24 / 159
(23)
しおりを挟む
突然行動を停止した二人の猫獣人は、湯原と水野にこう告げる。
「カーリ様、セーギ様、あっちから魔物が来るの」
「こっちに退避した方が良いの」
何とこの二人、レベル1の二人では到底感知できない魔物の気配をいち早く感じ取り、更には安全にやり過ごせる対策まで提示して見せた。
「凄いじゃないか、イーシャ、プリマ。流石だ!」
想定していなかった力を見せつけられ、指示されている通りに動きながらも、小声で二人を心から褒め称える湯原。
「ご主人様を守るのは、私達の使命なの」
「こんなに優しいご主人様、絶対に失いたくないなの」
猫獣人の二人も湯原と水野に恩義を感じているらしく、奴隷契約をしていない状態でも主人と呼び、少しでも助けになる様に必死で小さな体を動かしている。
実際、魔物のレベルが2から3程度しか出現していなかったと聞いていた湯原だが、いくら日本で空手家として相当な強さを持っていたとしても、命のやり取り、更には人以外を相手にするとなると話は別だ。
相当な覚悟で進んでいたのだが、これでかなり楽をできるのではないかと安堵している。
その思いは正しく、森の中に入って方向が分からなくなっているのだが猫獣人の二人には関係ないらしく、夜も夜で、積極的に見張りをしてくれたのだ。
「今日はここが良いなの」
「魔物の匂いも気配もないなの」
日が落ち始めた頃、あぜ道から少々外れた位置に湯原と水野を誘導して野営場所を提案する。
すっかり二人の能力を信頼している湯原と水野は、もとより自分達ではどこが安全な場所なのかわかりようもないので、素直に提案を受け入れる。
「ありがとう、イーシャ、プリマ。助かるよ」
「二人は凄いですね。私には、気配が分かるなんて・・・・・・うーん、今目の前にいるのに、目を瞑ったら何もわかりません」
こうして四人は腰を下ろすが、火を起こす事は無い。
先日の野営時に、イーシャとプリマからこう言われたからだ。
「ご主人様。火は使わない方が良いなの。せっかく魔物の気配がないのに、火におびき寄せられてしまうかもなの」
少しずつではあるが、背負っている食料を消費して荷物を軽くしつつ過ごしている。
当然夜の見張りは交代にしており、時折魔物の気配を察知して移動する事は有っても、誰一人として怪我をする事なく順調に歩を進めていた。
脳内のカウントが“本日中”と言う何とも言えない状態になり、時間によるカウントダウンが始まった時には、四人の前には縁結びの聖地と言われている混沌の時代のダンジョン跡地が見えていた。
時折街道っぽいあぜ道から外れた時もあったが、これだけ進んでも他の人に一切会う事がなかったので、ダンジョン生成期限に間に合わなかった場合、適当な場所で生成するしかないと少々諦めていたところ、最高のタイミングで到着したのだ。
「漸く到着。とは言え、イーシャとプリマのおかげで相当楽が出来たよ。本当にありがとうな」
「「エヘヘなの」」
「カーリ様、セーギ様、あっちから魔物が来るの」
「こっちに退避した方が良いの」
何とこの二人、レベル1の二人では到底感知できない魔物の気配をいち早く感じ取り、更には安全にやり過ごせる対策まで提示して見せた。
「凄いじゃないか、イーシャ、プリマ。流石だ!」
想定していなかった力を見せつけられ、指示されている通りに動きながらも、小声で二人を心から褒め称える湯原。
「ご主人様を守るのは、私達の使命なの」
「こんなに優しいご主人様、絶対に失いたくないなの」
猫獣人の二人も湯原と水野に恩義を感じているらしく、奴隷契約をしていない状態でも主人と呼び、少しでも助けになる様に必死で小さな体を動かしている。
実際、魔物のレベルが2から3程度しか出現していなかったと聞いていた湯原だが、いくら日本で空手家として相当な強さを持っていたとしても、命のやり取り、更には人以外を相手にするとなると話は別だ。
相当な覚悟で進んでいたのだが、これでかなり楽をできるのではないかと安堵している。
その思いは正しく、森の中に入って方向が分からなくなっているのだが猫獣人の二人には関係ないらしく、夜も夜で、積極的に見張りをしてくれたのだ。
「今日はここが良いなの」
「魔物の匂いも気配もないなの」
日が落ち始めた頃、あぜ道から少々外れた位置に湯原と水野を誘導して野営場所を提案する。
すっかり二人の能力を信頼している湯原と水野は、もとより自分達ではどこが安全な場所なのかわかりようもないので、素直に提案を受け入れる。
