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No.0、トロンプ、レムロドリッチ(2)
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まさか結界が完全に、しかも瞬時に破壊されるとは思っていなかった悪魔とバリッジ。
ようやく我に返った頃には、既にこの周囲には別動隊を除く全戦力である悪魔300体、そしてバリッジの精鋭が集結していた。
「おいトロンプ、こいつらは前回ここに来た雑魚とは違う。別格と考えて良いだろう。まさか訳が分からないまま王城まで吹き飛ばされるとは思ってもいなかった。だがな、我ら魔族にはとっておきがある。フフフ、恐らくお前もそうだろう?トロンプよ。こいつら二人を始末すれば、残りはどうとでもなるだろう。全力で行くぞ!」
「やはり気が付いていたかレムロドリッチ。良いだろう。我がバリッジの覚悟、その目で見ると良い」
トロンプの宣言直後、既に丸薬を飲んでいた暗部が再び丸薬を口にする。
悪魔を素材として改良した丸薬は、魔力レベルを倍、そして寿命の残りを一月とする事に成功していた。
バリッジは、この丸薬を更に連続投与する実験を行っていたのだ。
その結果、寿命は一週間まで激減するが、更に魔力レベルが倍になる事を突き止めた。
こうなると、二度目の丸薬を摂取した暗部の魔力レベルは99に達しているが、ただの魔力レベル99ではなく、基礎体術も熟練の域に達している、正に屈強な一団となっているのだ。
「おいおい、スゲーじゃねーかよバリッジ。俺達も負けていられんな」
レムロドリッチはそう呟くと、横に控えていた悪魔の一体に攻撃し、その核を取り除くと突如口にした。
……バリ、ガリ……
「ふぅ~、仲間の核を食うなんて、あまりいい気がしねーな」
とは言え、この時点で魔力レベル99だったレムロドリッチの強さも跳ね上がっている。
あくまで魔力レベルは99で上限となっているのだが、恐らくナンバーズ単体とも渡り合える程度の強さは得ているに違いない。
「どうだNo.1とやら、さっきはお前の攻撃をまともに食らったが、今度はそうはいかんぞ」
周辺の悪魔も、隣り合う悪魔の核を食べている。
つまり、戦力としては300体の悪魔が150体程度になってはいるのだが、各個体の強さは別格になっているのだ。
単体の戦力を大幅に上げてきたバリッジと悪魔。
更にトロンプは続ける。
「未だに素顔すら明かさない臆病者にもう一つ教えておこう。お前らの拠り所のバイチ帝国、既に大陸中の国家から攻撃を受けている事位は分かっているな?だがその戦力、よもやただの国家の集合だとは思っていないだろうな?」
「トロンプの言う通りだ。フハハハ、お前らはここで俺達に打ちのめされる。そしてバイチ帝国も俺達の別動隊に打ちのめされるんだ。どうせさっきここにいた連中がバイチ帝国にいるんだろ?だが、今の俺達の戦力であればあいつらすら敵ではない!」
バリッジや悪魔が個体の戦力増強を別動隊に指示したからなのか、作戦を統括しているイズンからの念話が飛ぶ。
『バイチ帝国側の防御壁、部分的に補修が必要なほどダメージを受けています。突然敵の戦力が上がりました。このまま防御一辺倒では何れ防壁が破壊される恐れがあるので、攻撃に打って出ます』
既にバリッジと悪魔と対峙しているジトロとNo.1はこの場を動けないので何もできないが、アンノウンを信頼しているが故に慌てる事は無かった。
だが、覚悟を決めてNo.0としてジトロはアンノウン全員に宣言した。
『アンノウン全員に告ぐ。今回はバリッジと悪魔相手の最終戦だ。我らの、そしてバイチ帝国の理想を叶えるために出し惜しみは無しだ。キロスとコンの件もある。このまま奴らを野放しにしておく事は決してできない。だが冷静な判断なしに戦える相手ではない事は既に理解できているはずだ。ここからは、バイチ帝国側についての全指揮権は完全にイズンに任せる。必ず全員無事に任務を終えろ!俺とNo.1はハンネルに巣食っているゴミの始末に集中するからな。俺の大切な家族達、頼んだぞ!』
アンノウンで唯一絶対的な存在であるNo.0。
今までの活動の中でこれほどの意思を持った発言をした事が無かったので、アンノウン全員はこの戦闘に対するNo.0の覚悟を感じると共に、自分達を信じて任せてくれているとの思いから、自然と気合が入る。
遠く離れたバイチ帝国側から、ハンネル王国にいるNo.0やNo.1、そして魔力レベル99以上の力を持っているバリッジや悪魔達でも感じる事が出来るほどの力の入り具合だ。
何を勘違いしたのか、バリッジと悪魔は自らが命じて戦力増強させた者達の力だと思ったようで、相対しているジトロとNo.1の不安を煽るような発言をしてくる。
「フフフ、そこの覆面。いやNo.0とやら、お前でも感じただろう?バイチ帝国側からの力を。あれこそ我らの別動隊。我らと同じく戦力を大幅に増強したのだ」
「レムロドリッチの言う通りだ。どの道アンノウンには勝ち目はない。我らバリッジ、そしてこの悪魔族ですら長い年月をかけて活動していたのだ。少しばかり魔力レベルが高いだけでは、長年の経験を持つ我らには抗えない。思い知ると良い」
自信満々のトロンプとレムロドリッジ。
丸薬を摂取していないトロンプはさておき、悪魔は魔力レベル99だ。
だが、強引に力を得ているので細かい魔力調整はできない。
つまり、魔力の波動の詳細を解析・鑑定する力は持ち合わせていないのだ。
そのためにハンネル王国側の力を感知しただけで、自分達の別動隊が発した力であると大きな勘違いをしている。
タイミング的には、丸薬や核による力の増強と捉えられるので仕方がないのかもしれない。
一方のトロンプの近くに付き従っている暗部。
魔力調整はできるのだが、開発されたばかりの丸薬二度摂取による力の増強にまでは、完全に対応できていない。
その力の制御に意識が向いており、こちらも細かい解析・鑑定は出来ていなかった。
そんな理由もあって、未だ隠蔽状態であるジトロ(No.0)とNo.1の二人の素顔もわかっていない。
「No.0、この勘違い……如何致しましょうか?わざわざ訂正する必要もないと思いますが」
「そうだな。どうせ何を言っても信じない。それに、あの力であれば俺達の家族は必ずバイチ帝国を守り抜いてくれるだろう」
二人は家族であるアンノウンを信じてこの場の悪魔150体、そして暗部50人とトロンプと向き合う。
当然悪魔やバリッジも戦闘態勢を取っているので、問答無用で戦闘が開始される。
レムロドリッチが数体の悪魔と共にジトロ(No.0)とNo.1のいる場所に物理的な攻撃、そして属性魔術を打ち込んだ。
彼らの狙いはジトロ(No.0)とNo.1の分断。
だが、そんな事は分かっている二人は同時に転移して再び寄り添うように現れる。
「チッ、あの転移術を何とかしないと、万が一が有り得るぞ!何かないのかトロンプ?」
「そうだな。高位魔術を阻害する結界を張る事は出来る。既に魔道具も開発済みだが……」
歯切れが悪いトロンプ。
高位魔術阻害について不安が有る訳ではない。
転移魔術を行使した後の、ジトロ(No.0)の姿を見て思うところがあったのだ。
実はジトロ、冒険者からギルド職員になった時にこのトロンプから数点指摘されていた事がある。
一つ目は、職員の心得
二つ目は、周囲の警戒を行う際の癖についてだ
そう、その指摘した癖とは前世から転生したジトロ(No.0)にとって、この魔力のある世界は嬉しくも厳しい世界だった。
気を抜けば、魔獣によってその命を簡単に刈り取られてしまうこの世界。
その為に魔力レベルの力を使いこなせるようになるまでに、無駄に周囲の警戒を行っていた。
その警戒を行う時に、魔力の無かった前世の癖なのか、目視での警戒に比重を置く癖があり、その名残か少々周辺を見回す仕草をしてしまうのだ。
今、転移魔術行使後のジトロ(No.0)は、魔力レベルが相当高くなければ把握できないほどではあるのだが、確かに周囲を見回す様な素振りを見せていたのだ。
ようやく我に返った頃には、既にこの周囲には別動隊を除く全戦力である悪魔300体、そしてバリッジの精鋭が集結していた。
「おいトロンプ、こいつらは前回ここに来た雑魚とは違う。別格と考えて良いだろう。まさか訳が分からないまま王城まで吹き飛ばされるとは思ってもいなかった。だがな、我ら魔族にはとっておきがある。フフフ、恐らくお前もそうだろう?トロンプよ。こいつら二人を始末すれば、残りはどうとでもなるだろう。全力で行くぞ!」
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悪魔を素材として改良した丸薬は、魔力レベルを倍、そして寿命の残りを一月とする事に成功していた。
バリッジは、この丸薬を更に連続投与する実験を行っていたのだ。
その結果、寿命は一週間まで激減するが、更に魔力レベルが倍になる事を突き止めた。
こうなると、二度目の丸薬を摂取した暗部の魔力レベルは99に達しているが、ただの魔力レベル99ではなく、基礎体術も熟練の域に達している、正に屈強な一団となっているのだ。
「おいおい、スゲーじゃねーかよバリッジ。俺達も負けていられんな」
レムロドリッチはそう呟くと、横に控えていた悪魔の一体に攻撃し、その核を取り除くと突如口にした。
……バリ、ガリ……
「ふぅ~、仲間の核を食うなんて、あまりいい気がしねーな」
とは言え、この時点で魔力レベル99だったレムロドリッチの強さも跳ね上がっている。
あくまで魔力レベルは99で上限となっているのだが、恐らくナンバーズ単体とも渡り合える程度の強さは得ているに違いない。
「どうだNo.1とやら、さっきはお前の攻撃をまともに食らったが、今度はそうはいかんぞ」
周辺の悪魔も、隣り合う悪魔の核を食べている。
つまり、戦力としては300体の悪魔が150体程度になってはいるのだが、各個体の強さは別格になっているのだ。
単体の戦力を大幅に上げてきたバリッジと悪魔。
更にトロンプは続ける。
「未だに素顔すら明かさない臆病者にもう一つ教えておこう。お前らの拠り所のバイチ帝国、既に大陸中の国家から攻撃を受けている事位は分かっているな?だがその戦力、よもやただの国家の集合だとは思っていないだろうな?」
「トロンプの言う通りだ。フハハハ、お前らはここで俺達に打ちのめされる。そしてバイチ帝国も俺達の別動隊に打ちのめされるんだ。どうせさっきここにいた連中がバイチ帝国にいるんだろ?だが、今の俺達の戦力であればあいつらすら敵ではない!」
バリッジや悪魔が個体の戦力増強を別動隊に指示したからなのか、作戦を統括しているイズンからの念話が飛ぶ。
『バイチ帝国側の防御壁、部分的に補修が必要なほどダメージを受けています。突然敵の戦力が上がりました。このまま防御一辺倒では何れ防壁が破壊される恐れがあるので、攻撃に打って出ます』
既にバリッジと悪魔と対峙しているジトロとNo.1はこの場を動けないので何もできないが、アンノウンを信頼しているが故に慌てる事は無かった。
だが、覚悟を決めてNo.0としてジトロはアンノウン全員に宣言した。
『アンノウン全員に告ぐ。今回はバリッジと悪魔相手の最終戦だ。我らの、そしてバイチ帝国の理想を叶えるために出し惜しみは無しだ。キロスとコンの件もある。このまま奴らを野放しにしておく事は決してできない。だが冷静な判断なしに戦える相手ではない事は既に理解できているはずだ。ここからは、バイチ帝国側についての全指揮権は完全にイズンに任せる。必ず全員無事に任務を終えろ!俺とNo.1はハンネルに巣食っているゴミの始末に集中するからな。俺の大切な家族達、頼んだぞ!』
アンノウンで唯一絶対的な存在であるNo.0。
今までの活動の中でこれほどの意思を持った発言をした事が無かったので、アンノウン全員はこの戦闘に対するNo.0の覚悟を感じると共に、自分達を信じて任せてくれているとの思いから、自然と気合が入る。
遠く離れたバイチ帝国側から、ハンネル王国にいるNo.0やNo.1、そして魔力レベル99以上の力を持っているバリッジや悪魔達でも感じる事が出来るほどの力の入り具合だ。
何を勘違いしたのか、バリッジと悪魔は自らが命じて戦力増強させた者達の力だと思ったようで、相対しているジトロとNo.1の不安を煽るような発言をしてくる。
「フフフ、そこの覆面。いやNo.0とやら、お前でも感じただろう?バイチ帝国側からの力を。あれこそ我らの別動隊。我らと同じく戦力を大幅に増強したのだ」
「レムロドリッチの言う通りだ。どの道アンノウンには勝ち目はない。我らバリッジ、そしてこの悪魔族ですら長い年月をかけて活動していたのだ。少しばかり魔力レベルが高いだけでは、長年の経験を持つ我らには抗えない。思い知ると良い」
自信満々のトロンプとレムロドリッジ。
丸薬を摂取していないトロンプはさておき、悪魔は魔力レベル99だ。
だが、強引に力を得ているので細かい魔力調整はできない。
つまり、魔力の波動の詳細を解析・鑑定する力は持ち合わせていないのだ。
そのためにハンネル王国側の力を感知しただけで、自分達の別動隊が発した力であると大きな勘違いをしている。
タイミング的には、丸薬や核による力の増強と捉えられるので仕方がないのかもしれない。
一方のトロンプの近くに付き従っている暗部。
魔力調整はできるのだが、開発されたばかりの丸薬二度摂取による力の増強にまでは、完全に対応できていない。
その力の制御に意識が向いており、こちらも細かい解析・鑑定は出来ていなかった。
そんな理由もあって、未だ隠蔽状態であるジトロ(No.0)とNo.1の二人の素顔もわかっていない。
「No.0、この勘違い……如何致しましょうか?わざわざ訂正する必要もないと思いますが」
「そうだな。どうせ何を言っても信じない。それに、あの力であれば俺達の家族は必ずバイチ帝国を守り抜いてくれるだろう」
二人は家族であるアンノウンを信じてこの場の悪魔150体、そして暗部50人とトロンプと向き合う。
当然悪魔やバリッジも戦闘態勢を取っているので、問答無用で戦闘が開始される。
レムロドリッチが数体の悪魔と共にジトロ(No.0)とNo.1のいる場所に物理的な攻撃、そして属性魔術を打ち込んだ。
彼らの狙いはジトロ(No.0)とNo.1の分断。
だが、そんな事は分かっている二人は同時に転移して再び寄り添うように現れる。
「チッ、あの転移術を何とかしないと、万が一が有り得るぞ!何かないのかトロンプ?」
「そうだな。高位魔術を阻害する結界を張る事は出来る。既に魔道具も開発済みだが……」
歯切れが悪いトロンプ。
高位魔術阻害について不安が有る訳ではない。
転移魔術を行使した後の、ジトロ(No.0)の姿を見て思うところがあったのだ。
実はジトロ、冒険者からギルド職員になった時にこのトロンプから数点指摘されていた事がある。
一つ目は、職員の心得
二つ目は、周囲の警戒を行う際の癖についてだ
そう、その指摘した癖とは前世から転生したジトロ(No.0)にとって、この魔力のある世界は嬉しくも厳しい世界だった。
気を抜けば、魔獣によってその命を簡単に刈り取られてしまうこの世界。
その為に魔力レベルの力を使いこなせるようになるまでに、無駄に周囲の警戒を行っていた。
その警戒を行う時に、魔力の無かった前世の癖なのか、目視での警戒に比重を置く癖があり、その名残か少々周辺を見回す仕草をしてしまうのだ。
今、転移魔術行使後のジトロ(No.0)は、魔力レベルが相当高くなければ把握できないほどではあるのだが、確かに周囲を見回す様な素振りを見せていたのだ。
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