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第64話 どんな武器でも使えなくちゃね
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「こ、こ、こんにゃろー! よくも顔を出せたなタクトめー!」
第2階層の先行調査へ向け、装備を新調しようと武器屋『メイクリエ』に顔を出してみたところ、いきなりミリアムに詰め寄られた。
両肩を掴まれ、前後に激しく揺さぶられる。
「ちょ、やめ、ミリアムさん、おれ、なんかしたっ?」
「したぁ! アタシを忙しくしたぁ! 君らが売った情報のせいで、毎日毎日仕事が途切れないんだよぉ!」
「あはは、大繁盛おめでとう」
「めでたくないぃ! アタシは儲けより夢が大切なんだよう! ほどほどに叶ってたのにぃ、こんちくしょーめー!」
そんなミリアムを、フィリアが後ろから取り押さえようとする。
「落ち着いてくださいミリアム様」
「えぇい、フィリアも同罪だぞー! アタシの怒りと悲しみを思い知れー!」
「きゃっ、あふっ、あはははっ! ミリアム様っ、くすぐるのは、おやめくださ――あははは、せ、セクハラですよ、これはっ、あんっ」
ミリアムはターゲットをフィリアに変え、ワキワキとした手つきであっちこっちに手を這わせる。
止めるべきなのだが、フィリアの悶える姿には、こう、なにか熱いものを感じる。このまま観察していたい気持ちが芽生えてしまう。
「た、タクト様、あははっ、見てないで、たす、助けてくださいっ!」
「あ、ごめん。今助ける」
おれはミリアムを押さえようと手を伸ばす。が、振り向いたミリアムが不敵に笑う。
「アタシに触ったらセクハラで訴えてやるぞー」
「くっ! それじゃおれには手出しできない! こ、このまま悶えるフィリアさんを見守るしかないのか!? おれは……なんて無力なんだ……」
「あっさり屈しないでください! ひゃんっ、やっ、ミリアム様っ、もうやめっ、あははは、はうんっ、あっ、謝ります! 謝りますから、もうやめ――」
ミリアムの蛮行は十数分にも渡った。
「うぅう~……」
やっと解放されたフィリアは、着衣や髪が乱れ、顔は真っ赤で目尻には涙が浮かんでいた。
「ふー、満足っ」
しっかり発散できたらしく、ミリアムは落ち着きを取り戻していた。
「今日はこれくらいにしといてあげるけど、これ以上、忙しくしたら次はもっとすごいことするからね。覚悟しといてよね~」
「……ご勘弁ください。お嫁にいけなくなってしまいます……」
「それは大丈夫でしょ」
「もっとすごいことには、ちょっと興味あるな……」
「タクト様、破廉恥です……」
涙目で睨まれる。そんな顔も絵になるなぁ、とか思うが、口にはしない。さすがに怒られる。
「えっと、ちなみにミリアムさん。おれはてっきり、故郷に帰るとか、それが無理でもお店を繁盛させるのが夢なのかなって思ってたんだけど……違うの?」
「違うよ~。アタシはね、ぎりぎり黒字の適度に寂れた店で、のんびり趣味で時間を潰しつつ、たまに客が来たら顔を出す……みたいな生活が夢だったの!」
「そんな駄菓子屋のおばあちゃんみたいな……」
「積みゲーも多いしさぁ。アタシ、もう何日コントローラー握ってないんだろ……」
「ミリアムさん、こっちの世界にずいぶん馴染んでるね……」
「こっちの娯楽は楽しいのが多いからね~。だからそれを楽しむ時間を奪うやつは、許さない。奪っていった分、おもちゃにして楽しんでやる」
おもちゃにされたフィリアは、いそいそと乱れた着衣や髪を整えていた。
「ですが、これからもミリアム様に頼ることは多いかと思います。そろそろ人を雇うことも考えてみては?」
「んー、仕事教えるの面倒だったんだけど、そろそろ考えてみるかなぁ~」
ぼやきつつため息をひとつ。
「それはさておき、今日はどんなご用?」
「装備の新調さ。金属素材は出回ってるし、もう剣の1本や2本は作ってるんじゃない?」
「あるよー。大した金属じゃないから弱いけど、骨を磨いた剣よりはマシかなぁ」
「じゃあそれをおれとフィリアさんの分。骨の剣は下取りで」
「あいよー。他には?」
「んー、盾はいいのがあるし……そうだ、鞭とかある?」
「あるにはあるよ。あんまり需要ないから1本作って終わりにしちゃったけど」
「素材は?」
「この前もらったやつだよ~。グリフィンの革を編んで作ってみた」
「いいね、買うよ」
「毎度あり~」
ミリアムが持ってきてくれた鞭を、フィリアは物珍しそうに覗き込む。
「タクト様は鞭も扱えるのですか?」
「まあね。どんな魔物でも倒せるようになるには、どんな武器でも使えなくちゃね」
「さすがタクト様、頼もしいです」
「フィリアさんにそう言われると照れちゃうなぁ」
ミリアムはため息をついた。
「見せつけてくれちゃって、もー……」
「フィリアさんは他に欲しいものはある?」
「わたくしは第2階層からは魔法を主力としますので、先ほどの剣だけで充分かと」
「オーケイ。ならミリアムさん、お会計をお願い」
「はいはーい」
会計を済ませて、店を出る。
「さてと、これで装備はいいとして、津田さんはどうしたかな?」
そこにふたり同時にスマホの通知音。
「津田様からメッセージです。お願いしていた買い物も済んだようです」
「オーケイ、なら合流しよう。荷物を整理したら、第2階層へ出発だ」
第2階層の先行調査へ向け、装備を新調しようと武器屋『メイクリエ』に顔を出してみたところ、いきなりミリアムに詰め寄られた。
両肩を掴まれ、前後に激しく揺さぶられる。
「ちょ、やめ、ミリアムさん、おれ、なんかしたっ?」
「したぁ! アタシを忙しくしたぁ! 君らが売った情報のせいで、毎日毎日仕事が途切れないんだよぉ!」
「あはは、大繁盛おめでとう」
「めでたくないぃ! アタシは儲けより夢が大切なんだよう! ほどほどに叶ってたのにぃ、こんちくしょーめー!」
そんなミリアムを、フィリアが後ろから取り押さえようとする。
「落ち着いてくださいミリアム様」
「えぇい、フィリアも同罪だぞー! アタシの怒りと悲しみを思い知れー!」
「きゃっ、あふっ、あはははっ! ミリアム様っ、くすぐるのは、おやめくださ――あははは、せ、セクハラですよ、これはっ、あんっ」
ミリアムはターゲットをフィリアに変え、ワキワキとした手つきであっちこっちに手を這わせる。
止めるべきなのだが、フィリアの悶える姿には、こう、なにか熱いものを感じる。このまま観察していたい気持ちが芽生えてしまう。
「た、タクト様、あははっ、見てないで、たす、助けてくださいっ!」
「あ、ごめん。今助ける」
おれはミリアムを押さえようと手を伸ばす。が、振り向いたミリアムが不敵に笑う。
「アタシに触ったらセクハラで訴えてやるぞー」
「くっ! それじゃおれには手出しできない! こ、このまま悶えるフィリアさんを見守るしかないのか!? おれは……なんて無力なんだ……」
「あっさり屈しないでください! ひゃんっ、やっ、ミリアム様っ、もうやめっ、あははは、はうんっ、あっ、謝ります! 謝りますから、もうやめ――」
ミリアムの蛮行は十数分にも渡った。
「うぅう~……」
やっと解放されたフィリアは、着衣や髪が乱れ、顔は真っ赤で目尻には涙が浮かんでいた。
「ふー、満足っ」
しっかり発散できたらしく、ミリアムは落ち着きを取り戻していた。
「今日はこれくらいにしといてあげるけど、これ以上、忙しくしたら次はもっとすごいことするからね。覚悟しといてよね~」
「……ご勘弁ください。お嫁にいけなくなってしまいます……」
「それは大丈夫でしょ」
「もっとすごいことには、ちょっと興味あるな……」
「タクト様、破廉恥です……」
涙目で睨まれる。そんな顔も絵になるなぁ、とか思うが、口にはしない。さすがに怒られる。
「えっと、ちなみにミリアムさん。おれはてっきり、故郷に帰るとか、それが無理でもお店を繁盛させるのが夢なのかなって思ってたんだけど……違うの?」
「違うよ~。アタシはね、ぎりぎり黒字の適度に寂れた店で、のんびり趣味で時間を潰しつつ、たまに客が来たら顔を出す……みたいな生活が夢だったの!」
「そんな駄菓子屋のおばあちゃんみたいな……」
「積みゲーも多いしさぁ。アタシ、もう何日コントローラー握ってないんだろ……」
「ミリアムさん、こっちの世界にずいぶん馴染んでるね……」
「こっちの娯楽は楽しいのが多いからね~。だからそれを楽しむ時間を奪うやつは、許さない。奪っていった分、おもちゃにして楽しんでやる」
おもちゃにされたフィリアは、いそいそと乱れた着衣や髪を整えていた。
「ですが、これからもミリアム様に頼ることは多いかと思います。そろそろ人を雇うことも考えてみては?」
「んー、仕事教えるの面倒だったんだけど、そろそろ考えてみるかなぁ~」
ぼやきつつため息をひとつ。
「それはさておき、今日はどんなご用?」
「装備の新調さ。金属素材は出回ってるし、もう剣の1本や2本は作ってるんじゃない?」
「あるよー。大した金属じゃないから弱いけど、骨を磨いた剣よりはマシかなぁ」
「じゃあそれをおれとフィリアさんの分。骨の剣は下取りで」
「あいよー。他には?」
「んー、盾はいいのがあるし……そうだ、鞭とかある?」
「あるにはあるよ。あんまり需要ないから1本作って終わりにしちゃったけど」
「素材は?」
「この前もらったやつだよ~。グリフィンの革を編んで作ってみた」
「いいね、買うよ」
「毎度あり~」
ミリアムが持ってきてくれた鞭を、フィリアは物珍しそうに覗き込む。
「タクト様は鞭も扱えるのですか?」
「まあね。どんな魔物でも倒せるようになるには、どんな武器でも使えなくちゃね」
「さすがタクト様、頼もしいです」
「フィリアさんにそう言われると照れちゃうなぁ」
ミリアムはため息をついた。
「見せつけてくれちゃって、もー……」
「フィリアさんは他に欲しいものはある?」
「わたくしは第2階層からは魔法を主力としますので、先ほどの剣だけで充分かと」
「オーケイ。ならミリアムさん、お会計をお願い」
「はいはーい」
会計を済ませて、店を出る。
「さてと、これで装備はいいとして、津田さんはどうしたかな?」
そこにふたり同時にスマホの通知音。
「津田様からメッセージです。お願いしていた買い物も済んだようです」
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