118 / 125
アルフォナとテスラム(1)
しおりを挟む
騎士達から絶対の信頼と、目指すべき頂と認識されている<土剣>アルフォナ。
その彼女が尊敬しているのは、ユリナス、ロイド達は当然だが、同格の<六剣>の中では特に<風剣>テスラムだ。
今までの闘いでの技術、連携、もちろんロイドや他の<六剣>も素晴らしいのだが、頭一つ抜けており、初代<無剣>所持者時代に<風剣>を取得し、<六剣>に対する知識が深く、他の<六剣>に対しても適切な知識を惜しげもなく与えてくれる存在だからだ。
特に、<六剣>に慣れさせるための修行が合理的であり、アルフォナにとっても理にかなっていると感じている事から、自分が騎士達に行う修練に取り入れさせてもらっている程だ。
そしてなんと言っても、アルフォナから修行を依頼すると決して断らずにとことん付き合ってくれるのが<風剣>テスラムと言う存在だ。
「フフフ、テスラム殿。私は考えに考えぬいたのだ。何故テスラム殿はこれほどまでに素晴らしい知識をお持ちなのか……を」
「嬉しい事を言ってくれますね、アルフォナ殿。その考えに考えぬいた結論、お聞かせいただいても?」
突然の訪問、とは言っても<六剣>の力が有れば誰が来るか等は直ぐにわかるのだが、このような夜中の訪問でも嫌がるそぶりを見せずに落ち着いた対応を見せるテスラム。
因みにここはテスラムの屋敷の中にある書斎、四階にある部屋だ。
相手がテスラムではなくヘイロンであれば、アルフォナは本当に嫌そうに一蹴されるだろう。
場合によっては、近接を察知された段階で攻撃される場合すらある。
もちろん攻撃はかなり力を抜いているのだが、熟練の冒険者から見ても一瞬で100回は死ねるような攻撃になる。
その攻撃を難なく無効化し、何故か不法侵入と言えなくもないアルフォナも反射的に反撃するので質が悪い。
唯一の良心は、躱したり迎撃したりするのではなく、周囲に被害が無いように攻撃を無効化する所だろう。
そんな事にはならないのがテスラムだ。
落ち着いた雰囲気のままアルフォナの特攻とも言える訪問を穏やかに受け入れる。
「うむ。私は真理に辿り着いてしまったかもしれない。私は人族で騎士道精神を追い求めている未熟な存在。対してテスラム殿は、長きに渡り悪魔道と執事道を極めたと言える。そのおかげではないだろうか?」
勝手に悪魔道と執事道なるモノを創り出しているアルフォナだが、本気でこう思っているのだ。
「……それは……少々、何と言いますか、買い被り過ぎなのではないでしょうか?アルフォナ殿」
直接的に悪魔道と執事道なる訳の分からないモノを全力で否定したい気持ちになっているテスラムだが、伊達に人族以上に年齢を重ねていない。
目の前のアルフォナが、真剣に考え抜いたという事は誰の目から見ても明らかであり、それを一蹴する事は憚られたのだ。
思った以上に大人の対応が出来ているテスラム。
その結果、言い淀んだ挙句にあいまいな表現で対応する事しかできなかったのは仕方がない。
繰り返しになるが、アルフォナの話し相手がヘイロンであれば、悪魔道と執事道なるモノも含めて容赦なく一刀両断にされている。
その流れで、修行と言う名の実戦形式の対戦に移行するのが一連の流れになるのだ。
自らの結論を軽く否定され、更にはテスラムが自分自身を下げるかのような言い回しをするものだから、アルフォナも熱くなる。
「む?そんな事は無い。この私アルフォナが騎士道精神に誓って断言する。テスラム殿は私が騎士道精神一つを未だ探求し続けているこの時点で、既に二つの道を完璧に極めていると言って間違いない」
最早手遅れと悟ったテスラムは、アルフォナの言葉を肯定も否定もせずに曖昧に笑っている。
この曖昧に笑うと言う行為は未だかつて経験した事がなかったのだが、アルフォナのあまりにも真っ直ぐすぎる思いを受け止めきれない時に出来るようになってしまっていた。
こうなると、アルフォナは止まらない。
寧ろここぞとばかりに勢いは増す。
如何にテスラムの動きが素晴らしいか、如何にテスラムの行動が全てを先読みできているか、如何にテスラムが効率的に修行を行わせているか、長い台本を丸暗記して来たかのように淀みなくペラペラと話し始めるのだ。
そんな時にテスラムは、良くここまで舌が滑らかに動くものだ……と余計な事を考えており、話は聞いていなかったりする。
「……と言う訳なのだ。ご理解いただけたか?テスラム殿!」
「成程。勉強になります。流石ですな、アルフォナ殿」
一切聞いていなかった癖に、どのような話であったとしてもそれなりの回答になり得る汎用句を使って華麗に躱すテスラム。
因みに、曖昧に笑う行為と共に、この汎用句も複数準備できてしまっているのが流石はテスラムと言った所だ。
参考までに他の汎用句は、
「流石はアルフォナ殿。ためになります」
とか、
「深いですな。考えさせられます」
