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工房ワポロと共に(1)
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「それで、お前らは今日はどうするんだ?ワシはこの前ナップルの作品、模倣をさせてらった扇子の作成にもう少し力を入れたいのだが」
「そうですね、ナップルと同行するのはNo.10で、バルジーニさんと一緒に俺はここに残りますよ」
こうして、工房ワポロ一行に同行するのはナップルとNo.10に決定した。
ディスポもバルジーニも、ナップルの心配は一切していない。
本人の強さもその要因の一つなのだが、更にナンバーズが護衛についているのだから、過剰戦力である事は理解している。
No.10の予想不能の行動だけは不安要素ではあるが、それを踏まえても問題ないと判断した。
「じゃあ気を付けて行って来いよ!戻ってくる頃には、ワシの修行の成果を見てくれナップル!」
「はい、わかりました。楽しみにしていますね。行ってきます!行きましょう、No.10さん」
「はい、じゃあ皆さん、行ってきますね~」
「No.10、落ち着いて行動しろよ!」
ディスポが念のためにNo.10に釘を刺す。
東門では、既に工房ワポロの人々がナップル達を待っていた。
「逃げると思っていましたが、きちんと来ましたか。あの生意気な坊主は来ていないようですね。何か裏工作でもさせているのですか?」
相変わらず好戦的な工房長。
彼の周りには子飼いの冒険者がいる。
もちろんバリッジの息がかかっている者達だ。
魔力レベルは全員8か9。
工房長として、この一件に対する力の入れようが分かる。
「彼には店番をしてもらっているだけです。ウチの店はおかげさまで大繁盛ですので、バルジーニさん一人では捌ききれませんから」
既にナップルも信頼できる仲間たちに囲われて生活しているうちに心の傷も完全に癒されている為、威圧されて怯えているような事はない。
「ナップルさんの言う通りですよ~。ナップルさんの作る魔道具は見た目も機能も素晴らしいですからね。でも忙しすぎると休憩が短くなるしお休みも取れないので、あなたのお店の様にまでとは言いませんが、もう少し暇になっても良いと思うのですが~、どう思いますか?」
No.10は嫌みではなく本当に思っている事を口にしただけなのだが、工房長にとってはナップルと同じく、“お前の店は暇なのに偉そうな事を言うな”と聞こえた。
「フン、お前の店の魔道具がまがい物だと知れ渡ってからも、同じ事が言えるといいですね?」
「え~、それじゃ、まがい物ではないので、お休みが取れないじゃないですか~?」
更に煽る工房長だが、No.10には一切効果がない。
本心で答えているのだから、ある意味質が悪い。
「くっ、この馬鹿が。良いでしょう。こうしていても仕方がありません。行きますよ。遅れずについてくるように!」
それだけ言うと、工房等は子飼いの冒険者達五名を引き連れて東の門を出て行く。
工房長はその体に自ら作った魔道具、そしてバリッジから配布された魔道具を身に着けている。
体の重さを軽減させる服、移動速度が上がる靴、防御力が上がるマント等々、まるで見本市のような状態だ。
こうする事で、魔力レベル8か9の冒険者の動きについて行けるようにしていたのだ。
工房長本人には大した力はないが、これでナップルについて来ているナナ(No.10)と言う、工房ナップル所属となっている冒険者はさておき、ナップル自身はついてこられないだろうと踏んでいた。
疲労困憊にさせた状態で魔獣に襲わせるか、子飼いの冒険者達に始末させるかはその状況で変えようと思っていたのだ。
しかし、その思惑は当然外れる。
アンノウンの二人にしてみれば、逆にこの冒険者や工房長を抜かさないように速度を調整する方に神経を使い、疲れている始末だ。
「あの~、工房長さん?もう少し早く行きませんか?これでは逆に疲れてしまいます~。それに、これだけ遅いと帰りも遅くなるので……私、早く帰っておやつを食べたいのです!」
No.10が、いつもの通りに思った事をそのまま口にする。
「はぁ?負け惜しみですか?本当にこれ以上の速さを出していいのですか?あなた達の為に少々遅くしていたのですが!」
工房長の言っている事は事実ではある。
付かず離れずの位置を調整しているつもりで、全力では移動していなかった。
こうして相手の疲弊するぎりぎりの状態を見極めようとしていたのだが、逆に遅いと言われてしまったのだ。
「わかりました。そこまで言うのでしたら全力で行きますよ。あなた方から言ってきた事ですからね。ついてこられなくて逸れた場合、良からぬ企みをするためにこちらを無駄に嗾けたと判断しますよ。覚悟しておきなさい。今更もう訂正は聞きません」
言うや否や、工房著と冒険者達五名は全力で東の森の奥に向かって疾走し始めた。
ギルドに登録している普通の冒険者であれば、まさに風のごとく移動していると言える程の速度で、ついて行くどころか、その姿を捕らえる事にも苦労する程だ。
ナナ(No.10)のせいで当初の目的を少々忘れて、熱くなっていた工房長。
「しまった。ナナ(No.10)とか言うバカのせいで熱くなってしまいました。ですが、これでも良いかもしれませんね。必死でついて来て何れは見失う。いえ、既に見失っているでしょうが、その分疲労も蓄積されるでしょう。その時がチャンスです」
あまり引き離してしまうと、その後の捜索が面倒だと考えた工房長は、少し速度を落とすべきかと思案していた。
すると、後方からこんな声が聞こえてきた。
「え~、これが全力ですか?準備運動の更に前段階じゃないのですか?もっと早く行きましょうよ~」
「えっと、ナナ(No.10)さん、きっとこの人達って、本当にこれが全力だと思うんですよ」
「まっさか~、ナップルさん面白い!あれほど自信満々だったのですから、そんな訳ないじゃないですか~。私をだまそうとしていますね?そうはいきません!!」
工房長が身に着けている魔道具があればこそ、この高速移動でも会話を拾う事ができている状態ではある。
その会話の中身は、ナチュラルに工房長を煽りまくっている内容だとしても……
「ば、おいお前ら、もう少し速度を上げるぞ!」
何故かナナ(No.10)に煽られると、直ぐに熱くなってしまう工房長。
今でさえ息切れしそうなほど全力であるが、更に必死で速度を上げる。
同行している冒険者達も、本気も本気。
歯を食いしばるほどの全力を出した。
最後の力を振り絞る位の速度を出した事により、速度が一段上昇した一行。
「ほら見てくださいナップルさん。私の言った通りです~。いよいよウォーミングアップの段階に入りましたよ!そして、この後が本番に違いありません!!」
意気込むナナ(No.10)と、哀れみを持った目で工房長一行を見るナップル。
そして、その声がこの状態でも普通に聞こえる工房長。
つまりどうやってもこの二人を撒けていないという事なのだ。
工房長一行はいつの間にか方針が変わって、全力で二人を撒く事に力を注いでいたのだが、やがて力尽きる。
先頭を必死で走る一人が足を取られて転倒すると、後ろに続く工房長を含む五人はそのままの勢いで転倒した。
「そうですね、ナップルと同行するのはNo.10で、バルジーニさんと一緒に俺はここに残りますよ」
こうして、工房ワポロ一行に同行するのはナップルとNo.10に決定した。
ディスポもバルジーニも、ナップルの心配は一切していない。
本人の強さもその要因の一つなのだが、更にナンバーズが護衛についているのだから、過剰戦力である事は理解している。
No.10の予想不能の行動だけは不安要素ではあるが、それを踏まえても問題ないと判断した。
「じゃあ気を付けて行って来いよ!戻ってくる頃には、ワシの修行の成果を見てくれナップル!」
「はい、わかりました。楽しみにしていますね。行ってきます!行きましょう、No.10さん」
「はい、じゃあ皆さん、行ってきますね~」
「No.10、落ち着いて行動しろよ!」
ディスポが念のためにNo.10に釘を刺す。
東門では、既に工房ワポロの人々がナップル達を待っていた。
「逃げると思っていましたが、きちんと来ましたか。あの生意気な坊主は来ていないようですね。何か裏工作でもさせているのですか?」
相変わらず好戦的な工房長。
彼の周りには子飼いの冒険者がいる。
もちろんバリッジの息がかかっている者達だ。
魔力レベルは全員8か9。
工房長として、この一件に対する力の入れようが分かる。
「彼には店番をしてもらっているだけです。ウチの店はおかげさまで大繁盛ですので、バルジーニさん一人では捌ききれませんから」
既にナップルも信頼できる仲間たちに囲われて生活しているうちに心の傷も完全に癒されている為、威圧されて怯えているような事はない。
「ナップルさんの言う通りですよ~。ナップルさんの作る魔道具は見た目も機能も素晴らしいですからね。でも忙しすぎると休憩が短くなるしお休みも取れないので、あなたのお店の様にまでとは言いませんが、もう少し暇になっても良いと思うのですが~、どう思いますか?」
No.10は嫌みではなく本当に思っている事を口にしただけなのだが、工房長にとってはナップルと同じく、“お前の店は暇なのに偉そうな事を言うな”と聞こえた。
「フン、お前の店の魔道具がまがい物だと知れ渡ってからも、同じ事が言えるといいですね?」
「え~、それじゃ、まがい物ではないので、お休みが取れないじゃないですか~?」
更に煽る工房長だが、No.10には一切効果がない。
本心で答えているのだから、ある意味質が悪い。
「くっ、この馬鹿が。良いでしょう。こうしていても仕方がありません。行きますよ。遅れずについてくるように!」
それだけ言うと、工房等は子飼いの冒険者達五名を引き連れて東の門を出て行く。
工房長はその体に自ら作った魔道具、そしてバリッジから配布された魔道具を身に着けている。
体の重さを軽減させる服、移動速度が上がる靴、防御力が上がるマント等々、まるで見本市のような状態だ。
こうする事で、魔力レベル8か9の冒険者の動きについて行けるようにしていたのだ。
工房長本人には大した力はないが、これでナップルについて来ているナナ(No.10)と言う、工房ナップル所属となっている冒険者はさておき、ナップル自身はついてこられないだろうと踏んでいた。
疲労困憊にさせた状態で魔獣に襲わせるか、子飼いの冒険者達に始末させるかはその状況で変えようと思っていたのだ。
しかし、その思惑は当然外れる。
アンノウンの二人にしてみれば、逆にこの冒険者や工房長を抜かさないように速度を調整する方に神経を使い、疲れている始末だ。
「あの~、工房長さん?もう少し早く行きませんか?これでは逆に疲れてしまいます~。それに、これだけ遅いと帰りも遅くなるので……私、早く帰っておやつを食べたいのです!」
No.10が、いつもの通りに思った事をそのまま口にする。
「はぁ?負け惜しみですか?本当にこれ以上の速さを出していいのですか?あなた達の為に少々遅くしていたのですが!」
工房長の言っている事は事実ではある。
付かず離れずの位置を調整しているつもりで、全力では移動していなかった。
こうして相手の疲弊するぎりぎりの状態を見極めようとしていたのだが、逆に遅いと言われてしまったのだ。
「わかりました。そこまで言うのでしたら全力で行きますよ。あなた方から言ってきた事ですからね。ついてこられなくて逸れた場合、良からぬ企みをするためにこちらを無駄に嗾けたと判断しますよ。覚悟しておきなさい。今更もう訂正は聞きません」
言うや否や、工房著と冒険者達五名は全力で東の森の奥に向かって疾走し始めた。
ギルドに登録している普通の冒険者であれば、まさに風のごとく移動していると言える程の速度で、ついて行くどころか、その姿を捕らえる事にも苦労する程だ。
ナナ(No.10)のせいで当初の目的を少々忘れて、熱くなっていた工房長。
「しまった。ナナ(No.10)とか言うバカのせいで熱くなってしまいました。ですが、これでも良いかもしれませんね。必死でついて来て何れは見失う。いえ、既に見失っているでしょうが、その分疲労も蓄積されるでしょう。その時がチャンスです」
あまり引き離してしまうと、その後の捜索が面倒だと考えた工房長は、少し速度を落とすべきかと思案していた。
すると、後方からこんな声が聞こえてきた。
「え~、これが全力ですか?準備運動の更に前段階じゃないのですか?もっと早く行きましょうよ~」
「えっと、ナナ(No.10)さん、きっとこの人達って、本当にこれが全力だと思うんですよ」
「まっさか~、ナップルさん面白い!あれほど自信満々だったのですから、そんな訳ないじゃないですか~。私をだまそうとしていますね?そうはいきません!!」
工房長が身に着けている魔道具があればこそ、この高速移動でも会話を拾う事ができている状態ではある。
その会話の中身は、ナチュラルに工房長を煽りまくっている内容だとしても……
「ば、おいお前ら、もう少し速度を上げるぞ!」
何故かナナ(No.10)に煽られると、直ぐに熱くなってしまう工房長。
今でさえ息切れしそうなほど全力であるが、更に必死で速度を上げる。
同行している冒険者達も、本気も本気。
歯を食いしばるほどの全力を出した。
最後の力を振り絞る位の速度を出した事により、速度が一段上昇した一行。
「ほら見てくださいナップルさん。私の言った通りです~。いよいよウォーミングアップの段階に入りましたよ!そして、この後が本番に違いありません!!」
意気込むナナ(No.10)と、哀れみを持った目で工房長一行を見るナップル。
そして、その声がこの状態でも普通に聞こえる工房長。
つまりどうやってもこの二人を撒けていないという事なのだ。
工房長一行はいつの間にか方針が変わって、全力で二人を撒く事に力を注いでいたのだが、やがて力尽きる。
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