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(18)謁見の間にて
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ルナが漸く地上に出て歓喜している頃の王城では残りの三人が国王と面会していたのだが、任務開始前の作戦ではこの謁見前に弱みを握っているホルド達がグレイブに脅しをかけておくはずだった。
しかし、余りにも想定外の強さの魔物の対処で完全に疲弊していたので、その対処が行われないままに流れるように謁見が行われてしまった。
「勇者グレイブ・レッド。ここに任務完了した事をお伝えいたします」
「おぉ。よくやったぞ、グレイブ。流石はレッド公爵家の血をひく者だ」
わざとらしく、レッド公爵が大声で賛辞を贈る。
「ですが陛下。残念な事にルナ、そしてイリヤは尊い犠牲となりました」
悔しそうな表情で、白々しく伝えるグレイブ。
その話を耳にして、漸く弱みにつけこんだ脅しを忘れている事に思い至ったホルドとミアだが、何時脅しをかけても大差ないと考えてこの場では何も行動を起こさなかった。
こうして、高位魔族の核の一部が三つ国王に提出されたが、最後の一つはルナと共に行方不明になっている。
彼らの説明によれば、イリヤは勝手に指示を聞かずに暴走して行方不明。
ルナは自ら殿を努めて、帰還していないという事になっていた。
「結果的に尊い犠牲はあったが、目的である魔王は討伐された。確かにこの魔核は魔王、そしてその力に準ずる力を持つ者だと判定された」
鑑定が出来る者によって得た情報をこの場にいる者達に伝える国王。
表情は渋いが、事実は伝えなくてはならないのだ。
その表情を見て、自らの権力が増す事が確実と感じてほくそ笑む勇者グレイブと、その父であるレッド公爵。
レッド公爵としては、勇者パーティーの任務中に犠牲がでたのだが、この成果を持って日和見貴族も自らの手駒となり、打倒国王が現実味を帯びてきたと内心の喜びを抑えきれないでいた。
一方で、この場にいる貴族の中で唯一身内から犠牲者を出してしまったルナである父親のコーナ伯爵の表情は非常に暗い。
勇者グレイブを傀儡にできていない状態を訝しむ余裕もなく、只々娘であるルナの死亡を受け入れられずに茫然としていた。
そこに……突然大声で乱入する人物が存在した。
「テメーラ、よくも人様を囮にしやがってさっさと逃げやがったな!何が勇者だ、この腰抜け!!何が賢者だ、ゴミクズが!!何が剣神だ、臆病者が!!」
「ルナ、無事だったのか!」
激しく怒りをばらまいている<聖盾>ルナ。
その言葉の内容に全員が眉をひそめている中、コーナ伯爵だけは愛娘の帰還に喜んでルナに駆け寄り、優しく抱きしめている。
しかしルナの怒りは収まらず、その抱擁から抜け出して再び勇者達を睨みつける。
国王の前にいる三人、特に勇者グレイブは、あの魔物の群れの中に置き去りにしたルナが無事でいる事が信じられなかった。
「お前、どうやって生き延びた!」
思わず口に出る心の声。
事前にルナの糾弾がなければその身を案じているかのように聞こえなくもないのだが、既に囮にされたとルナが叫んでいる以上、この言葉はその事を事実だと認めているようにしか聞こえない。
その事に思い至った残りの二人賢者ホルドと剣神ミアは、取り繕うと共にこの場が勇者グレイブを陥れるチャンスであると判断した。
「国王陛下、実はご報告したい事がございます。今まで私達は疑いの域を出ていなかったので黙っておりましたが、今の聖盾ルナの言葉を踏まえると、その疑いが私の中で確信にかわりました」
「……何を言っているのかわからんが、続きを話せ」
突然真剣に話すので国王ヤドリア・ユガルも発言の許可を出し、ルナも含めて誰もが賢者ホルドに注目してしまっている。
「そこの勇者グレイブですが、聖盾ルナの言う通りに仲間を囮にするような人物です。ルナに関しては一時的にパーティーを分離して魔物の視線をルナに集め、背後から急襲するのかと思い、グレイブの指示に従って僕達も退避行動をしてしまいました。その後ルナを見捨てて逃走する勇者グレイブを追いかけて、何とか反撃するように進言したのですが……一向に聞き入れてもらえなかったのです」
勇者グレイブを無視して、何故二人だけで救出しなかったのかは聞かない国王。
賢者ホルドと剣神ミアは国王派閥の一人であり、糾弾するメリットがないからだ。
それを良い事に、賢者ホルドの言葉は続く。
当然国王が懸念した事もフォローするように。
「僕達は、勇者を説得するのは不可能だと思いその場でルナを助けようと思ったのですが、残念ながら戦闘の音は聞こえなくなっており、既に死亡したと判断しました。いえ、してしまったのです。ここについては、猛省しなくてはいけません」
