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二章
9 個別イベント 真夏の海水浴1
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(あー、中庭でランチイベントだ。へぇ、結構、好感度上がってる。…仲良くやってるんだ。)
「…お嬢様?如何されましたか?」
「あ、うん。外でランチしてるカップルがいて、暑い中、よくやるなーと。」
「外…、中庭でございますか?この日差しで?」
「うん。」
「…」
「…」
ミーンミーンミーン、ジージージー、シャーシャーシャー…
「…青春、だね。」
「…左様でございますね。」
公爵家の力を使って借りている三階の空き教室の一つ。壁に立て掛けてある「ちょっとだけ鞘から抜いた魔剣」のお陰で涼しい室内、ジェイクの用意してくれたランチを頂く。
「ジェイクも、一緒に食べよ?」
「いえ、私はお嬢様の執事でございます。主君と同じ食卓につくなど、」
「一人だと寂しいから。」
「…では、寛大なるお嬢様の御心遣いに感謝致しまして、」
「うん、はい、あーん。」
「…」
「ジェイク?」
「っ!」
「そうそう、最初から大人しくそうしてて。はい、あーん。」
二十二歳の男が大人しく口を開けて食事が運ばれるのを待つ姿に、思わず顔がニヤける。
(はぁー、やっぱ、可愛いわ。)
「…お嬢様?どうされました?」
「ん?あー、ちょっと迷ってることがあって。ジェイクは、黒と白、どっちが好き?」
「黒と白の二色であれば、特にどちらを好むということはございません。色で言えば、お嬢様のお髪の色である金か瞳の色である紅を好んでおりますが、他の色に関しては特に興味は、」
「ああ、えっと、そうじゃなくてね、服の色なの、服の色。」
「服、お嬢様がお召しになるのですか?でしたら、どちらの色であろうと大変お似合いになるかと。お嬢様に着こなせないドレスなど、」
「はい、オーケー、ストーップ。」
褒め言葉としては最高点でも、参考には全くならないジェイクの言葉を強引に止めた。
「えっと、じゃあ、質問を変えるね?『純白天使』と『妖艶小悪魔』だったら、ジェイクはどっちが好き?」
「よ、ようえん…?」
「そっか、ジェイクは『妖艶小悪魔』の方が好きなんだ。」
「っ!いえ!違います!お嬢様!今のは、そういう意味では!」
「いいのいいの、趣味なんて人それぞれなんだから。」
「お嬢様!本当に違うんです!」
必死に言い募るジェイクに、ついつい顔が笑ってしまう。噴き出しそうになるのを、必死に堪えながら─
「…ねぇ、ジェイク?お願いがあるんだけど。」
─夏休み、一緒に海に行かない?
「…私は、ここで一体、何をしているのでしょう。」
眩しい太陽、白い砂浜、そして、何処までも広がる青い海─
(いくらお嬢様の願いとは言え、流石にこれは…)
執事としては勿論、護衛としての役目も果たせぬような無防備な姿をさらし、あまつさえ、この瞬間、お嬢様をお一人にしてしまっている─
(いえ、ですが、しかし、流石にお嬢様の更衣に付き従うわけには…)
幼年の頃とは訳が違う。いくら、お側を離れることに不安を感じようと、それだけは守らねばならぬ一線。ついつい、婦人用の更衣室に視線が向いてしまうのを必死に堪え、用意したパラソルを砂浜に固定する。
(…お嬢様の白雪のようなお肌を焼くようなことがあってはなりませんからね。極力、この場でお守りするようにしなければ。)
固定したパラソルの下に、敷布を敷き終わる。満足のいく仕上がりに一人悦に入っていると、近づいてくる気配。瞬時に立ち上がり、姿勢を正した。
お嬢様をお迎えするため、振り返り─
「ジェイク、お待たせー。あ、その水着いいね。すごく似合ってる。格好いい。」
「っ!?」
「パラソルも立ててくれたんだ。ありがとう、助かるー。日焼け止めしてても、流石にずっとお日様の下だと、火傷しちゃうし。」
「…」
「ジェイク?」
「…」
「あ、ひょっとして、これ?この水着?ふふ。どうかな?可愛い?似合ってる?」
「…」
「ジェイクのリクエストにお答えした、『妖艶小悪魔ビキニ』だよ?凄いよね、元がアレだからなのか、この世界観でビキニがあるとか。」
「…」
「ジェイク?おーい、ジェイク。いい加減、帰ってこないと、このまま、くっついちゃうよー。」
「…」
「もー、仕方ないなー。じゃあ、リクエストにお答えして…、はい、くっついた!」
「ゥ!?ァ!?ッ!?」
「え!?え!?嘘!?ジェイク!?嘘!?ごめん!大丈夫!?」
「…」
「ジェイクーッ!?」
「…お嬢様?如何されましたか?」
「あ、うん。外でランチしてるカップルがいて、暑い中、よくやるなーと。」
「外…、中庭でございますか?この日差しで?」
「うん。」
「…」
「…」
ミーンミーンミーン、ジージージー、シャーシャーシャー…
「…青春、だね。」
「…左様でございますね。」
公爵家の力を使って借りている三階の空き教室の一つ。壁に立て掛けてある「ちょっとだけ鞘から抜いた魔剣」のお陰で涼しい室内、ジェイクの用意してくれたランチを頂く。
「ジェイクも、一緒に食べよ?」
「いえ、私はお嬢様の執事でございます。主君と同じ食卓につくなど、」
「一人だと寂しいから。」
「…では、寛大なるお嬢様の御心遣いに感謝致しまして、」
「うん、はい、あーん。」
「…」
「ジェイク?」
「っ!」
「そうそう、最初から大人しくそうしてて。はい、あーん。」
二十二歳の男が大人しく口を開けて食事が運ばれるのを待つ姿に、思わず顔がニヤける。
(はぁー、やっぱ、可愛いわ。)
「…お嬢様?どうされました?」
「ん?あー、ちょっと迷ってることがあって。ジェイクは、黒と白、どっちが好き?」
「黒と白の二色であれば、特にどちらを好むということはございません。色で言えば、お嬢様のお髪の色である金か瞳の色である紅を好んでおりますが、他の色に関しては特に興味は、」
「ああ、えっと、そうじゃなくてね、服の色なの、服の色。」
「服、お嬢様がお召しになるのですか?でしたら、どちらの色であろうと大変お似合いになるかと。お嬢様に着こなせないドレスなど、」
「はい、オーケー、ストーップ。」
褒め言葉としては最高点でも、参考には全くならないジェイクの言葉を強引に止めた。
「えっと、じゃあ、質問を変えるね?『純白天使』と『妖艶小悪魔』だったら、ジェイクはどっちが好き?」
「よ、ようえん…?」
「そっか、ジェイクは『妖艶小悪魔』の方が好きなんだ。」
「っ!いえ!違います!お嬢様!今のは、そういう意味では!」
「いいのいいの、趣味なんて人それぞれなんだから。」
「お嬢様!本当に違うんです!」
必死に言い募るジェイクに、ついつい顔が笑ってしまう。噴き出しそうになるのを、必死に堪えながら─
「…ねぇ、ジェイク?お願いがあるんだけど。」
─夏休み、一緒に海に行かない?
「…私は、ここで一体、何をしているのでしょう。」
眩しい太陽、白い砂浜、そして、何処までも広がる青い海─
(いくらお嬢様の願いとは言え、流石にこれは…)
執事としては勿論、護衛としての役目も果たせぬような無防備な姿をさらし、あまつさえ、この瞬間、お嬢様をお一人にしてしまっている─
(いえ、ですが、しかし、流石にお嬢様の更衣に付き従うわけには…)
幼年の頃とは訳が違う。いくら、お側を離れることに不安を感じようと、それだけは守らねばならぬ一線。ついつい、婦人用の更衣室に視線が向いてしまうのを必死に堪え、用意したパラソルを砂浜に固定する。
(…お嬢様の白雪のようなお肌を焼くようなことがあってはなりませんからね。極力、この場でお守りするようにしなければ。)
固定したパラソルの下に、敷布を敷き終わる。満足のいく仕上がりに一人悦に入っていると、近づいてくる気配。瞬時に立ち上がり、姿勢を正した。
お嬢様をお迎えするため、振り返り─
「ジェイク、お待たせー。あ、その水着いいね。すごく似合ってる。格好いい。」
「っ!?」
「パラソルも立ててくれたんだ。ありがとう、助かるー。日焼け止めしてても、流石にずっとお日様の下だと、火傷しちゃうし。」
「…」
「ジェイク?」
「…」
「あ、ひょっとして、これ?この水着?ふふ。どうかな?可愛い?似合ってる?」
「…」
「ジェイクのリクエストにお答えした、『妖艶小悪魔ビキニ』だよ?凄いよね、元がアレだからなのか、この世界観でビキニがあるとか。」
「…」
「ジェイク?おーい、ジェイク。いい加減、帰ってこないと、このまま、くっついちゃうよー。」
「…」
「もー、仕方ないなー。じゃあ、リクエストにお答えして…、はい、くっついた!」
「ゥ!?ァ!?ッ!?」
「え!?え!?嘘!?ジェイク!?嘘!?ごめん!大丈夫!?」
「…」
「ジェイクーッ!?」
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