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198話

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 魔族のいろんな町でいい土地を譲ってもらえたのは、ビルシスさんだということがわかった。

 魔族領で最も権力を持っていたのがユルゲンス家だったみたい。

 全面協力に対しては【ぽよんぽよんリラックス】の特別招待券を送ることになった。

 これはセレナさんが考えた招待券で、通常予約以外でこちらの券があればいつでも自由に受けられる。各店にスライム達や従業員には余裕を持たせているので、すぐに対応できる。

 もちろん、もし招待券が被ったら少し待ってもらうことになるかもしれないけど、店内でスライム達と待っている時間も人気なので問題ないと思う。

 魔族領での【ぽよんぽよんリラックス】支店の開店が終わった。



 数日後。

 今日僕達が訪れたところは、大陸の南側にあるボロモロシア大荒野という地域。所属としてはバンガルシア帝国だけど、元々遊牧民が村を形成していた地域で、彼らは国を作らずにこうしてそれぞれ部族で作っている。

「今日は何しに来た!」

 多くの人が手斧を持って入口から僕達を睨む。

「お久しぶりです! 前回と同じく食べ物を持ってきました!」

「いらん! すぐに我らの地から出ていけ!」

 実はまだ仲良くなってなくて、こうして皆さんから嫌われている。

「え、えっと……一応帝国から許可は頂いていて……」

「くっ……貴様らはすぐにそれだ!」

「あはは……」

 皆さんは仕方なさそうに武器を下ろして僕達を村に入れてくれた。

 遊牧民だから普段から移動しているため、家は全部テント作りになっている。

 大人達から冷たい視線を浴びる中、部落の中で待っていたのは、子供と女性達だ。

「ワタルくん! いらっしゃい!」

 大荒野の太陽のような眩しい笑顔を浮かべて僕を迎えてくれる女の子は、ルナちゃんだ。

 前回来たときに部落の人達から僕達を身を挺して守ってくれた女の子で、和平派というべきか、みんなで仲良く過ごそうと思う子だ。

「ルナちゃん。今回も食べ物を持って来たからみんなで分けてね」

「ありがとう! ワタルくんが持って来てくれる食べ物はどれも美味しくて嬉しいよ!」

 喜んでくれたら僕も嬉しい。

 他の皆さんも「いつもありがとう」と優しく声を掛けてくれた。

「むう……」

「エレナちゃん? どうしたの?」

「ワタルって、ここに来るといつもニヤニヤしてる」

「え!? そ、そんなことはないと思うけど……」

 ずっとジト目で見つめるエレナちゃんが逃げるように、スライム達のところに向かう。

「うふふ~スライム達はひんやりして気持ちいいわね~」

 スライム達は男性よりも女性に大人気のようだ。

 他の町ではどちらかというと男性に大人気なのだが、これも生きている場所によるものかもしれないね。

「ワタルくんのところのスライム達はみんな優しいのね~」

 ルナちゃんのお母さんのルリナさんだ。

 どこかエリアナさんのような優しい雰囲気がして、とても話しやすい方だ。

「おばさん。皆さんはどうして大荒野から離れないのですか?」

 しばらく疑問に思っていたことをおばさんに聞いてみる。

「ワタルくんから不思議なのかしら?」

「不思議というか、大荒野って植物も育ちませんし、食材を獲るのも難しいと思いますからね。少し外に行けば自然豊かな森がありますから」

 部落からだと森は見えないけど、大荒野の外に森が広がっているのは彼らだって知っているはずだ。なのに、そちらにまったく近付こうとしない。

「私達が崇めている女神様はね。広大な海を統べる女神様なのよね」

「海ですか!? 意外……ですね?」

「そうね。そう思われても不思議ではないと思うわ。大荒野は海とはかけ離れているから。信じられるかわからないけど、この大荒野は元々海に繋がっていたとされているの」

「ここがですか!?」

「ええ。昔は広い湖があったみたいだわ。しかし……私達一族が愚かなことをしてしまい、女神様の怒りを買ってしまったとされていてね……私達はその罪を償うためにずっとこの地で住んでいるのよ」

「そ、そんな……あまりにも酷い話です! いくら女神様と言っても……みんなこんなに辛い環境で……」

「ふふっ。ありがとう。ワタルくん。外から来たのに見ず知らずの私達のために食べ物もくれたり心配してくれて、本当に心優しいのね。うふふ。うちのルナちゃんの旦那さんになってほしいくらいだわ!」

「だ、旦那さんですか!? あはは……」

 少し遠くからジト目で見つめるエレナちゃんが容易に想像できる。

 そんなことよりも、女神様の件がとても気になる。

 女神様は五柱存在しており、僕が会ったのは大地の女神ガイア様とネメシス様だ。

 他にも大空の女神ディオネ様、大山の女神レイア様、そして、今回話題に出た大海の女神はテティス様だ。

 今度ガイア様に……テティス様のことを聞いてみよう。

 できるなら彼らを許してもらって、自由な生活ができるようになったら嬉しい。

「そういえば、ワタルくんって、ドワーフ族には会ったかい?」

「ドワーフ族ですか!? いえ、初耳です」

「ふふっ。ここからずっと南に行った山脈。海と大陸を区切っている山脈の中に、鉱石と暮らすドワーフ族が住んでいるわ。ワタルくんのように自由に空を飛べるならきっと行けるんじゃないかしら?」

 エルフ族といえばドワーフ族。

 噂は聞いたことがあったけど、実際こうしてどこに住んでいるかなんて知らなかったのでちょうどいいのかもしれない。

「ありがとうございます! ドワーフ族のところに会いに行ってみます!」

「ええ。ワタルくんの優しさならドワーフ族とも仲良くできると思うわ」

 こうして次の目的地もできた。



――【宣伝】――
いつもぽよんぽよん生活を楽しんでいただきありがとうございます。
実は今月開催予定のファンタジーカップに参加致します。
そのため新作を始めたので、もしよろしければ読んでいただき応援していただけたら幸いです。
今回もぽよんぽよん生活のような心優しい物語をご期待ください!

タイトル:無能と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~
URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/297059684/523869096

よろしくお願いいたします。
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