65 / 182
第65話 ニワトリが火を吹くのですか?
しおりを挟む
「だいぶ絞ったつもりでしたが、やはりそれなりに大荷物になってしまいましたね」
迷宮突入してしばらく、丈二は背負ったバックパックを気にしながら言った。
第1階層の探索なら日帰りもできるから、野営道具などを持ち込む必要はない。が、第2階層はそうはいかない。今回は2週間程度は迷宮に滞在する予定だ。荷物が多くなるのは当然だ。
迷宮探索では、魔物との戦闘に備えるのも重要だが、それ以上に、いかに健康的に過ごせるかがポイントだ。衣食住に関しては妥協できない。
だから寝袋や調理道具などは、できるだけ質の高い物を用意している。
他にも着替えを数着。怪我や体調不良に備えての医薬品。破れた衣服を繕うための裁縫道具。塩や胡椒などの調味料などなど。
一方で、魔法で役割を代替できる道具は持ってきていない。カセットコンロやライトなどがそれだ。
「でもまあ、こっちのキャンプ道具はコンパクトなのもあって、相当少なく出来てるよ。異世界じゃ、これに水や食料を加えると倍くらいの量になっちゃうんだ」
「現代の技術力に感謝ですね」
「やはり一条さんの言う通り、水や食料は現地調達するのが正解でしたか」
「なにが食べられるかの知識がないと、それも難しいけどね。だから異世界でも、荷物のほとんどが食料で埋まってるパーティは多かった」
水や食料は、緊急用に少量のみ持ち込んでいる。
第2階層には少なくともエッジラビットがいるし、あれだけ魔物がいるなら水場も必ずあると見込んでのことだ。
他には、スマホやモバイルバッテリー、はぐれたとき用のトランシーバーなんかも持ってきている。
やがて第1階層を抜け、第2階層へ。地下遺跡部分を抜けると、大きな空間へ出た。
以前に来たときと変わらない、ドーム状の広い空間だ。明るく、植物も生い茂る、町のひとつやふたつ分はありそうな空間。
「まるで外にいるかのようですね。遠くには森や……川らしきものも見えます。話には聞いていましたが、とても地下にいるとは思えない」
双眼鏡を覗きながら、感嘆の声を上げる丈二だ。
フィリアも周囲を見渡して、この空間の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「懐かしい匂いがします……。ここは、異世界のどこかを切り取って作られた空間なのでしょうか?」
「それはわからないけど、まずは、どこでもいいから端っこにまで行ってみよう。どうなっているのか確認したい」
そうしておれたちは、まずは正面方向に進むことにした。途中、森を横切ることになるが、川らしきものもあり、水場として使えるか確認する必要もあったからだ。
第2階層の魔物は、事前に把握していたのはグリフィン、ドリームアイ、エッジラビットだ。
進んでいくとウルフベアの足跡が確認できる。同じ魔物でも、魔素が濃い分強くなっていることだろう。
各人のバックパックにはドリームアイの触手を吊るしてあり、ドリームアイに襲われる心配はない。魔物除けも使っているため、少なくとも第1階層にいる魔物には襲われないだろう。
だから、襲ってくるとしたらそれ以外の魔物だ。
森に入ってから小一時間。順調に進んでいたところに、そいつは現れた。
「丈二さん、後ろだ!」
いち早く気配を察して、おれは叫んだ。
丈二は背後を確認する間もなく、その場を飛び退いた。
火炎が放射され、丈二が直前までいた場所が黒焦げになる。
「――!? ニワトリ?」
「フレイムチキンだ、気が立ってるぞ! 気をつけて!」
体長は150cm程度。飛行はできないが俊敏で、鋭い嘴や足の爪を持つ。特筆すべきは名の由来にもなった、火を吹く能力だ。
すぐバックパックを下ろして戦闘態勢に入る。
丈二は距離を取り、短槍を構える。
「ニワトリが火を吹くのですか?」
「解説は倒したあとでするよ!」
フィリアも剣を抜き、フレイムチキンの動きを目で追う。
フレイムチキンは威嚇の鳴き声を上げつつ、ばさばさと翼を暴れさせ、小刻みに跳ね回っている。剣で戦うにも、魔法で狙うにも、やりづらいだろう。
「さすが素早い……足止めしますか?」
「いや魔力は温存だ。おれに任せて!」
おれは剣ではなく鞭を手に取った。
バシィン! とフレイムチキンの移動先へ鞭を叩きつける。フレイムチキンはその音に驚いて転進。おれは同様に、行き先にまた鞭を叩きつける。
それを何度も繰り返せば、やがてフレイムチキンはおれへの敵愾心を高める。ただでさえ気が立っていたのだ。あっさり誘導に乗り、正面からおれに向かってくる。
フレイムチキンの嘴が開く。奥から炎の輝き。
おれは冷静に、フレイムチキンの頭に真上から鞭の一撃を直撃させた。
下向きになった嘴から吐き出された炎は、その先にある自らの胸元に火をつけた。
――ゲキョキョー!
羽毛が激しく燃え上がり、フレイムチキンは炎に包まれる。翼をばたつかせながら暴れ出すが、すぐおれの鞭がその首を拘束した。
激しく暴れるのを力で制しつつ、鞭を右手から左手に持ち替える。そして右手で剣を抜きつつ接近。首を切断した。
フレイムチキンの体は、首を失ってもなお暴れたが、すぐに倒れた。周囲に燃え移らないよう、火は消しておく。
「見事なお手並みです。さすがリアルモンスタースレイヤー」
丈二は関心しつつ、武器を下ろした。
「グリフィンよりだいぶ弱いからね。これくらいなら、レベル2のみんななら普通に倒せるかな? 楽勝とはいかないだろうけど」
「ふむ……。私もレベル2になったばかりですが、単独で倒せたかどうか……」
「津田様は、魔力がお高いですから。基礎魔法を組み合わせれば、倒せない敵ではなかったかと思いますよ」
「やはりそうですか。早くテキストの魔法くらいは網羅したいところですね」
「ところで、どうやらここはあいつの縄張りだったらしいよ」
おれは周囲を観察してから、ある場所を指し示した。
「巣と、卵がある。これに近づいたから、気が立ってたんだ」
「まあ。そうだったのですね」
「いい機会だ。ここで休憩しよう。縄張りの主が死んだなんてすぐにはわからない。しばらくは、他の魔物も近づいてこないはずさ」
「では今日の昼食は……」
「もちろん鶏肉料理。でもその前に見せとかないとね。良い物が手に入ったよ」
迷宮突入してしばらく、丈二は背負ったバックパックを気にしながら言った。
第1階層の探索なら日帰りもできるから、野営道具などを持ち込む必要はない。が、第2階層はそうはいかない。今回は2週間程度は迷宮に滞在する予定だ。荷物が多くなるのは当然だ。
迷宮探索では、魔物との戦闘に備えるのも重要だが、それ以上に、いかに健康的に過ごせるかがポイントだ。衣食住に関しては妥協できない。
だから寝袋や調理道具などは、できるだけ質の高い物を用意している。
他にも着替えを数着。怪我や体調不良に備えての医薬品。破れた衣服を繕うための裁縫道具。塩や胡椒などの調味料などなど。
一方で、魔法で役割を代替できる道具は持ってきていない。カセットコンロやライトなどがそれだ。
「でもまあ、こっちのキャンプ道具はコンパクトなのもあって、相当少なく出来てるよ。異世界じゃ、これに水や食料を加えると倍くらいの量になっちゃうんだ」
「現代の技術力に感謝ですね」
「やはり一条さんの言う通り、水や食料は現地調達するのが正解でしたか」
「なにが食べられるかの知識がないと、それも難しいけどね。だから異世界でも、荷物のほとんどが食料で埋まってるパーティは多かった」
水や食料は、緊急用に少量のみ持ち込んでいる。
第2階層には少なくともエッジラビットがいるし、あれだけ魔物がいるなら水場も必ずあると見込んでのことだ。
他には、スマホやモバイルバッテリー、はぐれたとき用のトランシーバーなんかも持ってきている。
やがて第1階層を抜け、第2階層へ。地下遺跡部分を抜けると、大きな空間へ出た。
