43 / 76
新世界
しおりを挟む
「まさか、レモニカのこと実話だなんて・・・。」
「身分や、登場人物や、出てくるものや顛末は変えてあるけど、基になる実話があってこそできたもの。
魔女狩りは本当に酷いものだった。
元のまま反映してたら、君には耐えられないよ。
そのくらいの惨さだ。
君はそこまでは覚えてないようだな。
よかった。
覚えてなくていい。
あんなひどいこと。」
「・・・。」
「まあ、今でもネット上で似たようなことが起きているから、人は大して変わってない。
他人を踏み潰すときだけ、生を感じる人間を生産しやすい状況は、昔も今も変わらない。」
「・・・。」
「僕はね、レモニカが生まれ変わって幸せになる世界を作りたかった。
架空の世界で構わない。
せっかくなら、今を生きる人にも、楽しんで参加してほしくて。
それで、今流行りの乙女ゲームを作ったんだよ。」
そう言ってパソコンのモニターを、軽く叩いた。
「やっぱりゲームの設定では、レモニカの生まれ変わりがレモニー?」
「そうだよ。」
「な、なんで悪役にしたの?
そこまで言うならヒロインにした方が・・・。」
「シャーリーンから聞いただろ?
『あなたは、昔から人間的には最低。
なんでも口ばかりで、責任は全部他人。
そのくせ、いいことが他人に起きるのは許せない。
奪い取って、自分のために使ってしまおうとする。
他人は見下す。
そう言われて成長した』
とね。」
「ええ、冷血、冷酷、厚顔無恥。
散々な言われよう。」
「かつて、現実のレモニカがそう言う人間だと、吹聴されていたらしいんだよ。
本人の知らないところで、誰かが言い出した悪評が一人歩きしてね。
だから、その生まれ変わりとしてレモニーは、悪役に位置づけた。
しかし、真実は君が見てきた通り、そう見えるだけのものでしかなかったわけだ。」
「でも、そんなにいい性格でもないよね?
乙女ゲームの悪役令嬢の中でも、指折りの嫌われ者だったし。」
「あれは、他のスタッフが脚色しすぎたんだよ。
悪役は、せめて元の性格も多少悪くないと、ヒロインが映えないし、商売として成り立たないから、て。」
「ふうん・・・。」
「そのせいでトゥルーエンディングへと入るための、レモニーを信じて左大臣を見極めると言う要素がわかりにくかったことは認める。
ごめんね。
散々ユーザーにも叩かれたよ。」
「でしょうね。」
「それでも、自分でもよくできたゲームだと思う。
オープンワールドで、キャラクターたちが生き生きと動き回り、プレイヤーのフリートークにも臨機応変に対応可能。
乙女心をくすぐる、アバターとその身を飾る美しい装飾品の数々。
見た目もCGとは思えないほどのハイクォリティーで、美形揃いの王子たち。
各キャラクターは、本当に生きてそこにいるかのように血の通った動きを見せる。
そしてファンタジー要素を含みながらも、どこか現実的な展開の数々。
もはや、この世界はもう一つの現実の世界だ。
それくらい生々しい世界を、僕と仲間たちは作りあげたんだ。」
クランシーの言葉に私も納得するわ。
とっても生々しいし、愛情も憎しみも生身の人間のそれと何も変わらない。
だからこそ、恋愛ゲームとはいえ、本当に恋しているかのようにはまれるの。
でも・・・。
「最初ライオネルの役目は、管理者だったね。
一番辛い役目よ?
