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善人だけの世界

巫女と守護人1

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ミユの体調がよくなったので、2人は屋敷の外に出た。
デロリスにお願いされた通り、村を見て回ろうと思ったのだ。
明るい空の下、あてもなく歩いていると山菜をカゴに入れた村人たちと出会った。

「こんにちは」
「こんにちは!ミユさんとコトネさんですね。お話は聞きましたよ、体のほうはもう大丈夫なんですか?」
「おかげさまですっかりよくなりました」
「それはよかった!もし何かあったらすぐに言ってくださいね?この村にいる人間は全員、あなた方の力になりますから」
「ああ、僕からもお礼を言わせてもらう。この村がなかったらミユがどうなってたか……」
「お礼など、私たちは教えに従っているだけですから。気兼ねなくこの村に滞在してください、いつまでも好きなだけ……私たちは歓迎しますよ」

村人たちは穏やかな口調で心配し、迎え入れてくれた。
挨拶をして別れ、ミユとコトネはさらに進む。
そのときすれ違う人全てに優しい言葉をかけられた。
2人は照れながらも、伝染したように笑顔を浮かべて言葉を返す。
男も女も、子供も年寄りもみな礼儀正しく、言葉も表情も温かい。
誰1人彼女たちの存在を怪訝に思ったり、ぞんざいに扱ったりしなかった。
故郷にいた頃は、2人は他人の優しさというものをあまり感じたことがなかった。
しかしこの村の住人たちは無条件でよそ者のミユもコトネを受け入れる。
その事実が嬉しかった、心穏やかで優しい村人に2人は少しずつ惹かれていったのだ。

「甘い匂いだ」
「ん?そうだね」

この島に上陸していたときから疑問に思っていた甘い匂いの発生源を辿り、ミユはテクテクと歩く。
そして感嘆の声を出した。
野原一面に広がっているのは、黄金のように美しい黄色の花だ。
あまりの幻想的な景色に、ミユは思わずうっとりする。

「綺麗……」
「本当だね、なんの花だろう?」

コトネは花を1輪その手に取った。
そして花びらに鼻を近づけて嗅ぐ。
濃厚だが、気持ちが落ち着く甘い香り。
頬を緩めたコトネは、指でくるくると花を回転させた。

「本当にいい香りだ。でもなんの花かはわからないな」
「きっとこの国特有のお花なんだよ。デロリスさんに聞いてみよう」
「そうだね」

しばらくミユとミコトは美しい花々に見惚れていた。
その後はまた歩みを再開させる。
どんどんと奥に進んでいき、島の端っこにたどり着く。
太陽光を反射して煌めく大海原と、宝石のように光るきめ細やかな砂浜が2人の目に映った。
引いては寄せるさざ波の音と、かすかに匂う潮の香りが少女たちを包み込んだ。
どこまで続く海を見て、ミユとコトネはほんの少しだけ、故郷に想いを馳せてしまった。
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