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188話

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「ワタルくん!? どうしたの?」
 
「山の向こうから――――大勢の敵が流れてきます!」
 
 僕が指差すのは、魔族の元凶たちがいる方向だ。
 
 遥か遠くから――――黒い波・・・がこちらに向かって流れてくるのが見える。
 
「あれは……?」
 
 遠くだから正確には見えないけど、雰囲気からして、白狐の里を襲っていたハイエナたちの姿や色に非常に似ている。里の前で戦いを繰り広げていた光景を思い出した。
 
「あれは聖なる力でしか倒せない魔物です!」
 
「もしかして白狐里を襲っていたという?」
 
「そうです! このままでは王都が飲み込まれてしまいます! 急がないと……!」
 
 エヴァさんは目を瞑って何かを考え込んだ。
 
「ワタルくん。今すぐ私達を受け入れてもらえるようにフェアラート王を説得してくれる? 私はみんなに事情を伝えて準備しておくわ」
 
「エヴァさん……分かりました!」
 
「じゃあ、お願いね!」
 
 エヴァさんはまた大型鳥を召喚して魔族陣営に戻っていく。
 
 僕も離れた場所で待機しているフェアラート王様の下に急いだ。
 
 
 
 城壁からは遠くの景色が黒く染まっているのが見えた。
 
「フェアラート王様! 急いで魔族を受け入れてはもらえませんか?」
 
「魔族を……?」
 
「はい。あの魔物達は聖なる力がないと倒せなくて、コテツと僕の力だけで全部倒すには時間がかかります。ここは魔族と協力するべきだと思います!」
 
「…………」
 
 王様が僕の目をじっと見つめてくる。
 
「魔族が我らを嵌めたのなら、とっくの昔に滅ぼしていただろう……その提案を受け入れよう」
 
「ありがとうございます!」
 
 急ぎ足で王様と一緒に城壁に向かって歩く。
 
 その前に城の広場を通りかかった時、ベルド様と若い騎士さんがまだ剣をぶつけ合っていた。
 
「ベルド様! 大変なことになりました!」
 
 二人の間に割り込む。
 
「むっ!? どうしたんじゃ?」
 
「遠くから魔物軍団がやってきています。このままだと王都が飲み込まれてしまいます!」
 
「なんだと!?」
 
「いま、王様にも協力していただいて、魔族を受け入れてもらいます」
 
 ベルド様が王様に向けると、その場で跪いた。
 
「陛下。お久しぶりでございます」
 
「ベルド……久しいな。すまぬが、これからの王国軍をもう一度牽いてもらえるか?」
 
「…………はっ! 命とあらば、このベルド、命尽きるまで遂行致します……!」
 
「騎士レイナード。其方もベルドと共に軍を再編してほしい」
 
「ははっ!」
 
 ベルド様と戦っていた騎士さんも王様に跪いて声を上げた。
 
 それから僕達は急いで入口にきて、魔族との戦いを止めた。
 
 エヴァさんが魔族軍を連れて王都の中に入ってくる。
 
 大勢の兵士や住民が不安そうに見つめる中、僕達は急いで王都の北を目指す。
 
 城の北の城壁に兵と魔族が並ぶ。
 
 そこから見えるのは、大地を埋める黒い波。白狐里を襲ったハイエナの魔物達だ。
 
「みなさん! 聞いてください! あの魔物は倒してもまた復活します! 倒したからといって絶対に油断しないでください! 後方に率いる魔物がいて、それを倒せばもう復活できなくなります! そちらは僕が何とかしますので、みなさんはここが突破しないように耐えてください!」
 
 僕の言葉に割れんばかりの声が上がった。
 
 防衛はフェアラート王国軍と魔族軍の連合軍。
 
 後ろにいるはずの巨大ハイエナ魔物を狙うのは、僕とコテツ、エレナちゃん、ステラさん、アルトくん、カミラさん、リアムさん、グレースさん。
 
 僕はアルトくん、エレナちゃんはグレースさん、ステラさんはカミラさんの上に乗る。
 
「では僕達も行きましょう!」
 
『任せなさい~!』
 
 カミラさんが上げた声と共に、みんなが一斉に走り出す。
 
 城壁から真っすぐ下りて、黒い波を迂回する形で遠くに回っていく。
 
 城の北側に広がる平原が黒い波で埋め尽くされているが、そこから西側に広がっている森の方には、ハイエナたちもいないようで、最初にそこを目指す。
 
 一気に森の中に入り、駆け抜ける。
 
 木々で遠くは見えないけれど、ハイエナたちの進行に大地が揺れる。
 
「ワタルくん……! みんなを信じよう!」
 
 僕が心配そうにハイエナたちに視線を向けていたからか、エレナちゃんが声をかけてくれる。
 
「うん! いまは僕達がやるべきことをやらないとね……! ありがとう、エレナちゃん」
 
 エレナちゃんは笑みを浮かべて「うん!」と大きく頷いてくれた。
 
 そして、僕達は一気に森を抜けて、ハイエナたちの後方を目指した。
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