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一応寝る時には全員が各ダンジョンコアに戻ったのだが、ハライチに手を出すなとさりげなく水野から釘を刺されていた湯原。
もとよりそんなつもりは一切なかったのだが、その時の水野の背後には阿修羅のオーラが見えたような気がしたので、余計な事は言わずにいた。
翌朝、それぞれのコアルームではハライチとミズイチが活動を開始しており、メイドよろしく自発的に朝食の準備を終え、ダンジョンの構想案も地面に複数描かれていた。
これが最も<淫魔族>の力を有効に発揮できている時の彼女達の行動の一つなのだが、眷属を強制的に外して主従契約をするなどとは他のダンジョンマスターでは不可能だ。
そもそも、睡眠を必要としない者達に柔らかい寝床を準備する事自体、今迄どのダンジョンマスターすら実行する事は出来なかった。
これに近い環境にできたダンジョンマスターは過去に二人、この場にダンジョンを構えていた二人だが、ここまでできたのは歴史上初めての快挙だったりする。
「おはよう、皆。おっ、良い匂いがすると思ったら、悪いね。無理はしないように頼むよ?」
「はい。ありがとうございます、主様」
「「「「おはようございます(なの)!」」」」
そこに、同じように準備してくれたのであろう食事を持った水野、レイン、プリマがミズイチを伴って乱入してきた。
「あっ、やっぱりハライチちゃんもダンジョンの構想を考えてくれていたのですね。フフ、ミズイチちゃんと同じですね。ありがとうございます」
地面に描かれているダンジョンの構想を見て水野が感心していると、耳をピコピコさせながらプリマも口を開く。
「ミズイチさんは凄いなの。私はさっぱりわからないなの」
そのフォローなのか、デルとレインも続く。
「私達ではこれほどの知識はありませんので……カーリ様とセーギ様の安全につながるこの力、本当に感謝しています」
「レインの言う通りです。某を含めて皆、どちらかと言うと肉体派とでも言うのでしょうか、知識に対しては非常に弱い所がありますので」
水野のコアルームに残っているスラエを除いて全員が集合しているこの場で、再び昨晩のように無条件で褒められるハライチとミズイチ。
こうして朝食が始まったのだが、やはり話はダンジョンの話になる。
「で、レベル40になると長寿命になると言う恩恵を得られる。逆に言うと、そこに至れる者があまりいない……と言う事なんだよね?俺達は、魔物を二階層に保管・吸収していただけなのに、なんでこれ程レベルが上がったのか分からないんだ」
「そうですよね。冒険者さん達に手は出していませんし、おかしいですよね?」
今の時点で、湯原のダンジョンレベルは41、水野のレベルも40になっており、既に二人共長寿の証である金目金髪に変化している。
その説明を受けて何故これ程の力を得ていたのかを考えたのだが、知識が無い為に可能性すら思い浮かばなかった。
「主様。少々確認させて頂けますか?今までのダンジョンのレベルアップには、魔物を捕縛して二階層に幽閉、その後吸収。この作業のみと言う事で宜しいでしょうか?」
ハライチの問いに湯原と水野共に頷くと、<淫魔族>のハライチとミズイチは互いを見て頷いており、恐らく各自の知識による推測が正しいと確認したのだろう。
「では、推測にはなりますが、ほぼ間違いないと思います……一つ確認をさせて下さい。捕縛する際に、元より弱っていた魔物はおりましたでしょうか?」
これについては作業を行っている眷属達しか分からないが、代表してデルが回答する。
「……今確認した所、複数回瀕死の魔物が倒れているのを連れ帰った事があるようです」
その答えを聞き、再びハライチが説明を始める。
「わかりました。であれば、他のレベルの高いダンジョンマスターの眷属、または所属の魔物が瀕死の状態の所を連れ帰り、ダンジョンの糧にしたと言う事で間違いないでしょう。これ以外には考えられません」
「ハライチの説明の通りで、ここまでレベルが上がると言う事は、その相手……魔物か眷属かはわかりませんが、相当レベルが高かったはずです。当時の皆様では、申し訳ありませんが正面から行っては確実に返り討ちにされているレベルだと想定されます」
補足するように恐ろしい事をサラッと言うミズイチ。
「……でも、なんでそんな奴らが瀕死で?」
湯原の疑問は当然だ。
「セーギ様。この世界、召喚者の冒険者とダンジョンマスターは対極の存在と言われておりますが、ダンジョンマスター同士も敵になり得るのです。その時の瀕死の……眷属だと仮定しますが、眷属に止めを刺さなかったと言う事は、眷属を糧にする冒険者が相手ではないと言う事です。そして、その者よりも遥かにレベルが上であれば瀕死の眷属に止めを刺しても糧にはならない同じ位置にいる存在、他のダンジョンマスターの手先によるものだと判断できます」
「え?ミズイチちゃん。その……私達のレベルを大幅に上げてくれた眷属よりも、もっと上の存在が、同じ立場のダンジョンマスターを狙っていると言う事なの?」
不安そうになる水野。
「主様。とあるダンジョンマスターを狙っている他のダンジョンマスターがいると言う事は確実だと思います。申し訳ありません。皆様の安全に直結する事ですので、安易に楽観的な事を申し上げる訳にはまいりません」
