
「きっとこの国特有のお花なんだよ。デロリスさんに聞いてみよう」
「そうだね」
しばらくミユとミコトは美しい花々に見惚れていた。
その後はまた歩みを再開させる。
どんどんと奥に進んでいき、島の端っこにたどり着く。
太陽光を反射して煌めく大海原と、宝石のように光るきめ細やかな砂浜が2人の目に映った。
引いては寄せるさざ波の音と、かすかに匂う潮の香りが少女たちを包み込んだ。
どこまで続く海を見て、ミユとコトネはほんの少しだけ、故郷に想いを馳せてしまった。
デロリスにお願いされた通り、村を見て回ろうと思ったのだ。
明るい空の下、あてもなく歩いていると山菜をカゴに入れた村人たちと出会った。
「こんにちは」
「こんにちは!ミユさんとコトネさんですね。お話は聞きましたよ、体のほうはもう大丈夫なんですか?」
「おかげさまですっかりよくなりました」
「それはよかった!もし何かあったらすぐに言ってくださいね?この村にいる人間は全員、あなた方の力になりますから」
「ああ、僕からもお礼を言わせてもらう。この村がなかったらミユがどうなってたか……」
「お礼など、私たちは教えに従っているだけですから。気兼ねなくこの村に滞在してください、いつまでも好きなだけ……私たちは歓迎しますよ」
村人たちは穏やかな口調で心配し、迎え入れてくれた。
挨拶をして別れ、ミユとコトネはさらに進む。
そのときすれ違う人全てに優しい言葉をかけられた。
2人は照れながらも、伝染したように笑顔を浮かべて言葉を返す。
男も女も、子供も年寄りもみな礼儀正しく、言葉も表情も温かい。
誰1人彼女たちの存在を怪訝に思ったり、ぞんざいに扱ったりしなかった。
故郷にいた頃は、2人は他人の優しさというものをあまり感じたことがなかった。
しかしこの村の住人たちは無条件でよそ者のミユもコトネを受け入れる。
その事実が嬉しかった、心穏やかで優しい村人に2人は少しずつ惹かれていったのだ。
「甘い匂いだ」
「ん?そうだね」
この島に上陸していたときから疑問に思っていた甘い匂いの発生源を辿り、ミユはテクテクと歩く。
そして感嘆の声を出した。
野原一面に広がっているのは、黄金のように美しい黄色の花だ。
あまりの幻想的な景色に、ミユは思わずうっとりする。
「綺麗……」
「本当だね、なんの花だろう?」
コトネは花を1輪その手に取った。
そして花びらに鼻を近づけて嗅ぐ。
濃厚だが、気持ちが落ち着く甘い香り。
頬を緩めたコトネは、指でくるくると花を回転させた。
「本当にいい香りだ。でもなんの花かはわからないな」
「きっとこの国特有のお花なんだよ。デロリスさんに聞いてみよう」
「そうだね」
しばらくミユとミコトは美しい花々に見惚れていた。
その後はまた歩みを再開させる。
どんどんと奥に進んでいき、島の端っこにたどり着く。
太陽光を反射して煌めく大海原と、宝石のように光るきめ細やかな砂浜が2人の目に映った。
引いては寄せるさざ波の音と、かすかに匂う潮の香りが少女たちを包み込んだ。
どこまで続く海を見て、ミユとコトネはほんの少しだけ、故郷に想いを馳せてしまった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる