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あまりにも早いチェーの到着に驚くイーシャとプリマ。
「チェーさん、凄いなの。私達、向こうの対処をしてくるなの。だからこっちをお願いなの!」
日も落ちてきたので、チェーをこの場に残して再び街道方面に向かうイーシャ、プリマとスラエ。
……バシン……
「おい、起きろ!テメー何寝てやがるんだよ!」
「うっ、悪い四宮。久しぶりに日光に当たったからだな」
四宮に文句を言われながら頭を叩かれて起こされる辰巳だが、実は四宮もついさっき起きた所だったりする。
辰巳の言う通り二人のダンジョンは階層を増やして少々の魔物を召喚する程度で、碌な設定が行われていない。
その為、昼・夜の設定や気温の設定も出来ていないので、無駄に張りぼてで豪華なコアルームが存在するだけで生活環境は劣悪なので、日の光を浴びて眠くなってしまうのは仕方がないだろう。
日が陰り少々寒くなってきたから起きた四宮と、四宮に起こされた辰巳は街道の様子を確認する。
「くそ、俺じゃあ見えねーよ。何か見えるか?辰巳」
「悪い。俺にも無理だ。魔物どもは……見えているみたいだな」
何とか個別の指示を出して、近くに人がいない場所で野営の準備を終えている者を探し出し、その者の近くに音を潜めて移動する二人。
その後ろを、更に音を立てずに付いて行くスラエとイーシャとプリマ。
随分と前にスラエの分裂体が魔物達にとりついているので、レベル99の力に物を言わせてレベル30程度の魔物程度は即消化が出来る力を持っており、直接取り付いているのだが、その存在すら四宮と辰巳だけではなく、それぞれの魔物にも察知されていない。
「ほぇ~、スラエさん、凄いなの」
「そうなの。これ程長時間取り付いても察知されていないなの!」
イーシャとプリマの心からの賞賛に無駄にプヨプヨしてしまうスラエだが、湯原と水野のダンジョンの仲間は全員がこのような雰囲気で過ごしているのが標準だ。
「あいつか!」
「漸く俺にも見えた。良し、予定通り四人だな。四宮と俺で二人ずつ……だな?」
「あぁ、そうだ。見た所……未だに火の周辺にいるのが護衛、テントに入ろうとしているのが商人か?ついでに荷物も頂いちまおう!」
後方に借り物の配下である狼型のレベル30ウルビア10体と、蟷螂型のレベル30のマンティス10体を引き連れながら小声で下種な話をしている四宮と辰巳。
「今襲うのはまだ早えーな。もう少し周囲の連中が寝静まってからだ。護衛が騒ぐと面倒だから、あの二人には各五体で相手をして、中の二人は各二体、残り六体は俺達の護衛だ」
比較的安全な街道脇でレベル30の魔物が護衛するには数が多い気はするが、不安な気持ちは辰巳も同じであり、黙って四宮の判断に従う。
「もう少しここで様子を見るぞ!」
「あぁ、わかった」
背後はレベル30が20体控えているので、全神経を前方の野営が行われている街道に向けられる。
レベル1であるダンジョンマスターであり、既に眷属もいなければ自らの召喚魔物もいないのだから仕方がないのだが、一度でも後方を目視で確認しておけば異常事態に気が付く事が出来ただろう。もちろん気が付いたから何かが出来るわけではないのだが……
既にスラエの分身体によって全てが音もなく一瞬で体を覆われた状態で消化されているので、シミの一つすら残さずに全魔物が消失している。
残っているのは、未だに気配を消し続けているイーシャとプリマ、そして既にこの場にいた自身の分裂体を取り込んでいるスラエだけだ。
待つ事一時間程度、何もやる事の無いこの世界では就寝は早いようで、一人の護衛が商人のテントとは別のテントに入った事を確認した四宮と辰巳。
「いよいよだ。一瞬であの焚火の前の男を始末出来れば後が楽だが……どうだ?」
意思疎通を図ろうと後方向き、つられて辰巳も後ろを見るのだが、見えているのは深い闇が見える森だけであり、マンティスとウルビアの姿はただの一体も見えないばかりか、その痕跡すら何もない。
無言で互いを見つめている四宮と辰巳だが、今のこの状況は逆に非常に危険な状態にあると認識する。
冒険者の最大の餌であるダンジョンマスターであるレベル1の自分達が、何故消えたか分からないが、魔物の護衛無しで二人も無防備な状態でここにいるのだ。
逆に魔物無しでいる事からダンジョンマスターと判断されない可能性はあるのだが、そうなると周辺に存在しているレベル2の鼠の魔物、チュートでさえ相手にできないので、どの道命の危険がある事には間違いはない。
「お、おいどうするんだよ!」
「クソッ。安全なのは、あの冒険者共に守ってもらう事だ。迷った商人の振りをして近づくか?」
容赦なく殺害し、荷物さえ強奪しようとした相手に対して見事な手のひら返しが出来る所も、四宮と辰巳のクズっぷりを良く表している。
「チェーさん、凄いなの。私達、向こうの対処をしてくるなの。だからこっちをお願いなの!」
日も落ちてきたので、チェーをこの場に残して再び街道方面に向かうイーシャ、プリマとスラエ。
……バシン……
「おい、起きろ!テメー何寝てやがるんだよ!」
「うっ、悪い四宮。久しぶりに日光に当たったからだな」
四宮に文句を言われながら頭を叩かれて起こされる辰巳だが、実は四宮もついさっき起きた所だったりする。
辰巳の言う通り二人のダンジョンは階層を増やして少々の魔物を召喚する程度で、碌な設定が行われていない。
その為、昼・夜の設定や気温の設定も出来ていないので、無駄に張りぼてで豪華なコアルームが存在するだけで生活環境は劣悪なので、日の光を浴びて眠くなってしまうのは仕方がないだろう。
日が陰り少々寒くなってきたから起きた四宮と、四宮に起こされた辰巳は街道の様子を確認する。
「くそ、俺じゃあ見えねーよ。何か見えるか?辰巳」
「悪い。俺にも無理だ。魔物どもは……見えているみたいだな」
何とか個別の指示を出して、近くに人がいない場所で野営の準備を終えている者を探し出し、その者の近くに音を潜めて移動する二人。
その後ろを、更に音を立てずに付いて行くスラエとイーシャとプリマ。
随分と前にスラエの分裂体が魔物達にとりついているので、レベル99の力に物を言わせてレベル30程度の魔物程度は即消化が出来る力を持っており、直接取り付いているのだが、その存在すら四宮と辰巳だけではなく、それぞれの魔物にも察知されていない。
「ほぇ~、スラエさん、凄いなの」
「そうなの。これ程長時間取り付いても察知されていないなの!」
イーシャとプリマの心からの賞賛に無駄にプヨプヨしてしまうスラエだが、湯原と水野のダンジョンの仲間は全員がこのような雰囲気で過ごしているのが標準だ。
「あいつか!」
「漸く俺にも見えた。良し、予定通り四人だな。四宮と俺で二人ずつ……だな?」
「あぁ、そうだ。見た所……未だに火の周辺にいるのが護衛、テントに入ろうとしているのが商人か?ついでに荷物も頂いちまおう!」
後方に借り物の配下である狼型のレベル30ウルビア10体と、蟷螂型のレベル30のマンティス10体を引き連れながら小声で下種な話をしている四宮と辰巳。
「今襲うのはまだ早えーな。もう少し周囲の連中が寝静まってからだ。護衛が騒ぐと面倒だから、あの二人には各五体で相手をして、中の二人は各二体、残り六体は俺達の護衛だ」
比較的安全な街道脇でレベル30の魔物が護衛するには数が多い気はするが、不安な気持ちは辰巳も同じであり、黙って四宮の判断に従う。
「もう少しここで様子を見るぞ!」
「あぁ、わかった」
背後はレベル30が20体控えているので、全神経を前方の野営が行われている街道に向けられる。
レベル1であるダンジョンマスターであり、既に眷属もいなければ自らの召喚魔物もいないのだから仕方がないのだが、一度でも後方を目視で確認しておけば異常事態に気が付く事が出来ただろう。もちろん気が付いたから何かが出来るわけではないのだが……
既にスラエの分身体によって全てが音もなく一瞬で体を覆われた状態で消化されているので、シミの一つすら残さずに全魔物が消失している。
残っているのは、未だに気配を消し続けているイーシャとプリマ、そして既にこの場にいた自身の分裂体を取り込んでいるスラエだけだ。
待つ事一時間程度、何もやる事の無いこの世界では就寝は早いようで、一人の護衛が商人のテントとは別のテントに入った事を確認した四宮と辰巳。
「いよいよだ。一瞬であの焚火の前の男を始末出来れば後が楽だが……どうだ?」
意思疎通を図ろうと後方向き、つられて辰巳も後ろを見るのだが、見えているのは深い闇が見える森だけであり、マンティスとウルビアの姿はただの一体も見えないばかりか、その痕跡すら何もない。
無言で互いを見つめている四宮と辰巳だが、今のこの状況は逆に非常に危険な状態にあると認識する。
冒険者の最大の餌であるダンジョンマスターであるレベル1の自分達が、何故消えたか分からないが、魔物の護衛無しで二人も無防備な状態でここにいるのだ。
逆に魔物無しでいる事からダンジョンマスターと判断されない可能性はあるのだが、そうなると周辺に存在しているレベル2の鼠の魔物、チュートでさえ相手にできないので、どの道命の危険がある事には間違いはない。
「お、おいどうするんだよ!」
「クソッ。安全なのは、あの冒険者共に守ってもらう事だ。迷った商人の振りをして近づくか?」
容赦なく殺害し、荷物さえ強奪しようとした相手に対して見事な手のひら返しが出来る所も、四宮と辰巳のクズっぷりを良く表している。
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