96 / 214
リサへ新たな依頼(1)
しおりを挟む
リサはリベラ王国にのんびりと移動しつつ活動しており、依頼ではなく各町や村の為に無償で危険な魔物を始末して提供すると言った慈善作業を行っていたので、目的地への到着には相当時間がかかっていた。
ようやくリベラ王国のギルドに到着するリサ。
「お久しぶりです、ミューテルさん!」
「リサ様、ずいぶんと活躍されていると聞いていますよ。暫くはこのリベラ王国で活動されるのですか?」
「う~ん、まだそう決めているわけではないのですが……え?」
突然驚くリサを不思議そうに見ているミューテル。
実はリサだけに見えているロロが、ミューテルを激しく威嚇しているのだ。
「どうされました?リサ様」
ロロの事は見えないし声も聞こえないミューテルは、リサが挙動不審になったので不思議そうにしている。
「い、いいえ。ごめんなさい。長旅で疲れが出ちゃっているみたいです」
「そうですか。Aランカーと言っても人ですから、疲れはしますね。っと、その、お疲れの所非常に申し上げにくいのですが、実は高ランカーの方向けの依頼がありまして……今までは信頼に値する人がおらずに出せなかった依頼なのですが、リサ様であれと思いまして。本当にお疲れの所申し訳ありませんが、内容を確認いただけないでしょうか?」
「はい。わかりました」
ロロを完全に信用しているリサは、今までかなりお世話になっていたミューテルが見掛けや態度の通りの人物ではないと判断して、違和感がないようにロロに了解の意を示す為に誰にも見えないロロの頭を軽く二回ほど撫でる。
その態度に気が付く事もなく、ミューテルは一枚の紙を出しながら説明を始めた。
「実は、とある高貴なお方の護衛依頼なのです。立場を明かせない秘匿依頼であり、秘密を守れる信頼度、そして間違いなく安全を確保できる能力を両立している方への依頼です。場所はナスカ王国からこのリベラ王国まで。報酬は虹金貨一枚(1,000万円)、道中の宿泊、食事等の経費は依頼者持ちになっております。如何でしょうか?」
「……ナスカ王国ですか。“深淵の森”がある所ですね」
少し前にそこにいたとは言わないリサ。
軽く掴んでいる情報ではほぼ全ての民が避難してしまった、大好きな師匠の故郷。
「そうだ!それであれば師匠にお願いしてみてはいかがでしょうか?」
元ナスカ王国の王族であるクロイツと反する者であれば、この申し出は断ってくるはずと思い告げてみるリサ。
「確かにリサ様の仰る通りですが、もう久しくクロイツ様はリベラ王国には来られておりませんので、依頼の出しようがないのですよ」
「でも、ギルド間での連絡はできますよね?今もゼリア帝国のギルドに出入りしているはずですから、そちらに依頼書を回せば良いのではないでしょうか?」
「大変申し訳ありませんが、その方の移動先であるこの場所である、ここリベラ王国に対して出された秘匿依頼のために別のギルドには回せないのです」
「そうですか。う~ん。どうしようかな。そう言えばいつの間にかできていた弟弟子の“黒套のリージョ”さんにお願いするのも……って、リージョさんも今は師匠と同じでゼリア帝国をメインに活動しているのでしたね。えっと、この依頼ですが、少し考えさせて頂いても良いですか?」
「もちろんです。ですが、リサ様の他に安心してお願いできる実力を持った冒険者の方がいないのも事実。是非とも前向きに検討して頂けると助かります」
その日の夜……再びギルドにて……
「“白套のリサ”に依頼を出したわよ。受けるかどうかはわからないけれど、結構甘ちゃんの所があるから受けるでしょう。その間、あのお方の安全をしっかりと確保して頂戴!」
「承知しました」
黒ずくめの男は音もなく消えていく。
「これで商会長へ恩を売れるわね。フフ、あの無能の王子……ドレアだったかしら?素直にクロイツを認めていればこんな事にはならなかったのに。あ、でもクロイツは御し難いと会長が言っていたわね。まぁ今更どうでもいいわ」
闇の奴隷商幹部でありギルド受付でもあるミューテルは、今回リサが依頼を受ける事で商会長を助ける事に繋がり、自らの地位は盤石になると確信しながらギルドを後にする。
「なるほど……って、良くわかりませんが、これは師匠相談案件ですね。う~ん、悩みます。緊急事態と言う事で会いに行くのもありかもしれませんが、約束はSランカーになってから。良し、決めた!」
気配を絶って黒ずくめの男とミューテルの言葉を全て聞いていたリサは、クロイツに会えるようにする為と言う事を名目に、一度だけ気の乗らない依頼を受ける事にした。
Sランクになるための目に見える実績として、再びナスカ王国に出向いてSランクの魔獣と広く認知されたポイズナックを仕留める事にしたのだ。
「のんびりしてはいられないですね」
翌朝、ミューテルがいない事を見計らってナスカ王国の依頼を受注するリサ。
ナスカ王国のギルドは機能していないと聞いていたので、このリベラ王国で依頼の受注を行ったのだ。
ようやくリベラ王国のギルドに到着するリサ。
「お久しぶりです、ミューテルさん!」
「リサ様、ずいぶんと活躍されていると聞いていますよ。暫くはこのリベラ王国で活動されるのですか?」
「う~ん、まだそう決めているわけではないのですが……え?」
突然驚くリサを不思議そうに見ているミューテル。
実はリサだけに見えているロロが、ミューテルを激しく威嚇しているのだ。
「どうされました?リサ様」
ロロの事は見えないし声も聞こえないミューテルは、リサが挙動不審になったので不思議そうにしている。
「い、いいえ。ごめんなさい。長旅で疲れが出ちゃっているみたいです」
「そうですか。Aランカーと言っても人ですから、疲れはしますね。っと、その、お疲れの所非常に申し上げにくいのですが、実は高ランカーの方向けの依頼がありまして……今までは信頼に値する人がおらずに出せなかった依頼なのですが、リサ様であれと思いまして。本当にお疲れの所申し訳ありませんが、内容を確認いただけないでしょうか?」
「はい。わかりました」
ロロを完全に信用しているリサは、今までかなりお世話になっていたミューテルが見掛けや態度の通りの人物ではないと判断して、違和感がないようにロロに了解の意を示す為に誰にも見えないロロの頭を軽く二回ほど撫でる。
その態度に気が付く事もなく、ミューテルは一枚の紙を出しながら説明を始めた。
「実は、とある高貴なお方の護衛依頼なのです。立場を明かせない秘匿依頼であり、秘密を守れる信頼度、そして間違いなく安全を確保できる能力を両立している方への依頼です。場所はナスカ王国からこのリベラ王国まで。報酬は虹金貨一枚(1,000万円)、道中の宿泊、食事等の経費は依頼者持ちになっております。如何でしょうか?」
「……ナスカ王国ですか。“深淵の森”がある所ですね」
少し前にそこにいたとは言わないリサ。
軽く掴んでいる情報ではほぼ全ての民が避難してしまった、大好きな師匠の故郷。
「そうだ!それであれば師匠にお願いしてみてはいかがでしょうか?」
元ナスカ王国の王族であるクロイツと反する者であれば、この申し出は断ってくるはずと思い告げてみるリサ。
「確かにリサ様の仰る通りですが、もう久しくクロイツ様はリベラ王国には来られておりませんので、依頼の出しようがないのですよ」
「でも、ギルド間での連絡はできますよね?今もゼリア帝国のギルドに出入りしているはずですから、そちらに依頼書を回せば良いのではないでしょうか?」
「大変申し訳ありませんが、その方の移動先であるこの場所である、ここリベラ王国に対して出された秘匿依頼のために別のギルドには回せないのです」
「そうですか。う~ん。どうしようかな。そう言えばいつの間にかできていた弟弟子の“黒套のリージョ”さんにお願いするのも……って、リージョさんも今は師匠と同じでゼリア帝国をメインに活動しているのでしたね。えっと、この依頼ですが、少し考えさせて頂いても良いですか?」
「もちろんです。ですが、リサ様の他に安心してお願いできる実力を持った冒険者の方がいないのも事実。是非とも前向きに検討して頂けると助かります」
その日の夜……再びギルドにて……
「“白套のリサ”に依頼を出したわよ。受けるかどうかはわからないけれど、結構甘ちゃんの所があるから受けるでしょう。その間、あのお方の安全をしっかりと確保して頂戴!」
「承知しました」
黒ずくめの男は音もなく消えていく。
「これで商会長へ恩を売れるわね。フフ、あの無能の王子……ドレアだったかしら?素直にクロイツを認めていればこんな事にはならなかったのに。あ、でもクロイツは御し難いと会長が言っていたわね。まぁ今更どうでもいいわ」
闇の奴隷商幹部でありギルド受付でもあるミューテルは、今回リサが依頼を受ける事で商会長を助ける事に繋がり、自らの地位は盤石になると確信しながらギルドを後にする。
「なるほど……って、良くわかりませんが、これは師匠相談案件ですね。う~ん、悩みます。緊急事態と言う事で会いに行くのもありかもしれませんが、約束はSランカーになってから。良し、決めた!」
気配を絶って黒ずくめの男とミューテルの言葉を全て聞いていたリサは、クロイツに会えるようにする為と言う事を名目に、一度だけ気の乗らない依頼を受ける事にした。
Sランクになるための目に見える実績として、再びナスカ王国に出向いてSランクの魔獣と広く認知されたポイズナックを仕留める事にしたのだ。
「のんびりしてはいられないですね」
翌朝、ミューテルがいない事を見計らってナスカ王国の依頼を受注するリサ。
ナスカ王国のギルドは機能していないと聞いていたので、このリベラ王国で依頼の受注を行ったのだ。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。
勇者としての役割、与えられた力。
クラスメイトに協力的なお姫様。
しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。
突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。
そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。
なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ!
──王城ごと。
王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された!
そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。
何故元の世界に帰ってきてしまったのか?
そして何故か使えない魔法。
どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。
それを他所に内心あわてている生徒が一人。
それこそが磯貝章だった。
「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」
目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。
幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。
もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。
そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。
当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。
日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。
「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」
──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。
序章まで一挙公開。
翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。
序章 異世界転移【9/2〜】
一章 異世界クラセリア【9/3〜】
二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】
三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】
四章 新生活は異世界で【9/10〜】
五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】
六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】
七章 探索! 並行世界【9/19〜】
95部で第一部完とさせて貰ってます。
※9/24日まで毎日投稿されます。
※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。
おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。
勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。
ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
[R18] 18禁ゲームの世界に御招待! 王子とヤらなきゃゲームが進まない。そんなのお断りします。
ピエール
恋愛
R18 がっつりエロです。ご注意下さい
えーー!!
転生したら、いきなり推しと リアルセッ○スの真っ最中!!!
ここって、もしかしたら???
18禁PCゲーム ラブキャッスル[愛と欲望の宮廷]の世界
私って悪役令嬢のカトリーヌに転生しちゃってるの???
カトリーヌって•••、あの、淫乱の•••
マズイ、非常にマズイ、貞操の危機だ!!!
私、確か、彼氏とドライブ中に事故に遭い••••
異世界転生って事は、絶対彼氏も転生しているはず!
だって[ラノベ]ではそれがお約束!
彼を探して、一緒に こんな世界から逃げ出してやる!
カトリーヌの身体に、男達のイヤラシイ魔の手が伸びる。
果たして、主人公は、数々のエロイベントを乗り切る事が出来るのか?
ゲームはエンディングを迎える事が出来るのか?
そして、彼氏の行方は•••
攻略対象別 オムニバスエロです。
完結しておりますので最後までお楽しみいただけます。
(攻略対象に変態もいます。ご注意下さい)
【R18】僕の異世界転性記!【挿絵付】
サマヨエル
ファンタジー
【閲覧注意!】性的描写多数含みます。苦手な方はご遠慮ください。
ふと気がつくと見知らぬ場所で倒れていた少年。記憶の一切が無く、自分の名前すら思い出せない少年の本能は告げていた。ここは自分の居るべき世界ではない、異世界であると。
まるでゲームのような世界に胸を高める中ひょんなことから出現したステータスウィンドウには驚愕の一言が!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
特殊スキル:異世界転性
種族問わず。性交の数だけ自身のステータス上昇とスキル取得ができる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誰もがうらやむ異世界性活が幕を開ける!
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる