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 想定以上の厚意を受けてしまい、アワアワする二人。

「お二人もそんな感じになるんですね。はい、どうぞ」

 あの移動中は短い時間だったが、どんな時でも冷静に行動できていた二人がワタワタしているのを見て楽しそうにしつつもカードを強引に渡す湯原セーギ

「城での食事もメイドに言っていただければ問題ありませんが、カードを持っていない人物、つまりお二人以外は入る事はできません。それと、一部鍵がかかっている部屋があります。そこは入れませんので、よろしくお願いします。その他の部屋は好きに使っていただいて問題ありませんよ。そうそう、大きな風呂や鍛錬できる場所もあります」

 流石にこのカード所持者であっても、相当な魔道具が置いてある部屋や素材の保管場所、更には湯原セーギ水野カーリの私室には入る事は出来ないのだが、それらはあの巨大な城のほんの一部に過ぎないので、たとえ城に住む事になったとしても全く気にならないレベルだ。

 未だ正気を取り戻していない二人だが、待っていては絶対に返却しようとするだろうと思っている湯原セーギは、護衛を引き連れてこの場を去って行く。

「セーギ様。やはりあのお二方はダンジョンマスターであるとご存じでしたね」

「確かにね。全然驚かなかったし、それはそうだろう……みたいな顔をしていたからね。やっぱりミズイチ達の観察眼は凄いよね」

 こうして城に入り、そこから最下層に戻るのだが……

「そう言えば、カーリ水野達はまだ戻らないの?」

セーギ湯原様。大変申し上げにくいのですが、チェー様によればハライチやレイン様も含めて未だに会が続いているそうです」

「そ、そう。そうなんだ。わかった、ありがとう。放置で良いよ。チェーには悪いけど、触らぬ神に祟りなし!」

 湯原セーギは、美智のダンジョンに到着した際に既に少し出来上がっていた朋美と神保の状態を見て、これは長くなりそうだと判断して逃げた自分を褒めている。

 最終的にはその日に水野カーリが戻ってくる事は無かったのだが、チェーによる定期連絡を受けてある意味問題ないと理解できていた湯原セーギは、この世界に来て初めて一人で寛いでいた。

 次の日の夕方に漸く戻ってきた水野カーリ一行はひどい有様で、回復はした様なのだが酒の匂いをまき散らしながら歩いている。

 どういうわけか三人の仲も相当良くなったようで、実はこの日の夜も、今度はハライチの代わりにミズイチを連れて女子会が開催されていた。

 開催場所は神保のダンジョンになっており、どうやら持ち回りで行うと言う事が決まっているらしい。

 時折強引に湯原セーギも拉致されるのだが、ある程度女性陣が出来上がった段階でスラエの力を借りて脱出している。

 どうにも恋バナが直接的になってきているので、正直湯原セーギとしてはいたたまれなくなっているのだ。

 一月経過した頃にはすっかり増築も完了し、コッタ帝国を出国したギルド職員一行も無事に番のダンジョンに到着する。

 無事とは言っても実際はチェーの分裂体が日々危険を取り除いていたからなのだが、馬車に乗っているトレアリナ一行は一月もの旅で一度として護衛の冒険者が活動しなかった旅であったのには驚いていた。

 番のダンジョンまで来るようになっている乗合馬車から降りてダンジョンに侵入すると、即座にヒカリがやってくる。

「お待ちしていました。トレアリナ様御一行ですね。どうぞこちらへ」

 豪華になっている建屋の中に案内されて、再び湯原セーギ水野カーリと面会し、そこからギルド支部としての活動が始まる。

 その後も女性陣が非常に姦しく楽しく過ごしていると、やがて各ダンジョンに直接飛べる転移魔方陣が存在すると言う事実が各地に浸透し、予想通りにそれならば……と、居住に費用が掛からず税もとられない番のダンジョン1階層の町に人々が殺到する。

 とある冒険者は番のダンジョンから淀島のダンジョンに向かい、そこで得た素材を近くのギルドで換金するのだが、殆どの冒険者が一旦番のダンジョンに戻って1階層の建屋にあるギルド支部で換金している。

 その結果は……ほぼ全てのダンジョンから得られる素材の納品がコッタ帝国のギルドに行く事になり、ラスリ王国は今以上に衰退の一途を辿る事になる。

 こうなると王族としての信頼度も失墜するのだが、貴族も同様に衰退を避けられない状態になる。

 ある者はお抱えの冒険者を近くのダンジョン、淀島のダンジョンに派遣して自らの領地にあるギルドに納品させるのだが、ラスリ王国のギルド全体が厳しい状況に陥ってしまっている為に買取価格は非常に低く、同じ場所で活動している番のダンジョンに居を移している冒険者達の話を聞いてその差に愕然とし、離反する者が増えて収入がさらに減ると言う悪循環に陥っている。

「忌々しい……岩本、三原、貴様らで減収分を補完しろ!休みがあると思うなよ!」

 貴族からの税収が落ち込んでいる国王としては、最後の頼みの綱とも言える召喚冒険者二人を使い潰すしか方法が残っていない。

 完全に奴隷契約が成立しているので、ミド・ラスリのこの命令によって二人の召喚冒険者は毎日淀島のダンジョンや、場合によってはコッタ帝国にある弦間のダンジョン、美智のダンジョン、神保のダンジョンに侵入させられる事になった。

 流石に番のダンジョンに侵入させては、マスター達の恐ろしさを自らも経験したミド・ラスリとしては、最後の手駒を失う可能性が高いと判断して侵入の命令をする事は無かった。

 二人の召喚冒険者はダンジョン侵入時には恐怖がよみがえり、どのダンジョンに侵入しても中層がせいぜいであり、各マスターは余裕を持って対応する事が出来ていた。
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