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第十一章 召喚した

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よほど疲れていたのだろう。横になるなり寝息をたてはじめた安らかな寝顔に、今日一日の喧騒が思い出され、自然、笑いが込み上げてくる。





生じて百年、最近は感じることもなくなっていた『不快』という感情。いや、それよりも、もっと強い、『怒り』に似た。

のぞきにいった学院内。これまでも常にそうであったように、ローザは本の山に埋もれていて。いつもと違ったのは、彼女の手を引く男が現れたこと。

抵抗はしていたが、それでも本気で抗うことなく、男に従うローザの姿に感じたのは―

結局、彼女が再びその場へ戻ってくるまで動けずにいた。

戻ってきた姿を、強く見つめてしまったのは、彼女の何かを、確かめたかったから。

視線に気づき上げられた顔。目が合い、途端、頬を染めたローザ。その反応に、確かに充足されるものがあって。感じていたはずの『怒り』に似た何かは霧散した。

―我ながら、単純な話





城に戻ってきたローザは、また何かを思い付いたのか、楽しそうで。それがまた、己のための提案なのだから。本当に、いつだって彼女の中心が自分であることに、また満たされる。

思い付いたという提案にも、自身、興味を引かれてしまったのは確かなこと。

少々、悪のりが過ぎたとは思うが、結果も面白いことになった。

己の手に握られる朱線。彼女へ続くそこに魔力を流せば、抵抗なく流れ、朱線に光が走る。己の任意での魔力譲渡、遮断が可能になったことを、何度も確かめる。

これが彼女を守る手段となることを願う。

自分の中に起きている変化。彼女と居るのは楽しい。そう、彼女が願うように、共に居られる時間が長く続けばと、思ってしまうほどには。




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