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160話

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 神聖国で一泊した次の日。

 大勢の信徒さんから見送られる中、教皇が僕の体にしがみつく。

「ワタル様あああああ! ぜ、ぜひまた遊びに来てください! 毎日いらっしゃってもいいですからああああ!」

「あはは……絶対にまた遊びに来ますから。それに貿易の件もありますからすぐに来ます」

「お願いします!!」

 教皇様だけでなく、大勢の神官さんも土下座してまで僕にお願いをする。

 というのも、みなさん――――【ぽよんぽよんリラックス】をいたく気に入ってくださったようで、聖都支店を最優先で出してもらえるようにと、何度もお願いされている。

 ステラさん曰く、女神様を信仰する聖都で天使スライムが生まれたこと。特にそれがステラさんとエレノアさんのペットになったことで、女神様の奇跡と呼ばれるようになり、スライムは女神様が遣わした聖なる神獣として崇め始めた。

 特に【ぽよんぽよんリラックス】の良さを知ってしまった人は全員が虜になった。

 何とか教皇様を落ち着かせて、次の目的地――――帝国を目指すことになった。



 ◆



 バンガルシア帝国は人族の最大派閥の一つだ。神聖国は女神教が主体になっているので信者が多く、世界の有数な武具が集められている。

 それに比べてバンガルシア帝国は一番人口が多く、それぞれが信仰する神を信じている。

 教皇様曰く、彼らは異教徒ではなく、姿形を変えただけで女神様を信仰しているので異教徒としては見ていないらしい。

 例えば、ベアール様と呼ばれている熊の神様が信仰されているけど、そのルーツは大山の女神レイア様にあるという。

 そんな感じで神聖国と帝国は良い関係を築いているそうで、帝国でも大きな聖堂があったりする。

 バンガルシア帝国の首都は、帝都と呼ばれ、ものすごく大きな街になっていた。

 中心に城があって、それを囲うように街が三層の作りになっていた。

 空から見下ろしただけで美しい円状の街並みに思わず口が開いてしまった。

「ワタル殿」

「はい」

「帝都で住まないか?」

「い、いえ……僕は一応魔族側ですから」

「そ、そうか……いつでも言ってくれれば帝都で最もいい場所を用意しよう。皇族の屋敷を渡してもいい」

 あはは…………もう何度目か分からないくらい提案を受けているけど、帝王様も【ぽよんぽよんリラックス】をとても気に入ってくれたみたいで、どうしても帝都に支店をすぐに出して欲しいと願い出てくれたのだ。

 それで教皇様と睨み合って火花を散したりしていた。

 シェーン街だとユートピア号は街の中では着陸が難しかったのに、広大な敷地のため、城の敷地に降り立つことができた。

「皆の者に伝える! こちらは今代の勇者であるコテツ殿の友人ワタル殿だ。くれぐれも粗相そそうのないように。これは皇帝命である!」

 貴族や騎士さん達がその場で跪いて一斉に「ははっ!」と声をあげた。

 すぐに帝国内に僕達のことを知らせて、魔族側にも決して手を出すなと御触れが出された。少しでも手を出した者は極刑というのだから、とんでもない好待遇だ。

 お城では帝王様の息子さんである皇子様や、娘さんの皇女様とも挨拶を交わした。

 長いテーブルには名前も覚えられないくらいに大勢の貴族や皇子様皇女様が並ぶ。

 一番端に帝王様が座り、そこからエヴァさん、僕が左右に向き合う形で、エレナちゃんと第三皇女様、ステラさんとエレノアさん達が並んだ。僕の隣は第三皇女様だ。

 乾杯と共に次々美味しい洋食が運ばれてきて、どれも美味しくてパクパク食べてしまった。

「ワタル様。こちらは郷土料理の【ハンバーグ】と呼ばれるものですわ」

 前世で知っている食べ物と名前。味も食べたことないくらい美味しくて心が癒された。

 どの料理も皇女様が説明してくださって、本当にこのままでいいのかと心配になる。

「時にワタル殿」

「はい」

「うちのセレティアは九つになる」

 セレティアというのは、隣の第三皇女様のことを指す。

「どうだね。妻として迎え入れてくれないか?」

「お父様!?」

「帝王様!?」

「むっ」

 帝王様の爆弾発言に僕とセレティアさんが驚いて、向かいのエレナちゃんがジト目でこちらを見つめた。

 どうして僕を見つめるの……。

「ご、ごめんなさい。とても素敵な提案ですが、僕はまだそういうことはよく分からないので……それにセレティア様はとても素敵な方ですが、まだ会って初めてというか……」

「がーははっ! それもそうだったな。これから交易で帝都を訪れることも多いだろう。これからセレティアを知ってくれればよい。わしの自慢の娘だからの」

「お父様ったら……ごめんなさい」

 セレティア様が顔を赤らめて僕に謝ってきた。

 異世界って……日本よりも結婚が速いとは聞いていたけど、まだ十にもならないのに、こういう話が出るとは思わなかった。

 ただ、今の僕は結婚とかより、生活や冒険、ぽよんぽよんリラックス店のことでいっぱいだ。

 セレティア様はとても素敵な方だとは思うけど、そういう対象では見れない。というかそういうことはもっと知り合ってから決めるべきことだと思うから。

「あはは……これから【ぽよんぽよんリラックス】の支店の件とかもありますから。その時はぜひよろしくお願いいたします」

「セレティア。お前にワタル殿との交易の全権を与える。必ず成功させるように。特に【ぽよんぽよんリラックス】のことは何としてもだ」

「はい。かしこまりました」

 帝王様の凄い気迫に思わず苦笑いがこぼれてしまった。
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