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幕引き
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「え!?そ、そうなの・・・?
幸ちゃんそうなの?
そんなに放置されているの?・・・・あら大変!それは問題ね。ネグレクトかしら?今度PTA会議で議題に取り上げなくちゃ。
それも早急に」
雅子は、情報屋でありながら、そこまでの状況を把握していなかったことを恥じた。
「・・・・・・まあ・・・そ、それもそうね、幸ちゃん、ちゃんとご飯食べてるのかしら」
美貴は急に深刻な顔になった。
「確かに・・・・心配よね。よく考えてみれば・・・あたしたち、自分の子供のことばかり心配してるけど・・・」
樹里亜も、突然に切り替わり母親の顔つきに戻った。
常識があるのか無いのかわからないが、とりあえず、彼女達も人の子であるらしい。
生死に関わることになれば話は別だ。
「・・・・ねえ・・・・まだ続くの・・・・?この醜態劇場」
美貴は我を取り戻し、皆の顔色を覗いた。
「そうね・・・もうそろそろこの辺りでやめておきましょか」
樹里亜も申し訳なさそうにうなだれていた。
「そうね!そうしましょ!
さあさ、今日のことは忘れましょ。お互いの傷口に塩を塗ったって悲しいだけだもの。
おしまい。これ以上この話は御法度ね。今日は楽しいお茶会よ」
雅子らしく、すぱっと歯切れよくその場をまとめた。
まるで何事もなかったように。
(え・・・・!今のなかったことに出来るの~??????)
民子は、ようやくノロノロと沢庵を切り終え、カウンター超しに、リビングを覗くチャンスを得ることができた。
「ねえみんな、あの・・・
沢庵・・・・おかわり切ったから、たくさん食べてかえってね」
無意味なほど、てんこ盛りに盛りつた沢庵の皿を持って、民子は精一杯の笑顔で彼女達に声をかけた。
「・・・・・ごめんなさい多田野さん、折角今日お招きしてもらって悪いんだけど・・・
実は急用があるの。
これから、父の代理で「いつもニコニコ党」の後援会の方たちとの会合に出席しなければならないのよ」
申し訳なさそうに雅子は席を立った。
「多田野さん、実は私も・・・主人が急にベルリンで開催される医療シンポジウム「膨満感と腸内ガス」に招かれて、これから出張準備を頼まれているの」
続けて美貴も立ち上がった。
「あの、私も・・・・
アンソニーの姉家族が、豪華客船「パイレーツ・オブ・アメリカン」で日本に奇襲・・・・あ、じゃなくて寄港するらしくて・・・お出迎えの準備しなくちゃいけないの。
ごめんね」
樹里亜もそういって立ち上がった。
「そ、そうなのね。
みんな忙しかったのね。忙しい時にお招きしちゃって・・・こちらこそ申し訳なかったわ。
何のおもてなしも出来なくてごめんなさいね。また今度ゆっくり遊びに来てね」
民子はどこまでも控えめで、下手で・・・・・
他のママ友からすれば、攻撃対象にすら成り得なかったようだ。
保守的で中ぶらりんな立ち位置は八方美人でもあり、少々鼻につくが平凡すぎてゴシップも浮上しなかったわけだ。
「そういうわけで・・・・ごめんね多田野さん」
皆は素直に頭を下げてくれた。
玄関まで彼女達をお見送りにでたとき・・・・・
何かを思い出したかのように雅子が呟いた。
「そういえば・・・・多田野さん」
「はい?」
「今日出してくれたあのティーセット・・・ロイヤル・ドン・コルレオーニの”グリーントマト”シリーズよね?
ものすごく定番で有名だけど、平凡すぎて気がつかなかったわ。ごめんなさいね、折角の逸品だったのに」
「あら、そうだったの。あのシリーズ今も流行っているの?よく知らないけど、かつて・・・バブルのころ猫も杓子も買い漁っていたっていう噂のシリーズよね。
うちは、エルザちゃんのご飯用食器にしてたかしらね。食器棚に眠っていたから」
さらりと美貴は言ってのけた。
「エルザちゃんて、あのコーギー犬の?
ふうん・・・ティーセットに興味無いからよくわかんないけど、多田野さんいつも、あればっかりでお茶出してくれるよね。
前のハイツにお邪魔したときも。ね?」
悪意があるのかないのか、樹里亜もつい先ほどの調子でズバズバ言ってくれた。
「ええ・・・・そ、そうなの~アレお気に入りだから、いつも使ってるのよ~・・・
古くさいデザインがかえって今の時代新鮮でね♪」
どのように返答すればよいのか民子には、もうわけがわからなかった。
自分は試されているのか?
からかわれているのか?
彼女達の一員として認められ、同じように槍玉にあげられ洗礼を受けているのか?ならば喜ぶべきなのか?
「じゃ、今日はご馳走さまでした。ありがとうお邪魔しました」
「またね多田野さん!」
「今度の参観日でお会いしましょう」
そう口々にお礼を言って彼女達は、樹里亜の運転する痛車じゃなかった・・・
伊太車の呂目男に乗り込み、艶やかに華やかに去っていった。
ブロロㇿㇿㇿ・・・・・・オゥ・・・・・
幸ちゃんそうなの?
そんなに放置されているの?・・・・あら大変!それは問題ね。ネグレクトかしら?今度PTA会議で議題に取り上げなくちゃ。
それも早急に」
雅子は、情報屋でありながら、そこまでの状況を把握していなかったことを恥じた。
「・・・・・・まあ・・・そ、それもそうね、幸ちゃん、ちゃんとご飯食べてるのかしら」
美貴は急に深刻な顔になった。
「確かに・・・・心配よね。よく考えてみれば・・・あたしたち、自分の子供のことばかり心配してるけど・・・」
樹里亜も、突然に切り替わり母親の顔つきに戻った。
常識があるのか無いのかわからないが、とりあえず、彼女達も人の子であるらしい。
生死に関わることになれば話は別だ。
「・・・・ねえ・・・・まだ続くの・・・・?この醜態劇場」
美貴は我を取り戻し、皆の顔色を覗いた。
「そうね・・・もうそろそろこの辺りでやめておきましょか」
樹里亜も申し訳なさそうにうなだれていた。
「そうね!そうしましょ!
さあさ、今日のことは忘れましょ。お互いの傷口に塩を塗ったって悲しいだけだもの。
おしまい。これ以上この話は御法度ね。今日は楽しいお茶会よ」
雅子らしく、すぱっと歯切れよくその場をまとめた。
まるで何事もなかったように。
(え・・・・!今のなかったことに出来るの~??????)
民子は、ようやくノロノロと沢庵を切り終え、カウンター超しに、リビングを覗くチャンスを得ることができた。
「ねえみんな、あの・・・
沢庵・・・・おかわり切ったから、たくさん食べてかえってね」
無意味なほど、てんこ盛りに盛りつた沢庵の皿を持って、民子は精一杯の笑顔で彼女達に声をかけた。
「・・・・・ごめんなさい多田野さん、折角今日お招きしてもらって悪いんだけど・・・
実は急用があるの。
これから、父の代理で「いつもニコニコ党」の後援会の方たちとの会合に出席しなければならないのよ」
申し訳なさそうに雅子は席を立った。
「多田野さん、実は私も・・・主人が急にベルリンで開催される医療シンポジウム「膨満感と腸内ガス」に招かれて、これから出張準備を頼まれているの」
続けて美貴も立ち上がった。
「あの、私も・・・・
アンソニーの姉家族が、豪華客船「パイレーツ・オブ・アメリカン」で日本に奇襲・・・・あ、じゃなくて寄港するらしくて・・・お出迎えの準備しなくちゃいけないの。
ごめんね」
樹里亜もそういって立ち上がった。
「そ、そうなのね。
みんな忙しかったのね。忙しい時にお招きしちゃって・・・こちらこそ申し訳なかったわ。
何のおもてなしも出来なくてごめんなさいね。また今度ゆっくり遊びに来てね」
民子はどこまでも控えめで、下手で・・・・・
他のママ友からすれば、攻撃対象にすら成り得なかったようだ。
保守的で中ぶらりんな立ち位置は八方美人でもあり、少々鼻につくが平凡すぎてゴシップも浮上しなかったわけだ。
「そういうわけで・・・・ごめんね多田野さん」
皆は素直に頭を下げてくれた。
玄関まで彼女達をお見送りにでたとき・・・・・
何かを思い出したかのように雅子が呟いた。
「そういえば・・・・多田野さん」
「はい?」
「今日出してくれたあのティーセット・・・ロイヤル・ドン・コルレオーニの”グリーントマト”シリーズよね?
ものすごく定番で有名だけど、平凡すぎて気がつかなかったわ。ごめんなさいね、折角の逸品だったのに」
「あら、そうだったの。あのシリーズ今も流行っているの?よく知らないけど、かつて・・・バブルのころ猫も杓子も買い漁っていたっていう噂のシリーズよね。
うちは、エルザちゃんのご飯用食器にしてたかしらね。食器棚に眠っていたから」
さらりと美貴は言ってのけた。
「エルザちゃんて、あのコーギー犬の?
ふうん・・・ティーセットに興味無いからよくわかんないけど、多田野さんいつも、あればっかりでお茶出してくれるよね。
前のハイツにお邪魔したときも。ね?」
悪意があるのかないのか、樹里亜もつい先ほどの調子でズバズバ言ってくれた。
「ええ・・・・そ、そうなの~アレお気に入りだから、いつも使ってるのよ~・・・
古くさいデザインがかえって今の時代新鮮でね♪」
どのように返答すればよいのか民子には、もうわけがわからなかった。
自分は試されているのか?
からかわれているのか?
彼女達の一員として認められ、同じように槍玉にあげられ洗礼を受けているのか?ならば喜ぶべきなのか?
「じゃ、今日はご馳走さまでした。ありがとうお邪魔しました」
「またね多田野さん!」
「今度の参観日でお会いしましょう」
そう口々にお礼を言って彼女達は、樹里亜の運転する痛車じゃなかった・・・
伊太車の呂目男に乗り込み、艶やかに華やかに去っていった。
ブロロㇿㇿㇿ・・・・・・オゥ・・・・・
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