もとよりそんなつもりは一切なかったのだが、その時の水野の背後には阿修羅のオーラが見えたような気がしたので、余計な事は言わずにいた。
翌朝、それぞれのコアルームではハライチとミズイチが活動を開始しており、メイドよろしく自発的に朝食の準備を終え、ダンジョンの構想案も地面に複数描かれていた。
これが最も<淫魔族>の力を有効に発揮できている時の彼女達の行動の一つなのだが、眷属を強制的に外して主従契約をするなどとは他のダンジョンマスターでは不可能だ。
そもそも、睡眠を必要としない者達に柔らかい寝床を準備する事自体、今迄どのダンジョンマスターすら実行する事は出来なかった。
これに近い環境にできたダンジョンマスターは過去に二人、この場にダンジョンを構えていた二人だが、ここまでできたのは歴史上初めての快挙だったりする。
「おはよう、皆。おっ、良い匂いがすると思ったら、悪いね。無理はしないように頼むよ?」
「はい。ありがとうございます、主様」
「「「「おはようございます(なの)!」」」」
そこに、同じように準備してくれたのであろう食事を持った水野、レイン、プリマがミズイチを伴って乱入してきた。
「あっ、やっぱりハライチちゃんもダンジョンの構想を考えてくれていたのですね。フフ、ミズイチちゃんと同じですね。ありがとうございます」
地面に描かれているダンジョンの構想を見て水野が感心していると、耳をピコピコさせながらプリマも口を開く。
「ミズイチさんは凄いなの。私はさっぱりわからないなの」
そのフォローなのか、デルとレインも続く。
「私達ではこれほどの知識はありませんので……カーリ様とセーギ様の安全につながるこの力、本当に感謝しています」
「レインの言う通りです。某を含めて皆、どちらかと言うと肉体派とでも言うのでしょうか、知識に対しては非常に弱い所がありますので」
水野のコアルームに残っているスラエを除いて全員が集合しているこの場で、再び昨晩のように無条件で褒められるハライチとミズイチ。
こうして朝食が始まったのだが、やはり話はダンジョンの話になる。
「で、レベル40になると長寿命になると言う恩恵を得られる。逆に言うと、そこに至れる者があまりいない……と言う事なんだよね?俺達は、魔物を二階層に保管・吸収していただけなのに、なんでこれ程レベルが上がったのか分からないんだ」
「そうですよね。冒険者さん達に手は出していませんし、おかしいですよね?」
今の時点で、湯原のダンジョンレベルは41、水野のレベルも40になっており、既に二人共長寿の証である金目金髪に変化している。
その説明を受けて何故これ程の力を得ていたのかを考えたのだが、知識が無い為に可能性すら思い浮かばなかった。
「主様。少々確認させて頂けますか?今までのダンジョンのレベルアップには、魔物を捕縛して二階層に幽閉、その後吸収。この作業のみと言う事で宜しいでしょうか?」
ハライチの問いに湯原と水野共に頷くと、<淫魔族>のハライチとミズイチは互いを見て頷いており、恐らく各自の知識による推測が正しいと確認したのだろう。
「では、推測にはなりますが、ほぼ間違いないと思います……一つ確認をさせて下さい。捕縛する際に、元より弱っていた魔物はおりましたでしょうか?」
これについては作業を行っている眷属達しか分からないが、代表してデルが回答する。
「……今確認した所、複数回瀕死の魔物が倒れているのを連れ帰った事があるようです」
その答えを聞き、再びハライチが説明を始める。
「わかりました。であれば、他のレベルの高いダンジョンマスターの眷属、または所属の魔物が瀕死の状態の所を連れ帰り、ダンジョンの糧にしたと言う事で間違いないでしょう。これ以外には考えられません」
「ハライチの説明の通りで、ここまでレベルが上がると言う事は、その相手……魔物か眷属かはわかりませんが、相当レベルが高かったはずです。当時の皆様では、申し訳ありませんが正面から行っては確実に返り討ちにされているレベルだと想定されます」
補足するように恐ろしい事をサラッと言うミズイチ。
「……でも、なんでそんな奴らが瀕死で?」
湯原の疑問は当然だ。
「セーギ様。この世界、召喚者の冒険者とダンジョンマスターは対極の存在と言われておりますが、ダンジョンマスター同士も敵になり得るのです。その時の瀕死の……眷属だと仮定しますが、眷属に止めを刺さなかったと言う事は、眷属を糧にする冒険者が相手ではないと言う事です。そして、その者よりも遥かにレベルが上であれば瀕死の眷属に止めを刺しても糧にはならない同じ位置にいる存在、他のダンジョンマスターの手先によるものだと判断できます」
「え?ミズイチちゃん。その……私達のレベルを大幅に上げてくれた眷属よりも、もっと上の存在が、同じ立場のダンジョンマスターを狙っていると言う事なの?」
不安そうになる水野。
「主様。とあるダンジョンマスターを狙っている他のダンジョンマスターがいると言う事は確実だと思います。申し訳ありません。皆様の安全に直結する事ですので、安易に楽観的な事を申し上げる訳にはまいりません」
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