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バイチ帝国到着

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 俺以外の面々は、最近はあまりギルドで依頼を受けていない。

 専ら魔力レベルの高い魔獣を勝手に狩り、かなり遠くのギルドで買い取ってもらっているようだ。

 もちろんその場で驚かれてしまうので、正体を明かさず、更には一度行ったギルドにはいかない事にしている徹底ぶりだ。

 当然買い取り時にトラブルになる時もあるようだが、そういった場合はかなりの安値で卸して、さっさとその場を引き払っているらしい。

 彼女達の力が公になるとまずいので、旅の途中で拾ったと言い張っているそうだ。

 そして、当然その換金したお金はイズンによって全て徴収され、得た金額の数%をお小遣いとして手にしている。

 当然彼女達も、お金についてはイズンに一切頭が上がらない。
 
 だが、まっとうにギルドで依頼を受けるよりもよほど稼げているので、特に文句を言う事もなく、楽しく過ごしている。

 羨ましい。

 俺にも休みがあれば荒稼ぎしてやるのに。クソギルドマスターめ!!

 と、そんな日常を過ごしていると、俺達が得た情報では翌日にバイチ帝国の宰相一行が到着する日になった。

 案の定、珍しく出勤していたクソギルドマスターがニヤニヤしながら近寄ってくる。

 流石にこれだけ長い間、あいつの性格を目の前で見させられている身としては、何を言い出すのかはすぐにわかる。

「おい平民、バイチ帝国の方々は明日の朝に到着なさる。全員で12名だそうだ。このスミルカの町で一泊されるそうなので、失礼のないような宿泊場所を確保しておけよ。いや、当然前もって確保して然るべきなんだがな。平民では難しいか?」

<このクソギルドマスター、相変わらずだな。今初めて聞いた情報なのに、宿泊場所なんて手配できる訳ねーだろ。情報聞こうにも、一切出勤しなかったくせに!>
「はい、問題ありません」

 少し封印していた心の声が復活してしまった。

「そうだろう、そうだろう。平民如きが仕事をまともにできる訳な……なに?」
「聞こえませんでしたか?耳が悪いんですか?全く問題ありませんよ」

「ちっ、だが、きちんとした宿なのだろうな。ハンネル王国としての威厳がかかっているのだぞ」
<そんなに大事な事なら、最初から俺に全ての情報を開示しておけや!!>
「ええ、問題ありません!」

 少しだけポカンとしたクソギルドマスターは、再度舌打ちをすると自分の部屋に引っ込んで行く。

 こいつは、どうして人の足を引っ張る事しかしないのだろうか。

 暇人なのだろうな。

 こうして俺は、予想通りのクソギルドマスターによるバイチ帝国来訪前日イベントをクリアし、悠々と帰宅した。

 翌日早朝、俺はギルドで依頼を受けてくれているパーティーと門で待機していると、やがて、視界に豪華な馬車と、馬に乗った面々が見えてきた。

 実は、俺は魔力で強化しているので良く見えるが、共にいる冒険者にはまだ見る事はできないはずなので、余計な事は言わない。

 それから数十分経っただろうか…

「お、見えてきたな。あれに間違いなさそうだ」

 ようやく彼らにも、バイチ帝国の一行を視認する事ができたらしい。

 彼らも魔力によって視力を強化しているのだが、俺とはレベルが違いすぎるのでここまで時間差がでてしまう。

 更に言うと、門番は未だに視認できていない。

「馬車の中に何人乗っているかはわからないが、馬に乗っているのは…11人だな」
「情報ありがとうございます」

 既に分かっている事だが、わからないふりをしている。

 なので、お礼は大切!!

 当然、ここから更に長時間待つ事になる。

 ようやく一行が門の前にたどり着くと、先頭にいた騎士が下馬しこちらに来た。

「私はバイチ帝国のナバロンと言う。今日はこのスミルカの町で一泊させてもらい、翌日王都に出立させていただく予定だ。国王陛下との謁見は、我がバイチ帝国を代表して、宰相であるアゾナが行う予定になっている。よろしく頼む」

 何と丁寧に情報を教えてくれるのだろうか……。

 このお方、ナバロン殿の爪の垢をいただけないだろうか?

 その垢を、あのクソギルドマスターのお茶にでも流し込んでやりたい。

 このお方は、実直3割、誠実3割、忠誠3割、優しさ1割で構成されているに違いない。

 当然、クソギルドマスターの構成は、陰湿3割、虚栄3割、卑劣3割、バカ3割だ。

 10割を超えてしまったが、それほどクソだと言う事だ。

 この際、このお方がギルドマスターになって頂けないだろうか?

「おい、副ギルドマスター補佐心得、しっかりしろ、大丈夫か?」

 おっと、冒険者に突っ込まれてしまった。

 いかん、いかん。現実逃避していた。

「大変申し訳ありません。私、このスミルカの町の副ギルドマスター補佐心得を仰せつかっておりますジトロと申します。それでは、皆さまの当町での宿泊場所までご案内させて頂きます」

 クッソ、長い役職を聞いて、微妙に表情が歪んだぞ。

 俺だから気が付けるレベルだが、若干かわいそうな者を見る目だった!

 俺だって、好きでこんな役職にいる訳じゃない!!せめて心得を取ってくれ~!!

 ふぅ~、落ち着いた。

 こうして、俺とナバロン殿の初めての対話は問題なく?終了した。
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