42 / 42
13.運命……じゃない!
6
しおりを挟む
「大丈夫だよ」
佐治くんがそう言うのと同時に、すーっと車の助手席側の窓が開く。
「よかった。二人とも無事だったみたいだな」
そう言って運転席で安堵のため息をついたのは、この前スーパーで会った斗真くんの同居人の鮫島さんだった。
「ごめん。結構派手にやらかした」
「仕方ないよ。それにしても斗真、よくがんばったな。あとは俺たちの仕事だ。任せとけ」
「うん。頼んだ」
そんなやりとりを終えると、鮫島さんの車は、学校の中へと入っていった。
そういえば、前に会ったときに『警察にも顔が利く』って言ってたけど……。
「あの人、こういう能力がらみの事件をもみ消す専門の仕事してるから、あとは任せておけば大丈夫だよ」
「もみ消すって……あぁっ! ひょっとして、翔くんが前に記憶がどうのって言ってた、あれのこと?」
「まあ、そういうこと」
そっか。それじゃあ、鮫島さんも能力者ってことなんだ。
「じゃあ、引っ越さなくても……?」
「ああ。大丈夫だ」
「そっかぁ。よかった」
胸に手を当て、はぁ~、と大きく息を吐く。
斗真くんと離ればなれにならなくてすむんだ。
本当に……よかった。
「とにかく、生徒の中にケガ人が出なくてよかった。若葉がみんなに教えてくれたおかげだ。お手柄だな、若葉」
「斗真くんは、おもいっきりひどいケガしてたけどね⁉」
「それを言ったら、若葉もだろ」
「わたしのは、かすり傷だよ。もう、おねがいだからケガしないで」
「そうだな。これ以上若葉に能力を使わせないようにしないといけないしな」
「そうじゃなくて! わたしは、斗真くんに痛い思いをしてほしくないの」
「……わかった。これからは、もう少し気をつけるよ」
そう言いながら、斗真くんが片手をわたしの頭の上に乗っけると、ぽんぽんと優しくなでた。
「ふぇっ⁉」
おかしな声と同時に頭を押さえると、かぁっと顔がアツくなる。
ち、ちょっと……斗真くん⁉
「さ、学校戻るぞ」
そう言うと、佐治くんはわたしに背を向け、裏門から学校の中へと入っていってしまった。
ちょっと待って。わたし、こんな顔じゃ戻れないんですけど⁉
平常心、平常心……念仏のように頭の中で唱えながら、わたしは斗真くんの背中を追って駆けだした。
(終)
佐治くんがそう言うのと同時に、すーっと車の助手席側の窓が開く。
「よかった。二人とも無事だったみたいだな」
そう言って運転席で安堵のため息をついたのは、この前スーパーで会った斗真くんの同居人の鮫島さんだった。
「ごめん。結構派手にやらかした」
「仕方ないよ。それにしても斗真、よくがんばったな。あとは俺たちの仕事だ。任せとけ」
「うん。頼んだ」
そんなやりとりを終えると、鮫島さんの車は、学校の中へと入っていった。
そういえば、前に会ったときに『警察にも顔が利く』って言ってたけど……。
「あの人、こういう能力がらみの事件をもみ消す専門の仕事してるから、あとは任せておけば大丈夫だよ」
「もみ消すって……あぁっ! ひょっとして、翔くんが前に記憶がどうのって言ってた、あれのこと?」
「まあ、そういうこと」
そっか。それじゃあ、鮫島さんも能力者ってことなんだ。
「じゃあ、引っ越さなくても……?」
「ああ。大丈夫だ」
「そっかぁ。よかった」
胸に手を当て、はぁ~、と大きく息を吐く。
斗真くんと離ればなれにならなくてすむんだ。
本当に……よかった。
「とにかく、生徒の中にケガ人が出なくてよかった。若葉がみんなに教えてくれたおかげだ。お手柄だな、若葉」
「斗真くんは、おもいっきりひどいケガしてたけどね⁉」
「それを言ったら、若葉もだろ」
「わたしのは、かすり傷だよ。もう、おねがいだからケガしないで」
「そうだな。これ以上若葉に能力を使わせないようにしないといけないしな」
「そうじゃなくて! わたしは、斗真くんに痛い思いをしてほしくないの」
「……わかった。これからは、もう少し気をつけるよ」
そう言いながら、斗真くんが片手をわたしの頭の上に乗っけると、ぽんぽんと優しくなでた。
「ふぇっ⁉」
おかしな声と同時に頭を押さえると、かぁっと顔がアツくなる。
ち、ちょっと……斗真くん⁉
「さ、学校戻るぞ」
そう言うと、佐治くんはわたしに背を向け、裏門から学校の中へと入っていってしまった。
ちょっと待って。わたし、こんな顔じゃ戻れないんですけど⁉
平常心、平常心……念仏のように頭の中で唱えながら、わたしは斗真くんの背中を追って駆けだした。
(終)
1
お気に入りに追加
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記
葉月百合
児童書・童話
小学上級、中学から。十二歳まで離れて育った双子の兄妹、光(ひかる)と桃代(ももよ)。
舞台は未来の日本。最先端の科学の中で、科学より自然なくらしが身近だった古い時代たちひとつひとつのよいところを大切にしている平安学園。そんな全寮制の寄宿学校へ入学することになった二人。
兄の光が学校になれたころ、妹の桃代がいじめにあって・・・。
相部屋の先輩に振り回されちゃう妹思いのお兄ちゃんが奮闘する、ハートフル×美味しいものが織りなすグルメファンタジー和風学園寮物語。
小学上級、中学から。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
宝石店の魔法使い~吸血鬼と赤い石~
橘花やよい
児童書・童話
宝石店の娘・ルリは、赤い瞳の少年が持っていた赤い宝石を、間違えてお客様に売ってしまった。
しかも、その少年は吸血鬼。石がないと人を襲う「吸血衝動」を抑えられないらしく、「石を返せ」と迫られる。お仕事史上、最大の大ピンチ!
だけどレオは、なにかを隠しているようで……?
そのうえ、宝石が盗まれたり、襲われたりと、騒動に巻き込まれていく。
魔法ファンタジー×ときめき×お仕事小説!
「第1回きずな児童書大賞」特別賞をいただきました。
泣き虫な君を、主人公に任命します!
成木沢ヨウ
児童書・童話
『演技でピンチを乗り越えろ!!』
小学六年生の川井仁太は、声優になるという夢がある。しかし父からは、父のような優秀な医者になれと言われていて、夢を打ち明けられないでいた。
そんな中いじめっ子の野田が、隣のクラスの須藤をいじめているところを見てしまう。すると謎の男女二人組が現れて、須藤を助けた。その二人組は学内小劇団ボルドの『宮風ソウヤ』『星みこと』と名乗り、同じ学校の同級生だった。
ひょんなことからボルドに誘われる仁太。最初は断った仁太だが、学芸会で声優を目指す役を演じれば、役を通じて父に宣言することができると言われ、夢を宣言する勇気をつけるためにも、ボルドに参加する決意をする。
演技を駆使して、さまざまな困難を乗り越える仁太たち。
葛藤しながらも、懸命に夢を追う少年たちの物語。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……
弓屋 晶都
児童書・童話
「空気は読めないけど、ボク、漫画読むのは早い方だよ」
そんな、ちょっとのんびりやで癒し系の小学六年の少年、佐々田京也(ささだきょうや)が、音楽発表会や学習発表会で大忙しの二学期を、漫画の神様にもらった特別な力で乗り切るドタバタ爽快学園物語です。
コメディー色と恋愛色の強めなお話で、初めての彼女に振り回される親友を応援したり、主人公自身が初めての体験や感情をたくさん見つけてゆきます。
---------- あらすじ ----------
空気が読めず失敗ばかりだった主人公の京也は、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられる。
この能力があれば、『喋らない少女』の清音さんとも、無口な少年の内藤くんとも話しができるかも……?
(2023ポプラキミノベル小説大賞最終候補作)
GREATEST BOONS+
丹斗大巴
児童書・童話
幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。
異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。
便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
最後までお読みいただいた上に、こんなに丁寧な感想までいただき、ありがとうございました。
不器用な二人の今後がわたしも気になります!
若葉ちゃんと佐治くんとのやりとりが丁寧に描かれていて
読んでいてキュンキュンしちゃいます。
甘酸っぱい……!
これから佐治くんのヒミツも明らかになっていくみたいで
今後の展開にワクワクします。
次回更新が楽しみです。
執筆応援しています!
みなづきよつば様
うれしい感想をありがとうございます!
27日完結予定ですので、これからもお楽しみいただければ幸いです。