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悪役なのに、悪いことをしてないの?
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私が喉元に迫った刃に怯えて震えていると、シャーリーンが素早くサーベルを持つ手を蹴り上げた。
ケルフェネス王子も、思わずサーベルを落とす。
「レモニー様、こちらへ!」
シャーリーンが私の手を引いて、その場を逃げ出す。
あわわ、こんなシーンもなかったはずよ!?
「レモニーが逃げたぞ!
追え!」
追手がかかって、必死に逃げる。
「ご指示を!
レモニー様!」
シャーリーンが叫ぶ。
「えぇ!?
あ、えっ・・・とぉ。」
そもそも、左大臣にいくはずの毒のワインは事前に回避してるし、隣国の王子の使節団に毒の入ったワインがいくなんて展開は聞いたことがない。
ただ・・・結末は同じ、処刑。
道筋を少々変えたくらいでは、結末に影響しないってこと!?
でも、このままじゃいけない。
とにかくどこかに隠れないと!
「シャーリーン!
そこの部屋へ!
早く!」
私たちは手近な部屋の中へと逃げ込んだ。
気づかないで!
そのまま行って!
そう思っていると、追手は不思議とこの部屋を捜索せずに、遠くへ離れていく。
さすが、行動に合わせて結果の方が変わってくれる、トンデモキャラ。
でもこのままじゃいけない。
助けてくれるイケメンキャラも出てこない。
ヒントもない。
ま、本来どちらもヒロインのためにあるもので、悪役用というのは聞いたことがない。
あ、そういえば、ゲームの中でも、誰が毒入りのワインを仕込んだかは、最後までわからなかったな。
プレイヤーの間でも議論されていたけど、答えは出なかった。
制作者側も伏せていたし。
「シャーリーン、毒の入ったワインはそれからどうしたの?」
私はシャーリーンに尋ねた。
「その場で割って中身は捨てました。」
「ということは、使節団の方に私の名を騙ってワインを届けたものがいる、と。」
「そうなります。
少し、調べて参ります。
このままお待ちを・・・。」
そういうと、シャーリーンは素早く部屋を出て行った。
一体誰が・・・、レモニーに恨みがある人?
相当ひどい悪女キャラクターだから、そりゃいくらでもいそうだけど。
「お待たせ致しました。」
シャーリーンが戻ってきた。
「はやっ。」
「使節団に送られてきたワインは、確かに贈呈用に準備したワインと、同じラベルが貼られておりました。
しかし、中身が全然違いますわ。
あれは、左大臣の領地でとれるワインです。」
シャーリーンがはっきり言った。
「え?
左大臣?
じゃ、自作自演?」
「なんです?」
シャーリーンが首を傾げた。
「あ、ううん。
左大臣は、ライカ様に恋してらしたわね?」
「はい。
はたから見てもわかるくらい、熱心に。
ティモシー王子がお守りしてくださってるので、実害はありませんが。」
「私てっきり・・・、私を嫌うライカ様がそんなことをしたのかと・・・。」
「無理でしょうね。
でも、ライカ様を慕う殿方は沢山いますからね。
ケルフェネス王子も、その他の王子たちも、皆ライカ様に恋してらっしゃいます。
まるでそれが当たり前のように。」
そりゃね。
それが恋愛ゲームの醍醐味でしょ。
私はため息をついた。
こう言う場合、ヒロインを想う男性キャラクターが動いて、悪役を排除しようとする動きを見せることが多い。
今日のこの日を迎えるまでに、レモニーがヒロインに犯した悪さを振り返ると・・・。
1・ヒロインのドレスにわざとワインをかけて、笑いものにしようとした。
2・お茶会で飲み物に下剤を仕込んで、はしたないところを王子に見せようとした。
3・惚れ薬を従者に仕込んで、王子の前で奪わせようとした。
4・誘拐して売り飛ばそうとした。
5・王子と一緒に街に視察に行った時、その街ごと燃やして焼き殺そうとした。
そして、本来今日のパレードでは、馬車の車輪を外して事故に見せかけて葬ろうした・・・だっけ。
恋愛ゲームにあるまじき過激さよね・・・。
もはや、バイオレンスものよ。
でも、それを乗り越えるたびに、王子とヒロインはお互いの絆を強めていく。
深く愛し合うようになるんだったな。
でも、こういう筋なのであれば、レモニーなら、普通に毒入りのワインを贈りそう。
なぜ、これだけ彼女のやったことじゃないんだろ。
行動を起こせば、その通りに結果が変わるトンデモキャラ、レモニーなのに。
ん?
「ねぇ、シャーリーン。
そういえば、ライカ様のピンチの時にいらしたのは、ティモシー王子をはじめとする、攻略対象の王子たちだけ?」
「攻略対象とは?」
「あ、ごめんなさい。
忘れて。
ライカ様に恋する王子たちだけが、彼女に危機が迫った時にいらしたのかしら。
なぜ、ライカ様は助かったんだったかしら。」
事前に察知して、王子たちをそこに誘導するキャラクターがいたな。
シャーリーンが、顎に親指を立てて考えている。
「確か・・・、左大臣の元従者、ライオネルがいつも王子たちに知らせていたと聞いています。」
ライオネル!
シャーリーン並みに有能な従者で、攻略対象のキャラクターを誰にするかで、その服装と髪型が変わる異色のキャラクター。
常に攻略対象の侍従として、存在する。
プレイヤーの、今の攻略対象はティモシー王子のはず。
つまり、今はティモシー王子の侍従とういうこと。
「あいつは油断なりません。」
シャーリーンが珍しく、少し恐れたような顔をしている。
「レモニー様の思惑を先読みして、常に手を打ってくる。
まるで、全てを知った上で行動しているように見えます。」
「彼も、ライカ様を慕うのかしら?」
「そのように見えますが、わかりません。
目的はライカ様のためというより、あるべき道を敷いて、そこを歩ませようとしているように見えます。」
「あるべき道・・・。」
つまり、ゲームの本筋を逸らさないようにする、補正をかけるキャラクターなのかしら。
まずいわ。
このままでは、処刑の結末が変わらない。
「私がひどい女だから、避けられないのかもね。」
シャーリーンが、顔を上げてじっとこちらを見る。
「本当に、今日はどうなさったんですか?
あなたは確かに、性格も行いも最低の人間です。
でも、あなたは口ばかりで、何もライカ様にはしてらっしゃらないんですよ?」
「命令して、嫌がらせの限りを彼女にしたじゃない・・・。」
「・・・?
どなたに?
レモニー様、誰に何をお命じに?」
「え?
あなたに色々指示をしたんでしょ?」
「あれは指示ではなく、愚痴でしょう。
ワインをぶっかけてやりたいとか、下剤を飲ませたいとかおっしゃってましたけど、あなたは翌日はすぐお取り消しになってました。
肝が小さいくせに、口にする方なので、私は何も致しませんでしたよ。」
「ええ!?」
「私は、最後の最後にビビって逃げるような、あなたの卑劣な性格を知り尽くしております。
悪事というのは、最後にどんと構えられる人がやるものです。
つまり、あなたは何もしていないんです。」
ケルフェネス王子も、思わずサーベルを落とす。
「レモニー様、こちらへ!」
シャーリーンが私の手を引いて、その場を逃げ出す。
あわわ、こんなシーンもなかったはずよ!?
「レモニーが逃げたぞ!
追え!」
追手がかかって、必死に逃げる。
「ご指示を!
レモニー様!」
シャーリーンが叫ぶ。
「えぇ!?
あ、えっ・・・とぉ。」
そもそも、左大臣にいくはずの毒のワインは事前に回避してるし、隣国の王子の使節団に毒の入ったワインがいくなんて展開は聞いたことがない。
ただ・・・結末は同じ、処刑。
道筋を少々変えたくらいでは、結末に影響しないってこと!?
でも、このままじゃいけない。
とにかくどこかに隠れないと!
「シャーリーン!
そこの部屋へ!
早く!」
私たちは手近な部屋の中へと逃げ込んだ。
気づかないで!
そのまま行って!
そう思っていると、追手は不思議とこの部屋を捜索せずに、遠くへ離れていく。
さすが、行動に合わせて結果の方が変わってくれる、トンデモキャラ。
でもこのままじゃいけない。
助けてくれるイケメンキャラも出てこない。
ヒントもない。
ま、本来どちらもヒロインのためにあるもので、悪役用というのは聞いたことがない。
あ、そういえば、ゲームの中でも、誰が毒入りのワインを仕込んだかは、最後までわからなかったな。
プレイヤーの間でも議論されていたけど、答えは出なかった。
制作者側も伏せていたし。
「シャーリーン、毒の入ったワインはそれからどうしたの?」
私はシャーリーンに尋ねた。
「その場で割って中身は捨てました。」
「ということは、使節団の方に私の名を騙ってワインを届けたものがいる、と。」
「そうなります。
少し、調べて参ります。
このままお待ちを・・・。」
そういうと、シャーリーンは素早く部屋を出て行った。
一体誰が・・・、レモニーに恨みがある人?
相当ひどい悪女キャラクターだから、そりゃいくらでもいそうだけど。
「お待たせ致しました。」
シャーリーンが戻ってきた。
「はやっ。」
「使節団に送られてきたワインは、確かに贈呈用に準備したワインと、同じラベルが貼られておりました。
しかし、中身が全然違いますわ。
あれは、左大臣の領地でとれるワインです。」
シャーリーンがはっきり言った。
「え?
左大臣?
じゃ、自作自演?」
「なんです?」
シャーリーンが首を傾げた。
「あ、ううん。
左大臣は、ライカ様に恋してらしたわね?」
「はい。
はたから見てもわかるくらい、熱心に。
ティモシー王子がお守りしてくださってるので、実害はありませんが。」
「私てっきり・・・、私を嫌うライカ様がそんなことをしたのかと・・・。」
「無理でしょうね。
でも、ライカ様を慕う殿方は沢山いますからね。
ケルフェネス王子も、その他の王子たちも、皆ライカ様に恋してらっしゃいます。
まるでそれが当たり前のように。」
そりゃね。
それが恋愛ゲームの醍醐味でしょ。
私はため息をついた。
こう言う場合、ヒロインを想う男性キャラクターが動いて、悪役を排除しようとする動きを見せることが多い。
今日のこの日を迎えるまでに、レモニーがヒロインに犯した悪さを振り返ると・・・。
1・ヒロインのドレスにわざとワインをかけて、笑いものにしようとした。
2・お茶会で飲み物に下剤を仕込んで、はしたないところを王子に見せようとした。
3・惚れ薬を従者に仕込んで、王子の前で奪わせようとした。
4・誘拐して売り飛ばそうとした。
5・王子と一緒に街に視察に行った時、その街ごと燃やして焼き殺そうとした。
そして、本来今日のパレードでは、馬車の車輪を外して事故に見せかけて葬ろうした・・・だっけ。
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でも、それを乗り越えるたびに、王子とヒロインはお互いの絆を強めていく。
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なぜ、これだけ彼女のやったことじゃないんだろ。
行動を起こせば、その通りに結果が変わるトンデモキャラ、レモニーなのに。
ん?
「ねぇ、シャーリーン。
そういえば、ライカ様のピンチの時にいらしたのは、ティモシー王子をはじめとする、攻略対象の王子たちだけ?」
「攻略対象とは?」
「あ、ごめんなさい。
忘れて。
ライカ様に恋する王子たちだけが、彼女に危機が迫った時にいらしたのかしら。
なぜ、ライカ様は助かったんだったかしら。」
事前に察知して、王子たちをそこに誘導するキャラクターがいたな。
シャーリーンが、顎に親指を立てて考えている。
「確か・・・、左大臣の元従者、ライオネルがいつも王子たちに知らせていたと聞いています。」
ライオネル!
シャーリーン並みに有能な従者で、攻略対象のキャラクターを誰にするかで、その服装と髪型が変わる異色のキャラクター。
常に攻略対象の侍従として、存在する。
プレイヤーの、今の攻略対象はティモシー王子のはず。
つまり、今はティモシー王子の侍従とういうこと。
「あいつは油断なりません。」
シャーリーンが珍しく、少し恐れたような顔をしている。
「レモニー様の思惑を先読みして、常に手を打ってくる。
まるで、全てを知った上で行動しているように見えます。」
「彼も、ライカ様を慕うのかしら?」
「そのように見えますが、わかりません。
目的はライカ様のためというより、あるべき道を敷いて、そこを歩ませようとしているように見えます。」
「あるべき道・・・。」
つまり、ゲームの本筋を逸らさないようにする、補正をかけるキャラクターなのかしら。
まずいわ。
このままでは、処刑の結末が変わらない。
「私がひどい女だから、避けられないのかもね。」
シャーリーンが、顔を上げてじっとこちらを見る。
「本当に、今日はどうなさったんですか?
あなたは確かに、性格も行いも最低の人間です。
でも、あなたは口ばかりで、何もライカ様にはしてらっしゃらないんですよ?」
「命令して、嫌がらせの限りを彼女にしたじゃない・・・。」
「・・・?
どなたに?
レモニー様、誰に何をお命じに?」
「え?
あなたに色々指示をしたんでしょ?」
「あれは指示ではなく、愚痴でしょう。
ワインをぶっかけてやりたいとか、下剤を飲ませたいとかおっしゃってましたけど、あなたは翌日はすぐお取り消しになってました。
肝が小さいくせに、口にする方なので、私は何も致しませんでしたよ。」
「ええ!?」
「私は、最後の最後にビビって逃げるような、あなたの卑劣な性格を知り尽くしております。
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つまり、あなたは何もしていないんです。」
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