口数少ない剣神ミアも、賢者ホルドの言葉に深く頷く。
実際に囮とされたミアとしては少々納得がいかない言い訳だが、この言葉が嘘とは断定できずに黙っている。
そこに、一人だけ悪とされている勇者グレイブが反論する。
しかし、余りにも想定外の強さの魔物の対処で完全に疲弊していたので、その対処が行われないままに流れるように謁見が行われてしまった。
「勇者グレイブ・レッド。ここに任務完了した事をお伝えいたします」
「おぉ。よくやったぞ、グレイブ。流石はレッド公爵家の血をひく者だ」
わざとらしく、レッド公爵が大声で賛辞を贈る。
「ですが陛下。残念な事にルナ、そしてイリヤは尊い犠牲となりました」
悔しそうな表情で、白々しく伝えるグレイブ。
その話を耳にして、漸く弱みにつけこんだ脅しを忘れている事に思い至ったホルドとミアだが、何時脅しをかけても大差ないと考えてこの場では何も行動を起こさなかった。
こうして、高位魔族の核の一部が三つ国王に提出されたが、最後の一つはルナと共に行方不明になっている。
彼らの説明によれば、イリヤは勝手に指示を聞かずに暴走して行方不明。
ルナは自ら殿を努めて、帰還していないという事になっていた。
「結果的に尊い犠牲はあったが、目的である魔王は討伐された。確かにこの魔核は魔王、そしてその力に準ずる力を持つ者だと判定された」
鑑定が出来る者によって得た情報をこの場にいる者達に伝える国王。
表情は渋いが、事実は伝えなくてはならないのだ。
その表情を見て、自らの権力が増す事が確実と感じてほくそ笑む勇者グレイブと、その父であるレッド公爵。
レッド公爵としては、勇者パーティーの任務中に犠牲がでたのだが、この成果を持って日和見貴族も自らの手駒となり、打倒国王が現実味を帯びてきたと内心の喜びを抑えきれないでいた。
一方で、この場にいる貴族の中で唯一身内から犠牲者を出してしまったルナである父親のコーナ伯爵の表情は非常に暗い。
勇者グレイブを傀儡にできていない状態を訝しむ余裕もなく、只々娘であるルナの死亡を受け入れられずに茫然としていた。
そこに……突然大声で乱入する人物が存在した。
「テメーラ、よくも人様を囮にしやがってさっさと逃げやがったな!何が勇者だ、この腰抜け!!何が賢者だ、ゴミクズが!!何が剣神だ、臆病者が!!」
「ルナ、無事だったのか!」
激しく怒りをばらまいている<聖盾>ルナ。
その言葉の内容に全員が眉をひそめている中、コーナ伯爵だけは愛娘の帰還に喜んでルナに駆け寄り、優しく抱きしめている。
しかしルナの怒りは収まらず、その抱擁から抜け出して再び勇者達を睨みつける。
国王の前にいる三人、特に勇者グレイブは、あの魔物の群れの中に置き去りにしたルナが無事でいる事が信じられなかった。
「お前、どうやって生き延びた!」
思わず口に出る心の声。
事前にルナの糾弾がなければその身を案じているかのように聞こえなくもないのだが、既に囮にされたとルナが叫んでいる以上、この言葉はその事を事実だと認めているようにしか聞こえない。
その事に思い至った残りの二人賢者ホルドと剣神ミアは、取り繕うと共にこの場が勇者グレイブを陥れるチャンスであると判断した。
「国王陛下、実はご報告したい事がございます。今まで私達は疑いの域を出ていなかったので黙っておりましたが、今の聖盾ルナの言葉を踏まえると、その疑いが私の中で確信にかわりました」
「……何を言っているのかわからんが、続きを話せ」
突然真剣に話すので国王ヤドリア・ユガルも発言の許可を出し、ルナも含めて誰もが賢者ホルドに注目してしまっている。
「そこの勇者グレイブですが、聖盾ルナの言う通りに仲間を囮にするような人物です。ルナに関しては一時的にパーティーを分離して魔物の視線をルナに集め、背後から急襲するのかと思い、グレイブの指示に従って僕達も退避行動をしてしまいました。その後ルナを見捨てて逃走する勇者グレイブを追いかけて、何とか反撃するように進言したのですが……一向に聞き入れてもらえなかったのです」
勇者グレイブを無視して、何故二人だけで救出しなかったのかは聞かない国王。
賢者ホルドと剣神ミアは国王派閥の一人であり、糾弾するメリットがないからだ。
それを良い事に、賢者ホルドの言葉は続く。
当然国王が懸念した事もフォローするように。
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口数少ない剣神ミアも、賢者ホルドの言葉に深く頷く。
実際に囮とされたミアとしては少々納得がいかない言い訳だが、この言葉が嘘とは断定できずに黙っている。
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