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(41)グレイブ達の戦力(1)
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少し前、娘である<聖女>スサリナをダンジョン攻略、則ち<魔王>モラル討伐に向かわせない代償として国王よりもらい受けている、魔王達の魔核によって作られた至上の武器を手にした<勇者>パーティー一行。
第一王女ネルハリからの使者である騎士の共闘の提案を容赦なく無下に断ったのは、有り得ない程の武器を手にして完全に敵なしだと錯覚していたからだ。
下賜された武器は装備しただけでわかる程に隔絶した力を持っており、その力故か直後に一刻も早く試したい気持ちに駆り立てられているので、国王と共に教会を訪問して直に本能の赴くままに強敵をなぎ倒しに行こうとしたのだが……
「これは……なるほど。いきなり強敵と相対しては上手く使いこなせない可能性が高いですから、少々雑魚で試運転をした方が良さそうですね」
想定以上の力を持っていると理解したので、一応この<勇者>パーティーの頭脳とも言える<賢者>ホルドの提言を受けると、言っている事には納得できた一行は本丸である<魔王>モラルを始末する前に武器の調子を確認する事、武器の使用に慣れる為に簡単な依頼を受ける事を決定した。
この頃になると、相当な恐怖を植え付けられていたはずの<聖盾>ルナでさえ今度こそは完膚なきまでに魔王を叩き潰せると意気込んでいるほどなのだが、無駄な自信の根源ともなる武器を完全に使いこなせているわけではないし、今後も完全に使いこなせる事は出来ないとはわからないまま、一般の冒険者や騎士と比べると有り得ない程力が底上げされた事に喜びを隠しきれない。
「ホルドの言う通りだぜ。これで、今まで受けた屈辱を一気に晴らしてやるぜ!」
気合十分のルナは、同行する<勇者>パーティーの他の面々に囮にされた事など最早気にならない程に高揚しており、そのルナに続き、美しい金目を怒りの炎で充満させている<勇者>グレイブがこう発言する。
「ふん、当然だ。散々俺をコケにした連中をこのままのさばらせておく事は絶対に許す事は出来ない」
散々依頼を失敗している結果となっているので、その最大の原因である<魔王>に対する怒りは尋常ではない。
間違いなく仕留めたはずの<魔王>を今度こそ確実に、これ以上ない程に始末してやると意気込んでおり、寡黙な<剣神>ミアもその美しい剣をうっとりと見つめつつ、パーティーメンバーの発言を否定する事は無く、同じ気持ちでいた。
「それでは、どこかの辺鄙な村に出現している魔物討伐、実戦でこの武器を使いこなせるようにしましょうか」
ホルドの一言で方針は決定し、王都から少々距離のある村に到着したグレイブ一行は、今迄であれば相当貧相な村を見た瞬間に文句を言っていたのだが、今は手元の武器を早く試したいのでそこに意識は向かない。
「ホルド、ここにはどの程度の魔物が出て来るんだ?」
「精々鬼種程度ですね」
「はっ、鬼種と言っても種類があるだろ?当然最強のキングオーガが出るんだろうな?」
すっかり好戦的な性格が戻っているルナが、この場所を選定したホルドに向かって自らの希望を告げる。
「そうですね。一応ギルドに貼り出されている依頼にはそう書いてありましたから、期待できると思いますよ?」
「私も、早く試したい」
最後に<剣神>であるミアが相変わらずうっとりと剣を見つめながら、実戦を待ち望んでいる気持ちを前面に出す。
村にいる四人だが、村に異常がないと言う事は強敵となり得る魔物がここまでは来ていないと言う事に他ならないので、とりあえず一旦外に出て周辺の森に足を延ばし、獲物を確保する為に各自が勝手に動き始める。
森に侵入する時までは同じように固まって行動していたのだが、侵入直後に互いが獲物を奪い合うライバルのような関係なので我先にと別々の方向に一気に疾走して消えて行く。
最も早く魔物を見つけたのは<勇者>グレイブなのだが、どうやら第三者とも言える冒険者と交戦状態にあるようで、気配を感じて移動し始めて直ぐに抗戦している様な音も聞こえてきている。
「ちっ、まさか俺の獲物を横取りされるとは!」
実際に鬼種と戦闘している冒険者は、村からの依頼を受けて排除する為に行動している正当な行動なのだが、冒険者ではない貴族の立場であるグレイブには関係なく、残念ながら他の三人も同じ意識でいる。
グレイブが戦闘の音がする場所に近接すると、そこには相当なダメージを負っている鬼種、中位の存在と言われているグレートオーガが冒険者と対峙しており、冒険者の方も多生ではあるが傷を負っているように見える。
「これで終わりだ!」
冒険者は何かの魔法を行使する為の準備を終えたようで、魔力が手に集中してほとばしっており、その姿を確認したグレートオーガも対抗する為に満身創痍ながらも魔法で対抗しようとしている。
「はっ、雑魚にてこずるなんてご苦労なこって!」
そこに、軽い試し切りとばかりにグレイブが突然なだれ込み、冒険者としては鬼種排除と言う達成報酬の他に素材として販売できる角を含めて一瞬で細切れにして見せた。
「はっ?」
突然の事態を飲み込めない冒険者は、かろうじて魔法をキャンセルする事は出来たのだが……続くグレイブの言葉に唖然としてしまう。
「雑魚が負けそうなところを態々この俺、<勇者>グレイブ様が助けてやったんだ。光栄に思うんだな」
第一王女ネルハリからの使者である騎士の共闘の提案を容赦なく無下に断ったのは、有り得ない程の武器を手にして完全に敵なしだと錯覚していたからだ。
下賜された武器は装備しただけでわかる程に隔絶した力を持っており、その力故か直後に一刻も早く試したい気持ちに駆り立てられているので、国王と共に教会を訪問して直に本能の赴くままに強敵をなぎ倒しに行こうとしたのだが……
「これは……なるほど。いきなり強敵と相対しては上手く使いこなせない可能性が高いですから、少々雑魚で試運転をした方が良さそうですね」
想定以上の力を持っていると理解したので、一応この<勇者>パーティーの頭脳とも言える<賢者>ホルドの提言を受けると、言っている事には納得できた一行は本丸である<魔王>モラルを始末する前に武器の調子を確認する事、武器の使用に慣れる為に簡単な依頼を受ける事を決定した。
この頃になると、相当な恐怖を植え付けられていたはずの<聖盾>ルナでさえ今度こそは完膚なきまでに魔王を叩き潰せると意気込んでいるほどなのだが、無駄な自信の根源ともなる武器を完全に使いこなせているわけではないし、今後も完全に使いこなせる事は出来ないとはわからないまま、一般の冒険者や騎士と比べると有り得ない程力が底上げされた事に喜びを隠しきれない。
「ホルドの言う通りだぜ。これで、今まで受けた屈辱を一気に晴らしてやるぜ!」
気合十分のルナは、同行する<勇者>パーティーの他の面々に囮にされた事など最早気にならない程に高揚しており、そのルナに続き、美しい金目を怒りの炎で充満させている<勇者>グレイブがこう発言する。
「ふん、当然だ。散々俺をコケにした連中をこのままのさばらせておく事は絶対に許す事は出来ない」
散々依頼を失敗している結果となっているので、その最大の原因である<魔王>に対する怒りは尋常ではない。
間違いなく仕留めたはずの<魔王>を今度こそ確実に、これ以上ない程に始末してやると意気込んでおり、寡黙な<剣神>ミアもその美しい剣をうっとりと見つめつつ、パーティーメンバーの発言を否定する事は無く、同じ気持ちでいた。
「それでは、どこかの辺鄙な村に出現している魔物討伐、実戦でこの武器を使いこなせるようにしましょうか」
ホルドの一言で方針は決定し、王都から少々距離のある村に到着したグレイブ一行は、今迄であれば相当貧相な村を見た瞬間に文句を言っていたのだが、今は手元の武器を早く試したいのでそこに意識は向かない。
「ホルド、ここにはどの程度の魔物が出て来るんだ?」
「精々鬼種程度ですね」
「はっ、鬼種と言っても種類があるだろ?当然最強のキングオーガが出るんだろうな?」
すっかり好戦的な性格が戻っているルナが、この場所を選定したホルドに向かって自らの希望を告げる。
「そうですね。一応ギルドに貼り出されている依頼にはそう書いてありましたから、期待できると思いますよ?」
「私も、早く試したい」
最後に<剣神>であるミアが相変わらずうっとりと剣を見つめながら、実戦を待ち望んでいる気持ちを前面に出す。
村にいる四人だが、村に異常がないと言う事は強敵となり得る魔物がここまでは来ていないと言う事に他ならないので、とりあえず一旦外に出て周辺の森に足を延ばし、獲物を確保する為に各自が勝手に動き始める。
森に侵入する時までは同じように固まって行動していたのだが、侵入直後に互いが獲物を奪い合うライバルのような関係なので我先にと別々の方向に一気に疾走して消えて行く。
最も早く魔物を見つけたのは<勇者>グレイブなのだが、どうやら第三者とも言える冒険者と交戦状態にあるようで、気配を感じて移動し始めて直ぐに抗戦している様な音も聞こえてきている。
「ちっ、まさか俺の獲物を横取りされるとは!」
実際に鬼種と戦闘している冒険者は、村からの依頼を受けて排除する為に行動している正当な行動なのだが、冒険者ではない貴族の立場であるグレイブには関係なく、残念ながら他の三人も同じ意識でいる。
グレイブが戦闘の音がする場所に近接すると、そこには相当なダメージを負っている鬼種、中位の存在と言われているグレートオーガが冒険者と対峙しており、冒険者の方も多生ではあるが傷を負っているように見える。
「これで終わりだ!」
冒険者は何かの魔法を行使する為の準備を終えたようで、魔力が手に集中してほとばしっており、その姿を確認したグレートオーガも対抗する為に満身創痍ながらも魔法で対抗しようとしている。
「はっ、雑魚にてこずるなんてご苦労なこって!」
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突然の事態を飲み込めない冒険者は、かろうじて魔法をキャンセルする事は出来たのだが……続くグレイブの言葉に唖然としてしまう。
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