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第165話 【生配信回】ドラゴンを喰らう!③

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 丈二が放った魔槍の一撃は、竜鱗を貫き、赤竜レッドドラゴンの胸部に突き刺さった。

 体格差ゆえ致命傷にまでは至らない。しかし、丈二の魔槍はここからが本領発揮だ。

電撃呪縛ライトニング・カース!」

 槍に帯電していた魔力が、刃先から赤竜レッドドラゴンの体内へ放たれる。

 さながらドラゴン咆哮シャウトのような轟音。

 この魔槍の魔力回路には、特定の魔法効果は刻まれていない。所持者が使用する魔力の威力を大きく増幅して刃先から放つ効果がある。

 天才とまでは言えないが、もともと魔法に才能のある丈二だ。相手の特性に応じて最適で最大の攻撃を繰り出すことができる。

 とはいえ増幅したとしても、さすがにひとり分の魔力。緑竜グリーンドラゴンを仕留めたときほどの威力は出ない。

 だがそれでも充分だ。高熱や冷気なら、赤竜レッドドラゴンは耐えられただろう。しかし電撃だけはどうにもならない。神経に流れた電気は体を一時麻痺させ、強制的に行動を抑える。生物である以上、逃れることはできない。

 そして、それに伴う激痛は、魔法を扱う集中力さえ途切れさせる。

 この一瞬、赤竜レッドドラゴンの一切の攻撃が途絶えたのだ。

"止まった!"

"武器名と魔法名叫ぶノリ、嫌いじゃないぜ!"

"チャンス!"

"いけいけいけー!"

"たたみかけろ!"

 赤竜レッドドラゴンはすぐ復活し、丈二に爪を振り下ろそうとする。

 もう遅い。丈二はすでに槍を抜いて退避している。

 代わりに、結衣が踏み込もうとしていた。爆発魔法を受け続け、距離が離れてしまっている。彼女の間合いではない。だが赤竜レッドドラゴンは脅威を感じたか、一歩退いて迎撃の構え。

 その背後を、吾郎たちが強襲。赤竜レッドドラゴンの注意が散漫になる。

 そして紗夜は弓矢を構えていた。全力の変身魔法で、弓はすでに大型化。勢い余って魔法少女の姿に変わっている。

 引き絞るのは、ミリアム謹製の大型の矢――屠竜の矢ギリオンアロー

 『超越の7人スペリオルセブン』のひとり、ドラゴン退治の専門家『屠竜とりゅう騎士』ギリオンの名を冠した矢だ。

"紗夜ちゃん変身してる!?"

"本気モードだ!"

"いけ、貫け!"

 放たれた一矢は、先に丈二が槍で穿った胸の傷跡に直撃した。

 赤竜レッドドラゴンの背後の岩壁に、屠竜の矢ギリオンアローが突き刺さる。

"やった!"

"貫いたぞ!"

"急所!? 急所だよな!? 心臓だよな!?"

 ――グガッ!? アァアア!?

 赤竜レッドドラゴンが吐血する。

 心臓を貫かれた赤竜レッドドラゴンは、しかし、未だ倒れない。魔力の光が輝く。みるみるうちに、胸の傷が再生していく。

"治療魔法か!"

"こいつ、まだ戦う気かよ!"

"待てよ? 肉を裂いても、治療魔法を使えば再生するなら……"

"閃いた!"

"えっ!? 食料が無限に!?"

"↑いい加減にしろ、お前ら"

 自ら治療して立ち上がってくるとしても、その間は魔法攻撃はない。その他の攻撃――尻尾や爪や牙、さらにブレスは変わらず繰り出される。

 しかし、もう恐れることはない。

 丈二の一撃が決まった時点から、おれたちは陣形を整えていたのだ。

 多様な攻撃に翻弄されるのは、今度は赤竜レッドドラゴンのほうだ。

「訓練通りやれよ、沢渡! 城島!」

『武田組』が同時に三方から仕掛ける。

 彼らの持つ剣『ドラゴントゥース』は、竜鱗を貫き、肉を切り裂いていく。発動中の治療魔法が、傷をすぐ治していってしまうが、裂かれる痛みは消せないし、流れた血だって戻らない。

 致命傷にはならなくても、もはや無視できない煩わしさだろう。赤竜レッドドラゴンは『武田組』を排除しようと、勢いをつけて体を一回転。巨大な尻尾で一掃しようとする。

 瞬間、おれは飛び出した。『武田組』は囮の役目を果たしてくれた。

 大きく跳躍しつつ、背負った大剣を両手で抜く。

"モンスレさん!?"

"なんか背負ってると思ってたが、あれ剣だったのか!"

「もらったぁああ!」

 尾撃に全力の斬撃を合わせる。

 ――ガアァアアア!!!

 赤竜レッドドラゴンの悲鳴が耳をつんざく。

 切断された尻尾があらぬ方向へ飛んでいく。

 勢い余って地面に突き刺さった大剣を引き抜き、再び構える。

 これが竜殺しの剣ドラゴンバスター

 アダマントとドラゴンの希少素材を組み合わせ、さらに、超一流の職人のみが知るという製法で鍛え上げた伝説級の剣だ。

 その刃の斬撃のみならず、剣圧で竜鱗を切り裂いたという逸話さえある。

 かつて、ギリオンが愛用していた物を借りたことがあるが、それと比べても遜色ない、見事な仕上がりだ。ミリアムはやはり、素晴らしい技術者だ。

"部位破壊完了!"

"これが、噂のドラゴンバスターか"

"ただの無骨な大剣っぽいのに、一番威力があるんじゃないのか"

"なんのギミックもなくて地味だけど"

"いいや、ただ強いだけの剣もいいもんだ"

"なんのギミックがなくても最強ってのはロマンだろ"

 赤竜レッドドラゴンは変わらず治療魔法をかけ続けるが、尻尾は再生しない。傷口がふさがり、血が止まるだけだ。切り傷や刺し傷は治せても、失った部位は戻らないのだ。

 魔法攻撃に続いて、これで尾撃も潰した。もはや赤竜レッドドラゴンの攻撃手段は半減だ。

 すかさず結衣や丈二が、それぞれの武器の機能を発揮して追撃。さらにロザリンデとフィリア、『武田組』が魔法攻撃で援護。

 このままでも押しきれなくはないが、長期戦になればなにが起こるかわからない。他のドラゴンが乱入してくる可能性だってある。

 おれは魔力を集中する。

「次でトドメを刺す! フィリアさん、魔力を貸してくれ!」

「もちろんです!」

 フィリアが攻撃の手を止めて、駆けつけてくれる。

 他のみんなが赤竜レッドドラゴンを翻弄している隙に、ふたりで竜殺しの剣ドラゴンバスターの柄を握りしめる。

 ふたり分の魔力が刃に伝導し、光り輝いていく。

 剣の威力を引き上げる強化魔法だ。

 狙うは、確実に息の根を止められる急所――頭だ。

「いくよ、フィリアさん!」

「はい、いきます!」

 ふたりで剣を握ったまま、赤竜レッドドラゴンへ飛びかかる。

 赤竜レッドドラゴンは咄嗟に、こちらへ向けて口を開いた。炎のブレス。

 怯みはしない。

 吹き付けられた業火へ、剣を振り下ろす。

 凄まじい剣圧が炎を切り裂く。

 その勢いのままおれとフィリアは前進しながら空中で一回転。

 赤竜レッドドラゴンの眉間に、竜殺しの剣ドラゴンバスターを叩き込んだ――!
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