あんな優しい人にこんな・・・。」
「かつて、レモニカを処刑台に送ったのは、ライオネラだ。
これはレモニカの実録に沿っている。
騙されて、処刑執行書にサインしたと祭り上げられたんだ。
そして不在の隙に、レモニカは処刑された。
どうしようもなかったとしても、彼にも罪がある。
ライオネルはライオネラの生まれ変わりとして、その罰を背負うキャラクターなんだよ。
ヒロインパートの毒入りワイン事件で、プレイヤーたちが基準を満たせなかった時は、愛するレモニーを処刑台へと送り出す役目を担わせた。」
「ライオネル・・・。」
胸が痛くなってくる。
現実の人間の罪を、こんな風に背負わされるなんて。
プログラムとはいえ、辛いわ。
「感情までリアルに描き過ぎよ。
プログラムとは思えないほど、彼は苦しんでいたわ。
私がプレイヤーとしてゲーム参加していた時は、ここまでリアルなゲームではなかったはずよ。」
「これが配信ゲームである以上、プレイヤーは、何十万といる。
もちろん、その数だけヒロイン、レモニー、ライオネルたちがいる。
だが、その中で最も不可思議な存在が、プレイヤーライカがアクセスするゲームの世界のレモニー、君だ。」
「え?」
「君は突然、魂を宿した。
この恋愛ゲームの世界がプログラムの世界である以上、君の存在ももちろんその一つのはずなのに。
君が宿った時から、プレイヤーライカ以外のキャラクターたちも、次第に制御不能になっていった。
ゲームの世界全体が、命を宿したように動き始め、キャラクターたちも役割を基に独自の意思や感情を持ち、自由に動き始めた。
運営側もなんとかしようとしたが、我々の干渉すら跳ね返して独立した存在のままだ。
後日談の追加や、新しいキャラクター、続編の追加、ヒロインのアバターの更新など、追加要素は受け付けても、それ以外は受け付けない。」
「どういうことなの?」
「身分や、登場人物や、出てくるものや顛末は変えてあるけど、基になる実話があってこそできたもの。
魔女狩りは本当に酷いものだった。
元のまま反映してたら、君には耐えられないよ。
そのくらいの惨さだ。
君はそこまでは覚えてないようだな。
よかった。
覚えてなくていい。
あんなひどいこと。」
「・・・。」
「まあ、今でもネット上で似たようなことが起きているから、人は大して変わってない。
他人を踏み潰すときだけ、生を感じる人間を生産しやすい状況は、昔も今も変わらない。」
「・・・。」
「僕はね、レモニカが生まれ変わって幸せになる世界を作りたかった。
架空の世界で構わない。
せっかくなら、今を生きる人にも、楽しんで参加してほしくて。
それで、今流行りの乙女ゲームを作ったんだよ。」
そう言ってパソコンのモニターを、軽く叩いた。
「やっぱりゲームの設定では、レモニカの生まれ変わりがレモニー?」
「そうだよ。」
「な、なんで悪役にしたの?
そこまで言うならヒロインにした方が・・・。」
「シャーリーンから聞いただろ?
『あなたは、昔から人間的には最低。
なんでも口ばかりで、責任は全部他人。
そのくせ、いいことが他人に起きるのは許せない。
奪い取って、自分のために使ってしまおうとする。
他人は見下す。
そう言われて成長した』
とね。」
「ええ、冷血、冷酷、厚顔無恥。
散々な言われよう。」
「かつて、現実のレモニカがそう言う人間だと、吹聴されていたらしいんだよ。
本人の知らないところで、誰かが言い出した悪評が一人歩きしてね。
だから、その生まれ変わりとしてレモニーは、悪役に位置づけた。
しかし、真実は君が見てきた通り、そう見えるだけのものでしかなかったわけだ。」
「でも、そんなにいい性格でもないよね?
乙女ゲームの悪役令嬢の中でも、指折りの嫌われ者だったし。」
「あれは、他のスタッフが脚色しすぎたんだよ。
悪役は、せめて元の性格も多少悪くないと、ヒロインが映えないし、商売として成り立たないから、て。」
「ふうん・・・。」
「そのせいでトゥルーエンディングへと入るための、レモニーを信じて左大臣を見極めると言う要素がわかりにくかったことは認める。
ごめんね。
散々ユーザーにも叩かれたよ。」
「でしょうね。」
「それでも、自分でもよくできたゲームだと思う。
オープンワールドで、キャラクターたちが生き生きと動き回り、プレイヤーのフリートークにも臨機応変に対応可能。
乙女心をくすぐる、アバターとその身を飾る美しい装飾品の数々。
見た目もCGとは思えないほどのハイクォリティーで、美形揃いの王子たち。
各キャラクターは、本当に生きてそこにいるかのように血の通った動きを見せる。
そしてファンタジー要素を含みながらも、どこか現実的な展開の数々。
もはや、この世界はもう一つの現実の世界だ。
それくらい生々しい世界を、僕と仲間たちは作りあげたんだ。」
クランシーの言葉に私も納得するわ。
とっても生々しいし、愛情も憎しみも生身の人間のそれと何も変わらない。
だからこそ、恋愛ゲームとはいえ、本当に恋しているかのようにはまれるの。
でも・・・。
「最初ライオネルの役目は、管理者だったね。
一番辛い役目よ?
あんな優しい人にこんな・・・。」
「かつて、レモニカを処刑台に送ったのは、ライオネラだ。
これはレモニカの実録に沿っている。
騙されて、処刑執行書にサインしたと祭り上げられたんだ。
そして不在の隙に、レモニカは処刑された。
どうしようもなかったとしても、彼にも罪がある。
ライオネルはライオネラの生まれ変わりとして、その罰を背負うキャラクターなんだよ。
ヒロインパートの毒入りワイン事件で、プレイヤーたちが基準を満たせなかった時は、愛するレモニーを処刑台へと送り出す役目を担わせた。」
「ライオネル・・・。」
胸が痛くなってくる。
現実の人間の罪を、こんな風に背負わされるなんて。
プログラムとはいえ、辛いわ。
「感情までリアルに描き過ぎよ。
プログラムとは思えないほど、彼は苦しんでいたわ。
私がプレイヤーとしてゲーム参加していた時は、ここまでリアルなゲームではなかったはずよ。」
「これが配信ゲームである以上、プレイヤーは、何十万といる。
もちろん、その数だけヒロイン、レモニー、ライオネルたちがいる。
だが、その中で最も不可思議な存在が、プレイヤーライカがアクセスするゲームの世界のレモニー、君だ。」
「え?」
「君は突然、魂を宿した。
この恋愛ゲームの世界がプログラムの世界である以上、君の存在ももちろんその一つのはずなのに。
君が宿った時から、プレイヤーライカ以外のキャラクターたちも、次第に制御不能になっていった。
ゲームの世界全体が、命を宿したように動き始め、キャラクターたちも役割を基に独自の意思や感情を持ち、自由に動き始めた。
運営側もなんとかしようとしたが、我々の干渉すら跳ね返して独立した存在のままだ。
後日談の追加や、新しいキャラクター、続編の追加、ヒロインのアバターの更新など、追加要素は受け付けても、それ以外は受け付けない。」
「どういうことなの?」
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説
<完結>【R18】ズタズタに傷ついた私にたぎる溺愛をくれたのは、美しい裸身の死神でした
長門美侑
恋愛
涼風凛 29歳 鳳条建設総務課に勤めるOL
クリスマスイブに親友に恋人を略奪され、
彼のために借りた多額の借金だけが凛の手元に残った。
親友と恋人に手痛く裏切られ、
突然凛を襲った激しい孤独感。
そして、返す当てのない借金。
絶望のなか、
捨てばちになってベランダから飛び降りると、
突然、全裸の男が現れて・・・
2024.7.20
完結しました。
読んでくださった皆様!本当にありがとうございました。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
Kingの寵愛~一夜のお仕事だったのに…捕獲されたの?~ 【完結】
まぁ
恋愛
高校卒業後、アルバイト生活を続ける 大島才花
すでに22歳の彼女はプロダンサーの実力がありながら
プロ契約はせずに、いつも少しのところで手が届かない世界大会優勝を目指している
そして、今年も日本代表には選ばれたものの
今年の世界大会開催地イギリスまでの渡航費がどうしても足りない
そこで一夜の仕事を選んだ才花だったが…
その夜出会った冷たそうな男が
周りから‘King’と呼ばれる男だと知るのは
世界大会断念の失意の中でだった
絶望の中で見るのは光か闇か…
※完全なるフィクションであり、登場する固有名詞の全て、また設定は架空のものです※
※ダークな男も登場しますが、本作は違法行為を奨励するものではありません※
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
結婚までの120日~結婚式が決まっているのに前途は見えない~【完結】
まぁ
恋愛
イケメン好き&イケオジ好き集まれ~♡
泣いたあとには愛されましょう☆*: .。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
優しさと思いやりは異なるもの…とても深い、大人の心の奥に響く読み物。
6月の結婚式を予約した私たちはバレンタインデーに喧嘩した
今までなら喧嘩になんてならなかったようなことだよ…
結婚式はキャンセル?予定通り?それとも…彼が私以外の誰かと結婚したり
逆に私が彼以外の誰かと結婚する…そんな可能性もあるのかな…
バレンタインデーから結婚式まで120日…どうなっちゃうの??
お話はフィクションであり作者の妄想です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる