そよ風と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~

御峰。

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24話

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 ――――ウ!
 
 どこかで僕を呼ぶ声が聞こえる。
 
 ……母さん?
 
 僕は久しぶりに感じる母さんの温もりに体を預けた。
 
 ……母さん。僕は……二人が誇れる息子に少しはなれたかな?
 
 
 
「――――ハウ!」
 
 声に目を覚ますと、ものすごい心配そうな表情で見つめているオリアナさんとリーゼが見えた。
 
「あ……れ?」
 
「気がついたのね! ハウくん……本当にごめんなさい……私ってば、興奮してしまって、ハウくんに無理な注文をしてしまったの……」
 
何となく胸の中が空っぽの感覚がある。今まで経験はなかったけど、これが魔力欠損症みたいだ。
 
「オリアナさん。ありがとうございます。オリアナさんのおかげでモモ達ともっと仲良くなれましたし、魔法だって上手くなれましたから。それに失敗ではなく、先に進むためのことですから」
 
「ハウくん……」
 
 オリアナさんの肩からモモ達がひょっこりと顔を出す。
 
 みんなどこか嬉しそうな表情を浮かべて、オリアナさんの頬をペタペタと触ってあげる。
 
「モモ達も嬉しそうです。あ~! お仕事は!?」
 
 急いで周りを見ると、植物達は穏やかな風に揺られて気持ち良さそうにしている。しかも、木の実とかも多く実っているし、葉っぱもすごく艶やかだ。
 
「モモ達がずっと風を吹かせてくれているのよ」
 
「そうだったんですね。モモ達~ありがとうね」
 
 リーゼと一緒に手を伸ばしてモモ達を優しく撫でてあげる。
 
「ハウくん。魔法は反復練習がとても大切なのよ。瞑想も忘れずに、ずっと自分の中にある魔力を向き合い続けてね」
 
「はいっ!」
 
「では私は宿屋に戻るわ。無理せずにね」
 
 オリアナさんが宿屋に戻り、モモ達が木の実を大量に収穫してくれたので、僕とリーゼは収穫箱を引いて庭園を歩き回った。
 
 
 
「これは……!」
 
 久しぶりに来てくれたおじさんが、庭園を見てものすごく驚いた。
 
「おじさん! 魔法の練習をしてたら、恵みの風というもので木の実がいっぱい実ってしまいました!」
 
「おぉ……恵みの風を……精霊魔法が使えるようになったのね~」
 
「はい~!」
 
「精霊魔法は~魔力の消費が~激しいから~無理はしないようにね~」
 
「はいっ! 今日は初めてだったんで夢中になっちゃいましたけど、これからは気を付けながら頑張ります!」
 
「うむ~それにしても~こんなに実が成ったら~ボーナスをたくさん出さないとね~」
 
「ええええ~! い、いいえ! 魔法の練習の一環ですから! ボーナスはいりませんよ!」
 
「ほっほっほっ~」
 
 おじさんも一緒に昼食を食べて、また収穫とかタンポポの田植えとか今日はお仕事をたくさんした。
 
 いらないとあれだけ言ったのに、お給金以外のボーナス給金が大量に出てしまって困った。
 
 
 
 それから数日後。
 
 毎日のように庭園で魔法の練習をして、昼食を食べてから少し働いて、宿屋に戻る生活を繰り返した。
 
 今日も同じように帰り際。
 
 意外な人が僕とリーゼの前に立つ。
 
「ハウくん……でしたね」
 
「お久しぶりです! リュートさん!」
 
 イマイルおじさんのところの収穫物を卸しているレストラン『エルドラド』の料理長さんだ。
 
 リュートさんは膝を崩して僕達と目の高さを合わせてくれた。
 
「イマイル様から聞きました。美味しい木の実をいつもよりも多く入荷させてくださりありがとうございます」
 
「これで多くの方がリュートさんの美味しい料理を楽しんで頂けるなら嬉しいです!」
 
「そうですね。入荷が多いときはもっと安価で多くの人に届けるようにします。ああ、そうだ。いろんな木の実が入ったことで、新作を作っておりまして、もしよろしければ、明日食べに来てもらえませんか?」
 
「ええ~! いいんですか?」
 
 リュートさんはすごく嬉しそうに笑ってくれた。
 
「ええ。ぜひ」
 
「わかりました! 明日はちょうどお仕事も休みなので、お昼にお邪魔させていただきます!」
 
「お待ちしております」
 
 まさかリュートさんの新作を真っ先に食べられるとは思わず、嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
 
 リュートさんに別れを告げてリーゼと宿屋に戻る。
 
「良かったね~ハウ」
 
「うん!」
 
 宿屋に戻り、オリアナさんに事情を話したが、明日は外せない予定があるということで、僕とリーゼ二人だけで向かうことになった。
 
 最近は毎日午前中に僕の魔法の練習に付き合ってくれるオリアナさんだから、いろいろやらないといけないことがたくさんあるのかも。
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