召喚巫女の憂鬱

リコピン

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第三章 堕とされた先で見つけたもの

6.

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6.

逃げ出すことも出来ず、覚悟を決めることも出来ないまま、娼館このばしょに連れてこられて三日が経とうとしていた。

「あんたさぁ、いい加減そのベールやめたら?その全身ぴっちり服で覆う格好も」

「…」

「ソフィー、あんたが口出しすることじゃないでしょう?」

「だって。肌なんて一切見せませんって、お高くとまって。手袋までしてんだよ?こんなんじゃ、いつまで経ってもシェーンに迷惑がかかるじゃない」

店の開店間際、引っ張り出された一階の酒場。近寄ってきたシェーンとソフィーの二人に挟まれる。辛辣な言葉を吐かれているけれど、この三日間、シェーンに庇われる場面が多かったのは事実。ソフィーでさえ、文句を言いながらも何かと気にかけてくれていた。

「別に私が勝手にやってることなんだから、迷惑とかそう言うんじゃないでしょ?」

「まーた、シェーンはそう言う甘っちょろいことを」

頬を膨らませるソフィーに苦笑して、シェーンが店の入り口へと視線を向ける。次の瞬間、シェーンの表情が固まった。

シェーンの視線の先、その男の登場に店中に緊張が走った。女主人でさえ、一瞬、その顔から表情を消していた。

「…いらっしゃい、カール。こんなに早く来るとは思わなかったよ」

「隣町まで護衛の仕事だったんだけどさ、新しい子が入ったって聞いて、途中で抜けて来た」

「…それは、また」

『新しい子』、それは間違いなく私のことだろう。

初めて会った時のヴォルフと同じような格好をしている男は、だけど、その目に宿る光が、彼とは全然違う。

「で?その子?」

ギラギラとした、不快な視線がこちらを見据える。

「…そうだよ。だけど、その子は結構いい値がするんだ。壊されてもらっちゃ困るよ」

「大丈夫、大丈夫。いくら?」

こちらに視線を向けたまま、女主人と会話をする男。交わされる会話に吐き気がする。それでも、男と女主人の交渉がまとまったのか、不快な笑みを浮かべて近づいてきた男に腕を掴まれた。

「へえ?何でこんなのつけてんの?出し惜しみ?あーでも、見せらんないほど最悪なのは勘弁だからさあ」

身構える暇もなく、いきなりベールをむしりとられた。

「嘘っ!?」

「…ソフィー?」

悲鳴に近い驚愕の声は、隣から。それに対する訝しげなシェーンの声も聞こえたけれど―

「ふーん。まあ、悪くはねぇなぁ」

「…」

品定めする男の視線が、マジマジと顔に注がれる。

「よし、来い」

強く腕を引かれて、足元がふらついた。抵抗するが、容赦ない力で引きずられてしまう。

「待って!待って!何であんたがこんなとこに居んの!?浄化はどうなってんの!?世界はどうなんのよ!?」

「!?」

ソフィーの言葉に、思わず彼女を振り向く。目を見開き、青ざめた顔でこちらを見るソフィーと目があった。

―彼女は、私を知っている?

一歩、踏み出そうとしたソフィーがよろめく。シェーンが、ソフィーの肩を支えるようにして抱き止めた。

「…ソフィー?あんた、どうしたの。酷い顔色よ」

「そんな、だって、娼館エンドなんて無かったし、でも、これって絶対バッドエンドでしょ?だったら、世界の浄化に失敗してるってこと?なんで、」

パニックに陥ったようなソフィーの言葉の意味を問おうとして、突然、体が浮いた。

「面倒くせぇなぁ。マダムと約束してるからよ、手っ取り早く黙らせるわけにいかねぇんだよ」

「!?離せ!」

男に抱えあげられ、二階へと続く階段を運ばれていく。

「…黙ってろ」

「!?」

地を這うような男の声。底冷えのするそれに、言葉を飲んだ。




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