「ありがとう、イーシャ、プリマ。助かるよ」
「二人は凄いですね。私には、気配が分かるなんて・・・・・・うーん、今目の前にいるのに、目を瞑ったら何もわかりません」
こうして四人は腰を下ろすが、火を起こす事は無い。
先日の野営時に、イーシャとプリマからこう言われたからだ。
「ご主人様。火は使わない方が良いなの。せっかく魔物の気配がないのに、火におびき寄せられてしまうかもなの」
少しずつではあるが、背負っている食料を消費して荷物を軽くしつつ過ごしている。
当然夜の見張りは交代にしており、時折魔物の気配を察知して移動する事は有っても、誰一人として怪我をする事なく順調に歩を進めていた。
脳内のカウントが“本日中”と言う何とも言えない状態になり、時間によるカウントダウンが始まった時には、四人の前には縁結びの聖地と言われている混沌の時代のダンジョン跡地が見えていた。
時折街道っぽいあぜ道から外れた時もあったが、これだけ進んでも他の人に一切会う事がなかったので、ダンジョン生成期限に間に合わなかった場合、適当な場所で生成するしかないと少々諦めていたところ、最高のタイミングで到着したのだ。
「漸く到着。とは言え、イーシャとプリマのおかげで相当楽が出来たよ。本当にありがとうな」
「「エヘヘなの」」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。
異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。
途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。
しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。
その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。
追放された美少女を助けた底辺おっさんが、実は元”特級冒険者”だった件について。
いちまる
ファンタジー
【毎週木曜日更新!】
採取クエストしか受けない地味なおっさん冒険者、ダンテ。
ある日彼は、ひょんなことからA級冒険者のパーティーを追放された猫耳族の少女、セレナとリンの面倒を見る羽目になってしまう。
最初は乗り気でなかったダンテだが、ふたりの夢を聞き、彼女達の力になると決意した。
――そして、『特級冒険者』としての実力を隠すのをやめた。
おっさんの正体は戦闘と殺戮のプロ!
しかも猫耳少女達も実は才能の塊だった!?
モンスターと悪党を物理でぶちのめす、王道冒険譚が始まる――!
※本作はカクヨム、小説家になろうでも掲載しています。
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
【バーチャルドール:共通版①】導入(プロローグ&はじめてのレッスン)
[絵&小説] 愛楽優人 (創作実験室)
SF
■「バーチャルドール・プロジェクト」について
①「バーチャルドール」は、変身能力などを持つ女の子で、大勢の人間に好かれる事を目標にしています。
②「読者」はマスターとして、プロジェクトのお手伝いをする事になります。
③「プロジェクトの最高責任者のミコト」の思い付きで、人間に好かれるために様々な事をやっています。
――――――――――――――――
■ 作品について
(18禁作品が苦手な場合は、全年齢版だけでも話が成立するようになっています)
【バーチャルドール:共通版①】導入(プロローグ&はじめてのレッスン)
↓
【バーチャルドール:全年齢版①】レッスン構成(バーチャルドールと同棲生活)
↓
【バーチャルドール:18禁版①】レッスン構成(バーチャルドールとHなレッスン)
――――――――――――――――
■「個人サイト」と「投稿サイト」について
○「個人サイト」では、『文章作品以外』を公開しています。
○「投稿サイト(ここ)」では、『文章作品』を公開しています。
■個人サイト「バーチャルドール・プロジェクト」
https://create9812.blog.jp/archives/18333728.html
・
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる