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ラグロ王国での緊急クエスト(4)

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 その日の夜、冒険者のパーティーが完全に眠りについた事を確認したNo.10ツェーンとナップル。

No.10ツェーンさん、後ろから来ている二人、どうしましょうか?」
「そうですね~、今はまだ問題ないですけれど、魔獣三体への注意、冒険者達の護衛となると私達にも余裕がなくなるかもしれないですものね~。でも大丈夫です!更にその後ろからNo.4フィーアが来ていますから」

 実はこのNo.4フィーア、今回のナップル達の任務の話を聞いた後で直接ジトロに自分も対応メンバーに加えて欲しいと嘆願していた。

 隠密行動に優れているナンバーズであったため、ナップルとNo.10ツェーンを遠巻きに助力できる位置で移動していたのだ。

 その行動中に門を出る前からナップルとNo.10ツェーンを監視している工房長と冒険者?の様な者がいたので、その二人を監視する立ち位置で移動していた。

 ある程度高めのレベルで隠密を使用しているので、残念ながら魔力レベル60の魔獣の力を利用しているナップルにはその気配を察知する事ができていなかった。

「そうだったんですか?それならば、私はあの冒険者四人の護衛だけに専念できますね」
「そうですよ~。本当にNo.4フィーアはいつの間にかついてきたのでしょうか?せっかくですから、何か美味しいお食事でも差し入れてくれてもいいと思いませんか~?」

 少しだけ?ずれた会話をしているNo.10ツェーンだが、流石に工房で共にいる時間が長いナップルは慣れたものだ。

「そうですね。それじゃあ不安はなくなりましたので、私達も休みましょうか?」
「そうしましょう~。おやすみなさい」

 彼女達の力があれば、異常を察知した瞬間に目を覚ます事は造作もない。

 しかしテントの中で寝てしまうと初動に遅れが出るので、焚火の前で横になる。

 さりげなく地面と自分の体の間に、魔力の塊による布団を作っていたりするので、テントの中よりも良い環境だったりする。

「「「「おはようございます」」」」

 冒険者パーティーのジュリア、ロレンサリー、メリンダ、マチルダが起きてきた。

 その少し前、テントの中で彼女達が動き出した気配を察知したナップルとNo.10ツェーンも起きている。

 少し前に起きたのだが、そのような素振りは見せずに普通に焚火の前で警戒をしていたような姿だ。

「本当にありがとうございます。おかげで私達よく眠れました!お二人は疲れていないですか?」
「いえいえ~、私達もとても良く……」
「えっと!私とナナ(No.10ツェーン)さんも順番でゆっくり休みましたので、全く問題ありませんよ!今日も張り切って行きましょう!!」

 No.10ツェーンが二人揃って熟睡していたと言いそうになるのを察知したナップルが、慌てて体裁を取り繕う。

 見張りをすると買って出た二人、実際に気配を察知しながら睡眠を取っていたのである意味見張っているのだが、そのまま二人とも睡眠を取りながら警戒していたと言っても信じてもらえないので、ナップルが急遽No.10ツェーンの暴走を止めたのだ。

 実はナップル、未確認の魔獣と冒険者パーティーの護衛、そして後方から来ている工房長ともう一人の対応よりも、No.10ツェーンの暴走?を止める事に一番気を使っていたりする。

 既に収納魔法から食事を出して準備済みなので、全員で食事をした後に再び森の奥を目指して歩き始める。

「本当にナップルさんのお料理は上手ね!帰ったら教えて貰おうかしら!!」
「え?えっと、私の先生?を紹介するので良いですか?」

 当然この日の朝食も、ナップルが作ったわけではない。

 彼女も料理はできるのだが、冒険者パーティーが食べている食事はナップル達が作ったような振りをしているだけで、実際はアンノウンゼロのマーロイが作っている。

 そのため、ナップルはマーロイを紹介する事によってこの難局を乗り切ろうとしていた。

 まさか朝一番でこのような難局が襲ってくるとは思ってもおらず、少々油断していたナップル。

 No.10ツェーンは?と言えば、ニコニコしているだけで、何の助けにもなっていない。

 彼女は、自分が何かを言ってしまうとナップルの足を引っ張る可能性があると分かっていたのだ。

 本人の知らないうちに料理を教える事になりそうなマーロイは、普段スミルカの町の食事処で任務についている。

 普通の人であれば、スミルカの町から工房ナップルがあるラグロ王国までは馬車で9日程度必要とするのだが、アンノウンには転移があるので、どうにでもなるだろうとナップルは思っていた。

 こうして朝から訪れた難局を乗り切ったナップル。

 その日も彼女達の力に怯えた魔獣が襲ってくるような事が有る訳もなく、何もないまま二日目を終えた。

 冒険者パーティー一行は、流石に二日連続で、しかも森の奥に侵入している状態で魔獣が襲ってこないだけではなく視認すらできない事に警戒を露わにしていた。

 もちろんアンノウンの二人の力を認識できないような小粒の魔獣は時折現れていたが、魔力レベル1程度の雑魚なので、何の障害もならずに二日目も終了する。

No.10ツェーン、ナップル、ちょっといいか?』

 一日目と同じように冒険者パーティーを休ませて自分達も横になった時点で、後方から追尾しているNo.4フィーアから念話がきた。

『どうしたのですか~?No.4フィーア
『こっちの報告だ。どうせこの二人の監視、既にしていないだろ?』
『あっ、バレましたか~?No.4フィーアがいるから問題ないと思って~、お任せしました!』

 一切悪びれずに回答するNo.10ツェーン

 既にナップルとNo.10ツェーンは、後方から追尾してくる二人の監視を外していたのだ。

 No.4フィーアもナップルと同様にNo.10ツェーンの性格を知っているので、何か言う事はない。

『既に分かっていると思うが、工房長に同行している冒険者、しばらく観察していたが、魔力レベル9の男だ。そいつは何やら怪しい武器を工房長からもらっていた。鑑定が苦手だからどんな武器かはわからなかったけどな。何か動きがあればまた連絡するけど、魔獣の動きから想定すると、明日あたり何か仕掛けてきそうだぞ』
No.4フィーアさん、ナップルです。その場合、そちらの二人は完全にお任せしても良いですか?』
『ああ、任せてくれて良いぞ』

 ナップルとNo.10ツェーンも、魔獣三匹が遠巻きにこちらに動き始めているのは既に察知していた。

 今この時点でアンノウンの三人は、未確認の魔獣三体、そして冒険者達を追尾している二人の位置を完全に把握している上、誰が誰に対応するかまで決定した万全の状態で迎え撃てる所まで来ている。

 残りは同行と言う名の護衛をしている冒険者パーティーに対しての説明をするだけなのだか、実はここが一番難しい。

 自分達の力を把握されないように説明しなくてはならないからだ。

 恐らく動きがあるだろうと思われる日である翌日の朝食時に、ナップルは冒険者パーティーに話を切り出す。

「あの、皆さん、実は私の工房でバルジーニさんの力も借りてこの日のために作った魔道具なのですが、私達が知り得ている魔獣以外の魔力の動き、つまりは未確認の魔獣の動きのみを察知する物です。この魔道具によると、どうやら未確認の魔獣三体は私達を三方向から遠巻きに囲う様に移動しています」

 そのような道具はないが、適当な物を見せつつ説明をしているナップル。

 冒険者達はナップルの作った極上の魔道具を実際使っているので、そのような効果がある物をナップルが作ったと言っても疑う事はない。

 更に、ナップルが今手に持っている魔道具にも所有者制限がついていると勝手に理解しているので、自分達が借りると言う発想も出てこないのだ。
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