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通常のダンジョンは侵入者を拒めばダンジョンのレベル上昇が見込めず、その手法によってはやがて枯れる事になるのだが、湯原と水野のダンジョンに限って言えば内包魔力はビーによって得られるし、そもそもレベルは上限に達している。
その為素行の悪い者達まで一階層に住まわせるつもりはないので、環境変化(極)の設定で、不適格と判定された者は侵入できないように設定している。
今のところはダンジョン一階層から三階層での素行だけの判定としているので、他のダンジョン関連の魔物、召喚冒険者、場合によっては眷属も侵入する事は可能となっている。
全て無条件に除外してしまっては、仮に仲良くなろうとしている相手も拒絶する事になるのでそこは避けたかったし、そこまでの設定を行った前例がない事から、どのような影響があるのか不明な事から決定された。
ハライチとミズイチは、前例がない為のリスクについては納得しつつも少々この設定には安全上の問題から異を唱えていたのだが、召喚冒険者の朋美の話を持ち出したら渋々ではあるが納得してくれて、設定に同意したと言う経緯がある。
追い出された冒険者一行は当然周囲に当たり散らすのだが、多勢に無勢……これから移住しようとしている者達、移住を検討して中を覗こうとしている者達、余りの噂に調査の為に国家から派遣されている騎士達、そう言った者達によってボコボコにされて撤退して行った。
既に何かを隠すつもりがない湯原達なので噂は相当広がりを見せており、召喚冒険者、ダンジョンマスターにもその噂は届いている。
特にさんざんコケにされてダンジョンから撤収した岩本は、未だに最も近い村で周囲に迷惑を掛けながら生活していたので、嫌でも耳に入ってくる。
本来はダンジョンマスターを配下にして王都に凱旋しているはずだったのだが、出鼻をくじかれて嫌気がさして不貞腐れていた。
五階層侵入の証拠として収めた薬草やスクロールの報酬を受け取る約束…と言うよりも、勝手に期日を設定して去って行ったのだが、その指定日を大きく超えて漸くギルドに顔を出した岩本。
その強さもだが、極めて身勝手な素行を含めて相当噂になっており、一瞬でギルドの喧騒が静寂に包まれる。
……ツカツカ……
「俺が思うに、今から再度あの腐れダンジョンに行ってくるのが良いと見た。前回の報酬を寄越してもらおうか」
多少怯えの表情を見せる受付だが、岩本がこれからダンジョンに潜ると聞いてあからさまに安堵し、指定された報酬を渡す。
「チッ」
その態度に舌打ちをしつつも報酬をひったくって再び湯原と水野のダンジョンに向かう岩本だが、ダンジョンに現れる事は無く、村や王都でもその姿を見る事が無くなっていた。
村の人々は安堵して誰一人として岩本の心配をしている様子は見せなかいし、王都でも同じだ。
その行方は何処にあるかと言うと……
「で、俺に何の用かな?俺が思うに、アンタ達は相当出来そうだ。正直、俺一人じゃ分が悪いだろうな」
今迄の強気は鳴りを潜めている岩本の前にいるのは、淀嶋と水元。
岩本のレベルは43に対して、淀嶋のダンジョンレベルは47、水元のダンジョンレベルは46であり、各眷属も隠魔族の一体を覗いて岩本よりもレベルが高く、契約魔法を使えない事から自分よりも強いと嫌でも理解していたので、比較的大人しくしている。
あの日、村のギルドから忌々しいダンジョンに向かって疾走していた所、突然目の前に蜘蛛族と自然族が現れて捕縛され、気が付けば訳の分からない場所、草原の一角に連れ去られていたのだ。
「フオッ、物分かりがよさそうで何よりじゃ。のう?水元の」
「そうだよね。ここで変に敵対すれば、面倒だもんね」
この場にいる召喚者三人全てが金目・金髪であり、レベル40以上である事は確定している。
召喚冒険者である岩本は一人、対してどう見てもダンジョンマスター側である淀嶋と水元は二人である上、各眷属らしき魔物を従えているので、何をどうしようが岩本に勝機はない。
「アンタ達、俺が思うにひょっとして俺の存在がダンジョンの糧になると期待しているのかもしれないけど、それは無理だ」
ある程度事実を伝える事によって、自らの安全を確保しようとしている岩本。
「いやいや、僕達はそんなものを期待している訳じゃないよ。実はね、弦間のダンジョン!結構有名でしょ?」
「ん?俺が思うに、レベル60と公言していた様な」
「そうそう、それ!で、そいつがさ、僕達二人のダンジョンに攻撃を仕掛けてきている訳さ」
「おぬしも正直に話してくれた事じゃから、儂も腹を割って話そう。その弦間のダンジョンじゃが、実は儂達二人でも少々不利なのでの、戦力を確保するために動いておったのじゃ」
「で、君に白羽の矢が立ったってわけだよ。正直淀嶋ジィが言った通り、今のままでは弦間に対抗するのは厳しい。でも、そのまま放置すれば、その内君達にも矛先が向かうよ?だったら、選択肢は一つしかないと思うけど?」
淀嶋と水元が交互に岩本に事情を説明しているが、その中身は自分達にも敵わない様な岩本が現状を放置すれば、そのまま弦間の餌になると言っており、今共闘すれば弦間を倒せるから、協力すべきと迫っている。
もちろんメリットを提示する事も忘れる事は無かった。
その為素行の悪い者達まで一階層に住まわせるつもりはないので、環境変化(極)の設定で、不適格と判定された者は侵入できないように設定している。
今のところはダンジョン一階層から三階層での素行だけの判定としているので、他のダンジョン関連の魔物、召喚冒険者、場合によっては眷属も侵入する事は可能となっている。
全て無条件に除外してしまっては、仮に仲良くなろうとしている相手も拒絶する事になるのでそこは避けたかったし、そこまでの設定を行った前例がない事から、どのような影響があるのか不明な事から決定された。
ハライチとミズイチは、前例がない為のリスクについては納得しつつも少々この設定には安全上の問題から異を唱えていたのだが、召喚冒険者の朋美の話を持ち出したら渋々ではあるが納得してくれて、設定に同意したと言う経緯がある。
追い出された冒険者一行は当然周囲に当たり散らすのだが、多勢に無勢……これから移住しようとしている者達、移住を検討して中を覗こうとしている者達、余りの噂に調査の為に国家から派遣されている騎士達、そう言った者達によってボコボコにされて撤退して行った。
既に何かを隠すつもりがない湯原達なので噂は相当広がりを見せており、召喚冒険者、ダンジョンマスターにもその噂は届いている。
特にさんざんコケにされてダンジョンから撤収した岩本は、未だに最も近い村で周囲に迷惑を掛けながら生活していたので、嫌でも耳に入ってくる。
本来はダンジョンマスターを配下にして王都に凱旋しているはずだったのだが、出鼻をくじかれて嫌気がさして不貞腐れていた。
五階層侵入の証拠として収めた薬草やスクロールの報酬を受け取る約束…と言うよりも、勝手に期日を設定して去って行ったのだが、その指定日を大きく超えて漸くギルドに顔を出した岩本。
その強さもだが、極めて身勝手な素行を含めて相当噂になっており、一瞬でギルドの喧騒が静寂に包まれる。
……ツカツカ……
「俺が思うに、今から再度あの腐れダンジョンに行ってくるのが良いと見た。前回の報酬を寄越してもらおうか」
多少怯えの表情を見せる受付だが、岩本がこれからダンジョンに潜ると聞いてあからさまに安堵し、指定された報酬を渡す。
「チッ」
その態度に舌打ちをしつつも報酬をひったくって再び湯原と水野のダンジョンに向かう岩本だが、ダンジョンに現れる事は無く、村や王都でもその姿を見る事が無くなっていた。
村の人々は安堵して誰一人として岩本の心配をしている様子は見せなかいし、王都でも同じだ。
その行方は何処にあるかと言うと……
「で、俺に何の用かな?俺が思うに、アンタ達は相当出来そうだ。正直、俺一人じゃ分が悪いだろうな」
今迄の強気は鳴りを潜めている岩本の前にいるのは、淀嶋と水元。
岩本のレベルは43に対して、淀嶋のダンジョンレベルは47、水元のダンジョンレベルは46であり、各眷属も隠魔族の一体を覗いて岩本よりもレベルが高く、契約魔法を使えない事から自分よりも強いと嫌でも理解していたので、比較的大人しくしている。
あの日、村のギルドから忌々しいダンジョンに向かって疾走していた所、突然目の前に蜘蛛族と自然族が現れて捕縛され、気が付けば訳の分からない場所、草原の一角に連れ去られていたのだ。
「フオッ、物分かりがよさそうで何よりじゃ。のう?水元の」
「そうだよね。ここで変に敵対すれば、面倒だもんね」
この場にいる召喚者三人全てが金目・金髪であり、レベル40以上である事は確定している。
召喚冒険者である岩本は一人、対してどう見てもダンジョンマスター側である淀嶋と水元は二人である上、各眷属らしき魔物を従えているので、何をどうしようが岩本に勝機はない。
「アンタ達、俺が思うにひょっとして俺の存在がダンジョンの糧になると期待しているのかもしれないけど、それは無理だ」
ある程度事実を伝える事によって、自らの安全を確保しようとしている岩本。
「いやいや、僕達はそんなものを期待している訳じゃないよ。実はね、弦間のダンジョン!結構有名でしょ?」
「ん?俺が思うに、レベル60と公言していた様な」
「そうそう、それ!で、そいつがさ、僕達二人のダンジョンに攻撃を仕掛けてきている訳さ」
「おぬしも正直に話してくれた事じゃから、儂も腹を割って話そう。その弦間のダンジョンじゃが、実は儂達二人でも少々不利なのでの、戦力を確保するために動いておったのじゃ」
「で、君に白羽の矢が立ったってわけだよ。正直淀嶋ジィが言った通り、今のままでは弦間に対抗するのは厳しい。でも、そのまま放置すれば、その内君達にも矛先が向かうよ?だったら、選択肢は一つしかないと思うけど?」
淀嶋と水元が交互に岩本に事情を説明しているが、その中身は自分達にも敵わない様な岩本が現状を放置すれば、そのまま弦間の餌になると言っており、今共闘すれば弦間を倒せるから、協力すべきと迫っている。
もちろんメリットを提示する事も忘れる事は無かった。
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