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13.わからない
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翌朝。わたしはこの前みたいに校門のところで桜井くんを待ち伏せすると、校舎裏へと連れ込んだ。
無言の桜井くんと向かいあうと、心臓の鼓動がまた一段と速くなる。
緊張しすぎて、呼吸まで苦しくなってきた……。
浅い呼吸を繰り返してなんとか自分を落ち着かせると、桜井くんの顔を見あげた。
「あの……昨日はごめんなさい!」
「…………昨日はごめん!」
がばっと頭をさげてからそっと顔をあげると、同じように顔をあげた桜井くんと目が合った。
「えっと……昨日、わたしウソついた。怒ってないって言ったけど、やっぱり怒ってた。ごめんなさい」
そう言ってから、もう一度頭をさげる。
「いや。なら謝るのは俺の方だろ。だって、やっぱ俺が怒らせたんだろ?」
桜井くんの言葉に、ゆっくりと顔をあげる。
「そうだけど……そうじゃないの。桜井くんが自分で道を切り開こうとしてるって聞いて、わたしはいらない子だったのかなって思ったら、なんだか悲しくなっちゃっただけだから」
「は?」
「でも、考えてみれば桜井くんの方が正論っていうか。そりゃあそうだよね。『絶対表紙を飾るから信じて待ってて!』なんてわたしに言われたって、わたしだったらそんなの信じないし。これは自分でなんとかするしかないなって思って当然だよね」
「ちょっと待て。誰が信じて待ってないって言った? 俺は今でも信じてる。ユイは、絶対に表紙を飾るって」
「……へ? いやだって、演技の勉強をはじめたって。それって、わたしのことを待つのを諦めたってことじゃ……?」
「あのなあ。ユイが絶対にやり遂げるって信じてるからこそ、準備をはじめたに決まってるだろ」
桜井くんが、ため息まじりに言う。
「ウソ……」
「正直『そんなムダなことしてなんになるの?』って母さんには言われたよ。けど、俺はユイを信じてるから。それにな、母さんが頑固なことは、俺が一番よく知ってんだよ。一度言い出したことは、絶対に曲げない。だから、あの約束がすべてなんだよ」
桜井くんは、わたしのことを信じて待っててくれてるの?
なにそれ。わたし、ひとりで勘ちがいして怒って……バカみたいじゃん。
だいたいわたし、なにを言おうとしてたんだろ。
『全然役立たずなわたしだけど、桜井くんのことが好きだからとなりにいさせてください』って……?
ありえない!
そんなわたしが、桜井くんのとなりに立つのにふさわしいわけないじゃない。
「わたし、絶対がんばって表紙を飾るよ」
桜井くんの瞳をまっすぐに見つめると、桜井くんもまっすぐに見つめ返してくれる。
「おうっ。俺もユイに負けないように、演技の勉強がんばるな」
そう言って、桜井くんがとびっきりの笑顔をわたしに向けてくれた。
無言の桜井くんと向かいあうと、心臓の鼓動がまた一段と速くなる。
緊張しすぎて、呼吸まで苦しくなってきた……。
浅い呼吸を繰り返してなんとか自分を落ち着かせると、桜井くんの顔を見あげた。
「あの……昨日はごめんなさい!」
「…………昨日はごめん!」
がばっと頭をさげてからそっと顔をあげると、同じように顔をあげた桜井くんと目が合った。
「えっと……昨日、わたしウソついた。怒ってないって言ったけど、やっぱり怒ってた。ごめんなさい」
そう言ってから、もう一度頭をさげる。
「いや。なら謝るのは俺の方だろ。だって、やっぱ俺が怒らせたんだろ?」
桜井くんの言葉に、ゆっくりと顔をあげる。
「そうだけど……そうじゃないの。桜井くんが自分で道を切り開こうとしてるって聞いて、わたしはいらない子だったのかなって思ったら、なんだか悲しくなっちゃっただけだから」
「は?」
「でも、考えてみれば桜井くんの方が正論っていうか。そりゃあそうだよね。『絶対表紙を飾るから信じて待ってて!』なんてわたしに言われたって、わたしだったらそんなの信じないし。これは自分でなんとかするしかないなって思って当然だよね」
「ちょっと待て。誰が信じて待ってないって言った? 俺は今でも信じてる。ユイは、絶対に表紙を飾るって」
「……へ? いやだって、演技の勉強をはじめたって。それって、わたしのことを待つのを諦めたってことじゃ……?」
「あのなあ。ユイが絶対にやり遂げるって信じてるからこそ、準備をはじめたに決まってるだろ」
桜井くんが、ため息まじりに言う。
「ウソ……」
「正直『そんなムダなことしてなんになるの?』って母さんには言われたよ。けど、俺はユイを信じてるから。それにな、母さんが頑固なことは、俺が一番よく知ってんだよ。一度言い出したことは、絶対に曲げない。だから、あの約束がすべてなんだよ」
桜井くんは、わたしのことを信じて待っててくれてるの?
なにそれ。わたし、ひとりで勘ちがいして怒って……バカみたいじゃん。
だいたいわたし、なにを言おうとしてたんだろ。
『全然役立たずなわたしだけど、桜井くんのことが好きだからとなりにいさせてください』って……?
ありえない!
そんなわたしが、桜井くんのとなりに立つのにふさわしいわけないじゃない。
「わたし、絶対がんばって表紙を飾るよ」
桜井くんの瞳をまっすぐに見つめると、桜井くんもまっすぐに見つめ返してくれる。
「おうっ。俺もユイに負けないように、演技の勉強がんばるな」
そう言って、桜井くんがとびっきりの笑顔をわたしに向けてくれた。
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