上 下
53 / 86
連載

168話

しおりを挟む
 エデンソ王国での打ち合わせも終わり、次の目的地の聖都に向かう。

 真っすぐ向かうとアルフヘイム国の上空を通ることになるので、それを避けるために遠回りして西に向かう。

 アルフヘイム国の象徴、聖樹ユグドラシルがどんどん遠くなっていく。

「ワタル。アルフヘイム国に行きたいの?」

「うん。あの国には聖痕というものがあって、使わせてもらいたい聖痕があって」

「そっか。でも大丈夫! マテオさんならすぐに解決してくれるよ」

 エレナちゃんの曇り一つない笑顔に少しだけ心配が和らいだ。

 僕達を乗せたユートピア号は、すぐに聖都に辿り着いた。



 聖都に着いてすぐにエレノアさんに迎え入れられて、昼食を取ることになった。

 長いテーブルに僕達と一緒に多くの聖職者さん達が座った。

 運ばれた食事は決して豪華ではないが、どれも美味しそうなものばかりで、匂いだけでお腹が鳴るほどだ。

 みなさんに行き渡って、教皇様の祈りのあと、食事会が始まった。

 もっと静粛な状態で食べるのかと思いきや、意外にもみんなさん楽しそうに談義をしながら食事を取った。

「ワタル様」

「うわっ!? エレノアさん?」

「天ちゃんがワタル様に会いたいって」

 無表情のまま僕にスライムを押し付けてくるエレノアさん。

 彼女を守るために進化した天使スライムだ。

 どうやら名前は天ちゃんになったみたいだ。

 まだ離れて一日しか経ってないけど、またいつ会えるか分からないので天ちゃんを抱っこして撫でてあげる。

 それを見たステラさんの天使スライムも僕に向かって飛んできた。

 二匹の天使スライムをなでなでしていると、隣から猫スライムとフウちゃんも参戦してきた。

 四匹のスライムに揉まれながら、楽しい食事会を終えた。

「魔物の中でもスライムだけは誰にも懐かないと有名なのに、これだけスライム達に慕われているワタル様は、綺麗な魂を持つ証拠でありますな」

「教皇様? そうなんですか?」

「ええ。実はここだけの秘密ですが、教皇と聖女だけが見ることを許されている聖書がございまして、そこにはスライムとは聖なる魔物と記されています。スライムは魔物の中でも唯一無害で誰も傷つけない魔物です。代わりに誰にも懐かないと有名ですから」

 そうだったんだ……てっきり最弱魔物として放置されていたんだと思った。

 天ちゃん達と猫スライムに揉まれていたのが悔しかったのか、フウちゃんはいつにも増して僕に甘えている。

 ぽよんぽよんした体はとても触り心地が良くて、もし誰かに懐いたなら【ぽよんぽよんリラックス】を先にやっていてもおかしくないと思う。

 まあ、テイム数の差はあるかも知れないけど。

 聖都での【ぽよんぽよんリラックス】は、教皇様自ら指揮してくださり、聖堂のすぐ隣に空いた建物を利用するとのことだ。

 すぐにセレナさんと、担当となった枢機卿すうききょう様と話し合いを重ねる。

 僕はエレナちゃんとステラさん、エレノアさんと共に聖都の市街に向かった。
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。