上 下
6 / 27
一章

5 悪役令嬢15歳

しおりを挟む
─お嬢様!?お嬢様っ!?

─嫌ですっ!

─嫌だ嫌だ嫌だっ!

─駄目だ!駄目っ!お嬢様!

─お嬢様ぁぁぁああああっ!!!








「…ん。」

「っ!?お嬢様っ!?」

「ん、あれ、私…」

「おじょ、お嬢様、お目覚めに、お目覚めになられ…」

「あ、あー…、そっか、私、ドラゴンに食べられて…」

「…私は、もう、もう、二度と…、二度とお嬢様にお会いできないかと…」

「あー、うん、そうだね。流石に私も今度は死ぬかと思った。」

ブレスに焼かれ、飲み込まれたドラゴンの腹の中。目が覚めれば激痛の内に消化され、また死んでいく。それでも、死に切る直前に身体は再生を始め、同時に意識が戻ることの繰り返し─

「…そう言えば、ここどこ?」

「…ドラゴンに襲われていたハプスの街の宿屋です。」

「ハプスか…。それで、ドラゴンは?ジェイクが、私を助けてくれたの?」

「申し訳ありません、お嬢様をドラゴンの腹の中よりお救いするのが精一杯で、奴を倒しきることは出来ずに取り逃がしました。」

「そっか。…うん、まぁ、ラスボスドラゴンなんて、そんなに簡単に倒せるもんじゃないよね。」

「いいえ、お嬢様。討伐こそ叶いませんでしたが、お嬢様の奮闘のおかげでハプスの者に被害は出ておりません。お嬢様の尊い犠牲のおかげです。」

「あー。」

(そうか、うん、ジェイクにはそういう風に見えるのか。)

「ただ、お嬢様…、無礼を承知で申し上げますが、民のためとはいえ、何故このような無謀な真似を?…私は、私は、お嬢様を失ってしまうかと…」

「…ごめん、ジェイク。」

泣きそうになっている二十歳を越えた男を、なんと慰めればいいものか。しかも、元凶は自分。

「いや、私もね?流石にどうかな?って思ったんだけど、魔剣もあるし何とかなっちゃうかも?ワンチャン?って魔が差したというか。」

「…」

「私が処刑されちゃうのって、ラスボスになってドラゴンに王都を襲わせた罪ってことになってるから、なら、今のうちにドラゴンやっちゃえばいいんじゃね?って。今なら死なないし。けど、まぁ、おこがまし過ぎた。ドラゴンなめてたわ。うん。そんなレベルじゃなかった。」

「お嬢様…」

「だから、さ。もう、諦めようかなーって思って。」

「諦める、のですか?」

「そうそう。もうさ、ここまでやって死ぬことも出来ないんだったら、これはもう、正々堂々、舞台の上に乗っかって、華々しく散ってやろうと思うんだよね。」

「散る、とは…?」

「あ!命までは散らさないよ!それは、無理!」

ここまでこれだけ無茶しといてって話だけど、死にたくないからこそ、無茶をした、あがいた。それでも、逃げられなかった─

「…ジェイク、もう分かってると思うけど、私は死のうと思っても死ねないの。多分、強制力ってやつのせいで。」

「…」

「だから、行くよ、学園。」

私に用意された舞台。悪役令嬢として踊ることを強いられた─

「今まで抗って駄目だったんだから、あと一年、舞台を降りるその時まで、好きに踊ろうと思うんだよね。」

「お嬢様のお好きに…?」

「うん、そう。」

だから─

「覚悟、しといてね?ジェイク?」

「え…?」

ジェイクのポカンとした間抜け面が可愛い。

私は、笑えているだろうか?

この世界に求められる悪役令嬢らしく─





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

冤罪で殺された悪役令嬢は精霊となって自分の姪を守護します 〜今更謝罪されても手遅れですわ〜

犬社護
ファンタジー
ルーテシア・フォンテンスは、《ニーナ・エクスランデ公爵令嬢毒殺未遂事件》の犯人として仕立て上げられ、王城地下の牢獄にて毒殺されてしまうが、目覚めたら精霊となって死んだ場所に佇んでいた。そこで自分の姪と名乗る女の子《チェルシー》と出会い、自身の置かれた状況を知る。 《十八年経過した世界》 《ルーテシアフォンテンスは第一級犯罪者》 《フォンテンス家の壊滅》 何故こんな事態となったのか、復讐心を抑えつつ姪から更に話を聞こうとしたものの、彼女は第一王子の誕生日パーティーに参加すべく、慌てて地上へと戻っていく。ルーテシアは自身を殺した犯人を探すべく、そのパーティーにこっそり参加することにしたものの、そこで事件に遭遇し姪を巻き込んでしまう。事件解決に向けて動き出すものの、その道中自分の身体に潜む力に少しずつ目覚めていき、本人もこの力を思う存分利用してやろうと思い、ルーテシアはどんどん強くなっていき、犯人側を追い詰めていく。 そんな危険精霊に狙われていることを一切知らない犯人側は、とある目的を達成すべく、水面下で策を張り巡らせていた。誰を敵に回したのか全てを察した時にはもう手遅れで……

転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!

つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが! 第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。    *** 黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。

完璧ヒロインに負けたので平凡令嬢は退場します

琴吹景
ファンタジー
【シュプレイム王国貴族学院伝統の卒業生祝賀会『プロムナード』の会場のど真ん中で、可憐な少女と側近の令息数人を従えた我が国の王太子、エドモンド・シャルル・ド・シュプレイム殿下が、婚約者であるペネロペ・ド・ロメイユ公爵令嬢と対峙していた。】 テンプレのような断罪、婚約破棄のイベントが始まろうとしている。  でも、ヒロインも悪役令嬢もいつもとはかなり様子が違うようで………  初投稿です。異世界令嬢物が好きすぎて書き始めてしまいました。 まだまだ勉強中です。  話を早く進める為に、必要の無い視覚描写(情景、容姿、衣装など)は省いています。世界観を堪能されたい方はご注意下さい。  間違いを見つけられた方は、そーっと教えていただけると有り難いです。  どうぞよろしくお願いいたします。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

悪役令嬢にざまぁされた王子のその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。 その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。 そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。 マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。 人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

処理中です...