45 / 88
連載
160話
しおりを挟む
神聖国で一泊した次の日。
大勢の信徒さんから見送られる中、教皇が僕の体にしがみつく。
「ワタル様あああああ! ぜ、ぜひまた遊びに来てください! 毎日いらっしゃってもいいですからああああ!」
「あはは……絶対にまた遊びに来ますから。それに貿易の件もありますからすぐに来ます」
「お願いします!!」
教皇様だけでなく、大勢の神官さんも土下座してまで僕にお願いをする。
というのも、みなさん――――【ぽよんぽよんリラックス】を甚く気に入ってくださったようで、聖都支店を最優先で出してもらえるようにと、何度もお願いされている。
ステラさん曰く、女神様を信仰する聖都で天使スライムが生まれたこと。特にそれがステラさんとエレノアさんのペットになったことで、女神様の奇跡と呼ばれるようになり、スライムは女神様が遣わした聖なる神獣として崇め始めた。
特に【ぽよんぽよんリラックス】の良さを知ってしまった人は全員が虜になった。
何とか教皇様を落ち着かせて、次の目的地――――帝国を目指すことになった。
◆
バンガルシア帝国は人族の最大派閥の一つだ。神聖国は女神教が主体になっているので信者が多く、世界の有数な武具が集められている。
それに比べてバンガルシア帝国は一番人口が多く、それぞれが信仰する神を信じている。
教皇様曰く、彼らは異教徒ではなく、姿形を変えただけで女神様を信仰しているので異教徒としては見ていないらしい。
例えば、ベアール様と呼ばれている熊の神様が信仰されているけど、そのルーツは大山の女神レイア様にあるという。
そんな感じで神聖国と帝国は良い関係を築いているそうで、帝国でも大きな聖堂があったりする。
バンガルシア帝国の首都は、帝都と呼ばれ、ものすごく大きな街になっていた。
中心に城があって、それを囲うように街が三層の作りになっていた。
空から見下ろしただけで美しい円状の街並みに思わず口が開いてしまった。
「ワタル殿」
「はい」
「帝都で住まないか?」
「い、いえ……僕は一応魔族側ですから」
「そ、そうか……いつでも言ってくれれば帝都で最もいい場所を用意しよう。皇族の屋敷を渡してもいい」
あはは…………もう何度目か分からないくらい提案を受けているけど、帝王様も【ぽよんぽよんリラックス】をとても気に入ってくれたみたいで、どうしても帝都に支店をすぐに出して欲しいと願い出てくれたのだ。
それで教皇様と睨み合って火花を散したりしていた。
シェーン街だとユートピア号は街の中では着陸が難しかったのに、広大な敷地のため、城の敷地に降り立つことができた。
「皆の者に伝える! こちらは今代の勇者であるコテツ殿の友人ワタル殿だ。くれぐれも粗相のないように。これは皇帝命である!」
貴族や騎士さん達がその場で跪いて一斉に「ははっ!」と声をあげた。
すぐに帝国内に僕達のことを知らせて、魔族側にも決して手を出すなと御触れが出された。少しでも手を出した者は極刑というのだから、とんでもない好待遇だ。
お城では帝王様の息子さんである皇子様や、娘さんの皇女様とも挨拶を交わした。
長いテーブルには名前も覚えられないくらいに大勢の貴族や皇子様皇女様が並ぶ。
一番端に帝王様が座り、そこからエヴァさん、僕が左右に向き合う形で、エレナちゃんと第三皇女様、ステラさんとエレノアさん達が並んだ。僕の隣は第三皇女様だ。
乾杯と共に次々美味しい洋食が運ばれてきて、どれも美味しくてパクパク食べてしまった。
「ワタル様。こちらは郷土料理の【ハンバーグ】と呼ばれるものですわ」
前世で知っている食べ物と名前。味も食べたことないくらい美味しくて心が癒された。
どの料理も皇女様が説明してくださって、本当にこのままでいいのかと心配になる。
「時にワタル殿」
「はい」
「うちのセレティアは九つになる」
セレティアというのは、隣の第三皇女様のことを指す。
「どうだね。妻として迎え入れてくれないか?」
「お父様!?」
「帝王様!?」
「むっ」
帝王様の爆弾発言に僕とセレティアさんが驚いて、向かいのエレナちゃんがジト目でこちらを見つめた。
どうして僕を見つめるの……。
「ご、ごめんなさい。とても素敵な提案ですが、僕はまだそういうことはよく分からないので……それにセレティア様はとても素敵な方ですが、まだ会って初めてというか……」
「がーははっ! それもそうだったな。これから交易で帝都を訪れることも多いだろう。これからセレティアを知ってくれればよい。わしの自慢の娘だからの」
「お父様ったら……ごめんなさい」
セレティア様が顔を赤らめて僕に謝ってきた。
異世界って……日本よりも結婚が速いとは聞いていたけど、まだ十にもならないのに、こういう話が出るとは思わなかった。
ただ、今の僕は結婚とかより、生活や冒険、ぽよんぽよんリラックス店のことでいっぱいだ。
セレティア様はとても素敵な方だとは思うけど、そういう対象では見れない。というかそういうことはもっと知り合ってから決めるべきことだと思うから。
「あはは……これから【ぽよんぽよんリラックス】の支店の件とかもありますから。その時はぜひよろしくお願いいたします」
「セレティア。お前にワタル殿との交易の全権を与える。必ず成功させるように。特に【ぽよんぽよんリラックス】のことは何としてもだ」
「はい。かしこまりました」
帝王様の凄い気迫に思わず苦笑いがこぼれてしまった。
大勢の信徒さんから見送られる中、教皇が僕の体にしがみつく。