とかだったりする。
その彼女が尊敬しているのは、ユリナス、ロイド達は当然だが、同格の<六剣>の中では特に<風剣>テスラムだ。
今までの闘いでの技術、連携、もちろんロイドや他の<六剣>も素晴らしいのだが、頭一つ抜けており、初代<無剣>所持者時代に<風剣>を取得し、<六剣>に対する知識が深く、他の<六剣>に対しても適切な知識を惜しげもなく与えてくれる存在だからだ。
特に、<六剣>に慣れさせるための修行が合理的であり、アルフォナにとっても理にかなっていると感じている事から、自分が騎士達に行う修練に取り入れさせてもらっている程だ。
そしてなんと言っても、アルフォナから修行を依頼すると決して断らずにとことん付き合ってくれるのが<風剣>テスラムと言う存在だ。
「フフフ、テスラム殿。私は考えに考えぬいたのだ。何故テスラム殿はこれほどまでに素晴らしい知識をお持ちなのか……を」
「嬉しい事を言ってくれますね、アルフォナ殿。その考えに考えぬいた結論、お聞かせいただいても?」
突然の訪問、とは言っても<六剣>の力が有れば誰が来るか等は直ぐにわかるのだが、このような夜中の訪問でも嫌がるそぶりを見せずに落ち着いた対応を見せるテスラム。
因みにここはテスラムの屋敷の中にある書斎、四階にある部屋だ。
相手がテスラムではなくヘイロンであれば、アルフォナは本当に嫌そうに一蹴されるだろう。
場合によっては、近接を察知された段階で攻撃される場合すらある。
もちろん攻撃はかなり力を抜いているのだが、熟練の冒険者から見ても一瞬で100回は死ねるような攻撃になる。
その攻撃を難なく無効化し、何故か不法侵入と言えなくもないアルフォナも反射的に反撃するので質が悪い。
唯一の良心は、躱したり迎撃したりするのではなく、周囲に被害が無いように攻撃を無効化する所だろう。
そんな事にはならないのがテスラムだ。
落ち着いた雰囲気のままアルフォナの特攻とも言える訪問を穏やかに受け入れる。
「うむ。私は真理に辿り着いてしまったかもしれない。私は人族で騎士道精神を追い求めている未熟な存在。対してテスラム殿は、長きに渡り悪魔道と執事道を極めたと言える。そのおかげではないだろうか?」
勝手に悪魔道と執事道なるモノを創り出しているアルフォナだが、本気でこう思っているのだ。
「……それは……少々、何と言いますか、買い被り過ぎなのではないでしょうか?アルフォナ殿」
直接的に悪魔道と執事道なる訳の分からないモノを全力で否定したい気持ちになっているテスラムだが、伊達に人族以上に年齢を重ねていない。
目の前のアルフォナが、真剣に考え抜いたという事は誰の目から見ても明らかであり、それを一蹴する事は憚られたのだ。
思った以上に大人の対応が出来ているテスラム。
その結果、言い淀んだ挙句にあいまいな表現で対応する事しかできなかったのは仕方がない。
繰り返しになるが、アルフォナの話し相手がヘイロンであれば、悪魔道と執事道なるモノも含めて容赦なく一刀両断にされている。
その流れで、修行と言う名の実戦形式の対戦に移行するのが一連の流れになるのだ。
自らの結論を軽く否定され、更にはテスラムが自分自身を下げるかのような言い回しをするものだから、アルフォナも熱くなる。
「む?そんな事は無い。この私アルフォナが騎士道精神に誓って断言する。テスラム殿は私が騎士道精神一つを未だ探求し続けているこの時点で、既に二つの道を完璧に極めていると言って間違いない」
最早手遅れと悟ったテスラムは、アルフォナの言葉を肯定も否定もせずに曖昧に笑っている。
この曖昧に笑うと言う行為は未だかつて経験した事がなかったのだが、アルフォナのあまりにも真っ直ぐすぎる思いを受け止めきれない時に出来るようになってしまっていた。
こうなると、アルフォナは止まらない。
寧ろここぞとばかりに勢いは増す。
如何にテスラムの動きが素晴らしいか、如何にテスラムの行動が全てを先読みできているか、如何にテスラムが効率的に修行を行わせているか、長い台本を丸暗記して来たかのように淀みなくペラペラと話し始めるのだ。
そんな時にテスラムは、良くここまで舌が滑らかに動くものだ……と余計な事を考えており、話は聞いていなかったりする。
「……と言う訳なのだ。ご理解いただけたか?テスラム殿!」
「成程。勉強になります。流石ですな、アルフォナ殿」
一切聞いていなかった癖に、どのような話であったとしてもそれなりの回答になり得る汎用句を使って華麗に躱すテスラム。
因みに、曖昧に笑う行為と共に、この汎用句も複数準備できてしまっているのが流石はテスラムと言った所だ。
参考までに他の汎用句は、
「流石はアルフォナ殿。ためになります」
とか、
「深いですな。考えさせられます」
とかだったりする。
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる