君の声が好き!

 中学入学直前の春休み、公園であたし佐倉遥香を助けてくれた、顔も名前もわからない男の子は、あたしの好みどストライクな声の持ち主だったの!
 中学の入学式でその声の持ち主――逢坂祐樹先輩を見つけたあたしは、お近づきになるために生徒会に入ることにしたんだ。

「あのさあ遥香ちゃん……よかったら僕と付き合ってほしいんだけど」
 生徒会活動初日の帰り道、あたしにそう言ってくれたのは、逢坂先輩――ではなく、彼の弟の爽太くん。
 会ったばかりなのに、どうして?
 不愛想な逢坂先輩とは対照的に、明るく誰にでもフレンドリーな爽太くん。
 誰かを好きになるっていう気持ちがまだわからなくて、ちゃんと断ったのに、「僕がわからせてみせる」なんて言われちゃって。
 本当は、爽太くんのことを好きになれれば幸せになれるのかもしれない。
 そう思うのに、なぜか逢坂先輩のことが気になってしまう自分がいる。
 あたしが好きなのは、先輩の『声』だけ。
 好きとかそんなんじゃない。
 ずっとそう思っていたのに、いつしか彼自身に惹かれる自分に気づいて――。

 声からはじまる初恋のおはなしです。


「第1回きずな児童書大賞」応募作です。
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小説 192,418 位 / 192,418件 児童書・童話 3,606 位 / 3,606件

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