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二章
7 共通イベント 春のピクニック2
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「っ!?キャァァァアアア!?」
「お嬢様っ!?」
「え、あ、いや、私は大丈夫だよ。襲われてるのはあっち。」
学園の課外授業で訪れた王都郊外の丘、春の陽気に誘われたか、突如出現した魔物、ハンガーベアの急襲に、場は恐慌状態に陥っている。
「っ!お嬢様!こちらへ!危険です!お下がり下さい!」
「え、うん?…そうだね、まぁ、『私を庇って怪我するなんて!?』イベントに私がシャシャるわけにもいかないよね。…あ、ギャレン様、やられた。」
「っ!お嬢様!ここでお待ちを!」
「え!?あれ!?ジェイク!?ジェイクが行くの!?」
お嬢様のご婚約者、王太子殿下が、ハンガーベアの前足の一撃に倒され、地面に伏せる。彼の背後には、もう一人、女性徒の姿が―
(クッ!仕方ありません!)
『ファイヤーボール!』
人の密集する中で放つ魔術、周りを巻き込むことなくハンガーベアに着弾した炎に内心安堵し、そのまま、火力を上げて魔物を焼き尽くした。炭化し、プスプスと煙を上げる巨体が脆くも崩れ落ち、その頭部が転がるところまで確認してから、お嬢様の元へ戻ろうと─
「い、い、いやぁぁああ!?」
「!」
上がった悲鳴に新手を警戒するが、その気配はない。悲鳴を上げた女性徒を確認すれば、その怯えた視線は、今しがた倒したばかりのハンガーベアに向けられている。
(?何か…?)
彼女の怯えの原因が分からず、動けずにいると、
「いや、このサイズの熊の丸焼きとか、普通に怖いよ。」
「お嬢様…?」
「えっと、うん、申し訳ない。ジェイクの感覚が狂ったのは私のせいかな…」
「お嬢様、お嬢様にお怪我は。」
「ないない。メッチャ離れてたから。…ていうか、あー、そうか、確か、魔物倒すのはギャレン様じゃない、ギャレン様は庇っただけ、だった?あれ、熊倒すのって誰?騎士?護衛的な?」
周囲を見回すお嬢様、けれど、目当てのものは見つからなかったのか、首を振って、
「うん、まぁ、いいか。ジェイクが無事だし。」
「はい。私はお嬢様の執事です。この程度の魔物に後れをとるようでは、お嬢様の執事は務まりませんので。」
「…突っ込みたいのに、否定は出来ないというジレンマ。」
「お嬢様、バスケットをありがとうございます。態々、お持ちいただいたのですね。私が取りに戻りましたものを。」
懊悩するお嬢様が手にするものに遅まきながら気づき、慌てて手を差し出した。先ほど、安全圏に置いてきたはずの「お嬢様の手作りサンドイッチ」、お嬢様にこのような重量のあるものを持たせるなど─
「お嬢様、大変失礼いたしました。さ、目的地まではあと少し、こちらは私にお任せいただき、どうぞ、丘の上までお進み下さい。きっと、見晴らしも良いことでしょう。」
「え…、この惨状をそのままにしてイベント進行とか。ジェイクもなかなか。」
「お嬢様?」
「…まぁ、そうだね、行こうか?」
「お嬢様っ!?」
「え、あ、いや、私は大丈夫だよ。襲われてるのはあっち。」
学園の課外授業で訪れた王都郊外の丘、春の陽気に誘われたか、突如出現した魔物、ハンガーベアの急襲に、場は恐慌状態に陥っている。
「っ!お嬢様!こちらへ!危険です!お下がり下さい!」
「え、うん?…そうだね、まぁ、『私を庇って怪我するなんて!?』イベントに私がシャシャるわけにもいかないよね。…あ、ギャレン様、やられた。」
「っ!お嬢様!ここでお待ちを!」
「え!?あれ!?ジェイク!?ジェイクが行くの!?」
お嬢様のご婚約者、王太子殿下が、ハンガーベアの前足の一撃に倒され、地面に伏せる。彼の背後には、もう一人、女性徒の姿が―
(クッ!仕方ありません!)
『ファイヤーボール!』
人の密集する中で放つ魔術、周りを巻き込むことなくハンガーベアに着弾した炎に内心安堵し、そのまま、火力を上げて魔物を焼き尽くした。炭化し、プスプスと煙を上げる巨体が脆くも崩れ落ち、その頭部が転がるところまで確認してから、お嬢様の元へ戻ろうと─
「い、い、いやぁぁああ!?」
「!」
上がった悲鳴に新手を警戒するが、その気配はない。悲鳴を上げた女性徒を確認すれば、その怯えた視線は、今しがた倒したばかりのハンガーベアに向けられている。
(?何か…?)
彼女の怯えの原因が分からず、動けずにいると、
「いや、このサイズの熊の丸焼きとか、普通に怖いよ。」
「お嬢様…?」
「えっと、うん、申し訳ない。ジェイクの感覚が狂ったのは私のせいかな…」
「お嬢様、お嬢様にお怪我は。」
「ないない。メッチャ離れてたから。…ていうか、あー、そうか、確か、魔物倒すのはギャレン様じゃない、ギャレン様は庇っただけ、だった?あれ、熊倒すのって誰?騎士?護衛的な?」
周囲を見回すお嬢様、けれど、目当てのものは見つからなかったのか、首を振って、
「うん、まぁ、いいか。ジェイクが無事だし。」
「はい。私はお嬢様の執事です。この程度の魔物に後れをとるようでは、お嬢様の執事は務まりませんので。」
「…突っ込みたいのに、否定は出来ないというジレンマ。」
「お嬢様、バスケットをありがとうございます。態々、お持ちいただいたのですね。私が取りに戻りましたものを。」
懊悩するお嬢様が手にするものに遅まきながら気づき、慌てて手を差し出した。先ほど、安全圏に置いてきたはずの「お嬢様の手作りサンドイッチ」、お嬢様にこのような重量のあるものを持たせるなど─
「お嬢様、大変失礼いたしました。さ、目的地まではあと少し、こちらは私にお任せいただき、どうぞ、丘の上までお進み下さい。きっと、見晴らしも良いことでしょう。」
「え…、この惨状をそのままにしてイベント進行とか。ジェイクもなかなか。」
「お嬢様?」
「…まぁ、そうだね、行こうか?」
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