74 / 88
連載
189話
しおりを挟む
森の中からアルトくんが高く跳び上がり、森を抜けた。
目の前には無数のハイエナたちがいる。
それと同時に離れた城壁の方で大きな爆発音が聞こえた。
どうやら、城壁の前で戦う鬼さんと謎の仮面さんが出陣した爆風のようだ。
城壁の上からは矢による攻撃と、エヴァさんたちの魔法の攻撃が続いている。
僕たちも自分たちができることをせいいっぱいやらなくちゃ……!
最初のハイエナの群れに突撃する前に、リアムさんが僕たちの隣にきた。
『ワタル殿! 【神獣共鳴】を!』
「はいっ!」
僕とリアムさんの間に線が繋がる。
するとリアムさんに大きな力が発動し、白い雷を放ち始めた。
リアムさんが先陣を切ってハイエナたちを一掃している間、僕はアルトくん、カミラさん、グレースさんにも【神獣共鳴】を繋いだ。
今までよりもずっと強くなったみんなは、一気に加速してハイエナたちの中を掻き分けていく。
「向こうに大きな魔物がいるよ!」
僕が指差した方向には、以前白狐族の里を襲った時の巨大ハイエナよりも大きく、邪悪そうな黒いオーラを灯らせた魔物が佇んでいた。
風貌は顔にたてがみが生えており、ハイエナではなくライオンのようなもので、体は全身四メートル超えてそうなくらい巨大だ。
僕たちに視線を向けた黒いライオンがその場から咆哮を上げる。
グルァアアアアアア!
音圧でハイエナが吹き飛び、こちらの全身を叩き付ける。
「くっ……」
『これは強いのだ……!』
「――――【専属武器防具召喚】。鋼鉄の盾!」
前方に巨大な盾を作って防ぐ。触れていなくても手を伸ばしておけば、消さずに存在を保てる。ただ、その間に他の武器を出したりできないし、片手を伸ばしておかないといけないけど。
咆哮が終わると、次はライオンが盾に体当たりをしてきた。
ゴーンと鈍い音が響いて、僕が作った鋼鉄の盾がべっこりと凹んで形を変えた。
「壊れる!」
みんながその場から遠ざかると同時に盾が壊れた。
鋭く赤い眼光が僕たちを睨みつける。
今まで戦ったどんな魔物よりも強い……! あの鎧巨人よりも強い気配がする。
グレースさんとカミラさんが左右に分かれて雷を放つが、ライオンには一切効かない。
エレナちゃんが放った矢が真っ赤な炎に燃え上がり、ライオンに当たると全身に炎が燃え移った。
反対側からはステラさんが放った光の槍がライオンの後ろに直撃する。
ライオンが痛そうに叫ぶと、全身から黒いエネルギー弾を大量に放つ。
空を黒い弾丸が埋め尽くし、一斉にカミラさんたちに向かって放たれた。
「アルトくん! 顔にお願い!」
『任された!』
加速したアルトくんの背中から慣性を使い高く跳び上がる。これは鎧巨人と戦った時にも使った共同作戦で、僕を高くに飛ばすためだ。
「――――超巨大雷撃槌!」
超巨大槌を空から振り下ろす。
ガコーンと鈍い音が響き渡る。
「っ!? 効かない!?」
『ワタルッ!』
超巨大雷撃槌から手を離して、下で待機してくれたアルトくんの所に戻る。
――――アルトくんの背中に乗った瞬間。
消えた超巨大槌の向こうから、ライオンが体当たりしてきて僕とアルトくん両方吹き飛ばされた。
当たる直前、叢雲で剣圧を放って弱めたからダメージはそう多くない。
一本の矢が空高く打ち上がり、キラリと光ってから無数の矢となりライオンに降り注ぐ。
ライオンは全く痛くなさそうだったが、次の瞬間、無数の白い雷がライオンに直撃する。
さっきは効かなかったのに、今度は効いたようで、痛そうに暴れ始めた。
「アルトくん……! 大丈夫!?」
『大丈夫……直前にワタルが助けてくれなかったら危なかった!』
「それはよかった!」
『さあ、二戦目だ~!』
「うん! 頑張ろう!」
またアルトくんの背中に乗ると、また疾走してくれる。
最初の雷は効かなかったのに、矢が刺さると雷が効く?
原因をじっくり観察する。絶対に秘密があるはずだ。
よくよく見ると――――矢が毛の隙間に刺さっている。
ん? 全身が普通の短い毛というより、長い毛に覆われている?
全身が黒くて気づかなかったけど、普通の毛並みとは違って、長く伸びた毛が体を覆っている。
まさか……!
「ワタルく~ん!」
グレースさんが近づいてきて、エレナちゃんが手を振る。
「魔物の身体を覆ってる毛が雷を効かなくさせるみたい!」
「やっぱり! 僕もそう思ったよ。でも僕の槌はどうして効かなかったんだろう?」
「横から見た感じ、槌が魔物に当たるまでに寸止めになってたよ?」
ん? 寸止め……?
エレナちゃんが放った一本の矢が顔面の前で――――弾かれた。
「「オーラ!」」
ライオンの体から出ている黒いオーラは毛以外を覆っており、それが鎧になっているんだ。
「ステラさんのあの魔法なら毛の中から大打撃を与えられそうだね」
「そうだね。ほら、もう準備してくれるよ!」
エレナちゃんが指差した方向では、倒れたふりをするカミラさんの後ろで、魔法を展開しているステラさんが見えた。
「よし。僕達はライオンの気を引こう!」
「うん!」
エレナちゃんと一緒にライオンに向かった。
目の前には無数のハイエナたちがいる。
それと同時に離れた城壁の方で大きな爆発音が聞こえた。
どうやら、城壁の前で戦う鬼さんと謎の仮面さんが出陣した爆風のようだ。
城壁の上からは矢による攻撃と、エヴァさんたちの魔法の攻撃が続いている。
僕たちも自分たちができることをせいいっぱいやらなくちゃ……!
最初のハイエナの群れに突撃する前に、リアムさんが僕たちの隣にきた。
『ワタル殿! 【神獣共鳴】を!』
「はいっ!」
僕とリアムさんの間に線が繋がる。
するとリアムさんに大きな力が発動し、白い雷を放ち始めた。
リアムさんが先陣を切ってハイエナたちを一掃している間、僕はアルトくん、カミラさん、グレースさんにも【神獣共鳴】を繋いだ。
今までよりもずっと強くなったみんなは、一気に加速してハイエナたちの中を掻き分けていく。
「向こうに大きな魔物がいるよ!」
僕が指差した方向には、以前白狐族の里を襲った時の巨大ハイエナよりも大きく、邪悪そうな黒いオーラを灯らせた魔物が佇んでいた。
風貌は顔にたてがみが生えており、ハイエナではなくライオンのようなもので、体は全身四メートル超えてそうなくらい巨大だ。
僕たちに視線を向けた黒いライオンがその場から咆哮を上げる。
グルァアアアアアア!
音圧でハイエナが吹き飛び、こちらの全身を叩き付ける。
「くっ……」
『これは強いのだ……!』
「――――【専属武器防具召喚】。鋼鉄の盾!」
前方に巨大な盾を作って防ぐ。触れていなくても手を伸ばしておけば、消さずに存在を保てる。ただ、その間に他の武器を出したりできないし、片手を伸ばしておかないといけないけど。
咆哮が終わると、次はライオンが盾に体当たりをしてきた。
ゴーンと鈍い音が響いて、僕が作った鋼鉄の盾がべっこりと凹んで形を変えた。
「壊れる!」
みんながその場から遠ざかると同時に盾が壊れた。
鋭く赤い眼光が僕たちを睨みつける。
今まで戦ったどんな魔物よりも強い……! あの鎧巨人よりも強い気配がする。
グレースさんとカミラさんが左右に分かれて雷を放つが、ライオンには一切効かない。
エレナちゃんが放った矢が真っ赤な炎に燃え上がり、ライオンに当たると全身に炎が燃え移った。
反対側からはステラさんが放った光の槍がライオンの後ろに直撃する。
ライオンが痛そうに叫ぶと、全身から黒いエネルギー弾を大量に放つ。
空を黒い弾丸が埋め尽くし、一斉にカミラさんたちに向かって放たれた。
「アルトくん! 顔にお願い!」
『任された!』
加速したアルトくんの背中から慣性を使い高く跳び上がる。これは鎧巨人と戦った時にも使った共同作戦で、僕を高くに飛ばすためだ。
「――――超巨大雷撃槌!」
超巨大槌を空から振り下ろす。
ガコーンと鈍い音が響き渡る。
「っ!? 効かない!?」
『ワタルッ!』
超巨大雷撃槌から手を離して、下で待機してくれたアルトくんの所に戻る。
――――アルトくんの背中に乗った瞬間。
消えた超巨大槌の向こうから、ライオンが体当たりしてきて僕とアルトくん両方吹き飛ばされた。
当たる直前、叢雲で剣圧を放って弱めたからダメージはそう多くない。
一本の矢が空高く打ち上がり、キラリと光ってから無数の矢となりライオンに降り注ぐ。
ライオンは全く痛くなさそうだったが、次の瞬間、無数の白い雷がライオンに直撃する。
さっきは効かなかったのに、今度は効いたようで、痛そうに暴れ始めた。
「アルトくん……! 大丈夫!?」
『大丈夫……直前にワタルが助けてくれなかったら危なかった!』
「それはよかった!」
『さあ、二戦目だ~!』
「うん! 頑張ろう!」
またアルトくんの背中に乗ると、また疾走してくれる。
最初の雷は効かなかったのに、矢が刺さると雷が効く?
原因をじっくり観察する。絶対に秘密があるはずだ。
よくよく見ると――――矢が毛の隙間に刺さっている。
ん? 全身が普通の短い毛というより、長い毛に覆われている?
全身が黒くて気づかなかったけど、普通の毛並みとは違って、長く伸びた毛が体を覆っている。
まさか……!
「ワタルく~ん!」
グレースさんが近づいてきて、エレナちゃんが手を振る。
「魔物の身体を覆ってる毛が雷を効かなくさせるみたい!」
「やっぱり! 僕もそう思ったよ。でも僕の槌はどうして効かなかったんだろう?」
「横から見た感じ、槌が魔物に当たるまでに寸止めになってたよ?」
ん? 寸止め……?
エレナちゃんが放った一本の矢が顔面の前で――――弾かれた。
「「オーラ!」」
ライオンの体から出ている黒いオーラは毛以外を覆っており、それが鎧になっているんだ。
「ステラさんのあの魔法なら毛の中から大打撃を与えられそうだね」
「そうだね。ほら、もう準備してくれるよ!」
エレナちゃんが指差した方向では、倒れたふりをするカミラさんの後ろで、魔法を展開しているステラさんが見えた。
「よし。僕達はライオンの気を引こう!」
「うん!」
エレナちゃんと一緒にライオンに向かった。
103
お気に入りに追加
4,857
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。