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再び異常な魔獣襲来(2)

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 計算したかのように二人がギルドに現れる。いや、計算しているのだけどね。

「副ギルドマスター補佐心得!何か良い依頼ないですか?」
「少し、刺激的なのが良いですね。もちろん、依頼達成後には、ご褒美…ありますよね??」

 こいつらは、何かと俺と食事やら何やらをしたがる。

 だが、今はそんな事を言っている時間はない。

「ええ、いい依頼があります。緊急依頼です。見た事もない魔獣が現れて、冒険者二人が避難しているままだそうなので、大至急その二人を救助し、余力があれば、魔獣の討伐もお願いします」
「「任せてください!!」」

 No.5フュンフNo.8アハトは、喜んで俺の依頼を受けてくれた。

 と、そこに少々騒がしくなったのを聞きつけたクソギルドマスターがやってきた。

「おやおや、以前、まぐれで炎龍の鱗を入手した二人ではないですか。ですが、今回は避難している冒険者の救出、そして魔獣の討伐。魔獣はきっと新種でしょう。フフフ、どこかで素材を購入するのとは、訳が違いますよ!」

 こいつは、前回の炎龍の鱗もどこかで購入したと信じ切っている。

 その言葉を聞いて、二人の機嫌が若干悪くなっているのが分かる。

「ジトロ副ギルドマスター補佐心得!何か煩い人がいるので、私達もう行きますね!」
「そうですね。急がないと、万が一などがあってはいけませんから」

 クソの頬がピクピクしている。

「まったく、躾ができていない平民どもが……。私はギルドマスターだぞ。挨拶すらできないとは、育ての親の顔が見てみたい!」

 No.5フュンフNo.8アハトの二人は俺をチラッと見る。

 俺はお前達の親と言う程の年齢ではないぞ!と言いたいのは堪えておく。

 この二人、いや、仲間全員、俺の事を悪く言われると何やら極端に攻撃的になる事が多いので、ここで、騒ぎを起こしてほしくないと言う思いから、少しだけ口をはさむ。

 何より、こんな事で時間を潰している場合ではない。
 
「確かに、挨拶は大切ですね」

 この俺の一言で、嫌々ながらクソギルドマスターに挨拶をする決意をしたようだ。

「じゃあ行ってきますね、副ギルドマスター補佐心得!と、ついでに・・・・ギルドマスター」
「副ギルドマスター補佐心得、行ってきます。ギルドマスター、バイバイ」

 これが、彼女達がクソギルドマスターにできる挨拶の限界らしい。

 もちろん、こんな挨拶?でクソギルドマスターが納得するわけもなく、ギャーギャー喚いている。

「この平民が!!それが目上の者に対する挨拶か!!丁寧な言葉を使う事もわからんとは……」

 怒り狂うクソギルドマスターに対して、二人は面倒くさそうに対応している。

「うるさいな~、私達急いでいるのですけど」
「わかりましたよ。少し丁寧にすればいいのでしょう?それじゃあ、バイバイ致しま~す!!アハハハ」

 これだけ言って、二人はさっさと依頼を達成すべく出て行ってしまった。

 本当は今ここにいる、救助を求めた冒険者に状況を色々聞く必要があるのだろうが、あの二人であれば、この冒険者が薬草を採取していた場所は知っているだろうし、避難している二人の気配を察知するのも全く問題ないだろう。

 だが、バイバイ致します…とは、なかなか新しい言葉だな。

 一瞬茫然としていたクソギルドマスターは、怒りの表情のまま自室に消えていった。

 こいつは何しに来たのだ??

 だが、これで二人の救助は問題ないだろう。

 必死に救助要請をしていた冒険者に安心してもらうために話をしておく。

「あの二人は、炎龍の鱗を入手してきた実績を持つほどの実力者です。大船に乗ったつもりでいてください」
「ありがとうございます」

 だが、見た事も無い魔獣か。

 以前母さんが大怪我を負わされた魔獣も、情報を一切得る事ができなかったが、新種であるような話をしていた。

 いや、新種で間違いないと思っている。

 徐々に魔獣の動きが活発化しているのか?

 少し調べる必要があるかもしれないな。

 そう思いつつ、日々の業務を片付けるために自分の席に戻る。
 
 一方、依頼を出した冒険者についてはこの場にいても仕方がないので、一旦帰宅してもらう事になった。

 仲間を心配しつつも、自分ではこれ以上どうしようもない状態。

 歯がゆさと悔しさが混じった何とも言えない表情でギルドを後にしていた。

 そして、俺の今日の業務が終わる頃になり、No.5フュンフNo.8アハトと共に、少しだけ衰弱した様子の冒険者二人がギルドに戻ってきた。

「ジトロ副ギルドマスター補佐心得!依頼、達成です!!」
「ウフフフ、時間も丁度ですよね?このままお待ちしていますので、ご褒美をお願いします!!」

 くっ、こいつら、わざとこの時間を狙ってきたんじゃないだろうな。

 いや、この二人ならいくら衰弱している冒険者二人を引き連れていたとしても、その程度は造作もないはずだ。

 やられた!もう俺の財布の中身は風前の灯火。

 いや、今目の前にいる救助された冒険者二人よりも衰弱している状態なのに、まだ絞りつくすのか……

 君達は、依頼達成の金貨が入るでしょ?

 依頼の内容によって、依頼者が支払った金額からギルドが手数料をもらうが、今回は金貨三枚がこの二人に行くはずだ。

 金貨三枚。日本円で30万円。じゅる……

 いや、イカン。

 俺の無理な依頼を聞いてくれたのだから、やはりキチンとお礼をしないといけないな。

「わかりました。もう少しなので少々お待ちください。ところで、魔獣は確認されましたか?」
「いいえ、さんざん辺りを探したのですが、存在した形跡はあったのですが、見つける事はできませんでした」
「かなり遠くに逃げたか……ですね」

 ???この二人であれば、多少逃げても容易に追跡できるはずだ。

 しかも、少々言葉を濁しているという事は、この場で言えない何かがあるのだろう。

「わかりました。では、こちらが報酬の金貨三枚になります」

 この金貨三枚があれば、なんとか俺の財布も無事なのだが……と金貨に意識が言っていると、俺から金貨を受け取ったNo.8アハトは、救出した冒険者のポケットに、その金貨を誰にも気が付かれないように入れていた。

 もちろん、俺とNo.5フュンフは気が付いている。

 No.5フュンフの様子を見るに、二人とも納得した行動の様だ。

 良い娘達だ。

 救助された二人は、No.5フュンフNo.8アハト、そして俺達にお礼を言うと、無事の帰還を祈り続けているであろう仲間の元に帰って行った。

 良しわかった、これほど良い娘なのだから、俺も本気を出してやる。ここからが俺と財布の本当の闘いだ。かかってこい!!

 そして、いつもの店に着き、戦闘態勢になる。

 とはいえ、一方的にやられるだけなのだが……

 そういった気概と思ってくれ。

 俺達は個室に移動し、防音結界を張った上で話を始める。
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