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12話
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「ただいま……えっと、今日から一緒に過ごすことになったモモ達です」
「あらまあ! 可愛い~!」
僕とリーゼの肩や頭に乗ったモモンガ達に黄色い声を上げるオリアナさん。
すぐにモモンガ達を優しく撫でてあげる。
僕がモモンガ達と結んだのは『精霊契約』と呼ばれるもので、これからずっと一緒に過ごすことになるみたい。
まだ出会って間もないのにと思ったけど、どうやらモモンガ達は僕が過ごしてきた毎日を感じ取れるらしく、僕なら信用に値する人物だから結んでくれたとおじさんに言われた。
それによって、僕はモモンガ達を――――飼う(?)ことになった。
リーゼから名前が呼びにくいから『モモ』と呼ぼうということで、モモ達になっている。
「ん……? この子達って……もしかして、空を飛んだりする?」
「よくわかりましたね? みんな風に乗るのが上手です!」
「それって……まさかモモンガ様?」
「「「きゅぴ~」」」
「…………」
目が点になったオリアナさんが僕とモモ達を交互に見つめる。
「庭園に住んでいたんですけど、僕と契約というものをしてくれて……あはは……」
「モモンガ様達と契約!? …………そ、そうだったのね。ハウくうって……私の想像以上ね。そっか……彼らの子供だもんね。ふふっ。本当にすごいわ」
「オリアナさん?」
「あら、何でもないわ。さあ、増えた新しい家族にもちゃんと夕飯を準備してあげないとね」
「ありがとうございます! 一応、おじさんからいつものどんぐりを貰って来てるので、こちらをあげてもいいと思います」
「どんぐりね。何を食べるかわからないけど、まずはいろいろ試してみましょう」
それからすぐに夕飯の準備をしてくれて、俺はリーゼとモモ達と一緒にご飯を食べた。
モモ達はオリアナさんが作ってくれたいろんな野菜や木の実が入った盛り合わせを残すことなく、パクパクと全部たいらげた。
夕飯後にリーゼは宿屋の手伝いに行き、僕はモモ達と手無沙汰になった。
外は日が沈みつつあるけど、まだ休むには早いのもあったから、一度宿屋から外に出る。
どこか行きたい目的があったわけではなかったけど、せっかくだからいつもの城壁に向かう。まだ夕陽で畑が見れるかも知れないから。
「ラインさ~ん」
「ん? ハウくんか。まだ街にいたのか」
「上がってもいいですか?」
「ああ。構わないぞ!」
衛兵の知り合いのラインさんに許可を取り、城壁に上がっていく。
「珍しいな。こんな時間に」
「お仕事が変わって、これからはちょっと遅い時間に来るかも知れません!」
「そうか。でも前よりも表情が明るくなったから、いい職場が見つかったようだな?」
「は、はい! とっても優しい方のところで働かせてもらってます」
「そうかそうか。それにしても、その肩に乗ってるのはなんだい?」
「あ! モモ達です。えっと、これから飼うことになったんです」
飼うって言い方はあまり好きではないけど、説明が難しくて変な誤解をされたら嫌だからね。
イマイルおじさんからも契約を結んだなんて、あまり言わない方がいいと言われた。
「それにしても賢いリス達だな。六匹も飼うと大変だろうに」
「あはは……これも何かの縁ですから。それに給金も上がったので大丈夫です!」
「そうか。ならおじさんがこれ以上言うことはないな。さあ、日が暮れる前に楽しんで行くといい」
「ありがとうございます!」
城壁に近付いて外を眺める。
夕暮れに照らされて綺麗な花畑が美しい朱色に染まっている。
モモ達と一緒に少しの間、日が暮れるまで景色を堪能した。
山の向こうだけが赤く染まった頃に、ラインさんに挨拶をして宿屋に戻る。
以前は暗い街を歩くのが苦手だったけど、モモ達がいるからか嫌な感じがしなくなった。
ソレイユ街は大きな街でもあるので、大通りは夜でも魔道具によって照らされて明るい。
羽目を外しすぎて酔ったおじさんとかいるけど、まだ早い時間帯だからか、そういうおじさんも見かけない。
でもこれ以上遅くなったらオリアナさん達が心配しそうなんで、足早に宿屋に向かう。
――――そのときだった。
「てめぇ……!」
後ろから殺気が込められた声とともに、僕の体が宙に浮く。
僕の上着の後ろを持ち上げられた。
そこにいたのは、冒険者ギルドで何度か会った大柄の男、コワさんだった。
「コ、コワさん!?」
「てめぇ……のうのうと歩きやがって……! てめぇのせいでオルゲンが酷い目に遭ってるんだぞ! ここでぶっ殺してやる!」
僕の体を持ち上げたまま、大通りから裏路地に入った。
一瞬の出来事で何もできずに、路地裏に投げ込まれた僕は、ただただ目の前のコワさんを見上げるしかできなかった。
ふと、悲しむリーゼやオリアナさんの顔が思い浮かぶ。
僕には……帰るべき場所があるんだ。こんなところで諦めていられないっ……!
「おい。そよ風のザコ。てめぇが変なことをチクったせいでオルゲン達が犯罪者になったんだぞ! どうしてくれるんだ!」
「どうするも何も……あの人達はやってはいけないことをしたんです!」
「ほお……言えるようになったな。クソザコの分際で、働く場所もないてめぇを長年雇ってやったオルゲン達の恩を仇で返しやがって……!」
「でもずっと冒険者ギルドに隠していたって……後ろ暗いことがないんなら隠す必要はなかったじゃないですか!」
「てめぇ……! ぶっ殺す!」
僕は……仕事がなく困っていたときに、手を差し伸べてくれたオルゲンさんには感謝している。だって……彼がいなかったら……僕は今でもオリアナさん達に迷惑をかけていたかもしれない。
でも、それは彼が裏で手を回して、僕の働き口を消していたことに気付かなかった。
ジェネシスさんがいろいろ調べてくれてから発覚したことだ。
だから……感謝はもちろんしてるけど……でも、ずっと騙されていたのも事実で……僕はともかくイマイルおじさんをバカにしたり、力で誰かをねじ伏せようとする行為が許せない。
僕の顔の前にコワさんの大きな拳が映った。
「あらまあ! 可愛い~!」
僕とリーゼの肩や頭に乗ったモモンガ達に黄色い声を上げるオリアナさん。
すぐにモモンガ達を優しく撫でてあげる。
僕がモモンガ達と結んだのは『精霊契約』と呼ばれるもので、これからずっと一緒に過ごすことになるみたい。
まだ出会って間もないのにと思ったけど、どうやらモモンガ達は僕が過ごしてきた毎日を感じ取れるらしく、僕なら信用に値する人物だから結んでくれたとおじさんに言われた。
それによって、僕はモモンガ達を――――飼う(?)ことになった。
リーゼから名前が呼びにくいから『モモ』と呼ぼうということで、モモ達になっている。
「ん……? この子達って……もしかして、空を飛んだりする?」
「よくわかりましたね? みんな風に乗るのが上手です!」
「それって……まさかモモンガ様?」
「「「きゅぴ~」」」
「…………」
目が点になったオリアナさんが僕とモモ達を交互に見つめる。
「庭園に住んでいたんですけど、僕と契約というものをしてくれて……あはは……」
「モモンガ様達と契約!? …………そ、そうだったのね。ハウくうって……私の想像以上ね。そっか……彼らの子供だもんね。ふふっ。本当にすごいわ」
「オリアナさん?」
「あら、何でもないわ。さあ、増えた新しい家族にもちゃんと夕飯を準備してあげないとね」
「ありがとうございます! 一応、おじさんからいつものどんぐりを貰って来てるので、こちらをあげてもいいと思います」
「どんぐりね。何を食べるかわからないけど、まずはいろいろ試してみましょう」
それからすぐに夕飯の準備をしてくれて、俺はリーゼとモモ達と一緒にご飯を食べた。
モモ達はオリアナさんが作ってくれたいろんな野菜や木の実が入った盛り合わせを残すことなく、パクパクと全部たいらげた。
夕飯後にリーゼは宿屋の手伝いに行き、僕はモモ達と手無沙汰になった。
外は日が沈みつつあるけど、まだ休むには早いのもあったから、一度宿屋から外に出る。
どこか行きたい目的があったわけではなかったけど、せっかくだからいつもの城壁に向かう。まだ夕陽で畑が見れるかも知れないから。
「ラインさ~ん」
「ん? ハウくんか。まだ街にいたのか」
「上がってもいいですか?」
「ああ。構わないぞ!」
衛兵の知り合いのラインさんに許可を取り、城壁に上がっていく。
「珍しいな。こんな時間に」
「お仕事が変わって、これからはちょっと遅い時間に来るかも知れません!」
「そうか。でも前よりも表情が明るくなったから、いい職場が見つかったようだな?」
「は、はい! とっても優しい方のところで働かせてもらってます」
「そうかそうか。それにしても、その肩に乗ってるのはなんだい?」
「あ! モモ達です。えっと、これから飼うことになったんです」
飼うって言い方はあまり好きではないけど、説明が難しくて変な誤解をされたら嫌だからね。
イマイルおじさんからも契約を結んだなんて、あまり言わない方がいいと言われた。
「それにしても賢いリス達だな。六匹も飼うと大変だろうに」
「あはは……これも何かの縁ですから。それに給金も上がったので大丈夫です!」
「そうか。ならおじさんがこれ以上言うことはないな。さあ、日が暮れる前に楽しんで行くといい」
「ありがとうございます!」
城壁に近付いて外を眺める。
夕暮れに照らされて綺麗な花畑が美しい朱色に染まっている。
モモ達と一緒に少しの間、日が暮れるまで景色を堪能した。
山の向こうだけが赤く染まった頃に、ラインさんに挨拶をして宿屋に戻る。
以前は暗い街を歩くのが苦手だったけど、モモ達がいるからか嫌な感じがしなくなった。
ソレイユ街は大きな街でもあるので、大通りは夜でも魔道具によって照らされて明るい。
羽目を外しすぎて酔ったおじさんとかいるけど、まだ早い時間帯だからか、そういうおじさんも見かけない。
でもこれ以上遅くなったらオリアナさん達が心配しそうなんで、足早に宿屋に向かう。
――――そのときだった。
「てめぇ……!」
後ろから殺気が込められた声とともに、僕の体が宙に浮く。
僕の上着の後ろを持ち上げられた。
そこにいたのは、冒険者ギルドで何度か会った大柄の男、コワさんだった。
「コ、コワさん!?」
「てめぇ……のうのうと歩きやがって……! てめぇのせいでオルゲンが酷い目に遭ってるんだぞ! ここでぶっ殺してやる!」
僕の体を持ち上げたまま、大通りから裏路地に入った。
一瞬の出来事で何もできずに、路地裏に投げ込まれた僕は、ただただ目の前のコワさんを見上げるしかできなかった。
ふと、悲しむリーゼやオリアナさんの顔が思い浮かぶ。
僕には……帰るべき場所があるんだ。こんなところで諦めていられないっ……!
「おい。そよ風のザコ。てめぇが変なことをチクったせいでオルゲン達が犯罪者になったんだぞ! どうしてくれるんだ!」
「どうするも何も……あの人達はやってはいけないことをしたんです!」
「ほお……言えるようになったな。クソザコの分際で、働く場所もないてめぇを長年雇ってやったオルゲン達の恩を仇で返しやがって……!」
「でもずっと冒険者ギルドに隠していたって……後ろ暗いことがないんなら隠す必要はなかったじゃないですか!」
「てめぇ……! ぶっ殺す!」
僕は……仕事がなく困っていたときに、手を差し伸べてくれたオルゲンさんには感謝している。だって……彼がいなかったら……僕は今でもオリアナさん達に迷惑をかけていたかもしれない。
でも、それは彼が裏で手を回して、僕の働き口を消していたことに気付かなかった。
ジェネシスさんがいろいろ調べてくれてから発覚したことだ。
だから……感謝はもちろんしてるけど……でも、ずっと騙されていたのも事実で……僕はともかくイマイルおじさんをバカにしたり、力で誰かをねじ伏せようとする行為が許せない。
僕の顔の前にコワさんの大きな拳が映った。
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