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本編
22.再就職先も王宮?
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「…あの、エリアス?…確か、前職は『傭兵』って言ってなかった?」
「ん?ああ、まぁ、似たようなものだ。」
(いやいやいやいやいや!)
スクロールを書き書き、何とかたどり着いた隣国、ロートにて、エリアスが「前職のコネがあるから、紹介してやる」と気軽に言うものだから、ラッキーくらいの感覚でついていったら、ついて行った先がまさかの王宮だった。
「っ!無理だよ!?いきなりこんな立派なところに再就職とか、無理無理無理!」
「なぜ?ハイマットでも文官をしてたんだ。同じだろ?」
「違うよね!?他国出身の国外逃亡者がいきなり王宮に就職とか無理だから!身元が怪し過ぎるよ!」
「ああ、まぁ、その辺は気にするな。…これでも一応、それなりの地位に居たからな、ステラの身一つくらい、何とでもなる。」
「…」
エリアスの言葉に不安が増した。
(というか、もう、不安しかない…)
王宮内で「それなりの地位」に居た人物を、私は今、ガッツリと隷属させてしまっているんだけれど─
「ステラ、来い。」
「…」
呼ばれて、手を差し出されてしまえばもう、ついていくしかない。子牛の気分で連れて行かれた先、たどり着いたのは重厚な扉、エリアスが、ノックも何も無しにその扉を開け放った。
「…よぉ。」
「エリアス!?」
部屋の中、立派な執務机に座っていた巨漢のおじ様が、弾かれたようにして立ちあがった。その視線が、確認するよう、エリアスの顔、身体を眺めまわして、最後に私とエリアスの繋いだ手を凝視したので、慌てて手を引っ込める。
「…無事なよう、だな。キール達から、ハイマットに居ると報告は受けていたが…」
「あー、まぁ、見ての通り。心配されるようなことにはなってない。」
「そうか…」
言って、おじ様は力が抜けたかのように、椅子に座り込んでしまった。
「…正直、お前がベルツ公の包囲網を抜け出せるとは思っていなかったんだ。…捕まって秘密裡に飼われるか、どこかで野垂れ死にしていてもおかしくないと…」
「勝手に殺すな。」
「ああ。…本当に良かった。」
「…」
噛みしめるようなおじ様の言葉に、エリアスはただ苦笑している。そんなエリアスを見て、おじ様もちょっと復活したらしい。次に口を開いた時には、その言葉に好奇心をのぞかせていた。
「それで?どうやって、国境を越えた?検問所には、公の手が回っていただろう?容易には突破出来なかったと思うが…」
「ああ。奴隷商に身を売った。」
「…は?」
「密輸品として検問を越えたんだが、案外、上手くいった。」
「…」
「まぁ、その内、ハナトの検問所は手入れしないとマズいな。奴隷商とズブズブに繋がってやがるから、」
「ちょ、ちょっと待て!奴隷!?お前が奴隷だと!?」
「ああ。」
顔面蒼白で叫ぶおじ様、エリアスは飄々としてるけど、絶賛、エリアスの「主人」中である私は、おじ様の剣幕にビビりまくっている。
(ほらー!ほらほらほらー!)
やっぱり、駄目なやつ!こんな立派な部屋でお仕事をしているおじ様とため口が許される立場、それだけで、エリアスの「それなり」の高さがうかがえてしまう。
こっそり、エリアスの背中に隠れるように後退しておく。
「…何故、何故、そのような事態に…」
「あ?だから、国境越えるためだって。」
「他にいくらでも方法があっただろう?お前なら、単身で山を越えることも可能だったはず…」
「俺が野営嫌いなの、知ってるよな?」
「いや、だが、代わりに奴隷落ちを選ぶなど…」
おじ様が項垂れてる。私も、若干、エリアスはおかしいんじゃないかなーと思い始めてる。
「まぁ、それだけが理由じゃないがな。」
「…」
「奴隷紋がありゃあ…」
言いながら、エリアスが詰め襟をグイと押し下げた。
「流石にあの女も、諦めるしかないだろ?」
「…確かに、…いや、だが…」
エリアスの首筋にはっきり見える黒々とした契約紋。それを、痛ましそうな目で確認したおじ様が、深々とため息をついて。
「…お前は本当に、とんでもないことをしでかす。…契約紋など、奴隷契約を解消できたとしても、一生消せないではないか。」
「だから良いんだろ?…それに、まぁ、奴隷生活ってのも割と気に入っている。」
「…気に入っているだと?」
「っ!?」
そこで漸く、というか、全然望んで無かったというか、おじ様の意識がこちらへ向けられた。エリアスの背後から覗いていたのに、バッチリ目が合ってしまった。
「…もしやと思うが、そちらのお嬢さんが、お前の…?」
「ああ。俺の主人だ。」
「…」
「…」
躊躇なく言い切ったエリアスの隣で、私とおじ様の途方に暮れた視線が合った。
(…良かった、怒ってはいなさそう。)
安堵して、小さく頭を下げておく。
「あー、それで、まぁ、奴隷にはなっちまってるけど、それで問題なきゃ、俺を団に復帰させてもらいたいってのと、うちのマスター、良ければ騎士団で雇ってやってくれないか?」
(…騎士団。)
やっぱりね、やっぱりね。分かってた─
王宮で、傭兵みたいな、つまり、武力行使系のお仕事、そんなの、騎士団一択しかないと思う。ついでに多分、王宮内に部屋があるということは、目の前のおじ様はかなりの高位にある方、多分、「長」とか付きそうな役職。だから、腹を括る。もう、ここまで来たら、仕方ない。
エリアスの陰から、一歩、前へ─
「あの、初めまして、ステラと言います─」
「ん?ああ、まぁ、似たようなものだ。」
(いやいやいやいやいや!)
スクロールを書き書き、何とかたどり着いた隣国、ロートにて、エリアスが「前職のコネがあるから、紹介してやる」と気軽に言うものだから、ラッキーくらいの感覚でついていったら、ついて行った先がまさかの王宮だった。
「っ!無理だよ!?いきなりこんな立派なところに再就職とか、無理無理無理!」
「なぜ?ハイマットでも文官をしてたんだ。同じだろ?」
「違うよね!?他国出身の国外逃亡者がいきなり王宮に就職とか無理だから!身元が怪し過ぎるよ!」
「ああ、まぁ、その辺は気にするな。…これでも一応、それなりの地位に居たからな、ステラの身一つくらい、何とでもなる。」
「…」
エリアスの言葉に不安が増した。
(というか、もう、不安しかない…)
王宮内で「それなりの地位」に居た人物を、私は今、ガッツリと隷属させてしまっているんだけれど─
「ステラ、来い。」
「…」
呼ばれて、手を差し出されてしまえばもう、ついていくしかない。子牛の気分で連れて行かれた先、たどり着いたのは重厚な扉、エリアスが、ノックも何も無しにその扉を開け放った。
「…よぉ。」
「エリアス!?」
部屋の中、立派な執務机に座っていた巨漢のおじ様が、弾かれたようにして立ちあがった。その視線が、確認するよう、エリアスの顔、身体を眺めまわして、最後に私とエリアスの繋いだ手を凝視したので、慌てて手を引っ込める。
「…無事なよう、だな。キール達から、ハイマットに居ると報告は受けていたが…」
「あー、まぁ、見ての通り。心配されるようなことにはなってない。」
「そうか…」
言って、おじ様は力が抜けたかのように、椅子に座り込んでしまった。
「…正直、お前がベルツ公の包囲網を抜け出せるとは思っていなかったんだ。…捕まって秘密裡に飼われるか、どこかで野垂れ死にしていてもおかしくないと…」
「勝手に殺すな。」
「ああ。…本当に良かった。」
「…」
噛みしめるようなおじ様の言葉に、エリアスはただ苦笑している。そんなエリアスを見て、おじ様もちょっと復活したらしい。次に口を開いた時には、その言葉に好奇心をのぞかせていた。
「それで?どうやって、国境を越えた?検問所には、公の手が回っていただろう?容易には突破出来なかったと思うが…」
「ああ。奴隷商に身を売った。」
「…は?」
「密輸品として検問を越えたんだが、案外、上手くいった。」
「…」
「まぁ、その内、ハナトの検問所は手入れしないとマズいな。奴隷商とズブズブに繋がってやがるから、」
「ちょ、ちょっと待て!奴隷!?お前が奴隷だと!?」
「ああ。」
顔面蒼白で叫ぶおじ様、エリアスは飄々としてるけど、絶賛、エリアスの「主人」中である私は、おじ様の剣幕にビビりまくっている。
(ほらー!ほらほらほらー!)
やっぱり、駄目なやつ!こんな立派な部屋でお仕事をしているおじ様とため口が許される立場、それだけで、エリアスの「それなり」の高さがうかがえてしまう。
こっそり、エリアスの背中に隠れるように後退しておく。
「…何故、何故、そのような事態に…」
「あ?だから、国境越えるためだって。」
「他にいくらでも方法があっただろう?お前なら、単身で山を越えることも可能だったはず…」
「俺が野営嫌いなの、知ってるよな?」
「いや、だが、代わりに奴隷落ちを選ぶなど…」
おじ様が項垂れてる。私も、若干、エリアスはおかしいんじゃないかなーと思い始めてる。
「まぁ、それだけが理由じゃないがな。」
「…」
「奴隷紋がありゃあ…」
言いながら、エリアスが詰め襟をグイと押し下げた。
「流石にあの女も、諦めるしかないだろ?」
「…確かに、…いや、だが…」
エリアスの首筋にはっきり見える黒々とした契約紋。それを、痛ましそうな目で確認したおじ様が、深々とため息をついて。
「…お前は本当に、とんでもないことをしでかす。…契約紋など、奴隷契約を解消できたとしても、一生消せないではないか。」
「だから良いんだろ?…それに、まぁ、奴隷生活ってのも割と気に入っている。」
「…気に入っているだと?」
「っ!?」
そこで漸く、というか、全然望んで無かったというか、おじ様の意識がこちらへ向けられた。エリアスの背後から覗いていたのに、バッチリ目が合ってしまった。
「…もしやと思うが、そちらのお嬢さんが、お前の…?」
「ああ。俺の主人だ。」
「…」
「…」
躊躇なく言い切ったエリアスの隣で、私とおじ様の途方に暮れた視線が合った。
(…良かった、怒ってはいなさそう。)
安堵して、小さく頭を下げておく。
「あー、それで、まぁ、奴隷にはなっちまってるけど、それで問題なきゃ、俺を団に復帰させてもらいたいってのと、うちのマスター、良ければ騎士団で雇ってやってくれないか?」
(…騎士団。)
やっぱりね、やっぱりね。分かってた─
王宮で、傭兵みたいな、つまり、武力行使系のお仕事、そんなの、騎士団一択しかないと思う。ついでに多分、王宮内に部屋があるということは、目の前のおじ様はかなりの高位にある方、多分、「長」とか付きそうな役職。だから、腹を括る。もう、ここまで来たら、仕方ない。
エリアスの陰から、一歩、前へ─
「あの、初めまして、ステラと言います─」
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