「ワタル様あああああ! ぜ、ぜひまた遊びに来てください! 毎日いらっしゃってもいいですからああああ!」
「あはは……絶対にまた遊びに来ますから。それに貿易の件もありますからすぐに来ます」
「お願いします!!」
教皇様だけでなく、大勢の神官さんも土下座してまで僕にお願いをする。
というのも、みなさん――――【ぽよんぽよんリラックス】を甚く気に入ってくださったようで、聖都支店を最優先で出してもらえるようにと、何度もお願いされている。
ステラさん曰く、女神様を信仰する聖都で天使スライムが生まれたこと。特にそれがステラさんとエレノアさんのペットになったことで、女神様の奇跡と呼ばれるようになり、スライムは女神様が遣わした聖なる神獣として崇め始めた。
特に【ぽよんぽよんリラックス】の良さを知ってしまった人は全員が虜になった。
何とか教皇様を落ち着かせて、次の目的地――――帝国を目指すことになった。
◆
バンガルシア帝国は人族の最大派閥の一つだ。神聖国は女神教が主体になっているので信者が多く、世界の有数な武具が集められている。
それに比べてバンガルシア帝国は一番人口が多く、それぞれが信仰する神を信じている。
教皇様曰く、彼らは異教徒ではなく、姿形を変えただけで女神様を信仰しているので異教徒としては見ていないらしい。
例えば、ベアール様と呼ばれている熊の神様が信仰されているけど、そのルーツは大山の女神レイア様にあるという。
そんな感じで神聖国と帝国は良い関係を築いているそうで、帝国でも大きな聖堂があったりする。
バンガルシア帝国の首都は、帝都と呼ばれ、ものすごく大きな街になっていた。
中心に城があって、それを囲うように街が三層の作りになっていた。
空から見下ろしただけで美しい円状の街並みに思わず口が開いてしまった。
「ワタル殿」
「はい」
「帝都で住まないか?」
「い、いえ……僕は一応魔族側ですから」
「そ、そうか……いつでも言ってくれれば帝都で最もいい場所を用意しよう。皇族の屋敷を渡してもいい」
あはは…………もう何度目か分からないくらい提案を受けているけど、帝王様も【ぽよんぽよんリラックス】をとても気に入ってくれたみたいで、どうしても帝都に支店をすぐに出して欲しいと願い出てくれたのだ。
それで教皇様と睨み合って火花を散したりしていた。
シェーン街だとユートピア号は街の中では着陸が難しかったのに、広大な敷地のため、城の敷地に降り立つことができた。
「皆の者に伝える! こちらは今代の勇者であるコテツ殿の友人ワタル殿だ。くれぐれも粗相のないように。これは皇帝命である!」
貴族や騎士さん達がその場で跪いて一斉に「ははっ!」と声をあげた。
すぐに帝国内に僕達のことを知らせて、魔族側にも決して手を出すなと御触れが出された。少しでも手を出した者は極刑というのだから、とんでもない好待遇だ。
お城では帝王様の息子さんである皇子様や、娘さんの皇女様とも挨拶を交わした。
長いテーブルには名前も覚えられないくらいに大勢の貴族や皇子様皇女様が並ぶ。
一番端に帝王様が座り、そこからエヴァさん、僕が左右に向き合う形で、エレナちゃんと第三皇女様、ステラさんとエレノアさん達が並んだ。僕の隣は第三皇女様だ。
乾杯と共に次々美味しい洋食が運ばれてきて、どれも美味しくてパクパク食べてしまった。
「ワタル様。こちらは郷土料理の【ハンバーグ】と呼ばれるものですわ」
前世で知っている食べ物と名前。味も食べたことないくらい美味しくて心が癒された。
どの料理も皇女様が説明してくださって、本当にこのままでいいのかと心配になる。
「時にワタル殿」
「はい」
「うちのセレティアは九つになる」
セレティアというのは、隣の第三皇女様のことを指す。
「どうだね。妻として迎え入れてくれないか?」
「お父様!?」
「帝王様!?」
「むっ」
帝王様の爆弾発言に僕とセレティアさんが驚いて、向かいのエレナちゃんがジト目でこちらを見つめた。
どうして僕を見つめるの……。
「ご、ごめんなさい。とても素敵な提案ですが、僕はまだそういうことはよく分からないので……それにセレティア様はとても素敵な方ですが、まだ会って初めてというか……」
「がーははっ! それもそうだったな。これから交易で帝都を訪れることも多いだろう。これからセレティアを知ってくれればよい。わしの自慢の娘だからの」
「お父様ったら……ごめんなさい」
セレティア様が顔を赤らめて僕に謝ってきた。
異世界って……日本よりも結婚が速いとは聞いていたけど、まだ十にもならないのに、こういう話が出るとは思わなかった。
ただ、今の僕は結婚とかより、生活や冒険、ぽよんぽよんリラックス店のことでいっぱいだ。
セレティア様はとても素敵な方だとは思うけど、そういう対象では見れない。というかそういうことはもっと知り合ってから決めるべきことだと思うから。
「あはは……これから【ぽよんぽよんリラックス】の支店の件とかもありますから。その時はぜひよろしくお願いいたします」
「セレティア。お前にワタル殿との交易の全権を与える。必ず成功させるように。特に【ぽよんぽよんリラックス】のことは何としてもだ」
「はい。かしこまりました」
帝王様の凄い気迫に思わず苦笑いがこぼれてしまった。
178
お気に入りに追加
4,857
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。