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屍人の王とキョンシー娘

地下歓楽街へ2

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ゴブリンの男は頷き、扉の近くにいた男に指示を出した。
3人がかりでクランクを回すと、眼前にある巨大な鉄の扉が開き始めた。
扉が開くと、閉じ込められていた声が爆発した。
何百人もの笑い声がテンの耳を貫いていく。
テンは目を丸くして1歩前に出た。
その目で見た光景が信じられなかったからだ。
地下という闇のはずなのに、扉を1枚挟んだ先は絢爛と化している。
ランタン、提灯、松明、篝火、ガス灯、ありとあらゆる炎が空間に光を灯し、地下ということを忘れさせてくれるほどだ。
さらにぎっしりと建てられた建物や屋台、出店も明かりが灯っており、どの建物からも煙が立ち上っている。
地下全体を覆うほどの嬌声、怒声、笑い声が響き、確かな熱気がテンの体を流れていった。
まるで五感全てを支配しようとする衝撃にテンは声を出すことが出来なかった。

「ではお楽しみください」
「楽しむことなんかねぇよ」

微笑むゴブリンを無視してフェスターは街の中に足を踏み入れた。
テンはハッとして急いで彼についていく。

「お祭り……?」
「ここはいつもこんな感じだ。活気があるだろ?」

テンにとって初めて見る光景だった。
故郷のランファンでもこれほどまで人が密集して、暑い空間を形成する場所はない。
下卑た笑い声が嫌でも耳に入る。
キョロキョロとまわりを見てみると、いたるところで商売が行われている。
食べ物、芸人、檻の中に入った売春婦。
人間の欲望をこれでもかと詰め込んだ印象だ。
テンは思わずフェスターの服の裾を掴んで迷わないよう気をつけた。

「本当にここなんなの?」
「地下歓楽街だ、通称土竜の巣。合法なものも違法なものもここにくれば楽しめる。誰でもな」

事実、ここには亜人や人間、果ては魔物までもがひしめいている。
誰もが笑うか怒っていた。
テンが落ち着きを取り戻しかけていると、近くの家屋から轟音が聞こえた。
そちらを見てみると、壁を破壊して外にでてきた蛇型の亜人と人間の男が地面に寝転がって絡み合っていた。

「な、なんなの?」

「いいぞぉ!」と囃し立てられる声に応えるかのように、2人は高速で腰を振り性交をみなに見せつけた。
セックスをしている男女を囲む観客は楽しそうだ。

「いい場所だろ?品性とか慎ましさとか気にせずに自分を解放できる。慣れれば楽しいぞきっと」
「嫌だよ……こんなところに何しにきたの?」
「フェスターちゃん!!」

人混みをかき分けて、1人の亜人女がフェスターに抱き着いた。
顔には合計6つの目玉がついていて、その全てをフェスターに向けている。
女の服ははだけていて下着が丸見えだ。

「どうしたのぉ?最近来てなかったじゃない!」
「来る理由がなかったからだ」
「そうなの?せっかく会えたんだし1発やってかない?安くしとくよ」
「やだね、病気が移る」
「もー!あんまりじらしちゃやーよ?じゃあ個人的に会わない?部屋代だけでいいからさ」
「やらねぇっつってんだろ。なんでアソコも洗ってない女とやらなくちゃいけないんだよ」
「大丈夫!3日前に洗ったから。逆に考えればお得じゃない?私のアソコ舐めたら私の味と男たちの味が楽しめるのよ?それに間接キッスだってできちゃう!」
「お前の客とか?どこに需要があんだよ」
「ってかその娘だれ?新しい女?」
「ちげぇよ。もうどけ!俺は奥に用があんだ」

フェスターは雑に女をどかして、どんどん前に進みだした。
遅れないようにテンもついていく。

「あの人彼女?」
「そう見えるか?ここはやかましくて嫌いだ」
「じゃあなんで来たの?」
「用事があるからだよ。商売だ」
「へぇ、なに売るの?あの宝冠?」
「そんなとこ」

むせ返るような熱気を我慢しながら歩いていると、香ばしい匂いがテンの鼻を突いた。
くんくんと嗅いだテンは匂いの発生源を見つける。
太ったカエルのような亜人が調理をしている屋台だ。
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