上 下
78 / 102
四章

第77話 やっぱり戦いですか?

しおりを挟む
 勇者様が剣を抜いた。

 それと同時にヘルドさんも剣を抜き、聖女様は『聖人ノ衣』というスキルを展開、アイリスも『魔女ノ衣』を展開した。

 ああ……一体に何がどうなってこうなるんだよ。

 あんなに可愛らしい聖女様が、今なら人も簡単に殺れそうな表情をしている。

 しかも、ずっと「クソが!」とか「いますぐ死に晒せ!」とか酷い言葉が口から止まずに吐き出されている。

「おいおい、お前の兵達が黒コケになっても知らないぞ?」

「ふん! 『ヴァレンシア』なら、暫く撃てないはずだ! 今すぐ成敗してやろう!」

「まあいい、お前とはいつか決着を付けてやりたかったからな! アレク! 邪魔が入ったら容赦なく切り捨てろ!」

「分かりました! 無茶はしないでくださいよ!」

「おう!」

 ヘルドさんの合図と共に、ヘルドさんと勇者の戦いが始まった。

 目にも止まらぬ速度でぶつかり合う二人。

 見た目は一閃の斬り掛かりなのに、音は数十合の剣と剣のぶつかる音が聞こえる。

 これが人類最強の二人の戦いなのね。


 それと、アイリスと聖女の戦いも始まった。

 二人の見た目は真逆で、アイリスが禍々しい黒いオーラに対して、聖女は神々しい光のオーラを出している。

 アイリスの影の触手が聖女を襲うも、聖女に当たる直前に蒸発する。

 相変わらず、汚い言葉を発しながら、光魔法で応戦する。

 アイリスも光魔法に対して、通常魔法で応戦し、決着が付かないまま時間が経過していった。


 ヘルドさんはというと、相変わらず人離れした戦いを繰り返しており、目で追うのがやっとだ。

 そう言えば……僕だけ何もしてなくない?

 あたふたしていると、向こうの兵士達が大勢でこちらに向かって走って来ていた。

 取り敢えず、僕はあいつらでも相手するか。


 兵士達は計三十人で、装備からして全員が上級兵士達だ。

 ここが最前線だからなのか、これくらいのレベルの人達が普通の兵士レベルなのね。

 元王国なら隊長クラスなんだろうけどな~。

 兵士達は「勇者様と聖女様をお助けしろ!」と叫んでいたけど、そもそも仕掛けていたのは君達なんだけどね。

 僕は『十本刃の花びら』を使い、兵士達を死なせないくらいに一人ずつ無力化した。

 う~ん、最前線の兵士達だから強いと思って身構えていたけど、凄く弱いじゃん。


 僕が兵士達を制圧した頃、アイリスは聖女に追い詰められていた。

「おいおいおいおい! クソ魔女! こんなもんかよ! とっととくたばれ!!」

 相変わらず、凄いね~聖女様は。

 ヘルドさんの「腹黒聖女」が納得いくわ。

「いつまでも調子乗らないでよ! 奥義! 『暗黒ノ魔女』!」

 禍々しい衣裳から、美しい黒ドレスに変わり、また凄まじい威圧感を放った。

「くっ! 上位魔女だったのね! 私も本気を出しますわ! 奥義! 『聖女ノ小手』!」

 聖女の両手が眩しい光に包まれ、ガントレットになった。

「へぇ、あんたは杖よりそっちがお似合いよ、腹黒聖女さん」

「ふん! 魔女の分際で気安く話し掛けないで! 今すぐ〇してやる!!」

 相変わらず、凄い豹変っぷりだな……。


 二人の激突が始まった。

 聖女の小手が振られると、光魔法と思われる攻撃が追加で発生している。

 アイリスの黒ドレスからも様々な攻撃が繰り返されていて、またもや頓着状態となっていった。


 その時、

 ヘルドさんの方が、勇者を追い詰めていたのだが……。

「聖剣奥義! 聖剣再来!!」

 勇者の詠唱で彼の剣から凄まじいオーラが溢れ出た。

 たった数秒。

 追い詰めていたヘルドさんが勇者に敗れたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

やり直し令嬢の備忘録

西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。 これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい…… 王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。 また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

贄の令嬢はループする

みん
恋愛
エヴェリーナ=ハウンゼントには、第二王子の婚約者が居たが、その第二王子と隣国の第一王女が恋仲になり、婚約破棄されてしまう。その上、黒色の竜の贄にされてしまい、命尽きた──と思ったら、第二王子と婚約を結ぶ前の時に戻っていた。 『正しい路に────』と言う言葉と共に、贄とならないように人生をやり直そうとするが───。 「そろそろ……キレて良いかなぁ?」 ループする人生に、プチッとキレたエヴェリーナは、ループから抜け出せるのか? ❋相変わらずのゆるふわ設定なので、軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。 ❋独自の設定があります。 ❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。 ❋他視点のお話もあります。 ❋更新時間は決めていませんが、基本は1日1話更新です。 ❋なろう様にも投稿しています。

竜焔の騎士

時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証…… これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語――― 田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。 会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ? マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。 「フールに、選ばれたのでしょう?」 突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!? この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー! 天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!

【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい

冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。 何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。 「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。 その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。 追放コンビは不運な運命を逆転できるのか? (完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

悪役令嬢は所詮悪役令嬢

白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」 魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。 リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。 愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。 悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。

処理中です...