32 / 159
(31)
しおりを挟む
デルの回答を聞いて、本当に一瞬だけ<淫魔族>がいれば……と思ってしまった湯原だが、こうして必死に自らの知識を伝えてきてくれている眷属達に申し訳ないと思い直す。
実はこの時点で眷属達とマスターとしての二人の信頼関係は成り立っており、<淫魔族>程ではないが、持ち得る知識を積極的に伝えているのだ。
「そうなると……立場がどうかを確認する必要がある訳だな……」
<猫獣人>も眷属召喚画面に有った事を思い出した湯原は、口元に手を置いて考え込むようなしぐさを見せる。
だが、今自分が唯一知っている人族以外の人型種族である<猫獣人>の二人は奴隷と言う環境にいて、年齢も有るのだろうが、完全に捨て駒にされていた。
仮に<属性族>や<魔人族>も同様の扱いが標準だとすると、おいそれと人里に連れて行けない事になる。
ブーン……
そこに、スラエとビーが躍り出る。と言うよりも、スラエがビーに咥えられて前に出た。
咥えられている個体はスラエが分裂した個体であり、ビーもいつの間にか数が増えている…‥のだが、本体は大きな黒目で、子供なのだろうか?新たに出現した個体は目が小さいので、直ぐに見分けはつく。
今回前に躍り出たのは、分裂個体だ。
「成程。二人が調査してきてくれるのか?」
ビーの本体がコクコクと頷き、スラエ本体もピョンピョン跳ねている。
「フフ、二人共無理しちゃダメですよ?」
水野の優しい声を聞くと、あっという間に飛び上がって二体は見えなくなった。
「ところでビー。早速巣を作って回復薬を作ってもらいたいのだが、出来るか?」
「そうですね。チェーちゃんは、イーシャちゃんとプリマちゃんの二人の傷を捕まえて、破壊できますか?」
ビーはコクコク頷くが、チェーは鎖の端部を持ち上げて、申し訳なさそうに横に振っている。
恐らくイーシャとプリマの怪我は、今のチェーのレベルで対応できない程の怪我なのだろう。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます、チェーちゃん。レベルが上がれば、出来る様になるのでしょう?」
鎖を激しく上下に動かすチェーを見て、どこが頭だか分からないが、鎖の先端部分を優しく撫でる水野だ。
「じゃあ、これからダンジョンをより安全に、快適にしていくわけだけど、俺とカーリが全く同じ変化だと、攻略する側も容易になりかねない。基本的な構想だけは共有するにしても、夫々別の育て方をした方が良いと思うんだ」
「某も、それが宜しいかと思います」
「私も賛成です。セーギ様」
二人の人型眷属の明確な肯定の意思を聞いて、水野も決断した。
「わかりました。時々相談に乗ってもらいますけど、頑張ります。レインちゃんも、サポートをお願いしますね?でも、暫くは大きな変化はさせないのですよね?」
またもや奇麗に一礼しているレインを見ながら、湯原は水野の意見に同意する。
「コアルームを変更するのはありだけど、階層を追加するとどうしてもダンジョンの変化に気が付かれる。もう少しレベルを上げて、ダンジョン防衛に必要な内包魔力も溜めないと危なくなるだろうな」
こうして新たな仲間を迎えて、夜になる。
再びダンジョン前に全員が集まっているのだが、どう見ても人と同じ食事ができない<鎖族>や<蜂族>、かろうじてスライムは消化できそうだが、どうするかを悩んでいる湯原と水野。
「我が主。我ら眷属はダンジョンから、ひいてはダンジョンマスターである我が主から養分を頂いておりますので、人族と同じような食事は不要でございます」
「デルの言う通りです。私達は食事や睡眠を必要としませんので、今晩からはイーシャ様とプリマ様もゆっくりとお休みになってください」
嬉しい誤算ではあるのだが、食べられる食事はみんなで楽しくしたいと言う気持ちがあるので、どうしようか悩む。
「そこは分かった。でも、仲間として共に活動したいと思っているから……そうだな、食べる事が出来れば食べて欲しいし、どうしても無理な場合は無理強いするのも違うから強制はしないけど、団らんって言うの?こうして集まる場には参加してほしいな。な?カーリ?」
「はい。皆で仲良くしたいです!」
この二人の言葉を聞いて、イーシャとプリマの二人はもとより、デルやレイン、そして人型ではない眷属のチェー、スラエ、スラビ、ビーでさえも嬉しさで涙が出そうだった。
こうしてこの日の夜は楽しく食事をして、各自がダンジョンに戻る前に内包魔力の使い方を話す。
「俺としては、いくら睡眠が必要ないと言っても、ゆっくりできる環境が大切だと思うんだ。人族のエゴかもしれないけど……もちろんビーとかスラビにとっても住みやすい環境に変えたいと思っている」
「そうですよね。私もそう思います!」
本当に恐縮している態度の眷属をよそに、さっさとコアルームの内装を修正する二人だ。
実はこの時点で眷属達とマスターとしての二人の信頼関係は成り立っており、<淫魔族>程ではないが、持ち得る知識を積極的に伝えているのだ。
「そうなると……立場がどうかを確認する必要がある訳だな……」
<猫獣人>も眷属召喚画面に有った事を思い出した湯原は、口元に手を置いて考え込むようなしぐさを見せる。
だが、今自分が唯一知っている人族以外の人型種族である<猫獣人>の二人は奴隷と言う環境にいて、年齢も有るのだろうが、完全に捨て駒にされていた。
仮に<属性族>や<魔人族>も同様の扱いが標準だとすると、おいそれと人里に連れて行けない事になる。
ブーン……
そこに、スラエとビーが躍り出る。と言うよりも、スラエがビーに咥えられて前に出た。
咥えられている個体はスラエが分裂した個体であり、ビーもいつの間にか数が増えている…‥のだが、本体は大きな黒目で、子供なのだろうか?新たに出現した個体は目が小さいので、直ぐに見分けはつく。
今回前に躍り出たのは、分裂個体だ。
「成程。二人が調査してきてくれるのか?」
ビーの本体がコクコクと頷き、スラエ本体もピョンピョン跳ねている。
「フフ、二人共無理しちゃダメですよ?」
水野の優しい声を聞くと、あっという間に飛び上がって二体は見えなくなった。
「ところでビー。早速巣を作って回復薬を作ってもらいたいのだが、出来るか?」
「そうですね。チェーちゃんは、イーシャちゃんとプリマちゃんの二人の傷を捕まえて、破壊できますか?」
ビーはコクコク頷くが、チェーは鎖の端部を持ち上げて、申し訳なさそうに横に振っている。
恐らくイーシャとプリマの怪我は、今のチェーのレベルで対応できない程の怪我なのだろう。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます、チェーちゃん。レベルが上がれば、出来る様になるのでしょう?」
鎖を激しく上下に動かすチェーを見て、どこが頭だか分からないが、鎖の先端部分を優しく撫でる水野だ。
「じゃあ、これからダンジョンをより安全に、快適にしていくわけだけど、俺とカーリが全く同じ変化だと、攻略する側も容易になりかねない。基本的な構想だけは共有するにしても、夫々別の育て方をした方が良いと思うんだ」
「某も、それが宜しいかと思います」
「私も賛成です。セーギ様」
二人の人型眷属の明確な肯定の意思を聞いて、水野も決断した。
「わかりました。時々相談に乗ってもらいますけど、頑張ります。レインちゃんも、サポートをお願いしますね?でも、暫くは大きな変化はさせないのですよね?」
またもや奇麗に一礼しているレインを見ながら、湯原は水野の意見に同意する。
「コアルームを変更するのはありだけど、階層を追加するとどうしてもダンジョンの変化に気が付かれる。もう少しレベルを上げて、ダンジョン防衛に必要な内包魔力も溜めないと危なくなるだろうな」
こうして新たな仲間を迎えて、夜になる。
再びダンジョン前に全員が集まっているのだが、どう見ても人と同じ食事ができない<鎖族>や<蜂族>、かろうじてスライムは消化できそうだが、どうするかを悩んでいる湯原と水野。
「我が主。我ら眷属はダンジョンから、ひいてはダンジョンマスターである我が主から養分を頂いておりますので、人族と同じような食事は不要でございます」
「デルの言う通りです。私達は食事や睡眠を必要としませんので、今晩からはイーシャ様とプリマ様もゆっくりとお休みになってください」
嬉しい誤算ではあるのだが、食べられる食事はみんなで楽しくしたいと言う気持ちがあるので、どうしようか悩む。
「そこは分かった。でも、仲間として共に活動したいと思っているから……そうだな、食べる事が出来れば食べて欲しいし、どうしても無理な場合は無理強いするのも違うから強制はしないけど、団らんって言うの?こうして集まる場には参加してほしいな。な?カーリ?」
「はい。皆で仲良くしたいです!」
この二人の言葉を聞いて、イーシャとプリマの二人はもとより、デルやレイン、そして人型ではない眷属のチェー、スラエ、スラビ、ビーでさえも嬉しさで涙が出そうだった。
こうしてこの日の夜は楽しく食事をして、各自がダンジョンに戻る前に内包魔力の使い方を話す。
「俺としては、いくら睡眠が必要ないと言っても、ゆっくりできる環境が大切だと思うんだ。人族のエゴかもしれないけど……もちろんビーとかスラビにとっても住みやすい環境に変えたいと思っている」
「そうですよね。私もそう思います!」
本当に恐縮している態度の眷属をよそに、さっさとコアルームの内装を修正する二人だ。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
【バーチャルドール:共通版①】導入(プロローグ&はじめてのレッスン)
[絵&小説] 愛楽優人 (創作実験室)
SF
■「バーチャルドール・プロジェクト」について
①「バーチャルドール」は、変身能力などを持つ女の子で、大勢の人間に好かれる事を目標にしています。
②「読者」はマスターとして、プロジェクトのお手伝いをする事になります。
③「プロジェクトの最高責任者のミコト」の思い付きで、人間に好かれるために様々な事をやっています。
――――――――――――――――
■ 作品について
(18禁作品が苦手な場合は、全年齢版だけでも話が成立するようになっています)
【バーチャルドール:共通版①】導入(プロローグ&はじめてのレッスン)
↓
【バーチャルドール:全年齢版①】レッスン構成(バーチャルドールと同棲生活)
↓
【バーチャルドール:18禁版①】レッスン構成(バーチャルドールとHなレッスン)
――――――――――――――――
■「個人サイト」と「投稿サイト」について
○「個人サイト」では、『文章作品以外』を公開しています。
○「投稿サイト(ここ)」では、『文章作品』を公開しています。
■個人サイト「バーチャルドール・プロジェクト」
https://create9812.blog.jp/archives/18333728.html
・
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
戦国魔法奇譚
結城健三
ファンタジー
異世界の冒険者が、1570年代の戦国時代に転移してしまう
武田信玄と徳川、織田の連合軍が戦う三方ヶ原 翌年病死するはずの武田信玄の病を治し
変わっていく歴史 しかし転移してきたのは、冒険者だけでは無かった!
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。
佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ!
実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・
ユニコーンに懐かれたのでダンジョン配信します……女装しないと言うこと聞いてくれないので、女装して。
あずももも
ファンタジー
【護られる系柚希姫なユズちゃん】【姫が男? 寝ぼけてんの?】【あの可愛さで声と話し方は中性的なのが、ぐっとくるよな】【天然でちょうちょすぎる】【ちょうちょ(物理】(視聴者の声より)
◆病気な母のために高校を休学し、バイトを掛け持ちする生活の星野柚希。髪が伸び切るほど忙しいある日、モンスターに襲われている小さな何かを助ける。懐かれたため飼うことにしたが、彼は知らない。それがSクラスモンスター、世界でも数体の目撃例な「ユニコーン」――「清らかな乙女にしか懐かない種族」の幼体だと。
◆「テイマー」スキルを持っていたと知った彼は、貧乏生活脱出のために一攫千金を目指してダンジョンに潜る。しかし女装した格好のままパーティーを組み、ついでに無自覚で配信していたため後戻りできず、さらにはユニコーンが「男子らしい格好」だと言うことを聞かないと知り、女装したまま配信をすることに。
◆「ユニコーンに約束された柚希姫」として一躍有名になったり、庭に出現したダンジョンでの生計も企んでみたらとんでもないことになったり、他のレアモンスターに懐かれたり、とんでもないことになったり、女の子たちからも「女子」として「男の娘」として懐かれたりなほのぼの系日常ときどき冒険譚です。
◆男の娘×ダンジョン配信&掲示板×もふもふです。主人公は元から中性的ですが、ユニコーンのスキルでより男の娘に。あと総受けです。
◆「ヘッドショットTSハルちゃん」https://kakuyomu.jp/works/16817330662854492372と同時連載・世界観はほぼ同じです。掲示板やコメントのノリも、なにもかも。男の娘とTSっ子なダンジョン配信ものをお楽しみくださいませ。
◆別サイト様でも連載しています。
◆ユズちゃんのサンプル画像→https://www.pixiv.net/artworks/116855601
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる