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一章
5 悪役令嬢15歳
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─お嬢様!?お嬢様っ!?
─嫌ですっ!
─嫌だ嫌だ嫌だっ!
─駄目だ!駄目っ!お嬢様!
─お嬢様ぁぁぁああああっ!!!
「…ん。」
「っ!?お嬢様っ!?」
「ん、あれ、私…」
「おじょ、お嬢様、お目覚めに、お目覚めになられ…」
「あ、あー…、そっか、私、ドラゴンに食べられて…」
「…私は、もう、もう、二度と…、二度とお嬢様にお会いできないかと…」
「あー、うん、そうだね。流石に私も今度は死ぬかと思った。」
ブレスに焼かれ、飲み込まれたドラゴンの腹の中。目が覚めれば激痛の内に消化され、また死んでいく。それでも、死に切る直前に身体は再生を始め、同時に意識が戻ることの繰り返し─
「…そう言えば、ここどこ?」
「…ドラゴンに襲われていたハプスの街の宿屋です。」
「ハプスか…。それで、ドラゴンは?ジェイクが、私を助けてくれたの?」
「申し訳ありません、お嬢様をドラゴンの腹の中よりお救いするのが精一杯で、奴を倒しきることは出来ずに取り逃がしました。」
「そっか。…うん、まぁ、ラスボスドラゴンなんて、そんなに簡単に倒せるもんじゃないよね。」
「いいえ、お嬢様。討伐こそ叶いませんでしたが、お嬢様の奮闘のおかげでハプスの者に被害は出ておりません。お嬢様の尊い犠牲のおかげです。」
「あー。」
(そうか、うん、ジェイクにはそういう風に見えるのか。)
「ただ、お嬢様…、無礼を承知で申し上げますが、民のためとはいえ、何故このような無謀な真似を?…私は、私は、お嬢様を失ってしまうかと…」
「…ごめん、ジェイク。」
泣きそうになっている二十歳を越えた男を、なんと慰めればいいものか。しかも、元凶は自分。
「いや、私もね?流石にどうかな?って思ったんだけど、魔剣もあるし何とかなっちゃうかも?ワンチャン?って魔が差したというか。」
「…」
「私が処刑されちゃうのって、ラスボスになってドラゴンに王都を襲わせた罪ってことになってるから、なら、今のうちにドラゴンやっちゃえばいいんじゃね?って。今なら死なないし。けど、まぁ、おこがまし過ぎた。ドラゴンなめてたわ。うん。そんなレベルじゃなかった。」
「お嬢様…」
「だから、さ。もう、諦めようかなーって思って。」
「諦める、のですか?」
「そうそう。もうさ、ここまでやって死ぬことも出来ないんだったら、これはもう、正々堂々、舞台の上に乗っかって、華々しく散ってやろうと思うんだよね。」
「散る、とは…?」
「あ!命までは散らさないよ!それは、無理!」
ここまでこれだけ無茶しといてって話だけど、死にたくないからこそ、無茶をした、あがいた。それでも、逃げられなかった─
「…ジェイク、もう分かってると思うけど、私は死のうと思っても死ねないの。多分、強制力ってやつのせいで。」
「…」
「だから、行くよ、学園。」
私に用意された舞台。悪役令嬢として踊ることを強いられた─
「今まで抗って駄目だったんだから、あと一年、舞台を降りるその時まで、好きに踊ろうと思うんだよね。」
「お嬢様のお好きに…?」
「うん、そう。」
だから─
「覚悟、しといてね?ジェイク?」
「え…?」
ジェイクのポカンとした間抜け面が可愛い。
私は、笑えているだろうか?
この世界に求められる悪役令嬢らしく─
─嫌ですっ!
─嫌だ嫌だ嫌だっ!
─駄目だ!駄目っ!お嬢様!
─お嬢様ぁぁぁああああっ!!!
「…ん。」
「っ!?お嬢様っ!?」
「ん、あれ、私…」
「おじょ、お嬢様、お目覚めに、お目覚めになられ…」
「あ、あー…、そっか、私、ドラゴンに食べられて…」
「…私は、もう、もう、二度と…、二度とお嬢様にお会いできないかと…」
「あー、うん、そうだね。流石に私も今度は死ぬかと思った。」
ブレスに焼かれ、飲み込まれたドラゴンの腹の中。目が覚めれば激痛の内に消化され、また死んでいく。それでも、死に切る直前に身体は再生を始め、同時に意識が戻ることの繰り返し─
「…そう言えば、ここどこ?」
「…ドラゴンに襲われていたハプスの街の宿屋です。」
「ハプスか…。それで、ドラゴンは?ジェイクが、私を助けてくれたの?」
「申し訳ありません、お嬢様をドラゴンの腹の中よりお救いするのが精一杯で、奴を倒しきることは出来ずに取り逃がしました。」
「そっか。…うん、まぁ、ラスボスドラゴンなんて、そんなに簡単に倒せるもんじゃないよね。」
「いいえ、お嬢様。討伐こそ叶いませんでしたが、お嬢様の奮闘のおかげでハプスの者に被害は出ておりません。お嬢様の尊い犠牲のおかげです。」
「あー。」
(そうか、うん、ジェイクにはそういう風に見えるのか。)
「ただ、お嬢様…、無礼を承知で申し上げますが、民のためとはいえ、何故このような無謀な真似を?…私は、私は、お嬢様を失ってしまうかと…」
「…ごめん、ジェイク。」
泣きそうになっている二十歳を越えた男を、なんと慰めればいいものか。しかも、元凶は自分。
「いや、私もね?流石にどうかな?って思ったんだけど、魔剣もあるし何とかなっちゃうかも?ワンチャン?って魔が差したというか。」
「…」
「私が処刑されちゃうのって、ラスボスになってドラゴンに王都を襲わせた罪ってことになってるから、なら、今のうちにドラゴンやっちゃえばいいんじゃね?って。今なら死なないし。けど、まぁ、おこがまし過ぎた。ドラゴンなめてたわ。うん。そんなレベルじゃなかった。」
「お嬢様…」
「だから、さ。もう、諦めようかなーって思って。」
「諦める、のですか?」
「そうそう。もうさ、ここまでやって死ぬことも出来ないんだったら、これはもう、正々堂々、舞台の上に乗っかって、華々しく散ってやろうと思うんだよね。」
「散る、とは…?」
「あ!命までは散らさないよ!それは、無理!」
ここまでこれだけ無茶しといてって話だけど、死にたくないからこそ、無茶をした、あがいた。それでも、逃げられなかった─
「…ジェイク、もう分かってると思うけど、私は死のうと思っても死ねないの。多分、強制力ってやつのせいで。」
「…」
「だから、行くよ、学園。」
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「今まで抗って駄目だったんだから、あと一年、舞台を降りるその時まで、好きに踊ろうと思うんだよね。」
「お嬢様のお好きに…?」
「うん、そう。」
だから─
「覚悟、しといてね?ジェイク?」
「え…?」
ジェイクのポカンとした間抜け面が可愛い。
私は、笑えているだろうか?
この世界に求められる悪役令嬢らしく─
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