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騎士隊長ナバロン(1)
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私はバイチ帝国の騎士隊長であるナバロンだ。
今回は、表向きはハンネル王国へ果物の交易の活発化の相談と言う形で訪問している。
その為にかなり赤字にはなったが、上流階級限定で、我らの特産品を行商人を通して販売していた。
しかし、実際の訪問の目的は違う。
この国は、今まで奴隷制度を受け入れていた国家だが、行商人から得た情報では、以前は近隣の森で無残な姿になった奴隷を発見していたが、最近はそのような事はないと聞いていたので、ようやく改心したのかと思い、視察に踏み切った。
実際の所、私が知る限りで、犯罪奴隷以外の奴隷を厳しく禁止しているのは、我がバイチ帝国だけだ。
我らと志を共にする国家が現れたかもしれないという期待から、進行速度も速くなってしまう。
今の所、理不尽な奴隷を発見する事はなく、順調に移動できている。
いや、しかしスミルカの町の宿は素晴らしかったな。
そして、そこを薦めてくれたジトロ副ギルドマスター補佐心得には感謝しかない。
少々役職名が長いが、あれほどのやり手だ。
そう時間がかからずに、ギルドマスターになれる事だろう。
彼には、我がバイチ帝国にも同じような風呂を建設する際には、是非有益なアドバイスを貰う必要があるので、王都での仕事を終えた後には再びスミルカの町に寄り、再度助力の確約を得ようと思っている。
宰相であるアゾナも、私以上にあの風呂を気に入り私の意見に賛成しているので、早くハンネル王国への謁見を終わらせて、王都での視察をして、スミルカの町に向かいたいものだ。
だが、我らの護衛だか、案内をしている、このドストラ・アーデと言う男はいただけない。
いちいち行動が気に障るし、言葉の節々に特権階級である事を匂わせる発言がある。
特に、平民が……と言う言葉が多いのが気になって仕方がない。
この時点で、正直に言うとハンネル王国への期待は無くなってきている。
それに、何か胡散臭いのだ。
これは勘による所で根拠はないが、信頼するに値しない男であると判断した。
きっと、当然私よりも切れ者の宰相も、同じ感想を持っているだろう。
あのドストラ・アーデと言う男の部下であろう、他の騎士達への当たりも惨い物で、見ているこちらがイライラする。
しかし、あの男はそれに気が付いておらず、我らすら見下している感がある。
しかも、この男があのジトロ副ギルドマスター補佐心得の上司であり、ギルドマスターだと言うのだ。
ジトロ殿も苦労が絶えないだろう。
ひょっとしたらその気苦労を癒す事を考えた結果、あの素晴らし風呂が出来上がったのかもしれない。
色々な考察にふけっていると、突然目の前に覆面のような物をした者達が現れ、我らの進行方向を塞いだ。
当然我らは停止せざるを得ず、覆面の集団……と言うには人数が少ないか……覆面をした三人に文句を言うために、ドストラ・アーデが先頭に移動した。
あの三人は、体つきは女性だな。
だが、油断はできない。
私の長年の勘がそう言っている。
かなりの手練れである事は間違いないだろう。
その覆面の先頭にいる者は、どこから出したのか、見た事もない魔獣をドストラ・アーデの目の前に放り投げた。
まさか、あれは魔法による収納か?
そういえば、こいつらは何の気配もなく突然現れたな。
この世界最大の魔力レベルと自負している私でも、遠距離の転移などはできない。
きっと、あの覆面達も隠密か何かで気配を消して、我らの前に急に現れたように見せたに違いない。
だが、そうなると、素晴らしい技術の持ち主だ。
流れるような魔力レベルの移行技術……この私でも、あそこまでの域には達していないかもしれない。
通常、魔力レベルに応じた魔法を行使できるが、例えば覆面達が使っていたであろう隠密を使っている最中は、他の魔法は使えない。
魔法を解除し、再度異なる魔法の行使のために魔力を振り分けるのだ。
今回で言えば、恐らく収納魔法だろう。
この一連の流れが速すぎる。
「あなたがこの魔獣を差し向けたので間違いないですね?ギルドマスターのドストラ・アーデ!」
突然、魔獣を放り投げた覆面が話す。
内容を理解するのに少々時間がかかったが、慌ててドストラ・アーデを見ると、驚きの表情から徐々に悪人面に変わっていった。
こいつは、黒だ。確信できた。
私と同じ判断をした部下達も、覆面とドストラ・アーデから距離を取り、馬車を中心に守りを固める。
「お前らは何者だ?ギルドマスターである、この私にも情報が入ってきていない存在。さっきの収納魔法の制御を見るに、かなりのレベルにいるはずだが、そんな奴らは冒険者として登録されていない!」
「そんな事はどうでも良いでしょう?なぜあなたは新種の魔獣を使ってまで、バイチ帝国の宰相を亡き者にしようとしたのですか?誰の命令ですか?」
何?聞き捨てならない。我が国家の宰相を暗殺しようとしただと?
周りの部下である騎士達にも緊張が走っているのが分かる。
すでに、何名かは抜刀している。
「貴様、なぜそこまで知っている。どこでこの機密情報を手に入れた!!」
こいつ、やはり我らの敵か!
こいつが連れてきた騎士達が敵になると、少々面倒だ。
こいつらの魔力レベルは低そうだが、数が我らの倍はいる。
注意深く周りを警戒する。
が、どうやらこの心配は杞憂だったようだ。
この場にいる騎士達も、隊長であろうドストラ・アーデの言葉に動揺しているからだ。
「そちらにいるバイチ帝国の方々、私達は貴公達の敵ではありません。これから我が主の命により、このドストラ・アーデを捕らえるので、おとなしくして頂けますか?」
「し、承知した」
突然振られて驚いたが、何とかまともに返事ができた……か?
「ハハハハ、どこの馬の骨ともわからない身の程知らずが、少々魔法の行使が上手いからと調子に乗って、力量を見誤ったか?確かにお前らが得ている情報から察するに、すさまじい情報収集能力だ。おそらく、普段の私の行動も監視されていたのだろう。だが、普段のギルドマスターとしての行動は、常に我が力を隠し続けていたのだ。この力を見て、まだそのような夢物語を語れるか?」
このドストラ・アーデ、初見では雑魚かと思ったが、確かに強い。
徐々に魔力レベルが上昇しているようだ。
これは、偽装でもしていたか??
……どこまで上昇するのだ?
こ、これは……最強を自負していた魔力レベル10の私よりも明らかに強い!!
この世界では、魔力レベル10が上限ではなかったのか!!!
今回は、表向きはハンネル王国へ果物の交易の活発化の相談と言う形で訪問している。
その為にかなり赤字にはなったが、上流階級限定で、我らの特産品を行商人を通して販売していた。
しかし、実際の訪問の目的は違う。
この国は、今まで奴隷制度を受け入れていた国家だが、行商人から得た情報では、以前は近隣の森で無残な姿になった奴隷を発見していたが、最近はそのような事はないと聞いていたので、ようやく改心したのかと思い、視察に踏み切った。
実際の所、私が知る限りで、犯罪奴隷以外の奴隷を厳しく禁止しているのは、我がバイチ帝国だけだ。
我らと志を共にする国家が現れたかもしれないという期待から、進行速度も速くなってしまう。
今の所、理不尽な奴隷を発見する事はなく、順調に移動できている。
いや、しかしスミルカの町の宿は素晴らしかったな。
そして、そこを薦めてくれたジトロ副ギルドマスター補佐心得には感謝しかない。
少々役職名が長いが、あれほどのやり手だ。
そう時間がかからずに、ギルドマスターになれる事だろう。
彼には、我がバイチ帝国にも同じような風呂を建設する際には、是非有益なアドバイスを貰う必要があるので、王都での仕事を終えた後には再びスミルカの町に寄り、再度助力の確約を得ようと思っている。
宰相であるアゾナも、私以上にあの風呂を気に入り私の意見に賛成しているので、早くハンネル王国への謁見を終わらせて、王都での視察をして、スミルカの町に向かいたいものだ。
だが、我らの護衛だか、案内をしている、このドストラ・アーデと言う男はいただけない。
いちいち行動が気に障るし、言葉の節々に特権階級である事を匂わせる発言がある。
特に、平民が……と言う言葉が多いのが気になって仕方がない。
この時点で、正直に言うとハンネル王国への期待は無くなってきている。
それに、何か胡散臭いのだ。
これは勘による所で根拠はないが、信頼するに値しない男であると判断した。
きっと、当然私よりも切れ者の宰相も、同じ感想を持っているだろう。
あのドストラ・アーデと言う男の部下であろう、他の騎士達への当たりも惨い物で、見ているこちらがイライラする。
しかし、あの男はそれに気が付いておらず、我らすら見下している感がある。
しかも、この男があのジトロ副ギルドマスター補佐心得の上司であり、ギルドマスターだと言うのだ。
ジトロ殿も苦労が絶えないだろう。
ひょっとしたらその気苦労を癒す事を考えた結果、あの素晴らし風呂が出来上がったのかもしれない。
色々な考察にふけっていると、突然目の前に覆面のような物をした者達が現れ、我らの進行方向を塞いだ。
当然我らは停止せざるを得ず、覆面の集団……と言うには人数が少ないか……覆面をした三人に文句を言うために、ドストラ・アーデが先頭に移動した。
あの三人は、体つきは女性だな。
だが、油断はできない。
私の長年の勘がそう言っている。
かなりの手練れである事は間違いないだろう。
その覆面の先頭にいる者は、どこから出したのか、見た事もない魔獣をドストラ・アーデの目の前に放り投げた。
まさか、あれは魔法による収納か?
そういえば、こいつらは何の気配もなく突然現れたな。
この世界最大の魔力レベルと自負している私でも、遠距離の転移などはできない。
きっと、あの覆面達も隠密か何かで気配を消して、我らの前に急に現れたように見せたに違いない。
だが、そうなると、素晴らしい技術の持ち主だ。
流れるような魔力レベルの移行技術……この私でも、あそこまでの域には達していないかもしれない。
通常、魔力レベルに応じた魔法を行使できるが、例えば覆面達が使っていたであろう隠密を使っている最中は、他の魔法は使えない。
魔法を解除し、再度異なる魔法の行使のために魔力を振り分けるのだ。
今回で言えば、恐らく収納魔法だろう。
この一連の流れが速すぎる。
「あなたがこの魔獣を差し向けたので間違いないですね?ギルドマスターのドストラ・アーデ!」
突然、魔獣を放り投げた覆面が話す。
内容を理解するのに少々時間がかかったが、慌ててドストラ・アーデを見ると、驚きの表情から徐々に悪人面に変わっていった。
こいつは、黒だ。確信できた。
私と同じ判断をした部下達も、覆面とドストラ・アーデから距離を取り、馬車を中心に守りを固める。
「お前らは何者だ?ギルドマスターである、この私にも情報が入ってきていない存在。さっきの収納魔法の制御を見るに、かなりのレベルにいるはずだが、そんな奴らは冒険者として登録されていない!」
「そんな事はどうでも良いでしょう?なぜあなたは新種の魔獣を使ってまで、バイチ帝国の宰相を亡き者にしようとしたのですか?誰の命令ですか?」
何?聞き捨てならない。我が国家の宰相を暗殺しようとしただと?
周りの部下である騎士達にも緊張が走っているのが分かる。
すでに、何名かは抜刀している。
「貴様、なぜそこまで知っている。どこでこの機密情報を手に入れた!!」
こいつ、やはり我らの敵か!
こいつが連れてきた騎士達が敵になると、少々面倒だ。
こいつらの魔力レベルは低そうだが、数が我らの倍はいる。
注意深く周りを警戒する。
が、どうやらこの心配は杞憂だったようだ。
この場にいる騎士達も、隊長であろうドストラ・アーデの言葉に動揺しているからだ。
「そちらにいるバイチ帝国の方々、私達は貴公達の敵ではありません。これから我が主の命により、このドストラ・アーデを捕らえるので、おとなしくして頂けますか?」
「し、承知した」
突然振られて驚いたが、何とかまともに返事ができた……か?
「ハハハハ、どこの馬の骨ともわからない身の程知らずが、少々魔法の行使が上手いからと調子に乗って、力量を見誤ったか?確かにお前らが得ている情報から察するに、すさまじい情報収集能力だ。おそらく、普段の私の行動も監視されていたのだろう。だが、普段のギルドマスターとしての行動は、常に我が力を隠し続けていたのだ。この力を見て、まだそのような夢物語を語れるか?」
このドストラ・アーデ、初見では雑魚かと思ったが、確かに強い。
徐々に魔力レベルが上昇しているようだ。
これは、偽装でもしていたか??
……どこまで上昇するのだ?
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