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164話
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魔族領の空の旅は、人族の空の旅とは少し異なり、意外にも空飛ぶ魔物がちょくちょく見えていた。
こちらを襲ってくるとかはなかったので戦闘にはならなかったけど、もし戦闘になった場合はユートピア号に搭載されている砲台が火を噴くことになる。
できるならユートピア号の砲台は一生使わないでおきたいものだ。
地上の景色も生えている植物が人族の国々とは違ったり、街の作りも違っていてとても新鮮だ。
リオくん達が住むグライン街を越えて次の大きな街をもう一つ越えた先に進むと、遠くに魔族領で最も巨大な街が現れた。
山の麓に作られていて、山の部分に大きなお城が作られている街だった。
「あそこが魔都エラングシアよ。大きいでしょう?」
「はい! 凄く大きいですね。やっぱり魔王領の一番の街ですね」
「そうね。ただ、あそこが一番大きい理由は、繁栄したから――――ではないの。人族の街から最も遠い街に多くの戦えない魔族が住んでいるためよ」
昔から人族と何度も戦ってきた魔族ならではの理由があったんだ。
やっぱり平和を求める魔族も数多くいるみたいで、とても嬉しく思う。
僕達を乗せたユートピア号は、数十分もしないうちに魔都エラングシアに辿り着いた。
◆
魔都の前に着いてすぐにやってきた魔族にエヴァさんが嬉しそうに手を振ると、みなさんがその場で跪く。
「みんな! ただいま~!」
「おかえりなさいませ!」
一番前にいる執事服を着たデモン族だけが声を上げた。
「エラングシアの様子はどう? スレイン」
執事デモン族のスレインさん。以前勇者によって大ケガを負った魔族軍の指揮を執っていた方だ。
「全く問題ありません。ここまでエヴァ様と英雄殿の噂が聞こえております」
「お久しぶりです」
僕も挨拶すると笑顔で軽く頭を下げてくれた。
魔都のみなさんが待っているからと、玄関口からエヴァさんと共に中に入っていく。
エヴァさんはカミラさんの背中に乗り、僕とエレナちゃんはアルトくんの背中に乗って、一緒に魔王城までパレードを行う。
多くの魔族が出迎えてくれて歓声を上げる。
それくらいエヴァさんが全ての魔族から愛されているのが分かる。
エヴァさんと一緒に僕とエレナちゃんもみなさんに向かって手を振る。
ゆっくりと魔王城に繋がっている大通りを通って、魔王城に入って行った。
魔王城は僕が想像していたような禍々しい雰囲気ではなく、どちらかというと美しく綺麗な印象だ。
並んでいる魔族のみなさんもメイド服や執事服を身に纏っていたり、兵士さんもたくさんいた。
お城の庭を通りながら色んな場所をエヴァさんから直接教えてもらいながら、魔王の間に入った。
とても神々しい雰囲気に圧倒されながら中に入る。
エヴァさんが真っすぐ玉座に座り、僕達を見つめた。
「ようこそ。魔王城へ」
「わあ~エヴァお姉ちゃん、魔王様っぽい~!」
「いや、本当の魔王様だよ!?」
「あっ! そうだった!」
いつも一緒にいるからたまに忘れがちだけど、エヴァさんはれっきとした魔王様だ。
「ふふっ。今日ここに来て貰ったのは他でもなく、魔族の貴族達にワタルくんを紹介しておこうかなと思って。それに人族との件も伝えたいからね」
スレインさんが手配してくれたのか、ほどなくして何人もの魔族さんがやってきた。
デモン族だけでなく、色んな種族の魔族さんがエヴァさんの前に跪いた。
「みんなの者。急に集まって貰ってすまなかったな。ひとまず顔を上げてくれ」
「「「ははっ!」」」
みんなが立ち上がると、エヴァさんを見つめる。
エヴァさんの前に立つ魔族は、計二十人。
そこで気になるのが、中で三人だけがエヴァさんにあまり良くない視線を送っている。
「こちらは人族との戦争を一時休戦に持ち込んでくれた英雄、ワタル殿だ」
「は、初めまして……」
ペコリと挨拶だけする。
みなさん、とても温かい眼差しで見てくれるけど、やっぱり三人だけは少し威圧的な視線だ。
「それと、正式に人族の代表たちと話し合いを終えた。その結果をこれから話そうと思う。それによって、これから我々魔族は人族との――――戦いとなる。ただし、戦うのはあくまでフェアラート王国のみ。かの王国が人族の中でも唯一魔族と戦いたいと勇者を持ち上げて戦争を起こしたそうだ」
「陛下」
エヴァさんと僕に睨みを利かせていた魔族の一人が声を上げた。
「ユルゲンス卿。どうした」
「お言葉ですが、それは人族の嘘ではありませんか? このままフェアラート王国にだけ責任を押し付けているかも知れません」
なるほど……彼らは、戦争をやめたくないんだ。それに…………僕は彼らを見たことがない。つまり、彼らは戦いたいんじゃなく、エヴァさんのことを…………。
「もしそれで人族が魔族領を攻めてきて犠牲が出たら……どうなさるつもりで?」
「その時は、私が責任を取るつもりよ」
「…………かしこまりました」
意外にも早い決着に驚く中、明日のためにもすぐに帰ることになった。
スレインさんに事情を全て説明していたから、魔王の間で間に集めた人材を乗せてシェーン街に戻って行った。
こちらを襲ってくるとかはなかったので戦闘にはならなかったけど、もし戦闘になった場合はユートピア号に搭載されている砲台が火を噴くことになる。
できるならユートピア号の砲台は一生使わないでおきたいものだ。
地上の景色も生えている植物が人族の国々とは違ったり、街の作りも違っていてとても新鮮だ。
リオくん達が住むグライン街を越えて次の大きな街をもう一つ越えた先に進むと、遠くに魔族領で最も巨大な街が現れた。
山の麓に作られていて、山の部分に大きなお城が作られている街だった。
「あそこが魔都エラングシアよ。大きいでしょう?」
「はい! 凄く大きいですね。やっぱり魔王領の一番の街ですね」
「そうね。ただ、あそこが一番大きい理由は、繁栄したから――――ではないの。人族の街から最も遠い街に多くの戦えない魔族が住んでいるためよ」
昔から人族と何度も戦ってきた魔族ならではの理由があったんだ。
やっぱり平和を求める魔族も数多くいるみたいで、とても嬉しく思う。
僕達を乗せたユートピア号は、数十分もしないうちに魔都エラングシアに辿り着いた。
◆
魔都の前に着いてすぐにやってきた魔族にエヴァさんが嬉しそうに手を振ると、みなさんがその場で跪く。
「みんな! ただいま~!」
「おかえりなさいませ!」
一番前にいる執事服を着たデモン族だけが声を上げた。
「エラングシアの様子はどう? スレイン」
執事デモン族のスレインさん。以前勇者によって大ケガを負った魔族軍の指揮を執っていた方だ。
「全く問題ありません。ここまでエヴァ様と英雄殿の噂が聞こえております」
「お久しぶりです」
僕も挨拶すると笑顔で軽く頭を下げてくれた。
魔都のみなさんが待っているからと、玄関口からエヴァさんと共に中に入っていく。
エヴァさんはカミラさんの背中に乗り、僕とエレナちゃんはアルトくんの背中に乗って、一緒に魔王城までパレードを行う。
多くの魔族が出迎えてくれて歓声を上げる。
それくらいエヴァさんが全ての魔族から愛されているのが分かる。
エヴァさんと一緒に僕とエレナちゃんもみなさんに向かって手を振る。
ゆっくりと魔王城に繋がっている大通りを通って、魔王城に入って行った。
魔王城は僕が想像していたような禍々しい雰囲気ではなく、どちらかというと美しく綺麗な印象だ。
並んでいる魔族のみなさんもメイド服や執事服を身に纏っていたり、兵士さんもたくさんいた。
お城の庭を通りながら色んな場所をエヴァさんから直接教えてもらいながら、魔王の間に入った。
とても神々しい雰囲気に圧倒されながら中に入る。
エヴァさんが真っすぐ玉座に座り、僕達を見つめた。
「ようこそ。魔王城へ」
「わあ~エヴァお姉ちゃん、魔王様っぽい~!」
「いや、本当の魔王様だよ!?」
「あっ! そうだった!」
いつも一緒にいるからたまに忘れがちだけど、エヴァさんはれっきとした魔王様だ。
「ふふっ。今日ここに来て貰ったのは他でもなく、魔族の貴族達にワタルくんを紹介しておこうかなと思って。それに人族との件も伝えたいからね」
スレインさんが手配してくれたのか、ほどなくして何人もの魔族さんがやってきた。
デモン族だけでなく、色んな種族の魔族さんがエヴァさんの前に跪いた。
「みんなの者。急に集まって貰ってすまなかったな。ひとまず顔を上げてくれ」
「「「ははっ!」」」
みんなが立ち上がると、エヴァさんを見つめる。
エヴァさんの前に立つ魔族は、計二十人。
そこで気になるのが、中で三人だけがエヴァさんにあまり良くない視線を送っている。
「こちらは人族との戦争を一時休戦に持ち込んでくれた英雄、ワタル殿だ」
「は、初めまして……」
ペコリと挨拶だけする。
みなさん、とても温かい眼差しで見てくれるけど、やっぱり三人だけは少し威圧的な視線だ。
「それと、正式に人族の代表たちと話し合いを終えた。その結果をこれから話そうと思う。それによって、これから我々魔族は人族との――――戦いとなる。ただし、戦うのはあくまでフェアラート王国のみ。かの王国が人族の中でも唯一魔族と戦いたいと勇者を持ち上げて戦争を起こしたそうだ」
「陛下」
エヴァさんと僕に睨みを利かせていた魔族の一人が声を上げた。
「ユルゲンス卿。どうした」
「お言葉ですが、それは人族の嘘ではありませんか? このままフェアラート王国にだけ責任を押し付けているかも知れません」
なるほど……彼らは、戦争をやめたくないんだ。それに…………僕は彼らを見たことがない。つまり、彼らは戦いたいんじゃなく、エヴァさんのことを…………。
「もしそれで人族が魔族領を攻めてきて犠牲が出たら……どうなさるつもりで?」
「その時は、私が責任を取るつもりよ」
「…………かしこまりました」
意外にも早い決着に驚く中、明日のためにもすぐに帰ることになった。
スレインさんに事情を全て説明していたから、魔王の間で間に集めた人材を乗せてシェーン街に戻って行った。
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