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13.運命……じゃない!
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「佐治くん!」
慌てて起きあがって佐治くんを見ると、背中や肩、腕をひどくケガしてるみたい。
「今すぐ治すから。ちょっとだけ我慢してて」
「いい。俺には使うなと、前にも言ったはずだ」
拒絶しながらも、佐治くんの顔が苦痛にゆがむ。
そんなこと言われたって……こんなひどいケガ、ほっとけないよ。
「わたしがしたいの! わたし、もう自分の気持ちを我慢しないって決めたんだから。だから、佐治くんのケガは、わたしが治すの!」
そう強く言い放つと、わたしは佐治くんのケガに両手をかざした。
守ってくれるって言ってくれてうれしかったよ。
だけど、わたしは守られたいわけじゃない。
わたしだって、佐治くんを守りたいの。
しばらくすると、苦痛にゆがんでいた佐治くんの顔が、徐々におだやかになっていった。
「どう、佐治くん?」
わたしが佐治くんの顔をのぞき込んで問いかけると、そのままがばっと佐治くんに抱きすくめられた。
「え、ちょ……佐治、くん?」
佐治くんの両手が、小さく震えている。
「無事で……よかった」
吐息交じりの声が耳元でして、さっきまでの恐怖が急によみがえってきた。
「うん……怖かったよぉ……!」
わたしも佐治くんにきゅっとしがみつくと、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「助けに来てくれて、本当にありがとう」
「いや。……礼を言わなきゃいけないのは、俺の方だから」
わたしからそっと離れると、佐治くんは地面にあぐらをかいて座り直した。
わたしもそれにならって座り直すと、佐治くんがもう一度口を開く。
「五年前、なにもかもがイヤになってどん底にいたとき、俺、篠崎と一度会ってるんだ」
「五年前?」
ということは、小学二年生のとき? どこで会ったんだろう?
「あのときはまだ、このバカ力が自分でコントロールしきれなくて、みんなに気味悪がられて避けられる一方で、結構ひどいこともされてた。だけど、絶対に仕返しだけはするなって鮫島さんにイヤってほど言われてて。……なんで俺だけがこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ、こんな力全然いらないのにって、ずっと呪いのように思ってた」
うん。わかる。わたしも、こんな能力さえなければって、何度思ったことか。
「けどそんなとき、『大丈夫。わたしが治してあげる』って。なにも聞かずに、俺のケガを治してくれた女の子がいたんだ。気味悪がられるかもなんて気にせず、ただ俺のことを心配してくれた。なんで見ず知らずの他人のためにそんなことができるんだよって思ったけど……でもいつか、この手でこの子を守れるときが来るのなら、この力もありかなって。あのとき、はじめてちょっとだけ前向きに思えたんだ」
そう言って、佐治くんが恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
「え、ちょっと待って。それってひょっとして……それじゃあ、あのときの男の子が、佐治くんだったってこと?」
慌てて起きあがって佐治くんを見ると、背中や肩、腕をひどくケガしてるみたい。
「今すぐ治すから。ちょっとだけ我慢してて」
「いい。俺には使うなと、前にも言ったはずだ」
拒絶しながらも、佐治くんの顔が苦痛にゆがむ。
そんなこと言われたって……こんなひどいケガ、ほっとけないよ。
「わたしがしたいの! わたし、もう自分の気持ちを我慢しないって決めたんだから。だから、佐治くんのケガは、わたしが治すの!」
そう強く言い放つと、わたしは佐治くんのケガに両手をかざした。
守ってくれるって言ってくれてうれしかったよ。
だけど、わたしは守られたいわけじゃない。
わたしだって、佐治くんを守りたいの。
しばらくすると、苦痛にゆがんでいた佐治くんの顔が、徐々におだやかになっていった。
「どう、佐治くん?」
わたしが佐治くんの顔をのぞき込んで問いかけると、そのままがばっと佐治くんに抱きすくめられた。
「え、ちょ……佐治、くん?」
佐治くんの両手が、小さく震えている。
「無事で……よかった」
吐息交じりの声が耳元でして、さっきまでの恐怖が急によみがえってきた。
「うん……怖かったよぉ……!」
わたしも佐治くんにきゅっとしがみつくと、ボロボロと涙がこぼれ落ちた。
「助けに来てくれて、本当にありがとう」
「いや。……礼を言わなきゃいけないのは、俺の方だから」
わたしからそっと離れると、佐治くんは地面にあぐらをかいて座り直した。
わたしもそれにならって座り直すと、佐治くんがもう一度口を開く。
「五年前、なにもかもがイヤになってどん底にいたとき、俺、篠崎と一度会ってるんだ」
「五年前?」
ということは、小学二年生のとき? どこで会ったんだろう?
「あのときはまだ、このバカ力が自分でコントロールしきれなくて、みんなに気味悪がられて避けられる一方で、結構ひどいこともされてた。だけど、絶対に仕返しだけはするなって鮫島さんにイヤってほど言われてて。……なんで俺だけがこんな目に遭わなくちゃいけないんだよ、こんな力全然いらないのにって、ずっと呪いのように思ってた」
うん。わかる。わたしも、こんな能力さえなければって、何度思ったことか。
「けどそんなとき、『大丈夫。わたしが治してあげる』って。なにも聞かずに、俺のケガを治してくれた女の子がいたんだ。気味悪がられるかもなんて気にせず、ただ俺のことを心配してくれた。なんで見ず知らずの他人のためにそんなことができるんだよって思ったけど……でもいつか、この手でこの子を守れるときが来るのなら、この力もありかなって。あのとき、はじめてちょっとだけ前向きに思えたんだ」
そう言って、佐治くんが恥ずかしそうな笑みを浮かべた。
「え、ちょっと待って。それってひょっとして……それじゃあ、あのときの男の子が、佐治くんだったってこと?」
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