以前に来たときと変わらない、ドーム状の広い空間だ。明るく、植物も生い茂る、町のひとつやふたつ分はありそうな空間。
「まるで外にいるかのようですね。遠くには森や……川らしきものも見えます。話には聞いていましたが、とても地下にいるとは思えない」
双眼鏡を覗きながら、感嘆の声を上げる丈二だ。
フィリアも周囲を見渡して、この空間の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
「懐かしい匂いがします……。ここは、異世界のどこかを切り取って作られた空間なのでしょうか?」
「それはわからないけど、まずは、どこでもいいから端っこにまで行ってみよう。どうなっているのか確認したい」
そうしておれたちは、まずは正面方向に進むことにした。途中、森を横切ることになるが、川らしきものもあり、水場として使えるか確認する必要もあったからだ。
第2階層の魔物は、事前に把握していたのはグリフィン、ドリームアイ、エッジラビットだ。
進んでいくとウルフベアの足跡が確認できる。同じ魔物でも、魔素が濃い分強くなっていることだろう。
各人のバックパックにはドリームアイの触手を吊るしてあり、ドリームアイに襲われる心配はない。魔物除けも使っているため、少なくとも第1階層にいる魔物には襲われないだろう。
だから、襲ってくるとしたらそれ以外の魔物だ。
森に入ってから小一時間。順調に進んでいたところに、そいつは現れた。
「丈二さん、後ろだ!」
いち早く気配を察して、おれは叫んだ。
丈二は背後を確認する間もなく、その場を飛び退いた。
火炎が放射され、丈二が直前までいた場所が黒焦げになる。
「――!? ニワトリ?」
「フレイムチキンだ、気が立ってるぞ! 気をつけて!」
体長は150cm程度。飛行はできないが俊敏で、鋭い嘴や足の爪を持つ。特筆すべきは名の由来にもなった、火を吹く能力だ。
すぐバックパックを下ろして戦闘態勢に入る。
丈二は距離を取り、短槍を構える。
「ニワトリが火を吹くのですか?」
「解説は倒したあとでするよ!」
フィリアも剣を抜き、フレイムチキンの動きを目で追う。
フレイムチキンは威嚇の鳴き声を上げつつ、ばさばさと翼を暴れさせ、小刻みに跳ね回っている。剣で戦うにも、魔法で狙うにも、やりづらいだろう。
「さすが素早い……足止めしますか?」
「いや魔力は温存だ。おれに任せて!」
おれは剣ではなく鞭を手に取った。
バシィン! とフレイムチキンの移動先へ鞭を叩きつける。フレイムチキンはその音に驚いて転進。おれは同様に、行き先にまた鞭を叩きつける。
それを何度も繰り返せば、やがてフレイムチキンはおれへの敵愾心を高める。ただでさえ気が立っていたのだ。あっさり誘導に乗り、正面からおれに向かってくる。
フレイムチキンの嘴が開く。奥から炎の輝き。
おれは冷静に、フレイムチキンの頭に真上から鞭の一撃を直撃させた。
下向きになった嘴から吐き出された炎は、その先にある自らの胸元に火をつけた。
――ゲキョキョー!
羽毛が激しく燃え上がり、フレイムチキンは炎に包まれる。翼をばたつかせながら暴れ出すが、すぐおれの鞭がその首を拘束した。
激しく暴れるのを力で制しつつ、鞭を右手から左手に持ち替える。そして右手で剣を抜きつつ接近。首を切断した。
フレイムチキンの体は、首を失ってもなお暴れたが、すぐに倒れた。周囲に燃え移らないよう、火は消しておく。
「見事なお手並みです。さすがリアルモンスタースレイヤー」
丈二は関心しつつ、武器を下ろした。
「グリフィンよりだいぶ弱いからね。これくらいなら、レベル2のみんななら普通に倒せるかな? 楽勝とはいかないだろうけど」
「ふむ……。私もレベル2になったばかりですが、単独で倒せたかどうか……」
「津田様は、魔力がお高いですから。基礎魔法を組み合わせれば、倒せない敵ではなかったかと思いますよ」
「やはりそうですか。早くテキストの魔法くらいは網羅したいところですね」
「ところで、どうやらここはあいつの縄張りだったらしいよ」
おれは周囲を観察してから、ある場所を指し示した。
「巣と、卵がある。これに近づいたから、気が立ってたんだ」
「まあ。そうだったのですね」
「いい機会だ。ここで休憩しよう。縄張りの主が死んだなんてすぐにはわからない。しばらくは、他の魔物も近づいてこないはずさ」
「では今日の昼食は……」
「もちろん鶏肉料理。でもその前に見せとかないとね。良い物が手に入ったよ」
25
お気に入りに追加
689
あなたにおすすめの小説
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
【完結】悪気がないかどうか、それを決めるのは私です
楽歩
恋愛
「新人ですもの、ポーションづくりは数をこなさなきゃ」「これくらいできなきゃ薬師とは言えないぞ」あれ?自分以外のポーションのノルマ、夜の当直、書類整理、薬草管理、納品書の作成、次々と仕事を回してくる先輩方…。た、大変だわ。全然終わらない。
さらに、共同研究?とにかくやらなくちゃ!あともう少しで採用されて1年になるもの。なのに…室長、首ってどういうことですか!?
人見知りが激しく外に出ることもあまりなかったが、大好きな薬学のために自分を奮い起こして、薬師となった。高価な薬剤、効用の研究、ポーションづくり毎日が楽しかった…はずなのに…
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))中編くらいです。
二人目の妻に選ばれました
杉本凪咲
恋愛
夫の心の中には、いつまでも前妻の面影が残っていた。
彼は私を前妻と比べ、容赦なく罵倒して、挙句の果てにはメイドと男女の仲になろうとした。
私は抱き合う二人の前に飛び出すと、離婚を宣言する。
カフェノートで二十二年前の君と出会えた奇跡(早乙女のことを思い出して
なかじまあゆこ
青春
カフェの二階でカフェノートを見つけた早乙女。そのノートに書かれている内容が楽しくて読み続けているとそれは二十二年前のカフェノートだった。 そして、何気なくそのノートに書き込みをしてみると返事がきた。 これってどういうこと? 二十二年前の君と早乙女は古いカフェノートで出会った。 ちょっと不思議で切なく笑える青春コメディです。それと父との物語。内容は違いますがわたしの父への思いも込めて書きました。
どうぞよろしくお願いします(^-^)/
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
心が読める令嬢は冷酷非道?な公爵様に溺愛されました
光子
恋愛
亡くなった母の代わりに、後妻としてやって来たお義母様と、連れ子であるお義姉様は、前妻の子である平凡な容姿の私が気に食わなかった。
新しい家族に邪魔者は不要だと、除け者にし、最終的には、お金目当てで、私の結婚を勝手に用意した。
ーー《アレン=ラドリエル》、別名、悪魔の公爵ーー
敵味方関係無く、自分に害があると判断した者に容赦なく罰を与え、ある時は由緒正しい伯爵家を没落させ、ある時は有りもしない罪をでっち上げ牢獄に落とし、ある時は命さえ奪うーーー冷酷非道、血も涙も無い、まるで悪魔のような所業から、悪魔の公爵と呼ばれている。
そんな人が、私の結婚相手。
どうせなら、愛のある結婚をして、幸せな家庭を築いてみたかったけど、それももう、叶わない夢……。
《私の大切な花嫁ーーー世界一、幸せにしよう》
「え……」
だけど、彼の心から聞こえてきた声は、彼の噂とは全く異なる声だった。
死んでしまったお母様しか知らない、私の不思議な力。
ーーー手に触れた相手の心を、読む力ーーー
素直じゃない口下手な私の可愛い旦那様。
旦那様が私を溺愛して下さるなら、私も、旦那様を幸せにしてみせます。
冷酷非道な旦那様、私が理想的な旦那様に生まれ変わらせてみせます。
不定期更新。
この作品は私の考えた世界の話です。魔物もいます。魔法も不思議な力もあります。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
愛されなければお飾りなの?
まるまる⭐️
恋愛
リベリアはお飾り王太子妃だ。
夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。
そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。
ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?
今のところは…だけどね。
結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる