4 / 52
1.バレた!
4
しおりを挟む
「わ、わたしの弱みなんか握ったって、意味なくない?」
「どうしてそう思うんだよ」
精一杯の抵抗を試みるわたしに、桜井くんが真顔で返してくる。
「どうしてって……はっ。ま、まさか『そのマンガよこせ』とかいうつもりなんじゃ……」
わたしが買ったばかりのマンガの入った袋をぎゅっと胸に抱きしめるのを見て、桜井くんがプハッとふき出した。
「そんなセコいことするかよ。俺さ、実はずっとユイに興味があったんだよね」
桜井くんのきれいに整った顔が近づいてきて、わたしの顔をのぞき込む。
ち、近いんだけど……!
じりじりと後ずさりするわたしに気づいて、ニヤリとする桜井くん。
からかったらおもしろそうとか、そういうこと??
それとも、いじめがいがありそうとか!?
「わたしに、いったいなにをさせる気?」
「う~ん、どうしよっかなー。ま、ゆっくり考えとくわ」
桜井くんが、左の口角だけあげて不敵な笑みを浮かべる。
こんなの、絶対100%悪いこと考えてる顔だよ。
「で、でもどうせ約束なんか守る気ないんでしょ」
「もちろん約束は守るって。っていうか、ヒミツにしてほしいのってどっち? その格好? それともそのマンガが好きってこと? 別にどっちでもいーけど」
「両方!」
「はいはい、りょーかい」
勢いよく即答するわたしに、桜井くんが片手を軽くあげてみせる。
「じゃあ、桜井くんがもし本当にヒミツにしてくれるなら……一個だけ、言うこと聞くよ」
「えーっ。人には両方ヒミツにしろって言っといて、一個だけかよ。……まあ、それでもいいや」
不服そうな顔をしながらもなんとか了承してくれた桜井くんに、ホッと胸をなでおろす。
……これであとは、桜井くんに会わないようにさえすればいいんじゃない?
お互い連絡先なんか知らないし、仕事で会うことだってきっとないんだから。
え、わたし、めっちゃ頭よくない?
「じゃあ、またな」と言うと、桜井くんは軽やかな足どりであっという間に走り去っていった。
「もう会うこともないと思うけど、お元気でー」
遠ざかる桜井くんの背中にひらひらと手を振りつつ、わたしは独り言のようにつぶやいた。
それにしても、本当に走り慣れた走り方だ。
日課だっていうのもウソじゃないみたい。
いいな。わたしも桜井くんみたいに……。
そんなことを考える自分にハッと気づいて、ふるふると首を左右に振る。
なにうらやましがってるの?
陸上は、すっぱり諦めたんでしょ?
それよりも、今は早く帰って『魔術大戦』の最新刊を読まなくちゃだよ。
前回は、チーム最強のアオイくんが敵につかまって大ピンチ! っていうところで終わったんだよね。
あ~、続きが楽しみすぎるよ!
余計なことを考えないように必死に頭の中をマンガのことでいっぱいにすると、誰にも会わないよう細心の注意を払いつつ、家まで急いで帰った。
「どうしてそう思うんだよ」
精一杯の抵抗を試みるわたしに、桜井くんが真顔で返してくる。
「どうしてって……はっ。ま、まさか『そのマンガよこせ』とかいうつもりなんじゃ……」
わたしが買ったばかりのマンガの入った袋をぎゅっと胸に抱きしめるのを見て、桜井くんがプハッとふき出した。
「そんなセコいことするかよ。俺さ、実はずっとユイに興味があったんだよね」
桜井くんのきれいに整った顔が近づいてきて、わたしの顔をのぞき込む。
ち、近いんだけど……!
じりじりと後ずさりするわたしに気づいて、ニヤリとする桜井くん。
からかったらおもしろそうとか、そういうこと??
それとも、いじめがいがありそうとか!?
「わたしに、いったいなにをさせる気?」
「う~ん、どうしよっかなー。ま、ゆっくり考えとくわ」
桜井くんが、左の口角だけあげて不敵な笑みを浮かべる。
こんなの、絶対100%悪いこと考えてる顔だよ。
「で、でもどうせ約束なんか守る気ないんでしょ」
「もちろん約束は守るって。っていうか、ヒミツにしてほしいのってどっち? その格好? それともそのマンガが好きってこと? 別にどっちでもいーけど」
「両方!」
「はいはい、りょーかい」
勢いよく即答するわたしに、桜井くんが片手を軽くあげてみせる。
「じゃあ、桜井くんがもし本当にヒミツにしてくれるなら……一個だけ、言うこと聞くよ」
「えーっ。人には両方ヒミツにしろって言っといて、一個だけかよ。……まあ、それでもいいや」
不服そうな顔をしながらもなんとか了承してくれた桜井くんに、ホッと胸をなでおろす。
……これであとは、桜井くんに会わないようにさえすればいいんじゃない?
お互い連絡先なんか知らないし、仕事で会うことだってきっとないんだから。
え、わたし、めっちゃ頭よくない?
「じゃあ、またな」と言うと、桜井くんは軽やかな足どりであっという間に走り去っていった。
「もう会うこともないと思うけど、お元気でー」
遠ざかる桜井くんの背中にひらひらと手を振りつつ、わたしは独り言のようにつぶやいた。
それにしても、本当に走り慣れた走り方だ。
日課だっていうのもウソじゃないみたい。
いいな。わたしも桜井くんみたいに……。
そんなことを考える自分にハッと気づいて、ふるふると首を左右に振る。
なにうらやましがってるの?
陸上は、すっぱり諦めたんでしょ?
それよりも、今は早く帰って『魔術大戦』の最新刊を読まなくちゃだよ。
前回は、チーム最強のアオイくんが敵につかまって大ピンチ! っていうところで終わったんだよね。
あ~、続きが楽しみすぎるよ!
余計なことを考えないように必死に頭の中をマンガのことでいっぱいにすると、誰にも会わないよう細心の注意を払いつつ、家まで急いで帰った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる