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リサへ新たな依頼(1)

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 リサはリベラ王国にのんびりと移動しつつ活動しており、依頼ではなく各町や村の為に無償で危険な魔物を始末して提供すると言った慈善作業を行っていたので、目的地への到着には相当時間がかかっていた。

 ようやくリベラ王国のギルドに到着するリサ。 

「お久しぶりです、ミューテルさん!」

「リサ様、ずいぶんと活躍されていると聞いていますよ。暫くはこのリベラ王国で活動されるのですか?」

「う~ん、まだそう決めているわけではないのですが……え?」

 突然驚くリサを不思議そうに見ているミューテル。

 実はリサだけに見えているロロが、ミューテルを激しく威嚇しているのだ。

「どうされました?リサ様」

 ロロの事は見えないし声も聞こえないミューテルは、リサが挙動不審になったので不思議そうにしている。

「い、いいえ。ごめんなさい。長旅で疲れが出ちゃっているみたいです」

「そうですか。Aランカーと言っても人ですから、疲れはしますね。っと、その、お疲れの所非常に申し上げにくいのですが、実は高ランカーの方向けの依頼がありまして……今までは信頼に値する人がおらずに出せなかった依頼なのですが、リサ様であれと思いまして。本当にお疲れの所申し訳ありませんが、内容を確認いただけないでしょうか?」

「はい。わかりました」

 ロロを完全に信用しているリサは、今までかなりお世話になっていたミューテルが見掛けや態度の通りの人物ではないと判断して、違和感がないようにロロに了解の意を示す為に誰にも見えないロロの頭を軽く二回ほど撫でる。

 その態度に気が付く事もなく、ミューテルは一枚の紙を出しながら説明を始めた。

「実は、とある高貴なお方の護衛依頼なのです。立場を明かせない秘匿依頼であり、秘密を守れる信頼度、そして間違いなく安全を確保できる能力を両立している方への依頼です。場所はナスカ王国からこのリベラ王国まで。報酬は虹金貨一枚(1,000万円)、道中の宿泊、食事等の経費は依頼者持ちになっております。如何でしょうか?」

「……ナスカ王国ですか。“深淵の森”がある所ですね」

 少し前にそこにいたとは言わないリサ。

 軽く掴んでいる情報ではほぼ全ての民が避難してしまった、大好きな師匠クロイツの故郷。

「そうだ!それであれば師匠クロイツにお願いしてみてはいかがでしょうか?」

 元ナスカ王国の王族であるクロイツと反する者であれば、この申し出は断ってくるはずと思い告げてみるリサ。

「確かにリサ様の仰る通りですが、もう久しくクロイツ様はリベラ王国には来られておりませんので、依頼の出しようがないのですよ」

「でも、ギルド間での連絡はできますよね?今もゼリア帝国のギルドに出入りしているはずですから、そちらに依頼書を回せば良いのではないでしょうか?」

「大変申し訳ありませんが、その方の移動先であるこの場所である、ここリベラ王国に対して出された秘匿依頼のために別のギルドには回せないのです」

「そうですか。う~ん。どうしようかな。そう言えばいつの間にかできていた弟弟子の“黒套のリージョ”さんにお願いするのも……って、リージョさんも今は師匠クロイツと同じでゼリア帝国をメインに活動しているのでしたね。えっと、この依頼ですが、少し考えさせて頂いても良いですか?」

「もちろんです。ですが、リサ様の他に安心してお願いできる実力を持った冒険者の方がいないのも事実。是非とも前向きに検討して頂けると助かります」

 その日の夜……再びギルドにて……

「“白套のリサ”に依頼を出したわよ。受けるかどうかはわからないけれど、結構甘ちゃんの所があるから受けるでしょう。その間、あのお方の安全をしっかりと確保して頂戴!」

「承知しました」

 黒ずくめの男は音もなく消えていく。

「これで商会長へ恩を売れるわね。フフ、あの無能の王子……ドレアだったかしら?素直にクロイツを認めていればこんな事にはならなかったのに。あ、でもクロイツは御し難いと会長が言っていたわね。まぁ今更どうでもいいわ」

 闇の奴隷商幹部でありギルド受付でもあるミューテルは、今回リサが依頼を受ける事で商会長を助ける事に繋がり、自らの地位は盤石になると確信しながらギルドを後にする。

「なるほど……って、良くわかりませんが、これは師匠クロイツ相談案件ですね。う~ん、悩みます。緊急事態と言う事で会いに行くのもありかもしれませんが、約束はSランカーになってから。良し、決めた!」

 気配を絶って黒ずくめの男とミューテルの言葉を全て聞いていたリサは、クロイツに会えるようにする為と言う事を名目に、一度だけ気の乗らない依頼を受ける事にした。

 Sランクになるための目に見える実績として、再びナスカ王国に出向いてSランクの魔獣と広く認知されたポイズナックを仕留める事にしたのだ。

「のんびりしてはいられないですね」

 翌朝、ミューテルがいない事を見計らってナスカ王国の依頼を受注するリサ。

 ナスカ王国のギルドは機能していないと聞いていたので、このリベラ王国で依頼の受注を行ったのだ。
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