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第6話 平原の怪しい魔物使い?

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 アルキバガン森を抜け、目の前に広がる平原を駆け巡る。

 近くには大きな街が見えていて、遠目からでも活気溢れる街なのが分かる程だ。

 もう一つ気になるのは、街の大きさ。

 俺が思っていた街とはまるで違う街並みで、一番奥の高台の部分に巨大なお城があり、そこを城壁が囲って、美しい家々が並んで、そこをまた城壁が囲っているという不思議な構造の街だ。

 壁も真っ白な色に染まっているが、お城の空高く聳え立つ屋根は明るい赤色に塗られていて、街全体が赤と白の色で調和されたとても美しい街となっている。

 どこか――――母さんを思わせるのは、街がとんでもない大きさで広がっているからかも知れない。

 森の中には魔物が大勢いるのに、平原には魔物らしい魔物が全く見当たらない。

 何となく周囲を歩き回っている赤白の鎧を着た兵士さん達が倒しているのではないかと思う。

 前世でもあったけど、こうして治安を維持するのはその国が豊かである事を示している。

 母さんからあまり人前では力を見せびらかすのは、やめておいた方が良いとアドバイスを貰ったので、平原は走らず、のんびりと歩いていく。

 前世の会社でも仕事ができる人はすぐに先輩からこき使われていたし、女性からアプローチを受けるものならとことん嫌味な事を押し付けられていた。

 それを考えれば、やっぱり自分の力をあまり見せびらかすのは良くないかもな。

 この世界がどのくらいの基準で強さを有しているかは、今の俺には分からない。

 だが前世の自分と今の自分を比べるととんでもない差がある。それを鑑みて、今の世界での自分が“普通”から掛け離れているかも知れないと思っておくべきだ。

 ゆっくり歩いていると、俺を見かけた兵士達が真っ先にこちらに向かって走ってくる。

 周囲に俺達以外の気配がないので、間違いなくその目的が俺達である事は明白だ。

 ただ歩いているはずなのにどうしてだ…………?

「止まれ!」

 一番前の兵士が俺に向かって声を上げる。

 念のため、周囲を見回して俺達以外誰もいない事を確認して、その場に止まって兵士を見つめる。

「あの~俺に何か御用ですか?」

「すまぬが、冒険者プレートを見せて貰ってもよいか?」

 冒険者プレート?

 もちろん――――持っているはずもない。

「すいません。そのようなモノは持っていないのですが」

「なに!? 冒険者ではないのか?」

「はい。えっと、田舎・・から出てきたので、こちらの街には初めて来ます」

 そう答えても兵士は怪しそうに思うかのような視線をこちらに向け続ける。

 俺ってそんなに怪しいのか?

「すまないが、その肩に乗せている魔物・・は、どうして『従魔の輪』を付けていないのだ?」

「ま、魔物!?」

 もしかして俺の妹と弟を見て、魔物と言うのか!?

「ん? どう見ても魔物だろう? 君は『魔物使い』なのだろう?」

 ダメだ。母さんから世界の現状――――国などは聞いていたが、こういう細かい話は聞いていないので、さっぱり話が通じない。

【私達が魔物ですって!?】

 案の定、妹が怒りだす。

 無理もない。神獣は魔物とは天と地ほどの差がある。単純に人を猿と比較するくらいには差があるはずだ。

「すいません。少しだけ待ってもらえますか?」

「うむ?」

 俺は兵士達から背を向けて、小さい声で怒っている妹達に声をかける。

「クレア。ルーク。いいかい? もしかしたら人族って神獣を見分ける事ができないかも知れない。だから君達を魔物と勘違いしてしまうかも。例えばさ、人族って猿っぽいでしょう?」

【うん~猿と人族って違うの?】

「ほら。凄く違うんだよ。だからね。間違えられても仕方ないと考えよう?」

【分かった!】

 どうやらふたりとも納得してくれたみたいで良かった。

 もう一度振り向いて兵士達と顔を合わせる。

 その時。

 後ろから猛スピードでこちらに走ってくる人が一人。

 遠くからでも土煙が上がるのが見える程で、周りの兵士達もざわつき始める。

 こちらにやってくるのをただ眺めていると、あっという間にこちらにやってきたのは、赤い髪をなびかせた美少女だった。

 前世の感覚からすると、テレビとかに出て来るようなアイドルと言っても過言ではないくらい美人で、肌は綺麗だし、スタイルもいいし、顔も整っている。

 もしかして異世界人ってみんなこんなに綺麗なのか?

 周りの兵士達の反応を見る感じ、彼女の美貌にうっとりしている感じがするから、もしかしたらみんなではないかもな。

「あ、あの~!」

 思ったよりも大きな声で、元気いっぱいの声だ。

「遅くなってごめんね~!」

 と言いながら、俺に近づいてきた彼女は俺の右腕に抱き着いた。

 女の子特有の柔らかい感覚が右腕から伝わってくる。

「あ、ああ」

「ん? 君は?」

「はいはい~ランク冒険者のシャリーです! ほら、冒険者プレートです。こちらは私の故郷の子で、都を案内しようと連れてきたんですけど、途中ではぐれてしまって~」

「確かに黄色いプレートだな。はぐれないようにな」

「は~い。ありがとう~」

 手際よく兵士を巻いた女の子が遠ざかる兵士達に向かって手を振る。

 元気いっぱいの笑みに兵士達もちらちらこちらを見ては手を振った。

 やっぱり美人というだけで武器にはなるが、兵士達はそれでいいのか?

 兵士達がある程度遠ざかると、女の子が俺達に向かって満面の笑みを向けてきた。

「初めまして! 私はシャリー。貴方は?」

 彼女はそう名乗った。
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